第七話 帰宅と情報整理
「……」
目が覚める。白い天井と白のベットに布団。
「あぁ。病院だったなここ」
周囲を見回して、自分のいる場所を思い出す。
スキルの確認をしてから、疲れていたのかすぐに眠ってしまった気がする。
「……で、新規獲得スキルや称号があんのか」
新規獲得スキル
・夜目
・不眠不休
・鑑定無効
・鑑定
・星詠
新規獲得称号
・夜に反する吸血鬼
「んーーー。内容は?夜目が夜でも問題なく視界が確保出来る。不眠不休はそのままか。鑑定無効もそのまま、鑑定も同じく。星詠?」
星詠…違う世界線やその世界の未来や過去を覗き見る。このスキルは自動発動でしか意味が無い
「なんつぅか……自分の好きなタイミングじゃ使えないけど、なにかのタイミングで自動発動するのか。まぁ、いつか発動するな。その時でいいや。最後の称号は」
夜に反する吸血鬼……日光を嫌い、夜を得意とする吸血鬼が夜に眠り、休息を取る。本来あってはならない。
「うんまぁ。母さんも持ってんだろうな、これ」
そうして確認を済ませ、退院の為に荷物を纏めていると、最後の確認に颯がやってくる。
「玲音、最後の確認をしますね」
大人しく横になり、手を翳してくる颯を受け入れる。
「あら?まぁ、そうよね」
ボソッと呟かれるが、玲音は特に気にしない。
「問題はないわね。退院でいいわ。ちなみに、迎えも既に来てるわ」
「お世話になりました」
「あまり無理はしないでね?」
「了承しかねるな。努力はするが」
心配されるが、肩を竦めて答える。
「あぁそうだ。貴方にこれを渡しておきますね。必要になるでしょうから」
部屋を出る直前に、颯が小瓶を玲音に渡してくる。
中身は赤黒い液体。少しドロっとしているような気もする。
「追加でアドバイスです。無効するのではなく、違和感なく偽装した方がいいですよ」
その一言で、一気に警戒レベルを引き上げる。
遮音のスキルを使用して、この病室全体を包み込む。
「お嬢と言えど容赦しませんよ」
身体は万全。力にも馴染んだ。今の状態なら、誰にも気付かれずに颯を倒せる。
気配遮断もあるから、見つかることなく逃走もできる。この建物内にいる全員が敵になっても、突破できる自信もある。
様々な可能性を整理しながら神器を構える。
「勘違いしないで玲音。私は貴方に協力しようとしてるの。貴方の事だから、きっと家族にもその変化を伝えないかもしれない。そうなった時に、少しでも真実を知っている人が居たら楽でしょ?それだけよ。その血は、貴方の為になるかなと思ってね」
「……嘘じゃないですね。隠してることもありそうですけど」
「貴方のその観察眼、ほんと嫌になるわ。嘘が通じないし、隠し事もすぐバレる。……私は、貴方の下にならいいわ」
「ばっ」
馬鹿なことを、と言おうとしてやめる。颯の顔も声音も真剣そのものだった。
「……ま、今すぐとは思ってないわ。私もやるべきことがあるから。でも、血が必要になったら連絡しなさい。あげるわ」
「どっちも勘弁して欲しいね」
全て本心からの発言だ。このお嬢様は本当に強くなった。
「これはありがたく貰う。でも、血のおかわりはしたくないね。颯が下になるのも勘弁して欲しいぜ」
「ふふっ。今はそうね。さ、話はおしまい。家族が待ってるわよ」
玲音は神器を仕舞い、遮音も解除。
颯も執着心とも取れるその感情を仕舞い込み、普段通りを演じる。
「またね玲音。今度はご飯ぐらい奢りなさい」
「了解ですよ。お嬢様。お世話になりました」
荷物を持ち、病室を出る。
玲音はロビーへ、颯は他の病室へ
一度別れ、交わることが無かったはずの二人は再開し、二人の運命は大きく変化する。
「玲音、私は必ず貴方の下に行くわ。今よりもっと強くなって」
