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人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚  作者: 咲良喜玖
第四章 アーリアに偉大な英雄が誕生する

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第171話 アーリア十三騎士の誕生へ

 帝国歴538年3月

 ミランダの葬儀は今まで大体的にはやったことがない。

 その理由は、ミランダを偲ぶ会として、里ラメンテ跡地の慰霊碑の前で毎回宴会をしているからだ。

 国を挙げての葬儀は、彼女の意思に反する行為だと、シルヴィアとフュンの二人が思っていて、でもそれでも、大陸戦争に勝った時にだけ、一回やっても彼女が許してくれそうなので、大々的にやる予定がある。

 祝勝会に混ぜてしまうことで、ド派手な宴会にしようとしているのだ。

 とにかく彼女を見送るには、どんちゃん騒ぎで、大盛り上がりでやるしかないのだ。



 そしてこの日は、仲間内だけで、ここで酒を飲むのが一番いいだろうとして、ウォーカー隊が中心になって集まっている。


 「では皆さん。乾杯です。今日は、大騒ぎしてもいいですよ。どうせミラ先生もどこかで暴れるように飲んでいますからね。ザイオンたちも来ているでしょうしね! いきますよ。乾杯ですよ」

 「「「「おおおおおおおお」」」」

 

 フュンの声から始まる宴会は、バカ騒ぎのお祭りとなった。


 ◇


 レヴィは、樽を二つ用意して、誰もいない所に一つ飾った。


 「勝負ですね・・・おそらく・・・」


 相手のいない勝負を一人で続ける。

 ミランダがいないのに、『もう飲めん』と言って大の字になって倒れる姿が見えた。


 「まだまだですよ」


 とレヴィは終わりの見えない勝負を続けていた。


 ◇


 皆が楽しそうに宴会する中で、フュンはジークと二人でいた。


 「フュン君」

 「ジーク様。はい」 


 フュンがお酒を用意した。

 コップに注ぎ渡す。


 「ありがとう。ほら。君も飲みな」

 「ありがとうございます」


 お返しでジークがフュンのコップに酒を注ぐ。

 

 「久しぶりだね」

 「そうですね。互いに忙しくて、会ってなかったですね」

 「ああ。それで今日は話したくてね」

 「はい」

 「王の件。どうするんだい。まだ就任しないみたいだけど」

 

 フュンはまだガルナズン帝国の大元帥として仕事をしていた。

 イーナミア王国も存続されていてネアルがまだ王としての仕事をしていた。


 「そうですね。王都アーリアの誕生が必須かなっと思ってます」

 「そうか。じゃあ、数年後か」

 「はい。二年くらいですかね。できたら敵の攻撃の前にはこの大陸にアーリア王国が存在したい」

 「そうだね。交渉するにもその方がいいかもしれないな」

 「はい」


 フュンとジークが国について話すのは久方ぶりである。


 「妹。いや、シルヴィを頼むよ。本当は叔父の俺が頼むのは変だけどさ」

 「いえいえ。ジーク様はお兄さんですよ。絶対にね」

 「そうかい」

 「はい。じゃなきゃ、僕が困りますからね。せっかく僕にお兄さんが出来たのに。おじさんになったら、気軽にジーク様なんて呼べませんからね。それは嫌ですね」

 「ははは。そうだね。じゃあ、お兄さんだ」

 「はい。もちろんです」


 こんなたわいもない話もあった。


 「それで、国をどう組閣するんだい? 組織は?」

 「ええ。そうですね。基本は帝国の仕組みと変えたくありません。一緒にしたい。それで違う点と言えば、僕が王となる事。シルヴィアが王妃になる事。後継者を正式にアインにすることくらいですかね」

 「そうか。俺とかの役職。外れたりしないか」

 「元帥ですか? んん。どうでしょう。無理だと思いますよ。ジーク様は重要人物です」

 「そうか・・・そうだな。王国の貴族関連はどうするんだ」

 「はい。そこを悩んでまして・・・帝国には十家制度を作りましたでしょ。いまだに十もいませんがね」

 「そうだね」


 帝国は武家十家の制度を作りはしたものの、いまだにその人数には到達していなかった。

 そこでフュンはこれを基準にして考えを構築していた。


 「そこで、王国の貴族は、アーリアの十三騎士にしようかなって思います」

 「十三騎士?」

 「はい。十三の貴族を作ります。数はこれだけにします。大陸に忠誠を誓う貴族です」

 「大陸にかい? 君じゃなく?」

 「はい。大陸に忠誠を誓ってほしいです。この先、王に誓うよりも国に誓った方がいいですからね。皆で守ろうという意識が生まれるはず。この大陸には危機が迫っているんですからね」


