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名も無き戦士に祝福を

連載しているAir:Realの遠い未来と言う設定の話です。

軍隊系で、現代風ですが、それとドラクエやFFのファンタジーを組み合わせたのを意識しました。

続きも一応考えてあります。

あの時まだ俺たちは若かった。


アメリカは大統領の悪政で、ソビエトとの冷戦状況は悪化の兆しを辿ったままだった。

人はそれぞれ異なるイデオロギーを持ち

後世に異なるミームを残す

残されたミームはイデオロギーを受け継ぎまたそれを繰り返す。

45億人の人が昔から行ってきたことだ。

そして21世紀にかけて、その人口はさらに増えていくだろう


ミームを受け継ぎ、受け継いだイデオロギーに生きるのは、何も血の繋がったものだけではない。

俺はある男のイデオロギーを後世に伝えたい。


1980年5月


空軍大学の寮に入ってようやく慣れた頃の夜・・・・

僕はふと、夜の窓を見て、もれる月の灯りを硬いベッドに横たわりながら見た。

高校で特にやりたいことが見つからず、体育の成績が「A」で、G.Iジョーが好きだった俺は、何も考えずに空軍大学へ入った。

厳しい訓練と両親への恋しさに、耐えられなかった俺は、汗臭い部屋の夜の闇に静かに涙を流した。


静寂を打ち消したのは大音量で流れたディープ・パープルのスモーク・ザ・ウォーターだった。

向かいのベッドで寝ていたと思った男は

「やべっ!!イヤホン抜けちまった!!」と叫ぶと、枕元のランプを付け手探りで、ウォークマンを探し始めた。

うるささと灯りで周りの者が起きる

「うるさい!早く寝ろ!上官が来たらどうするつもりだ!」

小さな声ながらも、唾を飛ばす勢いで俺は言った。


向かいの男はこの相部屋で生活するレイブンと言う男だった。

レイブンは「わりぃわりぃ」と小さな声でいい、右手でウォークマンのボリュームを下げながら

電気を消した。


翌日、上官を殴り殺そうかと思うほどの、過酷な訓練が始まった。

毒ガスに耐えうる体を作るため、適度に毒物を浴び耐性を付けるというものである。

この訓練は二人一組のバディで行う。

誰と組もうか迷っていたところ、レイブンが

「同じ部屋の情けだ、一緒にくもうや」とニヤッとした目で言ってきた。

他に仲の良いものがいなかった俺は、渋々レイブンとともに訓練を行った。

1人分のガスマスクのみが支給され、取り合いに成らずに(チームワークを乱さずに)毒ガスの溢れる、施設内を回れるかを見る。

施設内を回るのには最低でも5分はかかる、俺たちは、最初一分は、レイブンがマスクを付ける、次の一分は俺がつけると言う、もっとも初歩的な、作戦を立てた。

レイブンはマスクを着けた後、辛くなったらいつでも言え、と言った


先に行ったチームは救護班に運ばれたり、終わってから大声で喧嘩している者もあった。

そして、終わったものは、誰もかれも、口を水ですすぎ目を洗っている

その光景がより恐怖を加速させた。

子供の頃、注射を待っているとき、先に出てきた子が泣いていて、恐怖を駆り立てられた感覚に似ている。


自分たちの番が来て、出来るだけ早く抜けようと、俺たちは走った。

目も毒ガスに浸ると危険なのでもう片方に手を引いてもらう。

一分が過ぎる、口をハムスターのように膨らませたレイブンが、俺にマスクを渡した。

また、一分が過ぎ、口を冬眠するリスみたいにして、マスクをレイブンへ渡す。

「良いペースだ」、ダース・ベーダーの様なこもった声でレイブンは言った

口を膨らませた俺は、ただ頷く

ただ、あともう少しと言うところで、唾でむせ、息だすべて漏れてしまった、鼻や口、開けた目の中の粘膜に毒ガスの粒子が絡みつく

レイブンが気付き、マスクを渡した。

「つかえ!」タンが絡まるような声でレイブンが叫ぶ


俺は、何も考えずにレイブンからマスクを受け取ると、手を繋ぎ、一目散に施設を抜けた

涙、と鼻水まみれの顔に、男同士でつないだ手を見て

まわりには、ゲイ・カップルのようだと言ったものがいたが、上官だけは褒め称えてくれた。

そのことより、自分より他人を優先した、レイブンの事を、俺は見直した。


部屋に戻って初めに聞いた

「何故、君はあの状況で、マスクを渡せた?」

レイブンは、シンプルに言った

「国民を守るのが、軍人の義務です。お前も国民です。」

ニヤッと笑ったレイブンは、何故かとても大人のように見えた。


それからしばらく、いつもの様な訓練が続く


ある日、僕とレイブンは戦闘機と攻撃ヘリの操縦方法を学んだ

ピッチ、ヨー、ロール

