第十一話 領土と聖艘ノア抜錨
「ウッ」
玲音は澪に背中をさすられながら、吐いていた。
魔獣とは違う感触。肉を断ち骨を断つ。切断面からずれ落ちる臓器。
元は同じ学校で共に学んでいた学友ではあった。同じ人間を殺しておいて何も思わない程、玲音は感情を捨てていない。
傍から見ている澪達ですら、少し吐き気をおぼえたほどなのだ。その只中にいた玲音は相当キツかったのだろう。
ウルスやルビア達は過去に同族殺しを犯している。故にその辛さも悲しみも全てを理解していた。理解していたから、あの場で実力を見たいと言ったのだ。
これから自分達がやろうとしていることは、裏切りに等しい行為で、時には同族をも殺さなければならなくなる。
玲音も覚悟はしていた。覚悟はしていても、初めて人を斬る感触はどうしようもない。
30分程そうしていただろうか、落ち着いた玲音が立ち上がる。
「澪、ありがと、助かった」
少しふらつきながらも立ち上がる。
「うん」
澪は短くそれだけ返し、玲音を支える。
「次の行動に移らないと。準備をしないと」
澪に支えられて、リビングへと入る。
そこには神楽、舞、颯、尚也、ウルス、ルビア、アリア、クレハ、そしてアーノルドとエレナの姿も。
玲音は開口一番、父に謝る。
「父さん、ごめん」
「はて、なんのことかな?」
玲音は申し訳なさそうにするが、アーノルドは気にしてないといったふうに首を傾げる。
「エレナや社員のことも、隠し通せなくなってきたし、ある意味丁度良かったんだよ」
アーノルドは目を伏せながら立ち上がり、玲音の前に立つ。
「辛かっただろ。仲間だった彼等を斬るのは。頑張ったな」
いつの間にかアーノルドの横に立っていたエレナが、玲音の頭を抱きかかえる。
「まだ吐き出してないものがあるでしょ?恥ずかしがらなくていい、我慢しなくていい。だから」
玲音を抱く力を少しだけ強めて
「今だけは泣いちゃいなさい」
その一言で、玲音の中の緊張が解け、我慢していた涙が溢れ出す。
「そう。それでいいの」
「たまには弱みを見せたっていいんだぞ」
玲音は母にしがみつきながら涙を流す。
エレナは玲音の頭を撫でながら、もう片方の手でしっかりと玲音を抱きしめる。
そして、アーノルドはそんな玲音とエレナを抱き寄せ、玲音の背中をさする。
「やっぱり、親子って強いなぁ」
親と子のやり取りを眺める澪が、ポツリとそんなことを呟く。
「正直羨ましい」
「それには同意するな」
「家族とはなんなのか、そのいい例ですね」
「僕の親にも見せてやりたいよ」
「若いっていいなぁ」
「少し違う気がしますが、ウルスの言いたいことは分かります」
「家族の温もりって、何物にも変え難いですからね」
「自分の世帯を持ったら、ああなりたいと思いますね」
澪に続くように、舞達も心の底から羨ましそうに眺める。
「これからの行動について、父さんと母さんも含めて、再確認しよう」
目元を赤くした玲音が場の空気を変えるために、少しだけ声のトーンを下げる。
「尚也の計画だと、俺達の国を作り上げ、独立、この国と協定を結ぶことが第1目標だ」
「国を作ると言っても領土がないからなんとも言えないけどね」
「それは問題ない。これから領土を造りに行く」
「はい?」
話をしながら、玲音はステータスを表示する。
「この創造ってスキルで、俺達の国をつくる。その為に全員の魔力が必要だから、手伝ってくれ。場所は海の方に出て、周りへの被害を無くす」
玲音は淡々とこれからの行動を示し、仲間達はそれを静かに聞いていく。
「出発する前に、澪」
「なに?」
「親と挨拶済ませとけよ」
「大丈夫。さっき連絡があって、行ってこい。こっちのことは気にするなって、言われたよ」
「そうか。でも一応」
玲音は4枚の札を取り出し、それを澪の家のポストに手紙を添えて入れる。
「ルビア頼む」
「承りました王よ」
恭しく一礼し、ルビアは神器を呼ぶ。
「神器顕現、旅立ちを祝福せよ聖艘ノア」
先程の名乗りの時と違い、ノアの船体が顕となる。
「こちらの来た際に、少しだけ形を変えてみました。お気に召しましたか?」
モチーフとしたのは恐らく戦艦大和。
艦橋部分は甲板から20メートル程の高さまでしかなく、主砲と副砲はそのまま。
大きな違いは、艦首に配備された巨大な槍。そして、艦尾に配備されたのは変幻自在の砲塔4門。甲板の横に並ぶようにして左右に1門ずつ。そして、艦底に同じように1門ずつ。
この砲は艦内収納可能な為、必要な時以外は収納されている。
「でけぇ」
「すげぇわ」
「そんなことより、目立つから早く乗り込まないと!」
目を輝かせる男子2人の背中を押しながら澪が促す。
舷梯が降りてきたのでそれを使い、男子を先頭に登る。男が上な理由は分かりきっているだろう?
