いや、取り敢えずって事で……ね?
続きます?
「物語のヒーローにはやっぱり隠された力が必要よ!!」
それが奴の今日の一言目だった。
ため息を一つ吐く。
どうせいつもの事なので大した驚きはないものの、それでも疲れるものは疲れると実感出来てしまったのは果たしてどれくらい前の事になるのだろうか?
と、実に無駄な思考をしてみたりする。
「で、詳しく説明してみ?」
そうすると奴はない胸(AA)を反らして、時々思うが奴は自虐気質なのだろうか?
ない胸を態々誇張するとは……恐るべし
「ほら、よくあるでしょ。実は主人公には隠された力があった、とか周りの人には隠していたけど実はこんな力が~ってやつよ、ああもう鈍いわね、この鈍チン愚図のろま!!」
此処は怒っていいところだろうか?
提案その一
怒涛の如く怒れ、そうする権利は我にあり、ってか怒るのが当然だこんな暴言吐かれて黙ってられる程人間出来ちゃいないぜっ
提案その二
いつもの事なのでスルー
「亀よりもナマケモノよりも、むしろ昨年の干支が入った年賀状が十三年越しに届くのよりも遅いのは分かってますから、俺にもわかるように説明、どぞ?」
「仕方ないわね。なら愚息のあなたにも分かるように説明してあげるから耳の穴に拡張器を取り付けて聞きなさい」
いや、補聴器じゃなくて拡張器……マジすると鼓膜破れますって、それ。それにお前は俺の母親でもない。
でも口では言わない俺。いやー、賢いね
「何か言いたそうな目……ま、いいわ。それよりね、技なのよ、隠された力なのよ、ヒーローなのよ!!ああ、何でここまで言ってあんたは理解しないの出来ないの!?いや、即行理解しろ!!」
「無理。して欲しいならせめてまともな説明をしろ」
「…白けるわね」
「むしろ白けろ。それでやっと常人並みのテンションに落ち着くはずだ」
「………いつになく冷たいわね、愛が足りないのかしら?」
「いや、愛なんて要らんし、俺はいつもこんなものだと思うがね。それで冷たいって言うんならお前一度冷凍庫で冬眠して来い。そうすれば少しは俺の事が温かく思えるぞ……多分」
「そんなっ、昨日の夜はあんなに二人で燃え上がったじゃない。忘れたとは言わせないわよ!!」
「誰が忘れるか、誰が。そもそも俺がこんなにテンション低いのだって元はといえばその所為だろうが。お陰で寝不足だ」
「だらしないわね、たかが一日徹夜した位で、お前は年寄りか、じじいか、ばばあか、いやあなた実は宇宙人ね!?それで夜に街中を徘徊して人を攫っては喰い、攫っては喰い……くっ、どうして今まで気付かなかったの、私!!」
「一体何処からそんな………あー、もう宇宙人でいいからさ。そもそもの説明を、いやそれももういっか。じゃ、寝るわお休みぐ~」
「早っ!!ってか起きろこの馬鹿!!」
「ぐっ、頭を殴るなよ。これ以上コブが出来ても俺は責任取れないぞ」
と、奴の顔が真赤に染まる。何故かって?それは秘密だ。
「あ、いや、その…………私が悪かった、わよ」
「それでいい。じゃ、俺はまた寝」
「だから寝るな!!そもそもあなたが寝ようとするのが悪いのよ、そうよそうに決まってるわ!!いや今私が決定する。あなたが悪い」
いつの間にか俺が悪者になっていた。まあ、いつもの事だけど。
「……ならさっさと言いたい事を言え、そして寝させろ」
「だからヒーローよ、隠された力なのよ!!」
「一体何の話だ?」
「ヒーローになるための鉄則よ。私は昨日悟ったわ、友情、愛情、でも何より隠された力なのよパワーなのよ」
「ほぅ」
あれか、昨夜から今朝方まで見続けたヒーロー物の特番(しかもOP、ED、CM、次回予告無しの二倍速)を見て辿りついた結論がそれな訳だ。
俺も悟ったよ、お前、絶対馬鹿だ
「と、言うわけであなた!!」
「何だ?」
「ヒーローになりなさい、そして隠された力を発現させなさい!!」
「いや、無理。ってかんなもんねぇ」
もし有ったとしたら俺の方が見てみたいね、いや、勿論そんなもの無いけどさ。
「ふんっ、そう言うと思ったわ。でね、私は考えた、宇宙が出来てから今までで一番考えた、それこそカマキリが獲物を狙うが如く!!私の頭脳は一秒で結論を出したわ」
「随分と早いな」
「隠された力が無いのなら隠した力の方を身に付ければいいのよ、というわけで早速あなた、力を身につけて来なさい!!さ、行けそして帰って来い、それはさながら不死鳥の如く!!」
「嫌だ」
