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第68筆 万象は目覚め、始動する

◇ ◇ ◇

 

 ──???視点──


 南方大陸、シュルハ法皇国の執務室。


「古き厄災の兆候じゃ。まさか、言い伝えの通りとはのぉ⋯⋯」


 法皇は冒険者ギルドの連絡と、各地を襲った世界同時魔物奔流ワールド・スタンピードに震え上がった。


「六聖神様、生の神様、死の神様よ。我らに希望を示し給え。此度こそ、イカイビトの救いが現実とならんことを⋯⋯」


 法皇は大聖堂に移り、祈りを捧げ始めた。

救世主の到来と、己にも救いの力が宿り、前線に出れることを。



 *



 中央大陸、魔導国家エンシの玉座。


「世界が騒がしい⋯⋯眠れん」


 深夜に目覚め、玉座に腰掛けた魔導王は呟く。


「抑制の楔──抜けかけている。守護の再構築が、間に合わん」


 彼が世界を守るためにかけた大結界魔法が、また一つ破壊されていった。


 *


 同大陸のある道場。


 神棚の前に、若き青年が正座姿で啓示を受けていた。


「──はっ、“剣祖”様。必ずや、おれの代でイカイビトと共に邪神を討ち滅ぼします」


 彼こそ、皆がよく知る剣聖をも超えた世界最高の剣技を誇る者、“剣神聖(てんけんせい)”である。


 襲名して数年の若き天剣聖は、大きく震える剣を見て呟く。


「“聖剣”が騒いでやがる。イカイビトと邪神復活⋯⋯世界が動き始めたんだな。ワクワクして眠れねえぜ」


 彼は薄く笑い、聖剣を握って素振りの鍛錬を始めた。





 東の果ての島国は、高瑞津国(たかみづのくに)


 将軍が戦の昂り冷めぬまま、揺らめく行灯(あんどん)の炎に照らされ、手紙を書いていた。



───────────────────────

 拝啓、冒険者ギルド本部へ


貴殿らの努力のおかげで、わが国は助かった。感謝申し上げる。


こちらの国でも海洋生物と鬼たちの凶暴化が見られたが、静めることができた。

 

世界は暗雲へ曇り始めた。

さりとて、希望の炎は消えぬ。偉大なる建国者にして先代イカイビト様は、邪神に弱点を追加した。


 我々は諦めず、抗い続ける。共に精進しよう


 将軍

───────────────────────


 手紙を折り、将軍は八咫烏に託し、飛ばした。世界の真の平和の到来を勝ち取るために。





 とある辺境の島。


 昨夜、雅臣とミューリエを襲った“黒衣の男”がビーチチェアでくつろぎながら、世界各地で揺らぐ反応を見てあざ笑う。


「クハハハハハッ! 塞は投げられた。わが計画は始まったばかりよ。人よ、魔よ、世界で踊れ」


 影と同化し、にゅるりと消えていった。



 ◇ ◇ ◇



 場所は戻って、冒険者ギルド本部の入口前。


 月が煌めく夜中に、本部総帥(グランドマスター)と秘書ミトハの姿があった。


「ミトハ、これをやってくれ。シャルトゥワ村の全記録の収集と、歴代イカイビトや雅臣に関する全情報の開示請求をせよ」


「承知しました」


 彼女は急いで手帳に書き留めた。ハルトリッヒは呟く。


「⋯⋯始まりの地は変われど、やはり導かれるのは“あの意志”か」


 歴代イカイビトを導いてきた“大元の存在”がいることに、彼は気付いていた。


「あの青年の前に、全てが交差し始めている。今度こそ⋯⋯失わぬために動こう」


 背中に搭載したジェットパックへ魔力を圧縮。両手からも魔力の奔流を噴出し、戦闘機のような動きで飛び立った。


 目指すはシャルトゥワ村へ。



【次回予告】

第69筆 拳闘士は名乗らずに去る 

《9月12日(金)19時10分》更新致します。

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