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聖剣使いと契約魔女  作者: ふーみん
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ショウガツ/番外編(1)

今回はお正月ということで番外編です。

本編とは特に関係ありません。

 異世界マイソロジア、ラムル村。

 港町ノランから訪れる観光客や商人たちが、休憩や商いの場として立ち寄るこの村は、つい先日魔獣に襲われて壊滅状態に陥った。

 現在は村の騎士や冒険者たち、そしてヤムル村から数名の応援を受けて復興を進めている。


 ヤムル村からの応援組の一人として、ユインもラムル村を訪れていた。兄のアベルは魔獣との戦いで負傷しており、その治療のためヤムル村の医療施設に入院している。

 今日は幼馴染のリーナも一緒で、男子であるユインは倒壊した建物の片付けや半壊状態の建物の建て直しなどをすることになっている。

 女子であるリーナは料理の腕を見込まれてか炊事係の担当となっていた。


 しかし力仕事というものはとても疲れるもので、朝から働いたユインたちは昼食の時間になるとすでにへとへとになっていた。

 腹も減ったので昼食を受け取りに集会場へ足を向けたアベルは、炊事係の村人からスープを受け取ると集会所に幾つか置いてあるテーブルの席に腰掛ける。


 行儀よく手を合わせて、いただきますを言って熱々のマトマのスープを口にする。

 優しい酸味と野菜の風味を味わっていると、ユインの後ろから聞き慣れた声の会話が届く。

「リーナお姉ちゃん、ショウガツってなぁに?」

「へ? ショウガツ? なに、それ?」

「なんかねー、お手伝いに来てくれてる人たちが話してるの聞いたんだー。もうあとひと月でショウガツかーって」

「へえ~、何かの催し事かな?」


 ショウガツ、というものについて語る二人の女子はリーナとフィリアだ。

 どうやら炊事係の仕事が落ち着いたのでフィリアを連れて昼食にすることにしたらしい。


 会話の内容は、まだ幼いフィリアがアース族が話していた話題を聞いたことについて話しているらしい。

 妙にリーナに懐いているフィリアは、日頃の出来事や気になったことを常々リーナに尋ねているみたいだ。

 実際に勉学も優秀だったリーナはフィリアの大抵の質問には答えられるようだが、今回の質問には答えようにもそれができないらしい。


 これはユインも何かしらの回答を考えておいた方が良さそうだと内心で思う。

 しかしながら、ユインもアースガルズに関する知識に詳しいわけではないので、そうすぐに思い浮かばない。


 焦り気味に考えるユインを他所に、自分が座っているテーブルの空いている席に二人の女子は座った。

「ね、ユインはショウガツって知ってる?」

 やはり聞かれたと思いつつ、もう一度考えてみてからユインは首を横に振った。

「ごめん、ちょっと分からないかな。ただ…」

 兄のアベルとは違い、身体を動かすより考えることを優先するユインは、すでに巡らせていた考えを言った。

「リーナの言う通り、催し事のようなものなのかもしれないね」


「だったらきっと、お祭りみたいにたのしーよ!」

 と、うきうき気分な口調で言うフィリア。

「お祭りかー。王国誕生祭、みたいな感じかな?」

 と、年に一度だけ王都で行われるお祭りを思い浮かべて言うリーナ。

「もし誕生祭みたいな催し事だったら、そのショウガツもアース族たちにとっては特別な日なのかもしれないね」

 と、二人に続いてユインもショウガツに対するイメージを話した。


 しばらくして、スープがなくなった皿を三つ並べて満足げに一息吐くと、またしてもフィリアがウキウキしながら言った。

「あーあー、フィリアもお祭りしたい! ね、ね、お祭りしよー」

 ショウガツの話をしていたらお祭り気分になってしまったらしい。


 ユインも少しだけお祭り気分になりつつあったので気持ちは分かるが、いまはラムル村の復興が最優先事項だ。

「そうねー。でも、村のお仕事が終わるまでは、お祭りもお預けかな」

 リーナもそのことを考えているため、フィリアを宥めるように言った。

 お預けを食らったフィリアは、幼い顔をぷくーっと膨れさせた。


 それでも駄々をこねないフィリアの頭をリーナが撫でると、彼女は膨れつつも気持ちよさそうに黙っていた。

「王国誕生祭、とまではいかないけど、復興が全部終わって打ち上げ会みたいな感じだったら実現は可能かもしれないね」

 あながち誰かが言い出せば実現できない問題ではないと、ユインも付け加える。


 そんなユインの言葉に、フィリアは膨れっ面をころっと笑顔に変えると言った。

「ほんとっ!? だったらフィリアもっとみんなのお手伝いして、お祭りできるようにがんばる!」

 小さな両手をテーブルに乗せてそう言ったフィリアに、ユインとリーナは微笑み合った。

「うん。じゃあお腹もいっぱいになったし、さっそくがんばろっか」

「うんっ」

 最初から面倒見は良い性格だが、更にその性格に磨きがかかったリーナの言葉にフィリアは嬉しそうに頷いた。


 どうやら復興後のお祭りのことは事前にラムル村の村長に話しておいたほうが良さそうだと、二人を見てそう思うユインなのであった。









新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


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