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人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚  作者: 咲良喜玖
最終章 名優タツロウの工作

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第217話 各重要人物 タツロウの記録

 タツロウはその後。

 偵察が延期となったことで、休養になった。

 体を休めておけとの命令である。

 頬がこけた状態で帰って来られたので、体調を整えろという事だった。

 なので、彼は実家に帰ると言って、軍部にお休みの願いを提出した。

 だがしかし、それは、最も重要な仕事をする期間となった。


 タツロウは各地のアスタリスクの民に会う事で、フュンに提出する地図を完成させていく事にしたのだ。


 ここら辺に、隠れ里があるぞ。

 

 とのライブックの大体の話だけで、現地に向かう。

 それも凄い話であった。

 もう少し明確に言ってもいいだろう。

 しかし、合い言葉によって会うしかないためでもある。

 

 「これが重要なのは・・・よく分からないけど。フュンさんが言うには大切な事なんだろう」


 タツロウでも疑問に思うアスタリスクの民の現住所を知りたいフュンの考え。

 意味のある行為だとは思えないが、太陽の人の頼みは断れなかった。


 ◇


 全ての場所を調べ終わった後。

 地図に記された隠れ里は、八カ所。

 各地には、多くても三千人程度の民たちが住んでいた。

 それとこの八カ所も微妙に移動し、転々とするらしい。

 全員を集めると、アスタリスクの民が二万人ほどいた事にタツロウでも驚いた。


 「結構いたんだな。隅々まで調べ上げるとさ・・・」


 改めて調べてみると、タツロウでも知らない事実であった。

 

 「それで、フュンさんの計画は・・・大体を実行できたはず。あとは、影となり。王都に潜入するか」


 タツロウの最大のミッション。

 それが、王や三宰相。レガイア王国の重要人物たちの性格を調べ上げるである。

 フュンは、人の考え、人の性格を知りたいと言っていたのだ。


 「変な注文だよな・・・人を知りたいなんて・・・・フュンさんって面白い人だよな」

 

 タツロウは、アーリア大陸に入って、影の訓練に励んだ。 

 それは自分よりも強者であるサブロウの指南を受けたのだ。

 彼の指導により、前よりも影として成長したタツロウは潜入に優れた戦士となっていた。

 影にならずとも変装術もマスターしたので、誰かになりすまして調べる事も出来ていた。


 玉座の間での全体会議や、各お屋敷での生活などに潜入。

 一般兵になったりして、盗み聞きもした。

 タツロウは、三宰相と王の周りを調べていった。 


 ◇


 ウーゴ・トゥーリーズは、ほとんど話さない。

 自分の気持ちも。政治的発言も。

 何もかもを話さずにいて、裏に引っ込んで、自室に籠っても彼は何も話さずにいた。

 もしかして言葉を話せない人なのかと思ったが、紅茶を持ってきたメイドに対して、ありがとうとぼそっと言った事で、話せる人間だと調べがついた。

 それと、メイドや執事などに丁寧な人物だった。

 王様だけど世話をしてもらうと、頭を下げる事も忘れない。

 思いは分からないけど、心は綺麗なように感じる。

 彼が無能であるのかは分からないけど、純朴な人には見えるのだ。


 あのミルスがいなければ、どのような王なのか。

 

 それを知ってみたいと思うと記録した。


 

 ◇


 ジェシカ・イバンクは、きっちりしている性格で優秀な人だった。

 自分の領土の管理から、お屋敷の管理まで、整理整頓された状況を好む様で、あらゆるものをしっかり管理していた。

 ただ一つ。弱点があって、髪の毛が弱い事らしい。

 優しく洗っても次の日にはボサボサになって、腹を立てていた。

 自分の髪質を気に入っていないらしく、何個もシャンプーを試しては、投げ捨てている。

 屋敷の外のゴミ箱に捨てられたシャンプーをメイドが取り出して、まだ余っているからと持って帰っていった。

 『もったいないから、よかったよ』とタツロウは記録した。


 

