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ボスとしもべ ~一年後~

【登場人物】

 ・女……宇宙人から心を狙われる

 ・宇宙人ボス……女の心が欲しいと奮闘する。しもべをこき使っている

 ・宇宙人しもべ……ボスに遣える真面目な宇宙人。冷静沈着なタイプだが最近怠惰気味

 ・その他……アメリカ人、イタリア人、ドイツ人、イギリス人、日本人。皆、宇宙人の誘惑により身体の一部を失っている


【はじめに】

この物語は、『小説家になろう』というサイトに投稿されている「地球人」※の続編を想定して書いたものとなります。まずはじめに「地球人」を読むことをオススメしています。パソコン、スマホ、携帯からも読むことができます。

【URL : http://ncode.syosetu.com/n2674bb/】

また、次の【地球人 あらずじ】では簡単に内容を紹介しておりますので、そちらを読みすすめていただいても構いません。それでは、アレンジ続編をお楽しみください。


【地球人 あらすじ】

 宇宙船に五種類の人間を用意した宇宙人たち。アメリカ人、イタリア人、ドイツ人、イギリス人、日本人の〝臆病でない〟身体のパーツを得るべく、宇宙人二人は説得に試みる。アメリカ人には、右腕を切り落とすよう指示するが拒む彼に宇宙人は「ヒーローになれる」と説得。みごとアメリカ人の右腕を切り落とすことに成功。

 続いてイタリア人には左腕を要求。助けを求める彼に、「女性にモテる」と説得するとイタリア人もあっさりと腕を切断。ドイツ人には右足を。「ルールだから」という一言で彼も了承する。この経緯を見ていたイギリス人は紳士だからと左足を躊躇いもせず差し出す。

 そして最後が日本人。「腹を切れ」と言われ怯える日本人に、宇宙人は囁く。皆切っていると。


※「地球人」の著者・井ノ上學さんから内容の続編執筆許可を得ています。本当にありがとうございました。

1◆ボスとしもべ ~一年後~


 ここは宇宙。星々が誕生しては運命を育み、輝いては爆発・消滅する不思議な空間。そんなブラックマターに、一つの宇宙船が漂っている。どこへ行く目的もなさそうに、ただなんとなくフワフワ浮いているみたいだ。いったい中にはどんな生き物が存在しているのだろう。

 中を覗いてみると宇宙人二人が、お互い顔も合わせず自身のやりたいことに夢中になって話をしている。一人は手足があって、地球人に似た成りをしていた。もう一人は、上から下まで全身真っ黒の布で覆われているが、顔の部分だけが白い光でぼんやりと輝いている。この光が顔なのだろうか。

「なあ、しもべ~」

「……何ですかボス」

 ボスと呼ばれる地球人もどきは、空気ソファーにだらしなく寝転がりながら雑誌を眺めている。宇宙人しもべは何やら分厚い本を宙に飛ばしていた。

 そのページから文字が一つずつ飛び出して、まるでダンスをするようにピョンピョン跳ねながらしもべの口元へ進む。行進隊のようなそれを食べるしもべ。どうやらこれが宇宙人式の学習法らしい。

「俺様、人間の『ココロ』がほしい」

「……」

「…………」

「……それで?」

「それで~俺様にそのココロとやらを移植して“カンジョウ”ってものを味わいたいんだよね~♥」

「またそれかよ……“思い立ったが吉日”発言。勘弁して」

 しもべは周りをクルクルと取り囲んでいる文字たちをよそに、頭を抱えた。口に入っていけずに文章は渋滞中。

「“想い過ぎたらキチガイ”? やだな~人をストーカーみたいに言っちゃって」

 雑誌を片手に愉快な声をもらし、もう片方の手を「やだな~」とヒラヒラしている。しもべの方は興味なさげだ。

「せっかく地球人の身体を奪って五体満足なのに、今度は心ですか? いったい何の気まぐれなんですか?」

「いやさ~だって、地球人には“ココロ”ってものがあるんだろう? それがあるからいろいろな“カンジョウ”が味わえるらしいじゃないか。この『コズミック・タイムズ』にそう書いてあったんだよ」

