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余命半年  作者: leon
2/9

事実の後

さきほどまで胸ポッケにしまっていたイヤホンを再度取り付けながら家までの帰路につく。

まぁ『家』と言っても私のお父さんのお姉さん、柏木さんの家のことだけど。

両親が亡くなったとき、私はまだ11歳。祖父母達はみんな両親が亡くなる前に既に旅立っている。

当然1人暮らしなんてできない。そんな私を快く引き取ってくれた一家が柏木家。

同い年の従姉も居て、今は同じ高校に通っている。1つ年下の優しい弟くんもいる。彼も今年私たちと同じ高校に入学した。

家族を失ったからって自分を不幸だとは思っていない。私は十分幸せ者だ。


信号が赤になったので一度歩みを止める。

その時近くにいた学生が電話をしている姿を見て、携帯の存在を完全に忘れていたことに気づいた。

慌てて鞄の中から携帯を取り出す。

メールが4件。着信が5件。

病院に来たときから携帯をサイレントマナーにしていたから全然気がつかなかった。

メールのうち3件は宣伝メールだった。

残りのメールと着信は同じ人物から。


柏木亜美。私の大切な従姉の名前。


イヤホンを片方取って携帯を耳に当てる。

たった1回のコールで電話は通じた。



「もしもし美嘉!?今どこにいる!?」


「病院出てすぐの信号。今家に帰ってる途中だよ。」


「・・・」


「・・・」


「分かった。早く帰ってきなよって母さんが言ってたからね。」


「うん。まっすぐ帰るよ。」


「家で待ってるからね。それじゃあ、バイバイ。」


「うん。バイバイ。」



そう言って私は電話を切った。

いつも電話を切る前に言う『バイバイ』が何故か死の言葉に聞こえて少しだけ震えた。

今の亜美の様子からすると、もう柏木家に私の病気のことは伝わったのだろう。

きっと色々と聞かれる。今からそれを考えると気分が重くなる。

ていうか少し胃の奥がムカムカしてきた。

きっと体の方は今の現状が辛くてツラくて仕方ないのかな。

まっすぐ家に帰るとは言ったけど何か胃に放り込みたい。


ピッポ


信号が青に変わる。ピッポ、ピッポ、と電子音が道路に響き渡る。

今まで止まることなく走っていた車達が道を開けて、私は横断歩道を淡々と歩く。

これもいつもと同じ道と風景。

なのに私はまるで死後の世界へ続いている道を歩いているように感じた。



「これが死後の世界とか・・・ちょっと笑えるかも。」



信号を渡り終えて目の前にあったのはみんな知っているマク○ナルド。


丁度良い。シェイクでも買って飲みながら帰ろう。

主に若い人でいっぱいのマク○ナルド・・・が、店内は意外に客がいない・・・ってよく見たら私しかお客いない。



「いらっしゃいませ・・・あっ、佐藤ちゃん!」


「あ、吉尾さん久しぶりー。」



カウンターに居たのは中学の時の同級生の吉尾茜ちゃん。

同じ部活に入っていたので仲はまぁまぁ良い。



「シェイクのチョコをMで。」


「かしこまりました~190円になります。」



財布から100円玉と50円玉に、10円玉を4つ取り出す。

お金を丁度きっかり払えたときのスッキリした気分を久しぶりに味わった。



「お待たせしましたーシェイクになります。」


「ありがとう。今日はお客さん少ない日?」


「ん?そんなことないよー。佐藤ちゃんが来るちょっと前までお客さんたくさんいたよー。」


「え”」



カエルがつぶれたみたいな声が出てしまった。

なんだかまるで本当にマックが死後の世界みたいじゃんと苦笑い。

いや、私が来る前にお客さんみんな引き上げるとか、死を伝えられた後ではちょっと怖い。

吉尾さんが差し出したシェイクには既にストローが。さすが吉尾さんは分かっていらっしゃる。



「じゃあバイト頑張ってね。」


「は~い、ありがとうございました~。」



マックを出てシェイクを飲みながら少し早足で家を目指す。

先生はどこまで今日のことを伝えたんだろうか。

もし、もし、私の余命のことまで伝えられていたら、家に帰ってそれからどうすればいい?

亜美達はいったいどんな顔をする?この事実をどうするのだろう。

口に含んだシェイクを疑問と一緒に飲み下す。

ゆっくりと喉を通る独特の感じが心地よかった。



更新はノロマです。ノロマです。

マックではシェイクのチョコが一番好きです。



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