01-0004.バレてますよぉ
「僕が押さえているので今です、トウコさん」
「わわわ、えい!」
メキョッ
トウコさんが特殊警棒を振るうと、ゴブリンの頭がスプラッターになり、トウコさんが光に包まれる。
「なるほど、こうなっているのか綺麗だな」
「はい。綺麗ですね」
光に包まれるトウコさんを二人で眺めているとステータスカードが現れリコさんがそれを拾う。
「トウコお嬢様これを、ん?」
「どうしました?」
「いや、数値が私とは違うんだなと」
「え、僕が見ても大丈夫ですか?」
とっさに言葉に出たが、数値を見せてくださいは、女性に対してスリーサイズを聞くみたいで、失礼になってしまうのだろうか。
リコがトウコの顔を窺う。
「大丈夫ですよぉ」
良かった。どうやら問題ないみたいだ。
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松元燈子 18歳♀
ジョブ:探索者(01)
『ダンジョンゲート』
『LUC小アップ』
STR 8 INT 10
VIT 4 MND 7
DEX 3 CHR 8
AGI 3 LUC 50+10
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年上…だと…?いや、あのメロンだと、いや…顔と身長が…。
「で、これが私のステータスだ」
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御劔里琴 23歳♀
ジョブ:探索者(01)
『ダンジョンゲート』
『LUC小アップ』
STR 10 INT 5
VIT 9 MND 9
DEX 10 CHR 5
AGI 10 LUC 10+10
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いやいやいや、探索者レベル3の自分よりも全然強い。
「リコさんって格闘技か何かやってるんですか?」
「ああ、当然だ。お嬢様の護衛だからな」
「リコさんは凄いんですよ。えっへん!」
自分の事のように胸を張るトウコさんのメロンに一瞬目を奪われてしまうが、気づかれてはいないだろう、不可抗力だ。
「これが僕の探索者レベル3のステータスです。LUC以外が2ずつ上昇しています」
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時園実 17歳♂
ジョブ:探索者(03)
『ダンジョンゲート』
『LUC小アップ』
短剣使い(01)
STR 7 INT 7
VIT 8 MND 7
DEX 6 CHR 7
AGI 8 LUC 75+10
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「ハハハ、まだまだ鍛錬が足りてないようだな!」
「だ、大丈夫ですよぉ。リコさんはちょっと参考になりませんからぁ」
リコさんにバシバシと背中を叩かれながら、何故か顔を赤らめモジモジしているトウコさんに励まされる。
「リコさん。LUCは多分固定値でこれ以上は上がらなさそうですけど、リコさんの低すぎるLUCで今まで大丈夫でしたか?」
リコさんのLUCは脅威の10だ。反撃するならココだろう。
「ぐぅぅ…やっぱりかぁ…」
リコさんが項垂れる。LUCが低い何かがあったのだろう。
哀愁漂うリコさんの肩にそっと手を置く。
「リコさん。小アップがあるなら、きっと大アップもありますよ。LUC大アップのジョブがあるかもしれないのでみんなで探しましょう」
「そ、そうだよな…」
気を取り直したリコさんが質問をしてくる。
「なあ、このダンジョンゲートってのは、どんなスキルなんだ」
「あ、それはですねー。ダンジョンゲート!」
2メートルの黒い壁が目の前に現れる。
「「おおー」」
「どうぞ、黒い壁の中へ」
二人が恐る恐るダンジョンゲートの中へ入り、僕も続く。
「ここは?」
「部屋のすぐ近くですね。あ、この黒い壁に触っておいてください。メッセージが流れます」
「セーフエリアに接続か」
「はい、これでダンジョンゲートが使えるようになります」
二人にダンジョンゲートの説明をしていると、ふと思い出す。
「あー、スキルで思い出しました。特殊警棒で棍使いか棒使いを覚えそうな感じがするんですけど、特殊警棒をお借りしても大丈夫ですか?」
「ああ、良いぞ。確か探索者レベル3で短剣使いを覚えたんだったか」
「そうなんですよ。武器毎にジョブを取得出来そうな気がするんですよね。あ、丁度良い所にゴブリンが」
借りた特殊警棒でゴブリンに殴りかかる。
『 治癒使いを取得しました 』
「あれ、治癒使い?特殊警棒で?」
「なるほど、特殊警棒は鈍器でメイス判定なんだろうな」
「えっ?メイスだと治癒使いなんですか」
「えっ?メイスだと治癒使いだろ」
二人で良く分からない問いかけをしていると、自身ありげにトウコさんが喋りだす。
「海外の小説やゲームの設定で、回復系のジョブは戒律により刃物の所持が禁じられている場合があって、鈍器で敵を殴打していますね。こっちだとパラディンがイメージに近いと思いますぅ。臆することなく前線に立ち、味方を回復し鼓舞するとか憧れてしまいますぅ」
ふんすふんす!
