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魔女は灰かぶり  作者: ふとん
2/24

森の魔女が王子に恋をし

 目の前の男を見つめて、エレンは溜息をついた。


 いかにも上等な男である。

 地味な装いであるにも関わらず、袖口のささいだが細かな刺繍など見れば見るほど趣味の良ささえうかがえて、かえって嫌味に見えるほどだ。

 その容姿もうんざりするほどきらきらしい。襟元で整えられてはいるが長めの金髪はふんわりと優雅になびき、高い鼻も微笑みをたたえた形のいい唇も切れ長の双眸も、細いながら意思の強さも見える眉でさえ欠点がつけられなかった。

 特に、微笑めば甘さを増す青の瞳はいけない。

 その青に囚われて、うっかり言葉を忘れそうになる。


(いつも思うけど、どうしてこんな男が居るんだろう)


 できることなら物語の中だけで優雅に微笑んでいてほしいものである。

 それなら、いくらエレンが頬を染めたりしても相手に知られることはない。


 再び溜息をつきそうになるのをこらえてエレンは、すぐには紙の上に帰ってくれそうにない現実の男を見遣った。 


「……それで、今日はどうなさったんだい」


 男は、エレンのしわがれた声に誘われるように差し出された薬草茶のカップをテーブルに置いた。どうでもいいことだが、あの苦い薬草茶をどうしてああもうまそうに飲むのかわからない。


「今日も、魔女殿にお話を聞いていただきたく」


 長身から紡ぎだされる声は、森でとれる蜂蜜のように低くて甘い。野山を行く蜂よりも森の樹液なども集める蜂の蜜の方が深い甘さがあるのだ。

 エレンは薬草茶に入れようとしていた蜂蜜を入れる手を止めた。だめだ。もう甘いものはいらない。

 茶受けに出したクッキーにさえうんざりとなって、エレンは用無しになったスプーンで無意味に茶をかき混ぜた。


「そうかい。またくだらないことじゃないだろうね」


 くだらない話ならさっさと帰ってほしいものだが、彼は自分の話を終えるまで帰った試しがない。驚くべき腰の重さだ。


「くだらないとお思いでしょうけれど、私にとっては人生に関わることですので」


 彼は苦笑するが、先週やってきた彼が話したのは家の庭にある溜池にやってくる鴨が子供を連れていたという話だった。エレンにとっては果てしなくどうでもいいことだ。たしか、いっそのこと子供が大きくなってから家族まるごと食べてしまえばいいと返事をした覚えがある。案の定、エレンは彼に冷酷非情だと責められたのだが、ひどい魔女だと知りながら彼が毎週の訪れを欠かしたことはなかった。


「近頃、父が早く結婚しろと啄木鳥のようにうるさいのです」


「まぁ、当然だろうね」


 エレンはやれやれ、と肩を揉んだ。


「ゲイルヴォート・カイ・ミネル殿下ともあろう御方が、美しい娘の屋敷でなくこんな魔女のあばら家に通っていると知れば、早く妻を娶れと言いたくなるものさ」


 彼、カイはいたずらを叱られた子供のような顔で笑う。


「父にあなたのことを知られていたのは誤算でした」


「あたしゃ、たまにお城へも呼ばれているのさ」


 魔女は、国に必要な人材として重宝されている。一国につき一つの魔女組合というものがあって、その国と調停を結んでいる。そのため、魔女は国王からの依頼を断ることはできないのだ。


「殿下、あなたにとっちゃここは誰にも言えない悩みごとを話すのにうってつけだろうけれど、周りはそうとっちゃくれないよ。こうして供の者もつけずに魔女の家へ通っているとあっては、そりゃあ普通は心配するものさ」


