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選択死  作者: 雲散無常
第三章:奔走
25/137

3-4


 一つの歯車が回り始めると、連動して様々なものが動くことはままあることだ。

 特にその要の歯車の回転が早ければ早いほど、物事すべてが目まぐるしく過ぎていくのは必然だと言える。

 ウェルヴェーヌはここ一ヶ月の状況の変化で、まさしくそんな天変地異ほどの変革を目の当たりにしていた。

 まず、仕える主人が変わった。

 暮らしている町が災魔に襲われて、前領主が交替したからだ。ろくな主ではなかったのでそのことに不満はまったくない。新しいクロウという青年は転生人フェニクスで、以前の記憶を完全に失っているという数奇な出自ながらも、町のために尽力してくれている立派な人物だ。当初は成り行きで使用人を続けることになったが、今では主として尊敬している。

 次に、ベリオスの町そのものが様変わりした。

 災魔の襲撃によって半壊状態になり、その復興作業の代わりに新設する勢いで町そのものの在り方が変わっていた。町の地下に古代遺跡が見つかり、そこに転移魔法陣という古代遺物アーティファクトまで発見した。その価値は魔法研究において破格なもので、この調査権利を外部に売ることで完全に閉じた村社会だったベリオスの町は急速に発展したのだ。

 つまり、元々はオルランド王国に属する辺鄙な領地の一つだったベリオスの町は、大陸でも数えるほどしかない独立国家として認められたということだ。この変化は凄まじい。

 もちろん、そこに至るまでの道のりはたやすいものではなかったのだが、災魔をきっかけに現れた賢者オホーラのもと、前代未聞の計画が見事にはまったというしかなかった。その計画とはざっくりと言えば以下のようなものだった。

 何はともあれ先立つもの、資金が必要だということで、見つかったウィズンテ遺跡が最上級の古代遺跡であること、転移魔法陣が存在することを担保に、探索者ギルドを抱き込んで莫大な融資を引き出した。

 それを元手にギルドと関連する鍛冶屋、個人商会、奴隷労働者などを集めると、災魔に破壊された町の地域を特別区として、古代遺跡探索のための宿場町として再開発した。元の状態に戻すのではなく、完全に新たな場所とすることで外からの人々の受け入れ先としたのだ。

 同時並行で古代遺跡の中層、地下世界の入口には探索者ギルド主体で拠点を設営し、探索者たちが自由に探索できる環境も着々と準備されていた。

 こうした下地を整えつつ、ベリオスの町がウィズンテ遺跡の所有権を主張するためには各国に認められる必要があるため、招致して遺跡の存在を確認してもらうことも必須だった。この際に招いたのは、宗主国のオルランド王国と近隣の大国であるハグルスト王国だ。特にハグルスト王国は、中央大陸では現在ライリカ帝国と合わせて二大大国の一つで、この国に認められれば他国も追随するという目論見で重要な国だった。

 しかし、そんな大国が辺境にわざわざ視察しに来るはずもなく、従属国の一つであるニーガルハーヴェ皇国が名代として訪問することとなった。皇国もベリオスの町からすれば十分に有名で大国だった。

 距離的には一番近くに接するナゼン皇国もあり、そちらにも一応使者は送ったものの、興味はないとの即答があって断られていた。ほぼ鎖国状態で、そもそも大陸的に国として認められているかどうかも怪しい存在なので、今回はそのまま放置する方向だ。

 とにもかくにも、ウィズンテ遺跡の転移魔法陣の発見と言う手札を使って、しがない町の領主が常識的にはあり得ない他国の要人を招くという裏技を成し遂げた。

 しかもその離れ業はまだ続く。

 あの波乱の二日間を、ウェルヴェーヌは生涯忘れないだろうという確信がある。いや、ベリオスの町の歴史として後世に語り継ぐことは自分の中で決定していた。

 それほどまでにクロウたちが画策した交渉は、劇的で痛快なものだった。


 