女性陣の殆どが何故かスカートなのだ。スカートじゃないのアリアだけだ。
そうして、ノアに乗り込み、操舵室に入る。
「王よ、そちらの席へ」
ルビアに促され、玲音は操舵室に設けられた豪華な席に着く。
そして、その意味を察し、ノリノリで号令を下す。
「聖艘ノア、発進!」
「聖艘ノア、発進します」
その号令と共に、ノアは進んでいく。目的地、日本の領海の外へ。
官邸
「総理!謎の巨大物体が出現!太平洋側へと進路を取っています!」
「はぁ!?」
「既にテレビで生放送されています!」
駆け込んできた秘書が、部屋に備えられたテレビをつけると、丁度その番組が映し出される。
「ご覧下さい!突如として現れた巨大戦艦。どこの所属なのか、なんの目的なのか定かではありませんが、あの船は太平洋を目指して飛行しています」
「総理!」
「出せるだけの戦力を投入!スクランブルだ!」
ビーッビーッー!スクランブルのサイレンを響かせながら、海軍、空軍、陸軍は出動する。そして、ギルドも動き始める。
「相手は魔獣では無い!はずだ!だから実弾用意!現代兵器の力、見せてやれ!」
全体指揮官の号令で、陸軍と空軍の攻撃が始まる。
対艦用ミサイル、砲弾、レールガン。陸軍空軍の持てる兵器の全てを投入。太平洋で待ち構える、海軍との挟撃までにある程度削る算段だった。
しかし、その何れもが届くことなく、落とされる。
レールガンは直撃する寸前に霧散し、ミサイルと砲弾は壁のようなものに阻まれたり、何かに撃ち落とされたり、切断され空中で爆発する。
「何が起きている!?」
「分かりません!ですが、何者かに妨害されているのは確かです!」
「隊長!ギルドより報告!あの船には数名の神器使いが居るとの事!あの船も神器の影響ではないかと、報告が上がっています!」
「あんな神器あってたまるか!!」
全体の指揮官は歯噛みする。ブツブツと何かを呟きながら、思考を巡らせる。
「仕方ない!海軍を一旦引かせ、奴らの上空より、ギルド隊降下作戦を開始させる」
「よろしいのですか!」
「構わん!陸軍も降下作戦に加えろ!装備は対人装備!奴らは敵なのだろう!?神器持ちは隊と別行動、一気に占拠してしまえ!」
「ハッ!伝令回します」
「玲音、進行方向にいた海軍が引いていくよ?」
「何か別の作戦でも始めるんだろ」
「王よ」
「あ、名前でいいよ」
「玲音様、上空より敵襲来します」
「なるほど。ギルドと陸軍を用いた降下作戦。乗船して占拠してしまえと」
「よろしければ迎撃致しますが」
「ノアの力で?」
「はい」
「面白そうだし、見てみるか」
「かしこまりました」
後部甲板にて玲音達は上空を見上げる。
先程まで、ノアを媒体とした電撃結界でレールガンを無効にしていた玲音。シェルドとシェリアの結界で攻撃を寄せ付けなかった舞。矢と予測でミサイルを的確に撃ち落としていた澪。風を乱すことで敵機を寄せ付けなかった神楽。