「なっ!?」
「ってかさ、お前が知ってる時点で隠すも何も無いんじゃないのか?」
「し、しまった!?そ、そうよね、私が知ってたら隠すも何も、秘密でもなんでもないじゃない。それじゃヒーローじゃなくて間抜けな道化になり下がるわ、いえ、そんなの認めない!!」
お前の方が十二分に道化だと思うががね、俺は。
「そうよ!!さすが私、いい事を思いついたわ」
「聞かないぞ、だから言うな」
「私を殴りなさい」
「断……いや、引き受けよう」
ふっ、いい機会だから思い切り日ごろの鬱憤…は溜まってないな。期待がない分ストレスもない、って感じだ。
まぁ、本人が殴ってくれと言ってるんだから理由なんてどうでもいいことか。
「分かってるわね?思いっきり、手加減なんてしたら許さないわよ、それこそ私が記憶喪失になるくらい強く殴りなさい、むしろこの私を記憶喪失にしろそして隠した力を身につけて来い!!」
なるほど、そういうわけか。
「なら、遠慮なく……」
ちょっとそこらの器物を拝借して、
「いや、ちょっと待ちなさいよ。私は殴れとは言ったけどそんな、金属バットなんて聞いてないわよ。い、痛そうじゃない」
「だから痛くするんだよ、記憶喪失になるくらいにな」
んでもって俺は晴れて自由の身、快適な睡眠を取れると言うわけだ。
「じゃ、往くぞ~」
「ゃ、ちょっと待ちなさ…っ!!」
「……………」
いい。何だか知らんがすっごく気持ちいい。胸の内がすっとするね、思わず癖になっちゃいそうなくらい。
「な、な、なななな殴ったわね!?この私を、お父様にも、お母様にも、誰にも殴られた事がなかったこの私を、殴ったわね!!」
「いや、お前が」
「黙りなさい!!言い訳なんて聞きたくないわ。あなたは私を殴った、それだけが意味ある事であり愚かなあなたの罪なのよ、死に晒せ!!」
「っ!!待て、今お前本気だっただろ、そうだろ、あんなもの当たったら絶対に死ぬ、少なくとも俺は死ぬ。お前俺を殺す気か!?」
「殺す…?殺すなんて生ぬるいわ。私を殴った事を一生後悔させてやるんだから……素直にそこになおりなさい!!」
「誰がなおるか!!俺が死ぬ位だったら逆にお前を殺してやる」
「ころ、私を殺すって言ったわね、今言ったわねいえ聞いたわ。う~、我が家の家訓は『殺られる前に殺れ』よっ」
「いや、ちょ、待て。一生後悔させるんじゃなかったのか!?」
「そうよ、一生後悔させてやるんだから!!」
「……本気か?」
「本気に決まってるでしょ!!」
「なら、仕方ないな」
「へぇ、ようやく覚悟を決めたのね。いいわ、私も鬼じゃない。一刀の元に切り伏せて上げ、いえ生ぬるいわね。爪を一つ一つ削ぎ落とし、皮を剥いで歯を抜き目玉を取り出し……何、命乞い?」
「いや、違う」
「なら何のつもりよ?」
「一生、後悔させてもらおうと思ってな」
「何を…っ!!」
「どうだ、俺を一生後悔させてくれ」
「なななななななななななななななななななななななななななななな、なぁ!!!!」
「と、言うわけで俺はもう寝る。後はお前に任せた」
「………………………うん。私、頑張るね?」
「っ!!」
さ、寒気が……
「じゃあ、寝てていいよ?」
「あ、ああ」
「―――――一生、寝ろ」
「っ!!!こ、殺す気かー!!」
「死ね!!殺す!!殺してやる!!この好色男色色魔すけべ変態うわきものさいてー野郎みじんこカスクズ下種……ぜーぜー」
「…息切れするまで叫ぶか、普通」
「っ!!っ!!っ!!!!」
「やめ、止めろ。こらっ」
◇ ◇ ◇
「お二人とも元気ですね~」
「いや、元気なのはいいんだけどさ」
「はい、元気なのは良い事です」
「いや、ね。時と場合を考えて欲しいかな、って僕は思うんだよ」
「時と場合、ですか?」
「うん、そう、っと。ほら、今僕たち戦闘してるじゃない?」
「はい、そうですね~」
「で、そんな中であんな雰囲気されてたら、ねぇ?」
「確かに、羨ましいです」
「はっ!?」
「わたしたちも、混ぜてもらいましょう?」
「い、いや待って……って、待ってくれるわけもないのね、とほほ」
◇ ◇ ◇
「おいこらお前等!!見てないでこいつを止めうを!?死ぬ死ぬこのままじゃ俺絶対に死ぬっておい!!」
いや、全然、続きませんけどね……。
何処かの誰かの、何とか風味な会話文。大した意味はないし、深い意味も浅い意味も御座いません。
あと、何か一言でも感想があると嬉しかったりします。