 「本当に安全なんだろうな?」

 今日何度目かの確認をしてくるのは、オルランド王国のアッパータリヤー騎士長だ。

 無骨な顔立ちの背の高い男で、高価そうな鎧に身を包んでいる。威圧的な声質のせいもあって、ぎろりと上からねめつけられると大抵の者は委縮してしまうだろう。

 だが、何度でも同じ答えを言うしかなかった。

 「はい。問題ございません」

 ウェルヴェーヌは、自分でも少し疑問に思っていることを完璧に隠しつつ、賢者の言った通りに客人をもてなすことしかできない。

 「まぁまぁ、もうすぐ現地に着きますし、百聞は一見に如かず、ですよ。それに何かあったときのために、皆さんのような護衛騎士がいるのですから安心じゃないですか」

 いつもの軽い調子で付け加えるのはテオニィールだ。いつもはうるさいだけの存在だが、こうしたときの緩衝材役としては思いの外使えることが分かった。どんな相手に対しても物怖じしない精神の強さは、まったくブレない点で頼もしくはある。その影響の良し悪しは考えないものとしてだが、オホーラが何も言わない以上、かまわないのだろう。

 「何かあったら既に遅いだろうが。こんな場所まで連れて来て、はったりだったらただではすまぬからな……」

 「ふん、オルランドの騎士は臆病者と見える。この程度の場所でうろたえるぐらいなら、とっとと国に帰ったらどうだ?」

 挑発まがいに鼻を鳴らしたのは、ニーガルハーヴェ皇国のイスパーラ隊長だ。共に両国を代表する騎士団の長としての立場からか、対抗意識が強い。

 「何だと?その生意気な今すぐ口を閉じぬなら、この場で斬り捨ててくれようか」

 「おやめなさい、騎士長。ここに来たのは、他国と争うためではない。我が国の領土内の古代遺跡の検分だ。無駄な労力は使わずともよい」

 静かにたしなめたのはオルランド王国から派遣されてきたドネスク司教だ。王国の国教であるティラム教の長で、政務に関わる場合は宰相のような立場になる。王族ではなくドネスク司教を送ってきたのは、政治的な判断が必要だと分かっているからだろう。

 完全に放置していた領土から、宝の山が眠っていたという突然の報告だ。問答無用で管理するところを、先手を取られて他国やギルドを巻き込んでの発見報告とされてしまい、下手に動けなくなっているのが現状だ。内心ではご立腹なことは想像に難くない。

 「イスパーラ殿も悪戯に挑発することは控えなさいな。だいたい我が国の騎士団と比較すること自体が間違っていますわ」

 豪奢なドレス姿で優雅に扇を振りながら、エルカージャ皇女が微笑んだ。見事なプラチナブロンドの長い髪に透き通るような碧眼の美人の笑顔は、見る者すべてを魅了する。生まれついた気品と美貌は王族としてふさわしい雰囲気を身にまとっている。

 その一方で、四人の騎士が担ぐ御輿の上にいるため、どんなに上品で厳かに振舞おうと場違いなこと甚だしかった。

 ニーガルハーヴェ皇国の代表であると同時に、ハグルスト王国の名代だという重要な役が、なぜ第一皇女なのかと言えば、皇族の中で特に秀でた才女であるからだ。皇太子がいるために第一継承権はないものの、王の信頼が厚い実子ゆえに政務に重宝されている珍しい皇女だ。一般的には政略結婚の道具として他国に嫁がせるものだが、エルカージャ皇女は姫大臣などと呼ばれるほど有名な政治家でもあった。