尚也達は前部甲板にて、方法は違えど同じようにして迎撃していた。
そして、攻撃がやんだことで、艦橋部分で集合していた。
「聖艘ノア、モードエリミネイト」
ルビアのつぶやきに応じて、内部照明が赤く明滅する。
艦尾から4門の主砲が現れ上空を向く。
他の砲も、仰角を無視したように、上空を向く。
「リロード、スラッグ」
「え」
「ファイア」
ルビアが物騒な単語を発し、それを問いかけるより早く、砲撃を開始する。
撃ち出された砲弾は、迫り来る敵に直接命中するのではなく、その頭上で炸裂する。
そして、降り注ぐのはノアの力で結晶化した氷。
撃ち出された砲弾のサイズは直径1m。
中に込められた氷は数にして1万。1つ1つは小さくとも、この氷の強度はダイヤモンドを超える。
頭上の危機を察知したのか、敵は機体の上に結界を展開する。
「リロード、バースト」
ルビアはそれを見越して、次弾を装填する。
「ファイア」
撃ち出されたのは着弾後、内部まで侵攻しそこで爆発する。
それを、先程のスラッグと共に撃ち出す。上に注意を向けて、バーストを通しやすくする作戦だ。
そして上にばかり気を取られていた敵は、下から迫る攻撃への対処が疎かになり、直撃、内部で爆発。20あった機体も半分へと減った。
「以外と残りましたね」
「陸軍の乗ってた機体は生きてるから、対処したのはそいつらだろ」
玲音は索敵のスキルを使いながら、上空を見上げる。
「全員対艦上戦闘用意」
全員が神器を手に、降りてくる敵を待つ。
「待ちはするが、何もしないとは言ってないよな」
不敵に笑いながら、身を沈め力を溜める。
「穿ち貫くは我が一刀」
ノアの下から水柱が幾つも上がる。
「秘める本質は荒れ狂う怒り」
水柱の形が変わっていく。大きな水柱から幾つもの小さな剣が生み出される。
「我此処に代行者として、王としての力を見せる」
玲音自身にも水が纏い付き、それが推進力の代わりを果たすように、噴き出し打ち上げる。
「水帝抜刀」
降下し始めた敵軍に向かって昇っていく。
「セイドオノタチ」
玲音自身は、降下開始直前の機体に迫り、抜刀。
ダイヤモンドも切り裂く高出力の水の刃で、結界ごと微塵切りにする。
そして、付随するように飛び出した水の剣は、降下している者に襲来。1人に対し6本で襲い掛かり、空中に磔にする。
玲音はそれを眺め、納刀。もう1つ力を行使する。
「抜刀雷公!」
斬撃を雷撃と共に飛ばす一撃。その雷撃は、水を伝播し、被害を広げる。それを3回放つ。
この一撃が、今どれほどの効果を発揮するのか。簡単に予想がつくだろう。水の剣に磔にされたの者が、そこら中にいるのだ。近くに降下しているものも、余波を受けるに決まっている。
つまり、この一撃が最高のタイミングで刺さるのが今なのだ!