ロビーには多くの人が集まっていた。子供からお年寄りまで。幅広い世代が集まっている。ここは病院なのだから当たり前だ。
その中でも目立つ家族が1組。
1人は有名な退魔師アーノルド・ヴァンデル
もう1人はその退魔師のパートナーである女性。エレナ・ヴァンデル
もう1人、エレナと同じ位の身長と整った顔付きに、男の視線を惹きつける容姿。神楽・ヴァンデル。
顔付は神楽に似ているが、容姿はエレナそっくりな少女。舞・ヴァンデル。
その4人を微笑ましく眺める女性。神楽の同級生で舞の姉(舞がそう呼んでるだけ)。御鏡澪。
「お兄はまだなの?」
「九條のお嬢が呼びに行ったんだ。そのうち来るだろうよ」
「そうよ舞。大人しく待ちなさい」
「そう言う母さんが1番大人しくして。さっきから落ち着きがない」
「そんなことないわよ!」
そんな風に賑やかに、そして落ち着きなく待っている。
そんな家族に、ため息をついてから声をかける
「いや、俺からすれば全員落ち着きないよ」
呆れたような声に全員がこちらを向き、目を輝かせながら飛び込んでくる。
「お兄!」
「玲音!」
「愛しの玲音!」
「おぉ!バカ息子!」
姉と妹は受け止めながら、父親と母親をひらりひらりと躱していく。
「「なんで避ける!」の!」
「両親揃ってみっともねぇ」
呆れながら、姉と妹の頭を撫でる。
「おかえり。玲音」
「おう。ただいま澪」
ただ1人、普通に声をかけてくれる澪に普通な対応をする。すると、胸の2人から不満がこぼれる
「浮気?」
「お兄、舞と神楽姉がいながら。それは許されない」
「うるさい。2人はただの姉妹で、澪は彼女だ」
「知っているが、もう少し家族には優しくするべきだ」
「ん。お兄は家族に少し冷たい」
と言われるが、彼女の目の前で他の女とイチャつくのはどうかと思う。というか、知ってるのか。付き合ってること。
澪を見れば苦笑している。この一ヶ月で色々聞き出したのだろう。
無理矢理でなければいいんだが
「とりあえず、家に帰ろう。久々に帰りたい。話したいこともあるし」
呆れながらも、少し声のトーンを下げて話しかける。それで何かを察してくれた両親は
「そうだな。玲音の退院祝いもしないとだし」
「お母さんの手料理沢山食べてもらわないと!」
仕事柄、そういった気配に敏感なのだろう。そう言って先頭を歩いて行く。
「玲音、何かあった?」
何かに気付いた澪も話しかけてくる。
神楽姉さんと舞も何かあると察したようだ。今は問いかけてこないだけだろう。
「今はまだ。家に帰ってからな」
それだけ答え、ロビーを出る。
それから車に乗り、家に戻るまでの間は他愛も無い話で盛り上がり、澪との関係を茶化された。
「それで?話ってのはなんだ?」
母さんの手料理を食べている最中、父さんが聞いてきた。
「なぁ、せめて食い終わってからにしない?」
「それもそうか」
食い終わってからじゃないと、後で母さんの機嫌が悪くなりそうだし。
母さん、自分の手料理を振舞ってる時に真面目な話すると機嫌を損ねるんだよな。
「それで話ってのは?」
「急かすなよ。ちゃんと話すから」
そう言ってお茶を啜る。
「色々ありすぎて説明が面倒だから、これを見てくれ」
そう言って、ステータス画面を開き、見えるように提示する。
沈黙する事1分、最初に口を開いたのは父さんだった。
「これは本当なんだな?」
「本当だ」
その問いに答えると、続く形で母さんと澪も質問をしてくる。
「澪ちゃんから産まれてくる子供は人間になるの?それとも吸血鬼?」
「吸血衝動とか大丈夫なの?」
げんこつ一閃。母さんの頭に鋭い一撃をお見舞する。
「吸血衝動の方は今のところは大丈夫」
母さんの質問は無視をする。澪は若干顔を赤くしている。かわいい!