「……そうでしょうか」


 苦い薬草茶に視線を落として呟く王子を眺めながら、エレンは彼がここへやってくるようになった出来事を思い出していた。



 思えば、あれがいけなかったと反省している。



 殿下の訪れは、突然だった。


 いつものように薬草を薬研ですりつぶしていた時、来客を告げる鳴子がけたたましく騒いだので、すぐにエレンは出迎えの準備をした。

 追い返す準備だ。

 この森には用のある者以外は入れないまじないが施してあるが、時々そのまじないを踏み越えて興味本位で入り込んでくる不届き者がいる。

 そういう侵入者には鳴子が騒ぐのだ。

 エレンがローブを深く被り、準備を整え終えると戸がトントンと鳴った。

 招かれざる客がとうとうやってきたらしい。

 おもむろに杖をついて戸の前でしわがれた声で言ってやる。


「招かれざる客だね。早くお帰り」


 戸口の向こうは反応があったことに驚いたようだった。しかし再びトントンと戸を叩く。


「お待ちください。あなたにご相談があるのです」


 随分と上品な若い男の声だ。もったいぶった言い回しなので、エレンは暇な貴族だと目星をつけた。


「いいや無いね。とっととお帰り。でないと森の獣をけしかけるよ」


 この森にキツネ以外の猛獣など居はしないが、少なくともエレンよりも膂力のある男と知れた以上、戸は隙間でさえ開けてはいけないのだ。


「まだ何も私から聞いていないというのに、何がわかるというのですか?」


「そもそも用のない者はこの森に入ることさえできないからさ。あっちこっち迷いなさっただろう。用があれば迷うことなどないんだよ」


 この森には迷いのまじないがある。普通はそうして迷った挙句に森の外へと吐き出されてしまうのだが、この男は何の強運か、エレンの家まで辿り着いてしまったようだった。

 森に踏み入れたことといい、この家に辿り着いたことといい、ますます得体のしれない男だ。

 早く追い返してしまうのがいい。


「さぁ、分かったら帰っとくれ。森を歩いていれば外へと出られるよ」


「待ってください。ご相談があると言ったはずです」


(もうじき日も傾いてくるから早く帰れと言ってやってるのに)


 エレンは苛々と戸に向けて再び帰れと続けたが、男の方は戸口から動きもしない。


「まだそこにいらっしゃるのですね。でしたらこの場でよろしいのでどうかお聞きください」


 早く戸のそばから離れるべきだったのだ。

 エレンは舌打ちしたいのを我慢して、戸の向こうの男を睨みつけた。

 彼女の苛立ちを知ってか知らずか、男の方はとうとうと語りだす。


「私には妹がおりまして、先ごろ彼女の結婚が決まったのです。しかし、その相手というのが得体のしれない男でして。爵位も財産もあるので、父が勝手に決めてしまったのですが、何かと黒い噂のある男なのです。その男の屋敷からは夜な夜な怪しげな呪文と女の叫び声がするとか」


 それは確かに魔女の分野にあたるかもしれない。

 たまに、魔女や魔法使いの真似をして知識不足のまま魔術を試そうとする輩がいるのだ。

 そういった者がいるなら、組合に報告しなくてはならない。


 エレンは戸の前でうなった結果、渋々戸を開けることにした。

 

 この男の場合、依頼主になるべきは妹であるから男自身に用があるわけではないので、鳴子が騒いだのかもしれない。

 ここまで必死なのだから話を聞くだけでも、という親切心もあった。


 だが、それがいけなかった。



 いざ戸を開けてエレンの視界に入ったのは、モスグリーンのコートを着た長身だった。

 その姿は神か天使か、人とも思えないきらきらしい姿をしたその男に、見覚えがあった。


「騙したね!」


 老婆の金切り声にふんわりと微笑んだのは、


「アンタに妹はいないはずだよ! ゲイルヴォート・カイ・ミネル殿下!」


 こんな森には居るはずのないミネル王国の王子。


 彼の方はといえば悪びれもせずに慈悲深い声で魔女のしわしわの手を取らんばかりだ。


「覚えてくださっていたのですね、森の魔女殿。こうしてお話ができて光栄です」


「ああ、ああ、そうだったね! アンタの声をあたしゃ聞いたことがなかったよ!」


 エレンは時々城に呼ばれて薬などを献じることがある。その時に見かけたことがある。一度見れば忘れられない容姿である。しかし、言葉を交わすことはなかったはずだ。普通に考えて魔女は一国の王子と談笑できる立場ではない。

 そもそも普段なら大勢の供に囲まれているというのに、今に限って王子は身一つだ。エレンは頭を抱えたくなった。何かあればエレンの責任になるのだ。


「そうです。今まで遠くから姿をお見受けするだけで、お声を聞くことさえ叶わなくて。それが今叶い、春の訪れのようです」


「ああそうかい! あたしゃ極寒の冬がきたのかと思ったよ!」


 王子に妹はない。居るのは騎士団に居る弟だけだ。

 

 エレンは戸口から一歩も動かない王子を苦労して追い出して、その日は事なきを得た。

 しかし、それからというもの、



「こんにちは。森の魔女殿」


   

 王子が、時折この森にやってくるようになってしまったのだ。




 王子は毎回のように手土産を持ってきた。

 持ち手に恐ろしいほど繊細な細工のしてある孫の手、名匠が織ったのであろう膝掛け、いつのまにエレンの身長を覚えたのかぴったりと扱いやすい杖。


「……あたしを普通の年寄り扱いしないでくれないかい」


 お年寄りでも噛みやすいような柔らかいケーキを持ってきた王子にしぶしぶ茶を出しながら、エレンは今日も仕立てのいいチャコールグレイのコートの長身を睨んだ。


「どうぞ、カイとお呼びください。魔女殿」


 この頃になるとカイの眩しい微笑みが伊達ではないことに気がついた。一見優しげな微笑みだが、相手が頷くまであの手この手と海千山千を繰り出すための手段なのだ。

 実際、エレンはすべての手土産を断ったが、結局押し切られて受け取らされている。せめてもの抵抗を示すように部屋の隅に置かれた贈り物の数々はすでに十を数えようとしていた。