 「はっ、御見苦しいところを見せて申し訳ありません。確かに、我が国と比べるまでもありませんでしたな。小国には小国の何かがあるのでしょう」

 小馬鹿にしたようなイスパーラの言葉に不快な表情を浮かべたオルランド側だったが、ニーガルハーヴェの方が強国であることは明白な事実なので特に反論はしなかった。

 ぴりぴりとした緊張感が微妙に漂う中、一行はウィズンテ遺跡の地下世界を進んでいた。

 転移魔法陣までの道のりは、事前に探索者ギルドの協力もあってある程度の整備はしてある。魔物除けの魔鈴ティブーナの配備がなされており、交易路などにも使われる代物だ。様々な形があるが、一般的には石灯籠と兼用で外側に吊るされており、魔物が嫌う周波数の音を慣らして遠ざける効果がある。

 共鳴も利用して等間隔に置くことでかなりの効果があるのだが、暫定的な配置な上に数も不十分だった。完全に安全性を確保できてはいないものの、道標代わりにもなって一石三鳥のような便利な代物になっていた。

 魔鈴はアテルにとって有害なのではないかと危惧していたが、アテルにはなぜか効かないようで「遺跡の魔物ヤーブヌへの効果はあまり期待できないかもです!」と不安を煽られたことは、客人たちには内緒だった。少なくとも気休めにはなる。

 検分役を務める二国の代表者を、危険な現地にまで連れていくというオホーラの案は当初は無謀だと非難されていたが、実際に目にして体験することでしか確証は得られないでしょうという正論で説き伏せ、道中の安全性についてはベリオス側で保証しながらも、自国の護衛は飾りなのかと婉曲的に挑発までしてみせてうまく誘導した感が大いにあった。

 賢者はそうした外交術も巧みだった。実際、対外的には外交大臣としての肩書を名乗っている。ある程度の箔がなければ相手にもされないためだが、たかが町の役人という時点でその効果は薄い。その点を補うためにギルドの仲介を初めから仕組んでいたとも言える。

 探索者ギルドそのものは当然ただの民間組織に過ぎないが、大陸全土にあって古代遺跡という重要遺産に関係しているため、各国とのつながりが強い。無視できない存在なのである。オホーラの先見の明はそこかしこに活きていた。

 そのギルドからの代表者としては、今回のためにわざわざサブマスターのグリゾーンが訪れていた。要するにギルドの副会長、ナンバー2ということでかなりの大物らしく、ステンドがかなり驚いていた。人前に現れることすらほとんどない人物で、このウィズンテ遺跡の重大さがどれほどのものか改めて思い知ったという。

 とはいえ、グリゾーンはミーヤと同様に全身を覆うローブの格好で、老齢らしいことは分かるが口数も少なく、人物像としては目の前にしても謎だった。その護衛役だという女性探索者のペレイラの方が存在感は上だ。赤毛で隻眼の美人で、その塞がった目の傷跡を隠そうともしない堂々とした風貌は否が応でも耳目を引く。

 そのペレイラが「止まれ」と先導をしていたステンドに短く命令した。

 同じ探索者ギルドの序列関係上、ステンドはギルドの上層部には逆らえない。

 時同じくして、他の敏感な者たちもその気配を察したのだろう。各々が自分の獲物を構えて周囲を油断なく見回した。

 ウェルヴェーヌも少し遅れてその違和感に気づく。左斜め前の方から何かが迫ってくるのを感じた。

 「魔狼の群れ辺りか?」

 「それにしちゃ、数が多すぎないか?少なくとも10匹以上はいそうだぜ」

 「報告にあったロスファの方じゃないのか?」

 最前線の探索者たちがざわめいていた。こうした魔物の襲撃も想定内ではあるので、一行に慌てた様子はない。

 「取り決めでは、自由に狩っていいということでしたな?」

 どこか嬉しそうにそう言ったのはアッパータリヤーだ。主にイスパーラに対して確認を取ったのは気のせいではないだろう。先程のことを根に持っていることは明らかだ。

 「ああ、この地の魔物のレベルを知るにはいい機会だ。我らも出よう」

 ニーガルハーヴェの騎士も不敵に笑って応じた。

 そのやり取りを見ていた探索者たちがどうすべきかとためらっていると、二国の騎士たちが飛び出していってしまった。

 ベリオス側としては招待客に対応させるのは悪手だと思うのだが、このこともオホーラから事前に好きにさせていいという通達があった。ゆえに、クロウたちは傍観している。ウェルベーヌにはどういう意図があるのか、この時には分からなかった。