 ◇


 グロッソ・サイリンは、裏では影口三昧。

 あれが気に食わない。これが気に食わないと文句を言い続ける人だった。

 それは主に、ミルスに対しての文句だった。

 でもその気持ちもわかる。

 自分よりも二回り以上も年が離れている者に、ああだこうだと好き勝手言われてしまえば、いつ堪忍袋の緒が切れてもおかしくない。

 それを耐えているだけでも、グロッソは偉いともいえる。

 サイリン家を守るために、当主としては立派だった。

 ただ人としては好かないと、タツロウの報告書には書かれている。


 ◇


 マキシマム・リャーベンは、律儀な将軍である。

 部下の家族の事から、兵士の体調まで、いろいろ気を遣う人だった。

 部下から慕われている大将軍だが、部下を無視して大変な戦いにいくつも送り出している。

 それを心苦しいと思っているだろう。

 でも、ミルスからの無茶な指示である、従わざるを得ないのだ。

 大将軍だとしても、板挟みにあうのが、マキシマムの辛い所。

 王に忠誠を誓っても、結局は王を牛耳っているジャルマ家の言いなりになるしかないのだ。

 最も可哀想な人であるとの評価である。

 敵であるのに、同情するのはこの人だけだと、タツロウの報告書には書いてある。


 

 ◇


 一応で、書いてあるのがライブックの事。

 タツロウの話は客観的な話が多かったが、さすがにライブックの話は主観が入っていた。

 ライブックは基本無表情で仕事をしている。

 表情から相手に、感情などを悟られるのを防ぐためとされていて。

 本来のライブックは表情豊かな人で、親しみやすい人柄だと、タツロウは記していた。

 

 ライブックは、次期当主のガイブックを溺愛していて、かなり可愛がっている。

 だから愛されて育ったことを自覚しているガイブックは父を尊敬していた。

 次期アスタリスクの長ともなる事を自覚していて、非常に優秀な男でもある。

 スカイ家は安泰とも言える家であった。


 それがタツロウが見たライブックの話であった。

 いらない情報かもしれないが、伝えておくべき事柄かもと、報告書には記されていた。


 ◇


 そして最後に、ジャルマ家である。

 ジャルマ家は邪悪な家である。

 追い落とした残りの二家には手を出していないが。

 今のトゥーリーズにはもしかしたら手を出しているかもしれないとされている。


 それは、ウーゴの両親が不可解な死を遂げているからだ。

 ある日突然、持病もない二人が、血を吐いて死んだ。

 その時の大宰相が、ミルスの父パルスである。

 もしかしたらの話であるのだが。

 その死は、パルスの毒殺によって、王と王妃が死んだのではないかとされている。

 しかしそれを決定づける証拠がない。

 だが、その死の後に、パルスも亡くなったので、王と王妃の呪いによって、パルスが死んだのでは。

 という噂レベルの話が、国民の間でも起きた。

 祟りがあったのだろうという話はいまだに消えない噂話となっている。

 たしかに、王と王妃が亡くなった直後に、パルスも死ねば、皆がそう疑ってもおかしくないのだ。


 そしてミルスはパルスと似たような性格であったとされて、かなり傲慢。

 自分が一番上であるから、この国をどのようにしようとお構いなし。

 それは仕方がない。ここ百年程がジャルマ家がこの国を動かしてきたからだ。

 王にお伺いなどもせずに、勝手に国の指針を決める。

 重要な事も、許諾すら取らずに、玉璽を勝手に使用して、国を私物化までしている。

 だがしかし、これで上手くいっている面もある。

 三家がバラバラにならずに、内戦を戦わずにいる事で、なんとかして、ルヴァン大陸との戦いを互角に持ち込めているのだ。

 

 もしかしたら、この三家のバランスが一つに偏らずに三つに別れていたら。

 ワルベント大陸は、既に隣の大陸に敗北していたかもしれない。


 不幸中の幸いと言えるだろう・・・。




 だが、ここに異変が訪れようとしていた。

 太陽のように明るい微笑みを持つ男なのに、敵にとっては悪魔の微笑みに見える男によって。

 世界に大変革が起きる時が近づいている。


 フュン・ロベルト・アーリア。


 小さな大陸の小さな王とは言えないその存在感。

 彼こそが世界への反逆の王であり、強かな政治力を持つ英雄。

 人を巻き込むことが上手い彼は、世界をどのようにして動かすのか。


 タツロウの記録のおかげで。

 ワルベント大陸にも、彼の記録が残っているのである。

 ただし、ワルベントではこう呼ばれている。


 混沌を生んだ二つの顔を持つ悪魔。


 世界を混沌に誘った悪魔であり、世界に秩序をもたらした太陽でもある。

 小さな大陸の英雄なのに、世界にある革命を起こした人物とされているのだ。

 ワルベントの一部の人間たちは、良くも悪くもそう呼んでいた・・・。


 

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