「玲音、ステータス自動読み取り系統の機会はどうやって欺く?」
「お兄、学校とか行けるの?」
神楽姉さんと舞もまともな質問をしてくる。
「それに関しては大丈夫だろう。鑑定無効で暫くはごまかせる。それに多分」
そう区切ったタイミングで、ステータス画面に通知が表示される。
「新しいスキル?」
「多分、今の話に繋がるスキルだ」
そう言いながら、新規獲得スキル一覧を開く。
・ステータス偽装
「都合よすぎじゃないか?」
そのスキルを見た瞬間、父さんはそうこぼした。
「そういうもんなんだよ。お嬢に鑑定されただけで鑑定無効が獲得できたんだし」
「そうか。まぁその辺はいいとして、問題は」
「吸血衝動と誰から血を吸うか」
「そうね。私はアーノルドがいるから問題ないけど、玲音の場合は勝手が違ってくるでしょ?」
「あぁ。母さんの場合は普通の吸血だが、俺のは従者にするためと自身の強化のための吸血だ。気軽に行えるものじゃない」
俺の場合、普通に魔物を倒してレベルを上げる他に吸血によるレベルアップもある。と言っても1人から上がれるのは1回限りだけど。
吸血衝動は抑えることが出来ない。我慢すればするほど、衝動が強くなるだけ。エレナは、その衝動が軽い内にアーノルドから吸血している。
「父さんと母さんは選択外として」
「まぁそうだろうな。俺を従者にしてどうするって話だ」
「同じ吸血鬼の私も従者には出来ないし、強化も出来ないみたいだしね」
そうやって考えていると
「お兄、それ私じゃダメ?」
舞が立候補してきた。
「いや、ダメじゃないが」
「なら、私から吸って?」
躊躇いなく首筋を晒す。
「なぜ首筋」
「お父さんがよく、お母さんに噛ませてるのが首筋だから」
「娘の前でやるなよ」
またもや家族に呆れるしかない。
「舞が立候補するなら私もだ」
そう言って神楽姉さんも名乗り出る。
「それに、私と舞なら従者としても優秀だろう?」
「いや、優秀かどうかは知らないんだが?」
何となくでだが、二人はそれなりの実力者ってことはわかる。澪と同じか、少し上。いや、神楽姉さんは上だな。舞は澪と同じ。
「まぁ、二人がいいなら。颯にもおかわり要求しなくて済みそうだし」
懐の瓶を取り出しながら呟く。そして、それを聞いた澪が立ち上がりながら捲し立てる。
「玲音、私のも吸って。私を最初の従者にして」
「いや、彼女を従者にしたらダメだろう」
「いいの!アーノルドさんとエレナさんも夫婦だけど吸血してるでしょ!」
「いや、それは夫婦だからであって。しかも、従者云々関係ないし」
「いいから吸って!」
首筋を晒しながら迫ってくる。結構グイグイ来るな。
「澪、落ち着けよ」
「お兄、ジェラシー」
「は?」
「だから、澪姉ジェラシーなの」
舞の助言で理解し、澪を見れば顔を真っ赤にしている。耳まで真っ赤だ。
「はぁ」
溜息ひとつ吐いて、澪を見つめる。
「澪、こっちおいで」
そう言って部屋まで手を引いていく。
「着いてくるなよ」
家族に釘を刺すのを忘れない。
自室で改めて2人で向かい合う。
「本当にいいんだな?」
「…玲音の一番は、ずっと私じゃなきゃ嫌。それが玲音の為の吸血であっても、一番は私がいいの」
澪が恥ずかしそうに首筋を晒す。仄かに赤くなっているのが、俺の吸血衝動を呼び起こす。
目の前の彼女が、とても美しく見える。とても美味しそうだ
「痛かったらすぐに言えよ」
澪を思い、一声かけて、首筋に牙を立てる。
「んっ」
短い嬌声を発しながら体を震わせる澪。
心配になり、やめようとするが、
「大丈夫だから続けて」