 王国と皇国の騎士団たちは、それぞれに魔狼――狼系の魔物であるフェッカ――を数分で狩り尽くした。見事に統率の取れた連携で、自信を持っているだけあって見事な戦いっぷりだった。数十匹いたらしく、その死骸を誇らしげに担いで、自らの武勲を誇っていた。

 「こちらは八匹だ。貴君らはどうだね?」

 「……ちっ、七匹だ。初動で後れを取っただけだがな。先手を取ればこちらが勝っていた」

 悔しそうにアッパータリヤーが舌打ちした。わずかな差でニーガルハーヴェの方が倒した数が多かったようだ。

 「それもまた鍛錬の差ではあると思うがね。それにしても、この程度の魔物なら問題はなさそう――」

 イスパーラの言葉は途中で止まった。

 更なる新手が一行の前方から現れたからだ。その巨影が石灯籠の薄明りに照らされる。通常の魔物の大きさではない。

 「何だ、あれは……?」

 「いつのまにっ!?総員、防御の陣・三だ。司祭様を守れ」

 「ならば、我らが打って出る!皆の者、私に続け!」

 イスパーラはフェッカを投げ捨てると、戻ってきて早々、すぐにその魔物へと駆け出して行った。いがみ合う騎士団たちだが、こういうときの判断は早い。

 探索者たちも今回はその騎士団に続いた。

 相手が強敵だと知っていたからだ。一度遭遇して苦戦した魔物らしいことが、彼らの会話から漏れ聞こえた。

 それらは当然、エルカージャ皇女にも届いている。

 「あの魔物は何なのですか?遺跡の魔物らしいことは分かりますけれど」

 比較的近くにいた探索者ギルドのグリゾーンが短く答えるが、小声過ぎて聞こえない。その護衛のペレイラが代弁した。

 「新種の魔物だ……です。前回の戦闘で重軽傷者が幾らか出た……ました。それなりの強さが、あります」

 その声は低めだがよく通り、敬語は苦手なことは分かった。

 「いえ、そういうことではないですわ。どのような分類に入るのか、と聞いたのですわ」

 「なるほど。失礼。皇女殿下がそのようなことに関心を持つとは思わず……種族的には魔法生物になるかと思……います。影のような化け物です」

 「魔法生物……では、あまり物理攻撃は効かないのでは?」

 「……知識があるようですね。確かにその通りで、魔法攻撃の方が有効――っと、何を?」

 エルカージャ皇女は御輿の上で徐に立ち上がり、祈るように両手を組んだ。その指の幾つかには指輪がはめられていて、魔石らしきものが仄かに輝き出す。

 「わたくしも戦えるからこそ、ここまで同道しているのですわ。魔法ならば得意分野ですの」

 攻撃魔法を放つ気らしい。顔に似合わず、お転婆なところがあるらしい。淀みなく詠唱をしているその様は、決してはったりではない熟練者の雰囲気があった。

 皆が注目している中、やがてその魔法が発動した。

 氷系の魔法のようで、巨大な影の上部が急激に冷やされたのか、凍り付き出した。

 ニーガルハーヴェの騎士たちは勝手知ったる様子で「姫様の魔法の援護だ!」「今が勝機っ!」と気合いの声を上げて攻撃の手を強めた。それに釣られるようにオルランド側の騎士たちも雄たけびをあげて追随した。魔法攻撃が有効なことはそれぞれが気づいていたようで、激しく魔法が飛び交って辺りが明るくなったほどだ。