興奮気味にトウコが鼻を鳴らす。
「えーっと、治癒使いはトウコさんに似合いそうで良い感じだと思いますよ!」
「えへへ、そんな事ないですよぉ~」
憧れてるなら治癒使いをトウコさんにお勧めするのが正解だろう。
「なあ、ミノル。素手で倒すとモンクが出そうじゃないか?」
「ありえそうな設定ですねー」
素手でゴブリンに殴りかかるが、やはり一撃では無理か。
反撃のナイフ攻撃を避けるが、続け様のタックルを食らう。が余りダメージは無い。
探索者レベル3だと、もうゴブリンに負ける要素は無さそうだ。
同じく素手でゴブリンを殴ったリコさんが止めを刺す。がアナウンスは流れない。
「あー、僕が止めを刺さないと駄目なのかもしれないですね」
次のゴブリンは僕の渾身の右ストレートで止めを刺す。
『 拳使いを取得しました 』
「モンクではなくて、拳使いですね。スキルは『 タウント 』と『 AGI小アップ 』ですかー」
「私向きっぽいな」
段々とジョブ探しが楽しくなってきた。
「リコさん。他に武器とか隠し持って無いですか?」
「無いなぁ、特殊警棒のみだ。あー、拳がいけるなら蹴りも有りなんじゃないか」
「あー、ありそう!そうだ最初にゴブリンを倒した時に石で倒したんですけど、何もジョブは取得してないんですよ。でも石を投げてゴブリンを倒した事は、まだ無いんですよね」
「なるほど、投擲かー。石じゃなくてナイフでもいけそうだな。お、丁度良い所にゴブリンが」
丁度良い所に現れたゴブリンを蹴り倒す。
『 蹴り使いを取得しました 』
「やりましたよ、蹴り使いが出ましたー。スキルは『 トルネードキック 』と『 STR小アップ 』です!」
「うーん。拳使いも良いが、STR小アップの蹴り使いも良さそうだしトルネードキックの響きが良い。お、丁度良い所にゴブリンが」
丁度良い所に現れたゴブリンにナイフを投げて倒す。
『 投擲使いを取得しました 』
「投擲使いも出ました!スキルは『 パワースロー 』と『 DEX小アップ 』ですねー」
「投擲使いは、私向きじゃ無いような気がするなー。やはり拳使いか蹴り使いが合っているかな」
「そうなんですねー」
これでジョブは、探索者、治癒使い、短剣使い、拳使い、蹴り使い、投擲使いの6つだ。
6つのジョブが出たけど、まだまだありそうだな。他に何かないかと考え込む。
「ミノルくーん」
「おーい、いくぞー。こっちの道で良いのかー」
「はーい、今行きまーす」
その後も絞め技、投げ技、頭突き、プロレス技と色々試してみたが新しいジョブを取得する事は無かった。
「これは、もしかして…、そうなのか…?」
道中で見覚えがある物に遭遇してしまう。
「そうですね…。誰かが…、ここで亡くなったみたいですね…」
「女性物のスポーツウェアが二着に…、ショルダータイプのボトルカバーに入った水筒が二つか…」
トウコさんを見ると、両手を合わせ黙祷をしている。
「このままにしていると、ダンジョンに吸収されてしまうだけなので、身元を証明出来る物がないか調べますね」
調べると上着に財布が入っていて、中を開けると免許証がそれぞれの財布に入っていた。
「もしダンジョンを出る事が出来れば、遺族の元へ届けてあげたいですね。抵抗があるかもしれませんが、それまでこの水筒も使わせてもらいましょう」
「そうだな」
「ミノルくんに出会えなかったら、私とリコさんもこうなっていたかもしれないんですね」
僕達は軽く黙祷をして亡くなった二人の冥福を祈りつつ先へ進む。
「そこの角を曲がると広場になっていて、斧と防具を身に着けたゴブリンが居ます。ってそういえば」
上り階段がある広場まで辿り着くが、ある事に気がつく。
「二人ってレベルは、まだ上がってないですよね?」
二人がステータスカードを確認する。
「そうだな、上がってないな」
「上がってないですぅ」
むむ。ここまで十匹以上のゴブリンを倒しているが倒したのは殆ど僕だ。
「あー。多分ですが、止めを刺した人か、ダメージを与えた人にしか経験値が入ってない可能性があります。もっと早くに気がつくべきでした。申し訳ないです」
「気にするな。分からない事だらけだからな」
「そうですよぉ。ミノルくんが居なかったら、もっと分からなかったですよぉ」
二人に励まされながら腕時計を見ると、もうお昼を過ぎている。
「この手前の小部屋でダンジョンゲートが使えるので、一旦最初の部屋に戻りましょうか。リコさんダンジョンゲートをお願いします。軽く眩暈がすると思うので気をつけてください」
「ここで使えるのか。分かった、ダンジョンゲート!」
2メートルの黒い壁が現れたので中に入って部屋に戻る。
「あ、リコさん。そこの水を飲むとダンジョンゲートで減った分の魔力が回復しますよー」
「さんきゅー」
二人のレベルを効率良く上げる為に考えていた事を提案してみる。
「さてと二人のレベルを効率良く上げたいので、二手に分かれようと思うのですが、リコさんのステータスだと万が一にもゴブリンに負けないので一人で、トウコさんに何かがあったら困りますので、お供に僕がで考えているんですが、大丈夫ですか?」
「そうなるよなー。あー、ミノル。ちょっと良いか」
リコさんに肩を組まれ部屋の隅に連れていかれる。香水の匂いが鼻を擽り少しドキドキする。
「ど、どうしました?」
「あー。えーっと、何て伝えれば良いか。バレてるぞ」
「?」
「ミノルがトウコお嬢様の胸をチラチラと見ているのを、お嬢様は気がついている」
なん…だと…?
