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第一部 オフィスビル対抗編

第一部 オフィスビル対抗編

第一話


俺はとうとう新しい武器を手に入れた バッククロス 相手がバックに打ってきた球をフォアに回り込んで相手のバックにクロスを打ち込む 緩いドライブ回転をかけるのがコツだ 白い弾道が駆け抜ける


これまで俺は七色のサーブに頼ってきた これだけでは素人にしか勝てない これを返された時が課題だった 俺は血のにじむような特訓を重ねた 相手が攻めてきたときにカウンターで返すバッククロス、これを身につけた俺達は強い これを返されたとしてもパートナーのユキオが必殺のスマッシュを決めてくれる ダブルスに最も大事なもの、それは信頼関係だ


俺の働くオフィスビルには多くの会社が入っており、5000人以上が働いている その頂点を決める戦いが行われる 出場チームは32チーム 明日はいよいよエントリーだ これまでユキオはベスト8が最高だ だが今年は違う 選手権は再来週から熱戦の火蓋が切って落とされる 5日間でチャンピオンシップを争う あと二週間、最高のパフォーマンスを目指そう 結果はついてくる


俺は甲子園球児のように高揚して組み合わせ抽選会に望んだ くじを引いた俺は血の気が引いていくのが分かった 昨年の覇者S総研 それと同じブロックになってしまったのだ 頂点を目指すからには避けて通れない相手だ まずは一回戦突破 全力を尽くそう 


大会1週間前の今日から大会会場で練習ができる ライバル達の目も光る中、チーム練習を行った 七色のサーブは大会当日まで封印 勘がにぶらないように道場での練習はかかせない パートナーのユキオと組んだ時には相手を10点以下に抑えて勝つ これが自らに科した課題だ しかし1ゲームだけ13点とられてしまった 一瞬たりとも気をぬいてはならない


しかし自分のチームにスポーツマンシップに欠ける人間がいるとは思わなかった カオリはプレイは悪くないのだが試合中の相手に野次をとばす 相手のミスを思いっきり笑う 俺はこういう人間は好きではない そう思っているとなんでもないサーブミスが出てまた笑われる 悪循環だ バッククロスの精度も悪い 結局今日の練習試合は散々だった メンタルの弱さが出た 全力を尽くし相手のよいプレイは称えあう そう願っていても初めての選手権にはこのような相手がいるかもしれない そう思えばよい練習であった 明日からは朝練だ


金曜日の今日は最後の追い込みだ 1回戦は来週の火曜 週末からは調整に入る 昨日は俺が左足をつり、今日はユキオの左足が上がらなくなっている 練習相手のタカも肩が上がらない この日はタカを相手に2対1で集中した練習を行った タカは昨年度準優勝の実力者だ そのタカを相手にダブルスでゲームを組み立てるのは難しい シングルスのほうが全て自分の考えでゲームを組み立てられるので有利な面がある 俺とユキオの作戦はこうだ 俺がバッククロスで攻め、ユキオが必殺のスマッシュを決める 俺のバッククロスで決まることも少なくない しかし、この日のタカは違った 俺達の攻撃をことごとく拾ってくる こうなるとダブルスは難しい 交互に打つという制約があるためどうしても自分のリズムを続けるのは難しくなる とは言っても俺とユキオ2回ずつぐらい打ち込めば決まらないことはほぼない しかしタカはそれをも返してくる


結局根負けした俺達はリズムを崩しだす なんでもない球をネットにかける、サーブが甘く入る、凡ミスの連続だ そしてそれをタカが見逃すはずがない 散々に負けた俺達は最後の特訓を行った 自信を持って思い切り振りぬくこと、また大切なことを学んだ


最後はユキオとのシングルス パートナーの手は知り尽くしている 初めてユキオと手合わせたのは2週間前 あの頃とは俺もユキオも違う 1セット目は俺、2セット目はデュースの末ユキオ、そして3セット目もデュースになりなんとか俺が取った。しかもお互いミスが少ない、いいゲームだ 週末は休息をとり月曜日は調整、火曜日の1回戦に望む この日のプレイが出せれば1回戦は突破できる 自分達を信じよう


つづく


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