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第37筆 三年の軌跡、神々の筋肉に挑む

【ステージ2:地球系トレーニング】


 次なる訓練場は、己の根幹に最も近い世界群。

地球と、その遠き衛星たち──天王星・海王星・冥王星。


 ここでは、神力と肉体の制御、精神との調和が試される。



● 地球ゾーン:片足バーピー with 幻術影分身〈機動・対多戦闘対応〉


 重力・酸素・気温、全てが馴染み深い地球環境。

だが、俺がこの場に求めるのは、「戦場再現」。


「己の影を越えろ──模擬戦は自分自身が相手だ」



 片足立ちの状態からバーピー──ジャンプ・着地・腕立ての連続動作を繰り返す。

 さらに、己の神力で生み出した幻術影分身が周囲を囲む。


『自分の影すら⋯⋯斬れ』


 剣神の教えで邪念が両断される。

 影分身は攻撃こそしないが、自分のわずかな動きの狂いを即座に模倣する。

 つまり、精度の低いフォームをとれば、影は乱れ、その誤差が即座に可視化される。


 片足での不安定な運動は、戦場での「片足負傷時」や「不安定地形」での戦闘の想定でもある。


 己への挑戦は止めない、止まらない。



■ 天王星・海王星ゾーン:浮遊姿勢の体幹トレーニング〈神力反発制御〉


 次は天王星と海王星を再現した、浮遊重力域。


 この空間では重力と反重力が交差し、身体がゆっくりと浮き上がりながら引き戻される現象が起きている。


「力を放つな……制御しろ。神力は意志の延長だ」



 空中に浮いたまま、一定の姿勢を保ち続ける。

 それは腕を広げ、片膝を引き、胸を張る──まるで舞いの型のような静止姿勢。


『⋯⋯力を支配するには、流れを⋯⋯視よ』


 念描神ザフィリオンの教えを、浸透させる。

 この状態でのわずかな神力の流出が、浮遊を崩す。つまり「筋力+神力制御」の極限トレーニング。


 体幹の揺らぎが姿勢を崩し、神力の暴走を招く。



● 冥王星ゾーン:静の瞑想と微動〈精神/因果の糸を整える〉


 最果ての小天体・冥王星。

 世界の境界を象徴する空間は、光の届かない静寂と冷気に包まれている。


 ここでの修行は、動ではなく“微動”──精神と神性の微細なノイズを整える儀式だ。


 胡座をかき、目を閉じ、微細に首・指・背筋を調整し続ける。

 一見静止しているが、わが内面では神経の調律が続いている。


「ここが乱れていれば、剣の冴えも鈍る⋯⋯」


『打ち据える者、まず己を()ち据えるっしょ』


 鎚神ララたんの教えにより、魂が鍛錬される音が聞こえてくる。

 この空間は精神の揺れを因果の糸で可視化し、微弱な不調も即座に浮かび上がる。

 すべてを整えたとき、ようやく冥王星ゾーンは終わりを告げるのだ。



 惑星のもたらす訓練は、単なる肉体強化に留まらない。

 肉体・神力・精神──三種を整えることで、“世界に抗う武”の礎を固めていく。


「ステージ2⋯⋯完了。次は、巨星が待ってる──」



【ステージ3:巨星トレーニング】


 惑星系最終段階は、巨大質量を持つ木星と土星。


 その場に立つだけで、全身が圧縮されるような“星の重み”を感じる空間。

 ここはもはや筋肉ではなく、神経と意志が試される領域である。




● 土星ゾーン:惑星環を模した多重負荷ジャンプ〈空間制御・跳躍強化〉


 土星の周囲には、浮遊するリング状の重力障壁がいくつも巡っている。

 これらはすべて、自分の跳躍力・脚力・空中制御力を計測するために配置されたもの。


「踏み込む前に、跳ぶ理由を問え」


 俺は、重力が変動する足場から、何重にも浮かぶ惑星環へと跳躍する。

 その間、各環に重力・風圧・神力干渉が加わるため、単なるジャンプでは届かない。


『雅臣、多重の動作を一点に収束しろよ』


 槍神ガラハッドの教えが貫く勇気をくれる。

 空間把握、反応速度、瞬時の姿勢制御──すべてが求められる。着地すらすべての力を“突き”へ変えていく。


「無傷での着地、完了っと」


 そして、跳躍のたびに意識する。

 “戦場では、跳ぶことは逃げではなく、次の攻撃の起点だ”ということを。



● 木星ゾーン:マッハ速度制限下での超低速筋収縮〈全身制動訓練〉


 木星圏では、自動的に自分の肉体へ、速度制限の封印がかけられる。

 本来のスピード──マッハ百の神速でも、ここでは一切真価を発揮できない。


「速く動けるからこそ、遅く動ける者であれ」


 動作は一回一分をかけて行う超低速。


 腕を前に突き出す。

 わずか十センチを動かすのに十秒──いや、二十秒。筋肉が悲鳴を上げる。骨が軋む。

 しかし、その極限の制動が、一太刀に“重さ”と“説得力”を与えるのだ。


『力とは、耐え、溜め、断つもの』


 斧神グレン・ブラードの教えが、魂を揺さぶる。

 このトレーニングは、まさに神の動作速度を人間の精度で操るための試練である。


 やがて肉体や神経、精神も、じれったさと超重圧に限界を迎える。


 だが、俺は剣を手に取る。


「⋯⋯この身、この意志。すべてはあの斬撃に繋がる」


 朝ルーティンの仕上げは近い。

【次回予告】

第38筆 三年と幾日、世界を救う者の姿

《8月7日(木)19時10分》更新致します

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