用語を覚えるのも、体で覚えるのも、一苦労

攻撃ヘリは、一人で乗ることはあまりない。

バディの援護射撃が必要だからだ。

ステルス機、輸送用ヘリ、空軍として必要な知識を、その日から長期にわたって教え込まれた。

人を殺す術を教え込まれた。


1983年11月


ある命を上官から受けた。

ステルス戦闘機に乗って、バディと共にソビエト上空から、森林地帯に降り立ち、宇宙計画と偽装した核発射作戦の機密書類の入手することである。

俺も、レイブンもずいぶん成長していた。

レイブンの笑顔は何故か曇っていた。


一週間後


レーションと、ナイフなどの必要最低限度の装備《銃などはアメリカ製の武器だと所属軍がばれる為持たない》のみを渡され、F-117《ナイトホーク》で5時間後に森林地帯におろされた。


作戦期間は3ヶ月、事前に覚えたロシア語で、モスクワ市民に溶け込んでいった。

モスクワの地形、核研究施設への潜入経路と脱出経路、あらかたの機密書類のおいてあるであろう場所

二人で作戦を立て、時間が空いた時は訓練を積んだ。

アメリカ生まれの俺たちにロシア料理はあまり口には合わなかったが、二人で食う飯はなんでも旨かった。

 

1984年2月


遂に作戦を決行した。

ナイフで脅したソビエト兵士の装備を奪い、殺して、自分たちの使いやすいダットサイトに変え、施設内に侵入した。

さっきの兵士から、抉り取った指と、眼球で、扉を開けることも簡単だった。

自分のやっていることを、置かれている状況を

まともに考えると、汗が噴き出した

レイブンは、俺と目を合わせるなり

「大丈夫だ、何時もどおりやれば良い」と、ニヤッと笑った。

俺は、隙を見計らって機密書類を奪った。

焦りや、不安を抱くのを殺し、ソビエト兵士に悟られないように、施設から逃げ出した。


モスクワ市内を歩き、森林地帯につくと一目散に走った。

しかし、停めていたはずのナイトホークが無い

さほど時間もたたぬうちに、追手が来た

いくらなんでも、早すぎる

そこで、初めて気づいた。

俺たちはアメリカに売られたのだと

大統領の指示で俺たち二人が、ソ連へ送られたとする

そして、そのことを、ソ連へ伝えれば、アメリカはソ連の信頼性を取り戻せる

それと同時に、大統領を戦犯とし、邪魔者を排除できる

アメリカの平和の為、俺たちは売られたのだ

民を守ることと民の人柱サクリファイスになることは、同義なのだろうか


そんな中でも、レイブンは笑っていた。

逃げればいい、逃げてまたそこで幸せに暮らせばいいと言わんばかりに


俺たちは走った、途中喉が、鼻が、目が焼けるように痛くなる

「懐かしい痛みだ」

レイブンは言った。

二人は、ハムスターのようにほほを膨らませ、一目散に逃げた。

大分、走っただろう、疲れて後ろを見たときだった。

汗だくの顔でレイブンはニヤッと笑うと

次の瞬間、身体の上の方が無くなっていた

散弾銃のスラッグ弾だ

レイブンはもう笑う目も無い、話して、ハムスターのように膨らませる口も無い、つなぐ手も無い、ウォークマンを聴く耳も無い。


数秒してから、俺は叫んだ。

そして、逃げた。


逃げるうちに、足から血が出た、腹も撃たれた。

噎せるし、手もかじかむ、尿意もこみ上げる、レイブンもいない

闘争心などもうない、助けてほしかった


俺は、躓いて膝から転ぶとクレバスの下に落ちた。

脊髄を打ったか、足が動かない

目の前を見ると、青い光が目に差し込んだ

水のクリスタル

2000年近く前、神がこの世に作った、救済措置、1500年前、名も無き戦士が世界を変えた、最強の力

俺は叫んだ

「俺に‼クリスタルの力をォォォォォォォォおおおおおおおおおおおおおお‼‼‼‼‼‼‼‼」


そこから、先はよく覚えていない。

ただ、その周囲にいた兵士、俺とレイブンも含めて、今も行方不明となっている。

その周囲の空間も抉り取られていたらしい。


これが俺のクリスタルから・・・・神から承った力・・・・才能ギフトなのだろう・・・・

自らの存在と引き換えに手に入れたこの力を、俺は爆心原地グラウンド・ゼロズと呼んでいる


最後にきいときゃよかったかな、レイブンは、国の犠牲で幸せだったのかな

あの世に行ったら教えてくれ


俺はこれから、人の為に生きる、お前のミームを引き継ぐため

お前のイデオロギーは俺のものとなった。


存在しないものとなった俺には新たな名前が必要だ。


「レイブン」、それが俺の新たな名だ。


神よ・・・名も無き戦士に祝福を

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