 しもべの顔にデデン! と雑誌を見せつけるボス。

「あ~あ。両腕手に入れて雑誌読めるようになったからって面倒な知恵を身につけちゃってさ……」

「ん? 何だって?」

「い、いや……。ボスが完全体になってから早一年、私たちも随分と変わったものだな~と」

「ああ、そうだな。一年前よりだいぶ生意気になったもんなおまえ。どっちが立場上なのかよくわからなくなってるぞ」

「ボスこそ満足いく身体を手に入れて今まで好き勝手やりたい放題やってきたじゃないですか。雑誌読んだり、好きな物食べたり、ダンスやスポーツ、編み物にピアノと……。地球人みたいに砕けてアバウトになってさ」

「いや~この地球人の身体最高♪ 今までの根暗人生と比べたら月とスッピンだよ」

「なのにこれ以上欲張ってもね。また人間拐うのも面倒くさいしな……」

 “スッポンだろこのアホボス”としもべの表情から伺える。

「おまっ! 俺様のために協力しろよ! どうしても俺は地球人のココロを奪いたいんだ。せっかくここまで揃えたんだから、どうせなら完璧なコレクターになるのがプロってもんだろう?」

「いったい何のプロなんだか」

 ボスはイギリス人とドイツ人から奪った両脚で勢いよく立ち上がると、操縦席へ歩み寄る。ボスの腕も脚も腹も、顔以外は全て地球人から得たパーツらしい。

「とにかく、俺様がこうだと決めたら絶対手に入れるんだ! 一年前のあの五人から“臆病でない”手ごろなココロをみつければいいさ。……というわけで、早速これから地球人を拉致りに行きま~す♪」

「へいへい。好きにしてちょ」

 ボスに背を向けヒラヒラと蚊を払うように手振りすると、しもべはさっさと自室に戻った。 宇宙人ボスは操縦席のナビに目的地『地球』と設定している。

さきほど飛び交っていた文字たちも、もうしもべの魔法が解けたのか無造作に床に散らばって動かなくなっていた。



「おい、しもべ!」

「え? なに?」

「んなことしてる場合か!」

ボスはしもべの部屋へ慌しく突っ込んできた。自室でも相変わらず文字たちを宙に躍らせているしもべ。魔法を操りながらポカンとしている。

「いよいよ地球に到着だぞ! 早く五種国の人間共がどこに生息しているか調べてくれ!」

「それよりボス、地球も今となってはいろいろ進化しているみたいですよ。アメリカ人だの日本人だのもはや時代遅れ……」

「いいから来い!!」

「うぇ!?」

 無理矢理しもべを操縦室へ引っ張っていく。引っ張られた勢いで、黒い布の端からしもべの身体の一部ともいえる光がぽこぽこと漏れている。文字たちがバラバラと床に落ちてしまった。

操縦席の巨大スクリーンには、地球の美しい雲と青い海が広大に映し出されていた。

「うわあ。いつ見ても綺麗だな」

「そんな感心事はいいから、早く行こうぜ! まずはアメリカ人から攻めるぞ~♥」

「ボスきもい」

「んだと!? おまえみたいな光まみれのふにゃふにゃした物体に言われたくないわー!!」

「うわあああ、ボスううう。やああめえええてええええ」

 ぶんぶん胸倉をつかんで振り回されるとしもべの光がシャボン玉のようにぷかぷか浮いてしまう。どうやら身体の光が減ると気分を悪くするようだ。しもべは目を回しながら(実際どこに目があるのかはわからないが)、床にへたりと座り込む。

「そ、そもそもボスは地球人だったじゃないですか? それなのにボスは“カンジョウ”を失くしてしまったんですか?」

「ふん。過去の話はするな。俺がかつていた“地球”はとっくの昔に滅んでるわ。今いる地球人たちとは違う」

ボスには暗い過去があるようだ。きっと二人と一緒にいれば、そのうち全てが明らかになるだろう。面白くなってきた。

「まずは、アメリカ人だ。右腕をくれた彼は今どこにいるのか調べてくれ」

「わかりました。すぐ探し出して見せますよ」

しもべはスクリーン前の空気いすにちょこりと座って魔法のキーボードで何やらわからぬ文字をタイプし始めた。ボスは操縦室の空気ソファーにまたどっかりと座り込むと、雑誌を片手に真剣な顔をしている。さきほどとはどうやら雰囲気が変わり、しばらくの沈黙が続く。


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