俺の体に抱き着きながら、熱の篭った声で促す。
それを聞いて俺は、澪を労りながらも血を吸い続けた。
「お兄酷い。澪姉はあんなに夢中になって吸ってたのに、なんで神楽姉と私はそんなにあっさりしてるの」
澪の吸血を終えリビングに戻り、神楽姉さんと舞の吸血も済ませた後の第一声がこれだ。
「うるさい」
ステータス画面に表示された、新たな項目を弄りながら適当に流す。
「何が表示されたの?」
まだ顔を赤くしながら、澪がステータス画面を覗き込む。
「新規獲得称号とスキルと従者一覧」
新規獲得称号
・十三星座を司る者(蛇使い座)
新規獲得スキル
・アスクレピオス
・ウロボロス
・龍種召喚
従者一覧
・御鏡澪
・神楽・ヴァンデル
・舞・ヴァンデル
「ねぇ、その称号」
澪が新規獲得称号を見て、自分のステータス画面を見せた。
そこには
新規獲得称号
・十二星座を司る者(射手座)
新規獲得スキル
・サジタリウス
・アルテミス
「なんで澪に?」
「あ、それなら私にも出たよお兄」
「私も出たぞ玲音」
「はぁ!?」
澪と玲音のステータス画面を見た神楽と舞もステータス画面を表示する。
そこにはちゃんと
神楽
新規獲得称号
・十二星座を司る者(乙女座)
新規獲得スキル
・ジャンヌ・ダルク
・イシュタル
・アテナ
舞
新規獲得称号
・十二星座を司る者(天秤座)
新規獲得スキル
・法廷(アヌビス、アストライア、アフロディーテ、閻魔大王)
「父さん、神楽姉さんと舞に関して、隠してることあるだろ」
称号の話になった途端、何を思ったのか分からないが、父さんの雰囲気が少し変わった。
「わかった。世界が変わりその称号が現れたということは、先代が亡くなり、均衡が崩れたということだ」
意味がよくわからず、首を傾げる4人。
「まず、その称号について説明をしよう。神楽と舞はわかっているだろうが、2人は普通の人間じゃない。神楽は天使と人間のハーフ、舞が小人と人間のハーフだ」
驚愕、困惑。ただ、呆然と2人を見ることしか出来ない玲音と澪。神楽と舞の表情は、悲しそうな色を隠していて
「父さんと母さんは、先代の乙女座、天秤座の称号持ち。つまり神楽と舞、二人の母親達の知り合いだ。その二人に頼まれて、俺は神楽ちゃんと舞ちゃんを引き取った」
その時のことを覚えているのだろう。神楽と舞は、頷きをもって話が事実だと答える。
「玲音、言いたいことはあるだろうが、今は話を進めさせてくれ」
「わかった。ただ一言」
神楽と舞に向き直り、
「家族はここにいるからな」
それだけ告げて、父親の方を向く。
言われた2人は嬉しそうに玲音に抱きつき、玲音はそれを引き剥がそうとする。
その光景を澪は微笑みながら見つめ、自分に現れた射手座の称号のことを考えていた。
「で、話の続きだが、その称号を持つ種族は決まっているらしい」
「らしい?」
「全種族に会ったわけじゃないんだ。だから、聞いた話によると、そうらしい」
「ということは、父さんは」
「エレナと一緒に何人かの称号持ちには出会った」
その種族と称号を思い出すように、エレナが話を引き継ぐ。
「乙女座の天使族、天秤座の小人族、魚座の人魚、牡牛座のミノタウロス、獅子座の獣人」
そこで区切り、次には衝撃の一言を言い放つ。
「蟹座、牡羊座、山羊座、水瓶座の魔者」
「魔者?」
その言葉の意味を理解できない澪が、聞き返す。
「今、この世界に侵攻してきているあの魔物を統率する、4人の王だ。奴らの話では、人の形を摸し、人語を解す者は魔族と言うらしい」
衝撃発言が続き、何も言えなくなる。だが、いち早く今の言葉の肝心な部分に玲音が気づく。