 最近では都で流行りの茶や菓子などを持ってくるので、仕方なく茶を出してほとんどをカイ王子本人に食べさせている。


「殿下」


 意地でも名前など呼んでやるものかというエレンの意思が伝わったのか、そこだけはカイも苦笑しながらも譲歩してくれているらしい。


「そろそろ本当に冬になる。あたしゃ冬ごもりの準備で忙しいんだ。それを飲んだらとっとと帰っておくれ」


 この森は四季の訪れが他の土地よりも顕著で、冬には雪で埋まって家から一歩も出られなくなる。だから秋のうちにやるべきことはたくさんあった。


「それはいけませんね」


「そうなんだよ」


 だから早く帰れと続けようとしたエレンを遮るようにカイは微笑んだ。 


「冬の間だけでも、私と共においでくださいませんか。この家には劣りますが、私も郊外に屋敷を持っております。どうか、冬はそこでお過ごしください」


 王位継承権第一位の皇太子である殿下の御屋敷が、魔女のあばら家と比べられては屋敷の方が泣いてしまうだろう。


「何よりあなたのようなお年寄り一人置いて冷たい冬を過ごさせるのは心配です。私の痛む心を汲んで、一緒においでになりませんか」


 エレンは年寄りである前に魔女だ。

 見た目よりも元気に動いているつもりだし、実際何かしら手を貸そうとするカイの手も借りたことが無い。

 しかしどうあってもエレンを年寄り扱いしたいらしい。

 確かにエレンは物々しいほどに老婆の姿だ。曲がった鼻、よれよれの白髪、折れた腰、いかついしわしわの手。動作は錘をつけたように遅く、ローブの袖から覗く腕は枯れ木のようだろう。


「わかった」


 エレンは覚悟を決めた。


「では、私と共に」


 カイの喜びを散らすような笑みに、エレンは冷然と言い放つ。


「アンタはどうも魔女というものを理解していないようだね。また来られる時間があるならここに来てごらん」


 話は終わりだと納得していない王子をその日は追い出した。



 

 次の訪れの日、カイ王子の顔は見物だった。



「―――どうだい。これもアタシの姿だよ」



 彼の目に映っているのは、年の頃なら十歳ほど。カイの背の半分もない白い髪をした女の子だ。細い体にローブを羽織ったエレンは薄い胸を張り、手にした杖で地面を元気よく突いた。


「……森の魔女殿?」


 家に入る前に追い返そうと家の前で対峙したカイは、茫然と切れ長の青い目を丸くして尋ねてくるものだから、エレンは可笑しくなって「ああ、そうさ!」と声を上げて笑ってやった。


「魔女の姿は一つではないよ。そうして連綿と生きているのだからね。それが分かったらとっととお帰り! ただびとであるお前が来るところではないよ」


「それはいけない!」


 エレンの笑い声をかき消すように甘く透る声が叫んだかと思えば、彼女の腰をあっという間に大きな手がさらってしまった。

 悲鳴を上げる暇もなく、抱きあげられた先は王子の腕の上。


「何をするんだい!」


「ああ、魔女殿がこのような小さな子供だと知ったからには捨て置けません。今すぐ私と別邸に」


「どうしてそうなる!」


 きらきらしい顔を悲痛に歪めて腕に捕まえたエレンを見つめる王子は、今にも泣き出しそうな顔で大仰に嘆いた。


「あなたのような幼い子供がここで一人で暮らしているなど不憫でなりません。別邸が嫌ならすぐに別の家を用意しましょう。ちょうど今から冬ごもりの季節です。温かい部屋で皆に愛されて育つのが子供の特権というものです」


 誰が養育論など聞きたいと言った。


 エレンは眩暈をこらえてこめかみをぐりぐりとほぐした。

 駄目だ。この王子はダメだ。

 話が通じないどころか、こちらの思惑の遥か上を飛んでいく。

  

「……わかった」


「では早速、私の別邸へ」


「ちょっとここで待っているんだ」


 王子の腕から飛び降りたエレンは、家の奥へと戻り、やがて王子の待つ戸口へやってきた。


「……魔女殿?」


「ああ、そうだよ」


 エレンは、いつもの老婆の姿で諦めたように頷いた。



 

 老婆の姿であっても、王子は事あるごとにエレンを森から連れ出そうとしたが、年寄りであろうとレディだと思っているのか子供の姿の時のような暴挙に出ることは無かった。

 

