第1筆 血の個展と、星の呼び声
指輪物語に並ぶ物語を目指す。
これはただのファンタジーではありません。
万象を描き、魂を削り、世界の理を編む物語です。
異世界ファンタジーの、その先へ。
今にして思えば──あの日、俺は絵を通じて世界を知り、宇宙を救い、そして両の腕を失った。
だが、悔いや恨みはない。
〘画竜点睛〙へ導かれたその先に、守りたかったものがあったのだから。
◇ ◇ ◇
今となっては笑い話だが──
「あいつら、今日は誰も来てくれなかったか……。凛花は“塾がある”って言ってたけど、来てくれると思ってたのに……」
今日は、俺の絵画個展の最終日だった。
開催初日から昨日まで、喧騒と満員御礼が嘘だったかのように、信じられない光景が広がっていた。
「誰もいない⋯⋯」
俺が主宰する絵画教室の生徒たちが、珍しく来なかった。
特にあの子──“天木凛花”。
「塾で来られないかも」と言っていたが、彼女なら“何かを感じて”来てくれる気がしていた。
(⋯⋯いや、何を期待してるんだ、俺は。現実から逃げるな)
会場は静寂に包まれ、がらんどうな状態。
今日はなぜか、来場者ゼロだ。
「こんなことってある?」と、思わず声に出した。
いや、声に出すことで、まだ現実の光景じゃないと自分に言い聞かせているのかもしれなかった。
静まり返った空間で、壁にかかった絵たちがまるで俺をあざ笑うように見え、思わず目を逸らす。
スノードロップ──「あなたの死を望みます」
イトスギ──「哀悼」
イチイ──「死」
そんな花々を描いた三点の絵が、なぜか今日はかなり不吉な花言葉ばかり思いつく。
「──まさか、テロの影響か?」
昨日起きた隣県の爆破事件。犯人はまだ捕まっていないと聞く。それと俺の絵が、関係あるわけが──
「⋯⋯もうこんな時間か。帰る準備をしよう」
展示作品を搬出する時間になった。
金木犀の絵に手をかけた、その瞬間──。
背後で「ドンッ!」という破裂音とともに、バラの花を描いたキャンバスは激しく裂け、黒い巨体が乱暴に姿を現した。
「え、だれ⋯⋯?」
甲高い音と共に胸へ衝撃が走り、ワイシャツに赤黒い染みがじわりと広がっていく。その激痛に思わず叫んだ。
「いっ、あぁァァーー!!?」
目の前の男は冷たい笑みを浮かべて、奇妙な銃らしき武器を構えていた。
その背後からは、無表情な武装集団。 銃を構え、絵を破りながら、周囲を取り囲んでいった。
「なぜ、俺が⋯⋯?」
恐怖が胸を締めつけ、冷や汗が止まらない。
「俺たちが誰か、分かるよな?」
胸元の紋章と武器で察する。
「サルヴェイレス⋯⋯世界的テロ組織⋯⋯!」
幼少期に俺を拐って以降、事あるごとに付け狙う──因縁のある組織だ。
「絵に“魂を宿す画家”か⋯⋯。見れば見るほど、気に入らんな⋯⋯!」
「宗教を超えて人を動かすなど、もはや異端そのもの」
「この絵だ。──この色、この筆跡、希望のにおいがする」
銃口を向けたのは、太陽を描いた宇宙の絵。即座に乱射し、徹底的に壊すテロリストたち。
「作品を、絵を壊すなッ!」
「ふん、お前の描く“希望”は、我らの計画にとって最悪の毒だ」
「“象徴”など、消してしまえ。お前の存在そのものが、我らの障害である」
更に包囲網が強まり、身動きが取れなくなる。息は荒れ、胸元の出血が止まらない。