「総員!対雷結界!」
降下する陸軍の1人が慌てて指示をだす。
が、玲音が抜刀し、最初の目標に直撃し、伝播するのでは、そちらの方が早い。
更にいえば、玲音はその攻撃を、3度放っている。
降下作戦に参加したのが230人。そのうち、水の剣に捕まったのが54人。一撃で18人を感電させ、余波で15人を麻痺させる。合計99人が今の一連の攻撃で、行動不能にされ、海に落ちていく。
しかし、残りの131人はノアへの乗船を果たす。
彼等は目撃することになる。
神話にのみ存在を仄めかされていた彼等と彼等の振るう最強の力の一端を。
「数は131か。1人14くらいか?」
索敵スキルを使いながらそんなことを呟く。
「あれ?それって玲音の分換算してる?」
「いや、俺はもう十分にやったし。それに」
尚也の質問に、少しおどけながら返答し、言葉を区切り、口を抑えながら
「また吐きそう」
そんなことを口にする。そうすれば周囲からは、呆れの視線を頂戴する。
「仕方ないだろ!?まだ慣れてないんだよ!お前らもそうなれ!」
少し、調子を取り戻しながら、玲音は艦橋内部へと戻っていく。
「そうらしいから、1人14程。余ったら早い者勝ちね」
神器を展開させながら、獰猛な笑みを浮かべるウルス、ルビア、クレハ、尚也、神楽。
澪、舞、颯、アリアは逆に少し緊張しているのか、表情が強ばっている。
「1人14だと?舐めた真似を!」
陸軍将校らしき人物が吠えるが、誰も耳を貸さない。それどころか、
「神楽姉」
「合わせよう」
神楽と舞。2人の複合結界が彼等を覆う。
「離し選定せよ。疑似結界」
2人の声が重なり、9つの扉が現れる。
「この扉の1つ1つに私達の誰かがいる」
「扉の制限人数は15。既に1人いるのだから、そちらから送れるのは14。勝ったら扉は消え、カウント1。負けたらカウント0」
「玲音のところに行きたかったら全員倒していけ」
扉の2つから神楽と舞の声が響き、扉の役割を説明する。
「面倒なことを!」
「仕方ねぇだろ。分かれるぞ」
そうして、陸軍率いる降下部隊は1部隊14人で9つに分かれ、残りは待機することとなった。
一ノ門:蠍座クレハ
「来ましたね」
槍を支柱に舞を踊るクレハが、舞い続けながら門をくぐった者達の方をチラリと視線を投げる。
「小娘一人か」
「なぁ、この門って相手を殺さないと駄目なのか?」
部隊の1人が下卑た笑みを浮かべながら、クレハを舐めるように視線を向ける。
「殺す必要は無いですね。まぁ、そもそもの話、貴方達の攻撃が私に通用するかは知りませんけどね」
そう言いながらも、クレハは舞を止めない。
「はっ!その挑発乗ってやるよ!」
クレハの言葉を挑発と受け取った彼等は、その手に神器を構える。
「陸軍所属、対魔獣第1連隊隊長、鈴木蓮司。人器顕現、剣滅ローバ」
「同じく、対魔獣第1連隊副隊長、向坂蓮井。人器顕現、剣跡レリア」
「同じく、対魔獣第1連隊副隊長、尼崎遼平。人器顕現、弓糾アルバ」
「ギルド『荘園』所属切り込み隊長、桃井碧。人器顕現、蹂躙鎌ロロ」
「同じく『荘園』所属財務担当、桃井朱音。人器顕現、蹂双剣ナナ」
「ギルド『学園』生徒会副会長、新藤誠。人器顕現、転拳アル」
14人中6人が人器持ち。
ここで少し神器と人器の違いを説明しておこう。
神を宿したり、神の力の一部だったり、神に連なる武具を神器と呼び
人の想いが形になったものを人器又は人想器と呼ぶ。
神器と人器では、保有魔力に大きな差があり、神器固有の特殊能力を発動し続けることが出来ない。
「少しは楽しませてくださいね」
クレハは微笑みながら、『クイーン』を目の前の地面に突き刺す。
「開演」
『クイーン』の穂先を覆う布が、クレハの体を覆う。
そして、一瞬光ったと思えば、その体は巫女服に覆われていた。
「いきますよ」
呼吸も予備動作も無しで、後衛の1人を穿つ。
「あら?」
あまりにも呆気なく、簡単に殺れた事に、クレハは首を傾げる。
「後ろの方々が反応できないのは仕方ないとして、貴方達6人が反応できないのはどうなんですか?」