 人ではなく、大陸に。

 一人に依存するような形では、名君が出て来ない限り、国が厳しくなるとフュンは考えていた。


 「シルヴィアと共に考えたんですが・・・」


 アーリア十三騎士。

 一の家『ウインド家』

 当主は、シルヴィア・ウインド、のちにレベッカ・ウインドが務める。

 現在のシルヴィアは、隠し名としてウインドになっているので、そこにそのままレベッカが後を継ぐことが決まった。

 それにどうやら、レベッカはウインドになる事をミランダから託されていたようなのだ。

 ウインドが一の家となる。


 二の家『ターク家』

 当主はスクナロ、のちにリエスタが継ぎ。そして彼女の子であるロイが継ぐ。

 リエスタは、あの最終決戦以降でジーヴァと結婚した。

 元々知り合いだったのだが、彼の真の強さの部分に惹かれたらしい。


 三の家『ドルフィン家』

 当主はウィルベル。

 本来の当主に戻せたのは、彼の罪がガルナズン帝国にだけ存在していることになっていて、新たな国のアーリアには存在しないのだから。

 という理由でお咎めなしになり、フュンが勝手に当主に戻すことに決めた。

 しかし、本人としては短い間の仮の存在だと思っているので、すぐにでも後継者へと引き継がれるだろう。

 次期当主は、バルナである。

 でもバルナはアナベルという名を気に入っているので、心機一転でアナベル・ドルフィンが継ぐこととなる。


 四の家『ブライト家』

 当主はサティ。

 子がいないので、後継者に相応しい誰かを探している。

 内政に力を注いでほしい家。


 五の家『ビクトニー家』

 当主はアン。

 ここも子がいないので、あとで養子を迎えることになる。

 製造業に力を入れてほしい家。

 

 六の家『メイダルフィア家』

 当主はフュンであるが、ここはすぐにツェンに移行。

 サナリアを守護して、大陸の食料自給率を上げる事と、とある大施設の管理を任される家となる。


 七の家『ビンジャー家』

 当主はネアル。

 王国側をまとめるために必須の家となる。

 ここも子は難しいと判断をしているらしく、誰かからもらうか。

 それとも側室をもらってもらうのかの二択となっている。

 全ての選択はブルーにかかっている。

 

 八の家『ビリーヴ家』

 当主はマルン。妻はララ。そして後継者は・・・。

 この家は海軍をまとめる家となる。


 九の家『スターシャ家』

 当主はサナ。サポートで夫であるマルクス。

 優秀な武官を輩出し続ける事になる家。


 十の家『リューゲン家』

 当主はギルバーン。

 クリスが貴族になる事を拒絶したために、こちらの頭脳を騎士側に持ってきた。

 どちらかの頭脳が貴族側にないと今後の運営に問題が生じる為である。

 

 十一の家『スカラ家』

 当主はタイロー。

 後に出来る大都市の領主となり、大陸の守護者となる家。


 十二の家『クキ家』

 当主はサブロウ。

 王を守護する影となり、最後の砦となる。

 後継者は血以外となる。


 十三の家『ダーレー家』

 当主はジーク。のちにフィア・ダーレーとなる。

 王の家。ロベルト・アーリアを監視するために存在する家。

 何かがあれば、ダーレーが正して欲しいとして置く家となる。


 

 「という感じです」

 「なるほど。俺の役目は王の監視か」

 「そうです。ご意見番みたいな感じで。それと、フィアをお願いしたい。どうです。ジーク様」

 「ん?」

 「ご結婚。する気がないでしょ。ナシュアさんの為にね」

 「そうだね。バレてたか」

 「ええ。彼女を妻としない。そのかわり誰とも結婚をしない。だから子がいない。それにジーク様は、シルヴィアのためにも、後継者を残さなかった。そういうことでしょ」


 ジークは、シルヴィアの為もあったが、特にナシュアの為に結婚をしなかった。

 一緒になりたいと昔から思っても身分もない自分ではありえない。

 遠慮がちの彼女だからその思いも言えないので、中途半端なままでいたのだ。

 そこで、フュンは彼女の為にも、子供を渡すことを決意していた。

 それにダーレーがこのままなくなるのは嫌なのだ。 

 この家に救われたフュン。

 ここだけは存続して欲しいのである。


 「なので、フィアをお願いしたい。ジーク様たちに育ててほしいです。彼女にもダーレーの血がありますからね。ユースウッドさんのですけど」

 「そうだね・・・いいだろう。俺が育てようか」

 「はい。お願いします。でも覚悟してください。彼女は厄介ですよ。気をつけてくださいね」

 「そうかい。いいよ。俺流で育てよう」


 覚悟が必要。

 それが当然である事をこの時のジークは知らない。

 この理由は、ジークとそっくりなので面倒なのである。

 似た者同士。どうやって成長するのかは、これからの楽しみであった。


 「そうだ。フュン君。ゼファー君は?」

 「ええ。彼は無理でしょう。要請しても断ります。それに、ゼファーはすでに僕の家族ですから、言ってしまえば、ロベルト・アーリアの一部です。ダンもレベッカについていますしね。身分は関係なく、僕のそばにいてもらいましょうかね」

 「ふっ。そうか。それがいいだろうね。彼もその方が幸せだろうしね」


 二人は、一生懸命ご飯を食べているゼファーを見て微笑んでいた。

 昔から何も変わらない。

 その懸命に口を動かしている姿に安心を覚える二人であった。


 

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