「てめぇの絵のせいで、数百人も異能者が生まれた。我らが同胞も何人殺されたことか⋯⋯!」
「侵略者なんだから、倒されて当然だ。俺の絵にそんな力は──無いはず」
多くの購入者から、異能力に目覚めた話を思い出す。顧客の中には海の絵を迎え入れ、水の異能を使いこなすサーファーがいる。
俺は若き天才画家と呼ばれてるだけ。きっと全部、偶然だと思う。
「そのうえ神社の跡取りとはな⋯⋯まったく、不都合だらけだよ、雅臣くん」
「──人類は、再描画されねばならんのだ」
全員が口をそろえて言い放つ。
「はぁ? アンタらを倒すため、社会的な絵を沢山描いて、撲滅活動を推進したからな。さっさとくたばれ!」
「黙れ。世界は“オマエの不在”を望んでいる」
銃口から禍々しい光が唸り声を上げる。今日に限って、防弾インナーや護身用ミニロボットも忘れてしまった。
(俺の命運も尽きたか⋯⋯)
絶体絶命、諦めかけたその時。
「⋯⋯?」
会場の天井が、一瞬、軋んだような音を立てた。
(今の音は⋯⋯気のせい、じゃない)
「──先生、避けてッ!」
突如、天井が爆ぜ、白い制服の少年少女たちが降下。 剣を抜き、次々に敵へ飛び込んでいく。
その中央にいたのは──!
「凛花ちゃん⋯⋯!? なんで君が武装してるんだ!?」
「説明は後! 雅臣先生、伏せて!」
天木凛花──俺の絵画教室の生徒が、素人離れした剣さばきで敵に斬りかかっていった!
(もしや、その剣術、凛花の実家絡みか!?)
凛花の家が普通じゃないことは、知っていたが──
彼女は身のこなしが鋭く、一振りで敵の光線を跳ね返し、連続斬撃を浴びせていく。
だが、次々と倒れていく仲間と響く銃声。
彼女の一族は、世界を導く日本技術の要だ。その跡継ぎに何かあったら──?
俺は⋯⋯とっさに彼女を庇った。
「雅臣先生ッ!!?」
視界がぼやけ、冷たい闇が迫る中で──
〈⋯⋯まだ終わらせるわけにはいかない!〉
何かが、そう囁いていた。
◇ ◇ ◇
──音も光もない闇。
意識だけがぽつりと浮かび、身体の輪郭すら感じられない。
(⋯⋯まさか、死んだのか。俺は)
その瞬間、光とともに遠くで誰かが名を呼んだ。
──雅臣。
目を開けると、そこは星々が渦を巻く白銀の草原だった。 風がラズベリーの匂いと青臭さを運び、重力の感覚すら薄い。
現実とも幻ともつかないその世界に、白髪と薄紫の瞳が特徴的な、肌の白い少年が立っていた。
「やあ、兄さん。⋯⋯思ったより、ずっと早かったね。僕はビックリしてるよ」
どこか見覚えがあって、懐かしい響きのある声だった。けれど、思い出せない。誰だっけ?
「ここは唯一世界。全次元を繋ぐ“あいだ”に存在する境界の原点──生と死、夢と現、あらゆる始まりと終わりが交錯する場所なんだ」
つまり、なんでもありの場所なのか?
「⋯⋯どうして、俺はここに?」
「君は“まだ終わるには早すぎる”と、強く願った。だから導かれた。だが生き返るには、君自身の力で“始まり”に触れる必要がある」
「始まり⋯⋯?」
少年は静かに空を指差した。遥か上空に、女神のような姿をした光の存在が浮かんでいた。
「かのお方は、“宇宙の創造主”、アステリュア=コスモ。彼女を筆頭とする神々が君の師になる。兄さんは強くなりたい?」
戦争があった幼少期も、さっきの出来事も、もし俺に戦う力があったら──?
