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季節の国と雪だるまの王子様

作者: トモナ

冬の童話祭2017参加作品

四苦八苦しながら書いたのに字数ギリギリでした

 とっても大きな国がありました。

 そこはとても寒くて冬も長く辛い国ではありましたが、一度雪解けを迎えるとその水のおかげで作物はいつも豊作で国民だけでなく動物たちまでいつだってお腹一杯に食べられる国。

 他の国がその豊かさを妬んで何度も攻めてきましたが王国をぐるりと囲む険しい山々が守ってくれているおかげで簡単には攻め込めず、守ることにかけては比類ない力をも持つ騎士団もいるおかげでいつだって平和。

 特に王様自らが指揮する近衛騎士団は近隣諸国が震えあがるほどの強さを持ち彼等が出陣したと聞くだけで寒くもない人達が震えてしまうほど。


 そんな国には四人の女王様います。


 春・夏・秋・冬の女王様が国一番の立派な塔に入るとその国はその女王様に合わせた季節がやってくるのです。

 四人の女王様はとても仲良しで自分の季節ではない時でも手紙のやり取りをしては困ったことがあればすぐに助け合うので、これまで季節が巡ることに困ることはなく国の王様も国民も女王様たちを尊敬していました。


 ですがある日から冬が終わらなくなってしまい、春がやってこなくなってしまいました。


 国民長い冬にはなれていましたがこれまでこんなことはなかったのでとても驚き、冬の女王様になにかあったのではないかと心配になりました。

 他の女王様は何も言ってはくれません、ただとても悲しそうに微笑んでは国民の皆に謝るだけで何も説明してくれません。



【冬の女王を春の女王と交代させられた者には好きな褒美を与えよう

 ただし、冬の女王が次に季節の廻りが出来なくなることは認めない

 季節を廻らせることを決して、決して妨げてはならない】



 ついに国中に王様からお触れが出されます。

 お触れを見た国民は冬の女王様に何かあったんだととても心配になり、王国の騎士団に守られながら塔へと向かうと塔ではとても悲しい事件がおきていたのです。

 季節を廻らせる為に体調を悪くしてしまった冬の女王様。

 そのお腹の中にいた赤ん坊が死んでしまったのです、冬の女王様は無事でしたがお腹の中の男の子の赤ん坊は生まれる前に死んでしまったのを知って誰もが悲しみにくれてしまいます。


 特に悲しんだのはお姉ちゃんになる筈だった冬のお姫様。


 何日も前に大きな雪だるまを作ってそれに弟となる筈だった【アレクサンデル】という名前をつけてはいつもカッコいいお姉ちゃんの振る舞いを練習したり、その日の勉強などの成果を自慢しては周りの人達から暖かな目で見られていたからです。

 ですがもう弟は生まれてこない、母親である冬の女王様も悲しみにくれてしまい冬のお姫様はあまりの悲しさから雪だるまを作ってアレクと呼んではてもとても可愛がっていたのです。


 雪だるまのアレクは春になってしまえば溶けて消えてしまう。


 だから春の女王様は塔に入らない、でもこのままでは冬が続いてしまいみんな食べ物がなくなってしまい死んでしまいます。

 塔に集まった人達は次々と自分に出来ることを冬の女王様とお姫様にして元気づけようとします、それは冬が終わって欲しいからではありません。

 いつも自分達を助けてくれる人を助けたいと願っての行動です。


 吟遊詩人は悲しみを乗り越える歌を歌います。


 道化は色んな芸を見せます。


 料理人は暖かくて美味しい料理を作ります。


 農夫が雪の中から綺麗な花を見つけてきます。


 色んな人達が色んなことをして元気づけようとします。

 冬の女王様の心は少しずつ暖かくなっていき元気になりますが冬のお姫様は元気になりません。

 どんな歌も、どんな芸も、どんな料理も、どんな花にも見向きもせず雪だるまのアレクに話しかけてばかり。


 そんなある日のことです。


 騎士団員の見習いの少年がアレクの隣に雪だるまを作っているので冬のお姫様が尋ねると少年は言いました。



「アレク様が独りぼっちだから、僕がお友達のユーリッヒを作ってあげんだ」



 冬のお姫様がどんな子なのか尋ねると少年は、ユーリッヒは大きくなったらアレク王子の一番の親友になってどんな時でも傍にいて支えてあげる騎士になるんだとそれはそれは自慢します。


 冬のお姫様は初めて楽しそうに笑いました。


 それから少年の父親であるとても大きな騎士がその話を聞くと、とても良いことだと大笑いして自分よりも大きな雪だるまを作って名前と役職を与えます。

 吟遊詩人も、道化も、料理人も、農夫だけではありません、塔にやってきていた人達が私もと真似て次々と雪だるまを作っては名前と役職を与え冬のお姫様にアレク王子の家臣にして欲しいと頼みます。

