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人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚  作者: 咲良喜玖
最終章 帰って来た男の大戦略
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第349話 真の計画 レオナ姫皇帝計画

 「ではね。計画がいくつかありましたので、一つずつ。皆さんに紹介します。まず屋台骨になる計画。それが、レオナ姫皇帝計画です」

 「え? わ、私ですか」


 レオナが驚いて首を一瞬びくっとなった。


 「はい。僕は最初からね。あなたが皇帝であるべきだと感じていました。それで、一つだけ。あなたが皇帝ではまずい点がありましたので、そこを直そうと動いていました。それが、あなたが他者を受け付けない所です。それが凄く悪いわけじゃないですが、皇帝になるのであれば、よくありませんね」


 レオナの第一印象からフュンは全てを見抜いていた。

 人を信用していないわけではない。ただ、受け入れていないように見えて、最後の部分に壁がある。

 そんな雰囲気があるように感じていた。

 だから、そこを直さないと皇帝にはなっても苦労するだろうと判断していた。 


 「皇帝となる者が、公平である事は素晴らしい事です。ですが、他者を寄せ付けない雰囲気は頂けない・・・あなたの父であるジャックス陛下には、その心配がない。彼はとても懐が深い人です」


 レックスや、ジュード。

 その他の兄弟たちも頷いていた。


 「私の弱点?・・・ですか?」


 欠点を言われても素直に聞く。

 それがレオナの良さでもある。


 「いえいえ。そこまではいきません。ただね。あなたがあのままの状態では、いけないと思い。僕は選挙を提案しました。これは否が応でも、仲間を作らないと勝っていけません。そして勝った先でも、仲間がいないと困難に立ち向かえません。なので、選挙はピッタリだったでしょ。皆さんも思いますよね」

 

 フュンはどちらかと言うと、レオナよりもその周りの人物たちに話していた。


 「そして見事に成長した。今のあなたなら大丈夫だ。ここにいる人たちをまとめ上げた手腕は素晴らしい。お見事です」

 「あ、ありがとうございます」


 顔を赤くして、レオナは照れていた。


 「僕はタイローさんなら、あなたの心を溶かして、良き師になると思いましたので、先生にしたんですが、レオナさん。タイローさんが先生でよかったですか?」

 「もちろんです。素晴らしい先生で、色々な事を教わりました。ありがとうございます」


 レオナはタイローにも感謝を述べると、タイローは微笑んだだけで無言で返事をした。


 「しかし、タイローさんであった理由はなんでしょうか?」


 レオナが聞いた。


 「ええ。あなたはなんとなく僕らの友ヒルダさんに似ていましてね。正直者で、言わないでもいい事をずけずけと言う感じ。ここが非常に似ているのでね。旦那さんであるタイローさんが一番扱いを知っていると思いましてね。タイローさんがちょうどいいかなって感じです」


 漠然とした理由。

 でもミラクルフィットである。

 実際にレオナの性格が丸くなった。


 「そ、そうなんですか。タイローさん」

 「え。まあ。そうですね。若い頃のヒルダに似ていると言えば、似ていますね・・・」


 フュンと同じ意見だった。


 「奥方様は、どんな方で? き、気になります」

 

 自分と似ていると言われたら気になる。

 レオナは恐る恐る聞いていた。


 「え。それは・・ねえ。フュンさん」


 困ったタイローは、フュンに話を振った。


 「うん。それはですね。彼女は、僕のことを遠慮なく田舎者と言ってきた女性です! 面白い人ですよ。あははは」


 昔話の中でフュンが一番好きなのが、この話である。

 これを言うと、ヒルダが迷惑そうにして困るのと、顔を赤くして照れる反応が楽しいからだ。

 ちょっぴり意地悪が出来るのだ。


 「「「「え!?」」」」 


 皇帝の子供たちとレックスが驚いた。

 そこが面白いところなのかと。フュンのズレた部分がよく分からない。


 「まあ、冗談ですけどね。彼女の今は、とても立派なお母さんですし、それに貴族の一員になってもらいましたしね」


 今、ヒルダはどうしているだろうと思いながら、フュンは話を変えた。


 「まあ、そんな感じで、あなたは心の成長をしました。ここが大きい。そして、ジュード皇子。センシーノ皇子。クラリス皇女。ギャロル皇子。四人の兄弟とも協力が出来た。その上で、僕の娘レベッカ。ダン。そしてタイローさん。彼らとも仲間として動けていたようですしね。もう大丈夫でしょう。皇帝になっても安心です」


 人を使う。

 これは前からできていたと思うが、仲間と共に前へ進む。

 以前のレオナでは、これが出来ないと、フュンが思っていた。

 

 だから成長を促して、彼女の力を高めるための動きを今までしていたのだ。

 ロビンに負けないでここまでやって来られた。

 それが成長の証だ。


 「これが僕の第一計画。レオナ姫皇帝計画です」


 第一段階はこれだった。


 「次に第二段階というか。連動した計画で、ロビン皇子に不満分子を集めてもらう事が、次の段階でした。彼の動きは、反帝国のような動きです。彼はジャックス陛下の考えと真逆の事をしようとしていますから。ですから、反ジャックス派と呼んでもいいのです。彼に集まる人間全てが反ジャックス派としていてもらい。消えてもらいます」


 唐突な冷酷な言葉に皆が唾を飲み込んだ。

 

 フュンの第二計画は、オスロ帝国の不満分子をまとめる事だった。

 ロビンについていく。

 ということは、ジャックスが望む平和とはかけ離れている。

 彼らは貴族社会を目指して、特権を強化。

 イスカルなどの従属国の奴隷化を目指していて、属国からの徴兵を強化しようとしていた。

 