「父さん今、奴らの話ではって言ったよな?それってもしかして、以前に出会ったことがあるのか?この世界で」
その問いに、父さんはすぐに答えれない。
どれだけの時間がたったか、実際には数分程度だったかもしれないが、その場に居る者からしたら、相当に感じただろう。
息を吸い、吐き出しながら、ゆっくりと話し始めた。
「10年くらい前か。俺とエレナ、それとうちの従業員数名、退魔の依頼で北欧に行った時だ。称号に共鳴するようにして、俺達は出会った。最初は、同じ称号持ち同士が出会ったもんだから、色んな世間話をしたさ。ただ、話を進めていくうちに、向こうの様子がおかしくなった。その理由は何となく察したよ。簡単な話、俺達の仕事だ。退魔師ってのは魔を退ける者のことを指す。それはつまり、自分たちの障害に成り得る存在だということ。今のうちに対処しておきたいが、こっちも同じ称号持ち。司る星座はどちらも上位2種。だから、向こうは去っていったよ。最後に、次は殺す、とだけ言って」
話を終え、エレナの用意したお茶を飲み瞳を閉ざす。
「父さん、聞きたいがある」
玲音がそう声をかければ、閉じた瞳を開け玲音に向き直る。
「魔族と出会ったのはわかった。でも、その時になんで割れ目が観測されなかった?」
「魔族は知性がある。だから、こちらに渡る際の正規の手順を踏んでやってくる。だが、魔物は知性が存在しない。その手順を踏まないで、無理矢理世界を渡ろうとすると、世界の境界が割れて危険を知らせる」
「つまり、魔族はいつの間にか現れるんだな?」
「もしかすると今、この時もどこかに侵攻しているのかもしれない」
その一言に、神楽と舞はお互いを抱くように身を寄せる。
「2つ目だけど」
玲音は2人の頭を撫でながら、2つ目の質問を口にする。
「父さんと母さんも称号持ちなのか?」
「そうだ」
アーノルドがエレナに視線を向ける。
「お母さんは玲音と同じ蛇使い座よ」
「父さんは澪ちゃんと同じ射手座だな」
司る星座を聞いた瞬間、玲音が立ち上がる。
「称号が重複してるのか?!」
「そうじゃない。移動したんだ」
「でも、父さんも母さんも死んじゃいないだろ」
称号の移動条件を聞いた訳では無いが、先の話を聞くに、前任者が死ぬことによって移動することになる。
「この称号の移動条件は2つある。1つは前任者が死亡すること。この場合、継ぐのはその子どもだ。2つ目は前任者より、能力を上手く扱えるものが誕生した時だ。この誕生というのは、産まれるという訳ではなく、後天的に力を得た場合に起こる」
「つまり、俺と澪に蛇使い座と射手座が移動したのは」
「そうでしょうね。玲音と澪ちゃんが私達より、上手く扱えると判断されたからでしょうね」
玲音と澪がそこにはないが、確かめるように手を閉じたり開いたりして見つめる。
「最後の質問だ。各星座の司る能力、わかる範囲で教えてくれ」
「それについて話すことは出来ない」
「どういうことだ?」
「元称号者はその能力の全容を語ることは出来ない。もちろん文面に起こすことも」
「理由は」
「恐らく、能力の悪用を防ぐためだろう」
「なるほど。父さん、母さんありがとう。色々話してくれて」
微笑みながらそう零すと、玲音はリビングのソファーで考え込むように座り込む。
その様子を見守るように、澪が隣に寄り添う。対面に神楽と舞が座り、アーノルドとエレナは嬉しそうに、でもどこか悲しそうな表情をした後、2人揃って食事の後片付けを行い、新しく全員分のお茶を用意し、同じようにソファーに座るのだった。