第305話 フュンの予想
「では皆さん、集まりましたね」
フュンの前にいるのは、ルヴァン大陸に残った仲間たち。
ゼファー。メイファ。タイロー。レベッカ。ダン。サブロウ。シャーロット。
最初に返事をしたのはゼファー。
「殿下。皆で何かする気ですか」
「いえ。僕は共通意識を皆で持とうとね。集まってもらっただけです」
「共通意識ですか」
仲間たちでこれからどう動くのかを相談するために呼んだのだ。
「ではね。僕の予想を発表します。十中八九これでしょう。この国が動きます」
皆の顔を見た。フュンだけが笑顔で皆は真剣である。
「まず、内乱が起きます。これが間違いないです」
「父上。どこで起きるのでしょう。兆しのようなものも見えませんが?」
穏やかな宮中に見えるのに戦いが起こる?
レベッカの質問は当然のものだった。
「ロビン皇子が原因で起きます。彼は上手さがあります。二つの顔を持っています。ウィルベル様と同じですね」
フュンの意見にタイローが賛成する。
「なるほど。やはりそうでしたか。あの強烈な違和感はそういう事でありましたか」
「タイローさんも思いました?」
「ええ。私も彼を見た時にね。あの頃の彼に会っているような感覚になりました」
ウィルベルの手下であったタイローは、本能でロビンを警戒していた。
その分、逆にレオナ姫の事は警戒していない。
なんだか、ヒルダの若い頃の様で素直な性格をしているからだ。
「うんうん。僕とタイローさんがそう感じるならば、間違いない。確実に反乱を起こします。それに彼だけ調べられない。影が入り込めないんですよね。サブロウ」
「おうぞ。奴の屋敷。死角が存在しないぞ。良い配置で兵がいるんだぞ。あれだと、影が中に入っても、身動きが取れないぞ。奴は有能ぞな」
「やはりね。彼の有能さは裏面にある。表でレオナ姫に輝きがある分。彼には裏での闇が深い」
かつてのフュンが苦しんだ部分を、今ロビンが仕掛けてきている。
ナボルにいいように動かれていたその昔。
彼らのおかげで、フュンは大いに後手に回り続けた。
弟を失い、国を失い、帝国が混乱し、最後には師を失った。
だから今回は逆に仕掛ける。
全てを失わないために、皆で裏側もケアをするのだ。
「さて、それで向こうがどういう作戦で来るのかがわかりません。彼は色々と隠すのが上手い。大臣たちの中にも何かを仕込んでいるでしょうし、他の味方もいるかもしれない。それと、あとウィルベル様と同じ思考をしてくるのなら、彼は間違いなく兄妹の誰かを殺すつもりでしょう。ここが肝です」
自分にとって利用価値のない姉弟は殺す。
それが目的なのは間違いない。
「なので、まずレオナ姫。彼女は第一で危険。次に、ジュード皇子。彼も第二で危険。そしてセンシーノ皇子も危険ですね」
「ん? 父上。あいつもですか」
レベッカが聞いた。
「はい。彼は絶対にロビン皇子の味方をしませんからね」
「父上、何故に言い切れますか?」
「それはもちろん。レベッカ。彼の態度を思い出してください」
「・・・まさか」
レベッカも気付いた。
「レオナ姫が、女性だからですか」
「その通り。彼は確実にレオナ姫を応援します。ロビン皇子はありえない」
女好きなセンシーノ。
所構わず話しかける悪癖があるが、絶対的に女性の味方でもある。
レオナを裏切らない味方になるはずなのだ。
「だから気にくわないでしょうね。自分の味方以外はね。それと彼は無能を嫌います。人を小馬鹿にしている節もあるので、危険です。味方になった皇子や皇女も命が危ない。なので、ここも救いたい。それとクロ皇子。これも危険視した方がいい。ですよね。サブロウ」
「おうぞ。あいつ、恐らく影を使えるか。または見えるぞ。気配が分かるのかもしれんぞ。おいらたちの方を見たと、報告が影からあったぞ」
「「「!?!?!?」」」
サブロウの報告に皆が驚いた。
「なるほど。それは危険ですね。私たちも警戒をした方がいいと」
タイローが聞いた。
「そうですね。なので、ここからは慎重にいきます。目と耳は今の所変装で潜入しています。メイドや執事になっていますので、深い部分まではいけてませんが、日常生活レベルは筒抜けになっています。これだけでも助かりますからね。対策は取りやすい。あとは」
フュンは、人を守るための下準備をしていた。
「レベッカ。ダン。二人はタイローさんと一緒にレオナ姫の所に入りなさい。有事が起きた際は、そちらに行きなさい。いいですね」
「「はい」」
「タイローさん。二人を上手く使ってください。権限は全て委譲します。何をしてもいい。レオナ姫を守る事だけを考えてください」
「わかりました」
レオナには、タイローとレベッカとダンを割り当てた。
「ゼファー。シャニ」
「はっ」「はいだよ」
「二人は、セブネス皇子とマリアさんを守ってください。ゼファーがセブネス皇子。シャニはマリアさんで・・・もしかしたら別な件が入れば、シャニは予定を変えます」
「了解です」「了解だよ」
ルスバニア王国の守護をゼファーたちに任せる事にした。
「では戦争に入った場合。イスカル王国は基本として無視されると思います。内乱状態で別大陸に手を出す必要がない。そこで、イスカルの役目はルスバニアの軍事や内政面の援助だ。とにかくルスバニアが落ちるのがまずい。なので、ゼファー。あなたが守護者として守りなさい。海は基本ライス将軍にお任せしますので、あなたが陸を担当しなさい」
「わかりました」
「ええ。まだ技術レベルは対抗できる。オランジュウォーカーの実験はしておきましたので、こちらの銃の弾は余裕で弾きます。二十発くらい受けたら壊れるので、被弾数だけは注意してください」
「わかりました。殿下」
「ええ。いつものことで悪いのですが、あなたを頼りますよ」
フュンはゼファーに微笑むと、当然だと言わんばかりのどや顔でゼファーが答える。
「殿下は??」
「ええ。僕はどこにでもいきます。とりあえず、僕は敵を倒すために、ナボルとなりますから、僕はここらで消えますね。少し調べ物がありますので、ちょっといない方が良いです」
「「「え!?」」」
皆が同時に驚いた。
「はい。どのような消え方をするかは、皆さんにもナイショ。なので、僕は皆さんにそれぞれの人をお任せしますよ。いいですか。最後には、皆を必ず勝たせてみますからね! 大丈夫」
「全員ですか・・・なるほど。殿下らしいですな」
ゼファーが頷いた。
「はい。ここで全てを出し切ります。僕の最後の計画まで、皆で進みましょう」
「「「はい」」」
フュンが皆の顔を見た後。
「作戦を発動させます『世界連盟への道です』」
「「「おおおおおおおおおお」」」
平和を目指す最後の戦い。
大激戦の混乱の時代。
混沌戦争
次に来るは、世界各地で起こる大戦であった。
それぞれの内乱の時代。
ワルベント大陸。
ルヴァン大陸。
双方の大陸にはまだ大きな戦乱が残っている。
どこも危険な時代になっていたのだ。
しかしこの裏で暗躍をしているフュン・メイダルフィアは、その混迷の時代を生みだした張本人でありながら、世界平和の道を生み出そうとしていた。
彼は自らの夢の為。
アーリア大陸と、その盟友となるイスカル大陸。
この二つの力を合わせて、世界を平和にする戦いに挑むのであった。