クイーンで穿った敵をそのままぶら下げ、振り返る。
「あぁそうでした。『開演』の間は動けないんでしたね。面倒なので後ろの方々にはここで脱落してもらいましょう」
開演の間は、神器持ちか人器の能力で打ち消す、人器との親和性を高めておく。このどれかで対処できない限り、停止した世界で動くことは出来ない。
死体を1つ振り払い、
「禍津星」
残る7人を視界に収め、槍を横薙ぎに振るう。
そうすれば、7人の体が1箇所に引き寄せられ、押し潰される。
「あ、玲音様の為に血だけでも残すべきだったかも?まぁ、そこの6人から頂きましょうか」
色の失われた空間で、クレハは王のことを考える。
「幕開け」
石突きで地面を軽く叩く。
すると、周囲の失われていた色が戻り、時を刻み始める。
「どこに行った!?」
「後ろです」
「なにっ!?」
いきなり目の前から消えたクレハを探し、キョロキョロする情けない姿を晒す鈴木に、クレハは自分から声を掛ける。
そして、振り向いた先で驚愕する。
「貴様、後ろにいた者達はどうした」
「見て分かりませんか?」
「ッ!」
鈴木は脚力を強化し、一足でクレハに肉薄する。
「フッ!」
上段からの振り下ろし。
それに合わせて、向坂蓮井が背後を取り、横薙ぎに振るう。
その連携をクレハは、上段の『ローバ』を受け流し、横から迫る『レリア』にぶつける。
バックステップで距離を取ろうとしたところを、桃井碧の鎌『ロロ』が襲いかかり、逃げ道を塞ぐように、尼崎遼平の『アルバ』から放たれた矢が無数に降り注ぐ。
胴を両断しようと迫る『ロロ』に対し、『クイーン』で下から上へと流し、体勢の崩れた碧を掴み、上空へ投げ盾とする。
「ぐぅっ」
矢を受け、くぐもった声をあげるが、すぐさま体勢を立て直し、空中から唐竹割りの要領で鎌を振り下ろす。
その攻撃を避けようとするクレハの体を挟むように、桃井朱音の『ナナ』が迫る。
朱音の体に隠れるように新藤誠が潜み、避けた時に備える。更には他の3人も、どうなってもクレハを包囲できるように位置取る。
「一幕・紅」
突然クレハの体を焔が包み、鎧となり攻撃を防ぐ。
そしてその熱量に、堪らず碧と朱音と誠は下がる。
「即席にしては良い連携ですね」
槍を自身の体を軸に一周させる。
その軌跡をなぞるように、焔が現れ浮遊する。
「一幕開焔・獅子王」
その焔が、クレハの体を覆う鎧と一体化し、クレハの横に獅子を形取る。
「おいおい、なんて暑さだ」
「あの焔が出てきた瞬間から、温度が上がってねぇか」
蓮司と蓮井が水の膜を展開しながら、仲間達を見渡す。
碧や朱音達も、同じように水の膜を展開しながら、何時でも動けるようにクレハを睨んでいる。
「焔獅子、喰らいなさい」
「グルォオオ!」
雄叫び1つ。クレハの命を受け、焔獅子が駆ける。
「回避しろ!」
蓮司の声に反応し、全員が迎撃でなく、回避を選択する。
すれ違いざまクレハは仕掛ける。
「爆ぜろ焔獅子」
ドゴォォォォォォォォン
丁度6人の中間地点。溶岩に匹敵する焔が全員に襲いかかる。
圧倒的熱量で水の膜は蒸発し、彼等の肌を焼く。
酸素がある限り、焔は纏わりつき人を焼き殺す。
「仕留めなさい。焔獅子」
豊富な酸素によって勢いを増した焔から、余剰分を使って生み出された『焔獅子』が襲う。
その数6体。1人につき1体。
殺られまいと攻撃を仕掛けるが、纏わりつく焔が威力を削ぎ、焔の体が獅子への攻撃を無かったことにする。
「滅せよ!」
そんな中、蓮司だけが焔を祓い、獅子を退けた。
しかし、遅すぎた。
「一幕終焔・焔焉」
獅子に襲われてい5人も含め、全員に天より焔が落ちる。
その焔は身体を透過し、内部より対象を燃やし尽くす。
「如何にあなたの人器が、対象を滅する絶大な力を持っていても、自身の内部には向けれないでしょう?そして、その力はもっと早くに使うべきでしたね。他の方も手加減なんてするから死ぬのです」
もがき苦しむ姿を眺めながら、クレハは扉を破壊し脱出する。
「あ、玲音様への血」
思い出したように呟きながら。