 その甲斐もあってか程なく戦闘は終わったものの、その巨大な影の魔物の残骸が道を塞いで、その撤去にしばしの時間がかかった。

 魔鈴の効果は一定の魔物レベルにまでしか効かないということが、今の襲撃で完全に露呈した。

 「今後は、魔鈴の魔力向上が必須のようじゃな」

 「だが、今以上の魔力を蓄積となると、石灯籠の魔力の底上げが必要になる。根本的なところから作り直しということになる……」

 「やるしかあるまいて。逆に、他の最上級の古代遺跡ではアレで十分なのか?」

 オホーラは探索者たちと地下世界の現状に関して話し合っていた。これからも探索を続ける以上、安全性を考慮するのは当然の対応ではある。

 そんな会話を遠目に聞きながら、ウェルヴェーヌはクロウの側に控えていた。

 すると、エルカージャ皇女がなぜか自ら歩いて近づいて来た。

 「クロウと言いましたわね、あなた」

 「ああ。何だ?」

 「なぜ、あなた方は先ほどの戦いで何もしなかったのかしら?自ら招いておいて、客人に戦わせるのがそちらの礼儀なのかしら?」

 少し眉を吊り上げながら、皇女が問いかける。怒っているというよりは、不満を表明しているといった表情だった。大国の皇女からそのような皮肉の言葉を受ければ、委縮してすぐに謝るのが普通だが、クロウは違った。

 「あの程度は自分たちでどうにかできるだろう?これから、この場所で研究をするんだ。いざってときのために環境を知らなけりゃどうにもならない。その機会を奪っていいなら、いくらでも肩代わりするが?」

 おそらく想定内のやりとりだったのだろう。クロウは淀みなく即答した。予想外の返事だったのか、エルカージャ皇女は一瞬固まったように見えたものの、すぐに立ち戻る。

 「こちらを試したと言うのかしら?なかなか大胆なやり方ですわね。王族に対して不敬だとは思わなかったの?」

 「思わなねえな。俺は転生人なもんなんでね、階級とかは良く分からねえ。それよりも、この大陸じゃ実力がすべてだって聞いている。だからこそ、俺なんかが領主になっているわけだしな。力を示さない奴が何を言おうと響かないだろ?」

 明らかに皇女に対する態度と言葉遣いではなかった。

 側に控えていた護衛の騎士が無言で剣を抜く。皇女付きのシリベスタ近衛騎士長だと名乗っていた者だ。ほとんどしゃべらない上に顔を覆う兜をかぶっていたため、性別も分からなかったのだが、静かに響いたその声は女性のものだった。

 「それ以上の無礼な対応は、貴様の死を持って購ってもらうことになる。口を慎め」

 「おいおい、迂闊に剣を抜くなよ。今はまだ相手にするつもりはないんだ」

 「何だと?」

 「姫さん、こいつを下がらせてくれ。恥をかかないうちにな。俺たちがどの程度のもんかは、どうせもうすぐ分かる。焦ることはない」

 「わたくしに命令できる立場だと思っているんですの?シリベスタ、分を弁えさせ――」

 クロウの忠告が無視された瞬間、その身体が近衛騎士の背後に回り込み、その剣を奪っていた。あまりの速さにまるで手品が行われたようにしか見えなかった。

 「くだらない権力の誇示はやめろ。実力を見せなきゃ、誰も納得はしないぜ」

 「―――っ!?」

 騎士にとって剣を奪われることは最大の屈辱の一つだ。わなわなと震えて何も言えないシリベスタに、クロウは何事もなかったかのようにその剣を返すと踵を返した。

 それ以上その場に留まると厄介になると判断したのだろうが、既にやりすぎな気がした。

 ウェルヴェーヌがそれをそっと尋ねると、

 「まあな……魔法陣のところまでは従順にしてろって言われてたのを、ついさっき思い出した」

 やらかした認識はあるらしい。

 まだ目的地までは半分ほどだ。この先が不安になる長さだった。

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