 そんなお話が広まると王国の人達は王様たちが悲しくないようにと皆でいっぱいの雪だるまを作り、色んな名前と役職を与えて少しでも冬のお姫様とアレク王子の悲しみがなくなるようにと祈りました。


 気づけば塔の周りは雪だるまだらけ。


 冬のお姫様はなんと皆の名前と役職を覚えていて、あの時の少年をお供に名前を呼んでは毎日毎日お話をしていくのです。

 少しずつ元気になっていく冬のお姫様はその少年の事が好きになってしまい自分の傍に置いているのは周りの人達からはとても微笑ましいものとして見られているのに気づかないのは少年くらい。

 最初にあった時とは比べ物にならないくらい元気でやんちゃな冬のお姫様に引っ張られながら少年も精一杯遊んであげいては、雪だるまのアレクにその日のことを仲良くお話します。


 そうして冬のお姫様は言いました。



「私ね……アレクにお嫁さんが欲しいの、春と夏と秋のおば様に雪だるまを作って貰いましょ!」



 冬のお姫様はついに悲しみを乗り越えたのです。


 塔に三人の女王様がやってきました。

 三人は周りの人達に助けられながらせっとせ雪だるまを作るとこう言いました。



「春のお姫様はお花を咲かせてなさい、笑顔のお花とお話のお花で皆が元気でいられるようにしなさい」


「夏のお姫様は風を吹かせなさい、悪いものを吹き飛ばして皆がいつだってお日様のように元気でいられるようにしなさい」


「秋のお姫様は色々な物を作りなさい、美味しい料理を作っていつだって皆が元気でいられるようにしなさい」



 そして冬の女王様は言いました……



「冬には辛いことも沢山あります、でも恐れてはいけません……雪解けの先にはいつだって幸せがあります、雪はその幸せを作り出す為の元気を貯めこむ季節なのです

 もし周りの人達が辛いことで悲しんでいたら助け合いなさい、そうして笑顔を守れたならその人が貴方を助けてくれます

 貴方には素敵な家臣ともっと素敵なお嫁さんが三人もいるのですから、皆を率いる冬の王子様と、立派な人と……皆が笑顔でいられるようにしなさい」



 雪だるまのアレクの不出来な顔が微笑んだように見えました。

 泣きじゃくる冬のお姫様は少年の手をギュッと握りしめ、冬の女王様も静かに塔を離れると、替わりに春の女王様が静かに塔へと入り暖かな日差しが雲の隙間から差し込める。

 それは雪だるまのアレクへと差し込むとアレクは溶けてしまいますが誰ももう悲しくはありません、まるでその日差しはアレクを天へと連れていくかのように優しい日差しだったから。



 それから季節の廻りが滞ることはありません。



 ですが冬のお姫様は毎年塔へとやって来るとみんなと一緒に雪だるまを作ります。

 それは悲しいから作るのではありません、春と夏と秋の間に有ったことをお話してあげる為に作るから。


 すると不思議な事にこの国では幸運に恵まれるからです。


 ある貴族は長年子宝に恵まれませんでしたが、三つ子を授かり。


 ある吟遊詩人は病気で出なくなってしまった声を取り戻し。


 ある道化は優秀な弟子の怪我が治り。


 ある農夫も冬でも元気になれる新しい野菜を見つけました。


 そして立派な騎士となった少年は新しい冬の女王様と結婚することとなり、辛いことも悲しいことも、楽しいことも分かち合うようになりました。

 ですからこの国では今でも冬になるとみんなが雪だるまを作って名前を与えてはアレク王子……冬の王子様の家臣として立派となり皆の幸せを守ってくれる人になることを願います。

 

 この国では四人の女王様がいます。


 春・夏・秋・冬の女王様がいつも仲良く手を取り合って暮らしています。

 後継者が途絶えたことなど一度もありません。

 他国の人達がどうして無事に赤ん坊を授かれるのかを聞くとみんなこう言ったそうです。



【冬の王子様と三人のお姫様と家臣達が元気に生まれてこられるように守ってくれるから】



 そう、とてもとても……とっても自慢したそうです。




 めでたしでたし


冬を溶かした春は、女王様とお姫様の下に駆けつけてくれた人たちの温かさです

もし誰も来なかったらお姫様の悲しみが消えず冬は続くことになったでしょう

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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物みんながあたたかいところ [一言] ああ、いいお話を読ませてもらったなあ、というのが読んで一番最初に思ったことです。 確かに、悲しさからお話は始まっていますが、それを乗り越えるため…
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