「あぁ。俺は強くなりたいっ⋯⋯!」
「良い目だね。だったら、今日から三年、この唯一世界で修行を積めば──君は己の“絵”に宿る本当の“力”を制御可能になるよ」
「修行か⋯⋯」
その言葉に、俺は胸が高鳴る。
脳裏によぎったのは、絶望で叫ぶ凛花の姿。
無残にも壊れていく人々と、守れなかった自分の弱さ。
(──もう二度と、同じことは繰り返さない)
「──三年後に、君が立つ世界が決まる。それが楽園か、地獄かも含めてね」
俺は黙って頷く。
「だから、がんばって。兄さんなら、きっとやり遂げられる。今度こそ──思い出してもらえると、いいな」
覚悟を決め、立ち上がった俺に微笑みかけ、彼は星雲の中へと消えていった。
もう地球へ後戻りなど、出来ないらしい。
「あれ? 全色、新品に補充されてる⋯⋯?」
なぜ俺の画材一式が準備できているのか。どうやってここへ持ち込まれたのか。
名乗らなかったはずの少年に、俺は懐かしさと切なさを感じていた。
──でも、おかしい。俺に⋯⋯弟なんて、いたか?
「ん、紙?」
天からふわりと落ちた手紙に、こう書かれていた。
〈はじまりは一本の剣。剣を統べる神から〉
答えはきっと、この転生準備の旅──最初に出会う“剣の神”が教えてくれる。
握った左手の絵筆が、かすかに震えていた。
まるで、これから描く未来へ──触れているように。
【あとがき】毎日投稿・1日目
2025/7/1(火)19:10 現在、更新
第1筆「血の個展と、星の呼び声」お読みいただき、ありがとうございます。
ここで少しだけ、大切なお知らせと宣言をさせてください。
※1~2分だけ、お時間をください。
★ この作品で、世界を変えにいきます
『彩筆の万象記』は──
僕が「銀河流ライト文芸」というスタイルで描く、叙事詩型ファンタジーです。
これは単なる異世界転生モノではありません。
“準備型転生”という世界初の仕掛け。
──転生前に三年の修行を積む、“やり直し”ではなく“やり遂げる”転生。
目指すのは、千話を超える物語の中で、
「世界に希望を問う」こと。
僕はこの作品で、社会に火を灯す物語の旗手になることを、本気で目指しています。
★ 宣言:僕の野望と目標
まずは書籍化へ
編集者の方々へ、文学とライトノベルの架け橋となる装丁を提案します。
挿絵と表紙絵を手がけるイラストレーターさまへ。
イラスト技術向上が求められる、クリエイター泣かせの描写が複数あります。
一緒に新時代の潮流を作っていきませんか?
──二十年単位の覚悟をもって、お付き合いをお願いします。
5万部突破を初期目標に。
“準備型転生”というジャンルで、有名になります。
次に漫画化。
──継続力と作画力を持つ漫画家さんと、運命の出会いを求めています。
そしてアニメ化。
Amazon Prime Videoで、日本ランキング1位を目指します。
アニメ技術を十年進化させないといけない要素を複数備えております。
関係者の皆様、その時が来たら、共に切磋琢磨しながら歩んでいきましょう。
中間目標:『転スラ』に並び立つ。
異世界転生ファンタジー界の、もうひとつの“柱”になります。
最終目標:シリーズ累計一億部。
トールキン氏やアーシュラ・K・ル=グウィン氏に迫る存在へ。
その先の夢:実写化
『ONE PIECE』実写版に匹敵する、世界規模の映像作品へ。
● あなたの応援が、未来を変える
いいね、感想、ブックマーク──その一つひとつが、
この物語を次の段階へ導く“鍵”になります。
「面白かった」だけでも、心からうれしいです。
その気持ちが、現実と物語をつなぐ光になります。
──そして、雅臣のもとに画材が届くかもしれません。
● 次回予告
第2筆【左手に絵筆、右手に剣を加えよ】
──宇宙創造主の世界での修行、ついに始動。
次回《7月2日(水)19時10分》更新予定です。
また次の一筆でお会いしましょう。