 今ではすっかり王子の相談役である。


 相談は雑談といった方がいいようなくだらないことが多い。

 今日は苦手な野菜が朝食に出たとか、お付きの従者がおしゃべりで困るとか、城の庭に兎が出て女官たちが大変に騒いだとか(結局、騎士が仕留めて夕食のおかずになったらしい)王城でのどうでもいいことから、都の女優のゴシップとか、美味しいお菓子の店の話もする。

 

 エレンは森から出ること自体がほとんどないので、カイから聞く都の様子を初めのうちは物珍しく聞いていたものの、最近では若干飽きてきている。

 いくら話を聞いたところで、エレンには都で流行りの芝居を観ることもなければ、素敵なレストランへ行けるはずもないからだ。

 王子のくせにやたらと街の情報にまで詳しいのは、こうして頻繁にお忍びで抜け出しているからなのだろう。

 魔女であるエレンよりも、王子であるカイの方がよほど自由に見えた。


「……王子である以上、国に有益である方と結婚するのはあるべき姿だと思います」


 薬草茶をちびちびと飲みながら、カイは長いまつげを羽のように伏せる。


「しかし私が愛せない以上、その方が幸せになれるとは思えないのです」


 そうかもしれない。

 お互い納得ずくで結婚したとしても、いずれは何かの無理がくるのではないか。

 結婚とは、人生を繋いでしまうものでもある。


「そう怖がるものでもないさ」


 苦さを取り戻した薬草茶を口に含んで、エレンは静かに飲み干した。


「よほど曲がった運命でなければ、ちゃんと運命の相手に出会えるものだよ。政略であっても、恋愛であっても、赤い糸はちゃんと誰もが持っているよ」


 気がつくと、青い瞳がエレンを見つめている。

 不安そうな顔に少しだけ微笑んでやる。


「大丈夫。幸せになろうとすれば誰でも幸せになれるさ。どんな形であろうと幸せの形は色々あるんだ。あなたの形を見つければいいのさ」


「魔女殿……」


「さぁ、日が暮れるよ。もうお帰り」


 少しだけ不安を削がれたような白皙の美貌が綻んだので、エレンは今日のお茶会の閉会を告げた。


 帰り際、いつも長々と辞去の挨拶をするカイがぽつりとだけ口を開いた。


「今度、城で舞踏会を開くのです」


「舞踏会? そりゃ豪儀だねぇ」


 エレンの感想に苦笑したが、カイはすぐに静かな青の瞳に戻った。


「ええ。私の結婚相手を探すのだとか。父と母の提案で……」


「そうかい。じゃあ頑張るんだね」


「魔女殿」


 なおも青い双眸が追いかけてくるので、エレンは嫌な予感を先に口にしておいた。


「こんな老婆にドレスなんか贈らないでおくれよ。あたしゃアンタの後をついて回る子守りじゃあないんだよ」


「……バレましたか」


 本気だったのか。相変わらず恐ろしい思考の持ち主だ。

 この老婆の姿で舞踏会に参加するなど滑稽過ぎて笑えない。


「何度も言うけど、あたしゃこの森から出るつもりはないよ。早くアンタの世界にお帰り」


 しっしっと犬でも追い払うようにされたというのに、ようやくカイは笑顔を取り戻した。


「私は諦めませんよ。お年寄りがこのように薄暗い森で一人暮らしはやはり危ない。この説得はまたの機会に」


 微笑みを一つ残して、今日も王子は嵐のように去っていく。

 森に消えていく長身を見送って、エレンは溜息をこぼした。


「……また? もう次はないよ」


 カイ王子の運命の相手はもう決まっているのだ。


 彼が生まれた時に、エレンの師匠がそう占った。

  

 彼の運命のお相手は銀の髪の美しい娘だ。年は18になるだろうか。

 微笑みは大層愛らしく、性格は慎ましいが明るい性格だ。


 彼女は舞踏会で王子と出会い、二人は恋に落ちるだろう。


 エレンは作業台にぽつんと置かれた手紙を思い出す。

 伯父から届いたその手紙には、愛娘が舞踏会に行くので見立てを頼むという旨が書かれていた。


 何度か会ったことのあるあの娘の運命が王子に繋がっているのは知っていた。

 だから、突然ここを訪れたカイになおさら驚いたのだ。

 

 彼は、どう思うのだろう。


 相談役の魔女が運命の相手の縁者と知ったなら。



 目を伏せたまま、エレンはローブを頭から外す。

 

 すると、しわのとれたすんなりとした手が現れる。鼻も口も小さく、なめらかな頬は娘のものだ。顔を上げるとさらさらと長い髪が肩からこぼれおち、少し険のある瞳は新緑色。

 ただ、髪の色だけが老婆の時と同じく真っ白だった。

 白糸のような髪が夕暮れを告げるような風にゆらゆらと揺れるのを見ながら、エレンはまたしても溜息をつく。


「カイはどう思うかな」


 この、まだ年若い魔女が王子の自分に恋をしているなどと知ったなら。




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