 この意図を感じられるのが、レックスの事だ。

 彼らは結局レックスを使ってはいたが、最後まで使うとは考えていなかったはず。

 彼は、対ジュードのための兵器のような扱いとして終わる事を、フュンは予測していた。



 「実はね。僕と同じ。この動きをしたい人が皇帝の子の中にいましてね。まあ、彼と会話したら、意気投合しまして。彼は全てを僕に任せてくれると言ってくれたので。とことん頑張りましたよ。ええ、それで、彼は補助の方をしてくれていました」

 「あの。彼とは誰ですか」


 クラリスが素朴に聞いた。


 「ええ。シュルツ皇子です」

 「シュルツが?」

 「はい。彼は天才です。全てを計算で動いていました」

 

 シュルツは、一人にしては絶妙なバランスの動きで、世渡りをしていた。

 ボリス家からの自分へのマークがあると、感覚的に察知したシュルツは、兄に票を入れろと誘われた時に、入れますと単純に言った。

 その後に、そのマークが外れた事が感覚的に分かると、自由に行動に出ていた。

 周りを調べて、クロの動きを徹底的に調べると、色々コソコソと兄妹の周りを調べ回っていることに気付いた。

 そして、その中でも興味のない属国組や、ジュードやセンシーノなどの人物たちを調べていない事に気付いた。

 兄弟間で、いるといらないを判断する材料は何だ。

 これを考えると、興味がないとかの性格的問題じゃなくて、血統の方が重要なのではないか。

 シュルツはそこが要因だと気付いたので、自分のミューズスター家の血も取り入れたいのだと思って、ロビンに票を入れるのを最初から除外していた。

 そしてロビンにとって、一番都合の悪い状況を生み出すには、選挙でレオナが勝利する事だとシュルツが考えた。

 マリアに入れることが面白いのもあるが、結局はレオナが勝利した方が良い。

 ここはフュンと同じ考えであった。


 ここで単純にロビンに指図されたとおりの動きをすると。

 レオナが5票で、ロビンが5票で、マリアが3票。

 この結果になり、おそらくロビンとしては痛手とならない。

 なぜなら、この結果だと、決戦投票をやり、あとでレオナが勝つということになり、1位を一度取るやり方になるので、ロビンの心のダメージが少ない。

 そこでシュルツは、ロビンとマリアの同数決着の方が、一番下の妹と同じだと言う立場になり、奴のプライドが最も傷つくはずだと、投票の瞬間にマリアの名前を書いたらしいのだ。

 敵が最も嫌がるを選択したシュルツは、フュン並みに厭らしい性格をしている。


 「てなわけで、彼は、人の心を操って、ロビン皇子を誘導しました。だからロビンはやや強引に僕を殺しに来ましたね。シュルツ皇子の狙い通り。まんまと誘導されています。彼にね」

 

 ロビンは、シュルツに気持ちを操られていた。

 自分が長兄。

 だから兄弟たちを好き勝手して良い。

 そういう風に兄弟たちを下に見ていたのだろうが、ロビンは自分よりも下に怪物がいた事を知っておくべきだった。

 シュルツと言う天才を知るべきだったのだ。

 

 「父。そう言えば、父は胸を撃たれたはずではなかったですか」


 レベッカが聞いた。


 「ええ。撃たれましたよ。ここをズドンってね」


 フュンは自分の胸に手を当てて言っていた。

 『そこを撃たれて、なんでこんなに明るいの』

 皆の気持ちは言わないけど一緒である。


 「それだと、死ぬのでは?」

 「いえいえ。このね。新型の変装道具。シゲノリが開発した人形兵器と言っちゃ変ですが、人形の中に入ったんですよ。僕が僕の人形の中に、すぽっと入っていたんですね」


 フュンは図解で説明をしていた。

 紙に自分の人形の図を書いて説明している。


 「この人形。中の急所の部分に、薄いオランジュウォーカーが入っているんです。これで防御力をあげていまして、彼らに撃たれても、それらが銃弾を防いでいたんですね。僕は撃たれた瞬間に血のりを使って血を吐きました。演技しましたよ。あまりうまくもないのにね」


 演技ならジルバーンとかがいるのに、と思っているフュンもなかなかに上手である。


 「なるほど・・・じゃあ、もしかして陛下も一緒ですか」


 タイローが聞いた。


 「はいそうです。でも陛下は、この子に演じてもらいましてね」


 シゲノリが陛下の振りをして、死んだ。

 それでロビンが、皇帝代理となったのだ。


 「・・・アーリア王。親父は、無事なんですね。どこにいるんですか?」

 「はい。シュルツ皇子の隠れ家にいますよ。今はですね。大人しくしてもらってます。そこに奥さんもいるみたいなんで、ゆっくりしているんじゃないですか」

 「ああ、そうか・・・エリンさんか・・・」


 ジュードは彼女の元に父がいるなら寂しくないかと頷いた。


 「彼は急いで生きすぎましたね・・・もう少しゆっくり生きても良かったでしょうにね」


 フュンは、ロビンが生き急いでいると思っていた。

 兄弟間で協力し合い、長兄である利点を活かして、順当に成長していけば、普通に皇帝になれたというのに、どうしてああなったのか。

 その謎は、解明しようがない。

 人の気持ちは難しいものだ。

 フュンも、自分の弟の気持ちを最後まで理解してあげられなかった。

 なので今回もロビンの気持ちが分からない。

 だから、最後には話そうと思っている。

 理解してあげるためには、話をすることが重要だと、フュンは皆に説明しながら思っていた。


 

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