いや…まさか…そんな…。
「女性はみんな気がつくから気をつけろよ」
「はい…」
とぼとぼと囲炉裏前に戻ると不思議そうな顔をしたトウコさんが訪ねてくる。
「二人で何のお話しをしていたんですかぁ?」
「あー、お嬢様の事を頼むって事を」
「はい…」
「?」
「少ないですけど、どうぞ食べてください」
「ありがとうございますぅ?」
不思議そうな顔のトウコさんと、リコさんに栄養バーを一本ずつ差し出す。
「なぁ、ミノル。何匹のゴブリンを倒したらレベルが上がったのか覚えているか?」
「えーっと、大体の数ですが、探索者レベル1から2で十匹、2から3で三十匹ぐらいでした」
「レベル3まで四十匹かー。結構大変だな」
「そうなんですよー。この階層だとレベル3にならないのかと思いましたよ」
「軽く走ったら広場まで30分ぐらいで行けそうだから2週で四十匹無理かな」
結構な距離があるような気がするけど大丈夫なんだろうか。
準備運動をするリコさんの隣で、両手で栄養バーを持ち、小さな口で食べているトウコさんが小動物みたいで可愛い。
「あとゴブリンナイフカードが16枚あるので、僕とリコさんで8枚ずつにしましょう。特殊警棒はトウコさんが持っていて大丈夫ですよね?」
「トウコお嬢様に刃物はまだ駄目だな。慣れるまで持たせたら危なそうだ。特殊警棒で良いよ」
「僕達は最初の丁字路を右に行くので、スタートから1時間後ぐらいで、部屋に集合しましょうか」
「はぁーい。よろしくお願いしますぅ」
トウコさんが食べ終わるのを待って、丁字路まで三人で行く。
「あ、リコさん。腕時計を返しておきます」
「1時間後ぐらいに部屋で集合だな。トウコお嬢様の事は頼んだぞ」
「はい。頼まれました」
「では、行きましょう。トウコさん」
「はぁーい。リコさんも頑張ってくださぁーい」
「はい。お嬢様もどうか気を抜かずに、お願いしますね」
ジョブを探索者から短剣使いに変更して、僕達は丁字路を右へ向かう。
「トウコさん。少し試してみたい事があるんですが、良いですか」
「はぁーい。大丈夫ですよぉ」
「最初にポイズンカットをゴブリンに撃つので、止めはトウコさんがお願いします。これで僕のレベルが上がれば、ダメージを与えれば経験値が入る。僕のレベルが上がらなかったら、止めを刺さないと経験値が入らないで、行けそうな気がするんです」
「了解でーす。止めは任せてください!」
少し進むと、角を曲がってきたゴブリンと目が合う。
「行きます!ポイズンカット!トウコさんどうぞ!」
「わわわ、えい!」
あ、これは当たらない。トウコさんが両目を閉じながら特殊警棒を振ろうとしている。
咄嗟にゴブリンのナイフを叩き落とす。が続け様にゴブリンがトウコさんにタックルを仕掛けてきた。
このパターンは知っているので、ゴブリンとトウコさんの間に割り込む。
「きゃあ」
むにゅ。
背中にゴブリンの衝撃と、お腹に柔らかい物が当たるが、僕は壁だ。何も見ないし感じない。煩悩退散。悪霊退散。
面白かった!
続きが気になるので、また読みたい!
と感じたら
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