幼女、空から落ちる
___目が覚めたら空の上だった、なんてことある?
そう、にわかには信じ難いものの、私は現在進行形で頭から真っ逆さまに落ちていた。
「うわああああああああ!!誰か助けてええええ!!わたししんじゃうーーー!!」
もはや一周回って頭の中は冷静になってしまう。
それはそれとして、叫ばないと誰も助けに来てもらえないどころか……このままだと数十秒も待たずに地面とごっつんこして頭が破裂する。
そんなグロテスクな光景を道端の人に見せるわけには行かないからこそ必死に叫ぶ。
……なーんて、頭の中では脳天気に分析しているものの、外のわたしはパニクっていた。
それはもう盛大に。
何故なら私は、パパの肩車だけで怖い怖いと叫ぶ高所恐怖症なのだから。
「いやでもほんっっとに!!高所恐怖症のわたしを空に投げ捨てるって大罪なんだからね!?これで落下死とか真面目にヤだよ!頭だけじゃなくて身体もぐっちゃぐちゃになっちゃう!」
なんて最早駄々を捏ねるように叫びながらも、既に地上まであと数秒。
つまり地面と頭がごっつんこするまで秒刻みというわけで___
「いやーーッ!死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう!!誰でもいいからたーすーけーてー!!」
そんな絶叫と共に、あと一秒で地面にぶつかり身体が爆散する未来が見えたその時___
地面にしては柔らかな衝撃がわたしの身体を襲った。
何が起きたのかよく分からず、恐る恐る衝撃に備えるために目を閉じていた瞼を開ける。
そうしてその瞳に映った騎士の鎧を着た若い青年を見たわたしは、目を大きく見開いて動揺する。
なぜなら、それは___
「ふぅ、危なかった……きみ、怪我はないかい?まさか、空から子供が降ってくるなんて思わなかったけど……」
「_____。」
「咄嗟に受け止めたから、もし身体が痛かったら___」
「___……パパ!!!」
思わずそう叫び、そのままぎゅーーーーっと力強く抱きついた。
涙は見せたくなかったから泣きはしなかったけど、少しだけうるっときた。
「………えっ?」
困惑した表情のパパが見れて、わたしは……泣きそうなほど柔らかに微笑んだ。