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余命半年  作者: leon
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余命宣告

「あなたの余命は・・・あと、半年、です。」



目の前に居る医者が深刻そうな顔で告げた事実。

不思議と心は落ち着いていた。



私の名前は佐藤美嘉です。

つい宣告、医者から余命半年を宣言されてしまった。

実はちょうど2ヶ月くらい前から体の調子が悪く、ほっとけばいつもみたいに治るやーと思って病院には行かなかった。

でもさすがの2ヶ月もたったのに体調は戻らず、今日はちょっと検査をして薬でも貰ったらそれで終わるつもりだったのに・・・

いきなりの余命宣告。

私がかかった病気に対抗できる薬は開発されておらず、しかも発症する確率の低さが異常でまともに研究も進んでいない。

正式な病名は決まっていないので知っている医者の間では「内臓衰弱病」と呼ばれているそう。

症状はその名の通り、どんどん体の器官が弱っていって最後はまるで人形のネジが切れたかのように息を引き取る。

医者が淡々と口に出すそんな説明を私は無表情に聞き流している。



「君・・・怖くないんですか?」



唐突に医者に尋ねられた私はハッとなって現実に引き戻される。

大事なことだろうからちゃんと話は聞いておかないといけないのに。

すいません、と深々と頭を下げて詫びる。すると医者はもっと困惑した表情になった。

そんな医者の態度に今度は私が困惑した。

すると医者はおずおずと言葉を選びながら



「前の患者さんとは・・・全然反応が違うから・・・」



あぁ、そういうことかと私は一人で勝手に合点した。

でもさすがの私もいきなりの余命宣告で表には出さないけど少し混乱はしている。表には出さないけど。

宣告された瞬間、恐ろしいくらいの寒気と息苦しさを感じた。

でもほんの、ほんの一瞬です。

頭は混乱している、体も少し震えている、でも心だけはいつもと同じように落ち着いたままだった。

むしろ落ち着きすぎて私自身どうすればいいのか分からない。

それを正直に医者に言うと彼は少し歪めていた顔をさらに悲痛に歪めてしまう。



「この病気は原因がはっきりしなくて・・・病原体のウイルスも見つからないし、できるかぎりの治療をほどこしても病の進行を止めることはできませんでした。前にこの病気にかかったのは30歳過ぎの男性でしたが、彼は自殺してしまいました。」


確定している死と徐々に近づいてくるタイムリミット。

普通に考えれば気が狂ってしまうかもしれない。

でもさすがに自殺なんて最後を迎えてよかったのかな。

でもそれは彼にとっての冒涜でしかないでしょう。

彼について私は何かを言える立場でもないし。



「明日から入院してください。なんとしてでも原因を解明して君を救いたいんです。君まで、逝かれてしまったら・・・」



そう言って私の手に自分の手を重ねてくる医者。

震えを悟られないようにきつく拳を握って爪を肌に食い込ませた。

実はこの医者、私の両親の担当医だった神代知幸という。

だが両親は彼らの健闘も虚しく5年ほど前に一足先に空の向こうへと旅立ってしまった。

私の手に重ねられた大きな手は少しだけ温かい。

その温もりのせいか少しだけ鼻の奥がツーンとした。

両親が居なくなってから現実的になり、自分でも感心してしまうくらいに何事にも動じなくなったなぁと思っていたけどまだまだの様子。

するとそっと神代先生の手が離れていき、先程の検査内容の書類を看護師に渡しながら口を開く。



「それじゃあ明日の朝9時に荷物をまとめて病院の裏口に来てくれ。君は今、従姉さんの家でお世話になってるんだよね?今日の事は私の方から連絡を入れておくから別室で待っててくれ。」



いつも仕事中の神代先生は敬語を使っているのに、気づいたら使っていない。

まぁその方が話しやすいので私は全然構わないけれど、隣の看護師さんちょっとビックリしてる。

その話を最後に私は看護師さんに連れられて近くの小さな別室に入った。



電話と明日の入院の手続きが終わったら呼びに来るからね、と言って看護師さんは部屋から出て行った。

ここの部屋には何回か入ったことがある。

インフルエンザの検査をした後に結果が出るまで待機する部屋だ。

あの綿棒が鼻の奥につっこまれたときの気持ち悪さは異常である。

なにはともあれ、とりあえず暇だ。

明日からの生活の事とか、いまお世話になっている従姉の家族のことだとか真剣に考えなくちゃいけないことは山ほどある。

でももう今日は疲れて力が出ない。頭が回らない。

おもむろに鞄からiPodを取り出してイヤホンを耳に付ける。ボタンを押すと音楽が流れる。

もう何百回も聞いたお気に入りの曲、友達がカラオケで歌っていた曲、ついこの間入れたばかりの曲。

次から次へとジャンルを問わず流れてくる曲で完全に自分の世界に入っていた私はメールの着信に気づけなかった。


病院に来てから早2時間が経過した。

今はロビーで名前が呼ばれるのを今か今かと待っている最中だ。

いつ呼ばれても大丈夫なようにイヤホンは片方外してある。

そして耳はカウンターに注意深く傾けながらボーッとどこかを見ていた。

たまに誰かが微動だにもしない私をチラッと見たりしてたまに視線があう。

実は私は人間観察が好きだったりして、あの人の足細いなぁーとか、あっ同じクラスのあの子に雰囲気似てるなぁーとか割とどうでもいいことを考えている。

あ、今の人すごい美人、髪のウェーブなんか良い感じ。


「佐藤さーん。佐藤美嘉さーん。」


カウンターから女の人の声が聞こえてきた。やっと私の番が来たか・・・

一度イヤホンを胸ポッケにしまってカウンターまで足を運ぶ。

カウンターに着くと女の人から薬の説明を受けた。

正直言って私には何にも理解できなかった。だって専門用語だらけだし。


「明日から一緒にがんばろうね。」


会計を終えて最後に彼女はすこし微笑んでそう言ってくれた。

私だってこのまま何もせずに死ぬつもりはさらさらない。

せめて病気の原因だけでも神代先生達と一緒に見つけてやる。

私も「よろしくお願いします。」と頭を下げて病院を後にした。



前に書いていた小説がパソの故障と共に全部消えてしまいましたorz

この小説はこの前夢で私が余命半年を宣告されたのをきっかけに書きました。


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