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報告会 その2

アルファポリスに掲載してるサブタイトルと変えたんだけど…どっちがいいんだろうか

イチが九天神を円卓型の机の前に設置している椅子に座らせ、その補佐役である者達をそれぞれの右隣に立たせ、早速本題に入った。


「さて、じゃあまず…」


暗く重く冷や汗をかくような空気が漂う。


息を飲み、目を開き、イチの言葉を今か今かと待つもの達。


「今月の各部署への資金争奪戦を開始する!!」


「「「「いぇーーーーーーーーーーーい!」」」」


九天神の殆どは立ち上がり、勝つ為の準備をしたりしていた。


「前回の雪辱…果たしてみせる」


「頑張ってください!セイ様!」


「今回も、私達セント・ゴットが勝利する」


「へっへー!まっけないよー!!」


そういえば、報告会の事で伝え忘れたことが一つ。


この報告会で、最初の議題は必ず#今月の各部署への資金__・__#である。


財政難という訳では無い。貿易も上手くいってるし、他国から何か危機的状況を迫られている訳でもない。


ただ、遊び心を持ちたいからという理由で始まったのがこの#『報告会資金争奪戦』__ほうこくかいしきんそうだつせん__#である。


勝負の内容は、非常にシンプルかつ恨みっこなしの真剣勝負に持ち込めるゲーム。


#『ジャンケン』__・__#である。


#工業地帯__こうぎょうちたい__#


#酪農住民課__らくのうじゅうみんか__#


#魔術魔法薬研究開発局__まじゅつまほうやくけんきゅうかいはつきょく__#


#狙撃部隊__そげきぶたい__#


#王国守護者兵団__おうこくしゅごしゃへいだん__#


#セント・ゴット__セント・ゴット__#


チーム#踊り子__おどりこ__#


そして、セプテム率いる#大和貿易船団__やまとぼうえきせんだん__#


これらの八つで争われる、ジャンケン。


目が合ったらとにかくジャンケンし、負けたら座り、最後まで残っていた所に予算を少し多く与えることとなっている。


参加者は、工業地帯からこれまでの戦績、十五戦二勝十三敗の『ツー』


酪農住民課からは、十五戦一勝十四敗の『ニョーナイ』


魔術魔法薬研究開発局からは、十五戦十五敗の『セイ』


狙撃部隊からは、十五戦二勝十三敗の『ビェールィ』


王国守護者兵団からは、十五戦一勝十四敗の『トロワ』


チーム踊り子からは、十五戦十五敗の『エムパト』


大和貿易船からは、十五戦一勝十四敗の『ミッシレ』


そして、この企画最大の敵であるのが、セント・ゴットからの、十五戦八勝七敗の『アハト』


幸運なのか狙っているのか…。セント・ゴットはこれまでどんな負け確試合を塗り替えし勝ちへと導いてきた。


「ふっふっふっ、それこそが僕のジャンケンりょ」

「あ、勝った」

「にゃにぃぃー!!!!!」


ジャンケンの途中で喋っていたせいか、一回目の魔術魔法薬研究開発局との一戦目にして負けてしまった。


「そ、そんな。昨日あれだけ#幸運の予約__グリュック・レゼビールング__#してたのに…なんで??」


「それはな…アハト。俺達が遂にこの魔法薬を完成させたからだ!」


#幸運の予約__グリュック・レゼビールング__#とは、その魔法をかけた対象者は、かかったその日は、不運にみまわれる日になってしまうのだが、その次の日はかかったその日で使う筈だった#幸運__・__#を任意で使えることが出来る。


つまり、その日に飲むはずだった一杯のコーヒーをその日の幸運だと見立てて、次の日に飲むコーヒーに入れ溜め込むことだと考えてくれれば多少分かりやすくなる…はず。


そして、セイの使った魔法薬とは、意図的に#ゾーンを作り出せる__・__#魔法薬だ。


人には#脊髄反射__・__#と呼ばれるものが存在する。


熱いヤカンとかに指を触れてしまい、#脳が考えるより前に__・__#手を引っ込めてしまう事を言う。


通常、それを人間の脳で任意に越えられることの出来るスピードというのは、ある状況下でない以上は無理である。


その状況下というのは、テニスやバドミントン、ボクシングなどのスポーツでよく見られたりするかもしれない。


これらのスポーツなんかでは、眼が慣れれば脳で予測し目で追いかけ、身体に伝達するをしていると思うが、一定の集中力が保たれたりしたその時このようなことが起きる。


『身体が勝手に動く』


これは、脊髄反射とは全く異なる…。所謂#ゾーン__・__#と呼ばれるもので、集中力がかなり高い時や調子のいい状態が続いた時に起きる現象なのだとか。


#脳で考える__・__#ではなく#脊髄で動いている__・__#と考えた方が、まだ楽なのかもしれない。


因みにこれを書いている作者はとうに考えるのをやめているので、皆も考えずに読もう!


「これこそが俺と…いや、魔術魔法薬研究開発局で生み出した新たな魔法薬…。その名も#リヴェルベロ魔法薬__・__#だ」


「あ、あぁ…僕のオシャレ資金…」


「金庫から余分に持ち出してた金はそういう事か貴様!!」


「うわぁぁん!ラヴちゃんが怒ったぁ!!」


怒るのも当然である。セント・ゴットは、基本国に存在する教会の運営や、戦争から逃げこの国に辿り着いた者達への救済金としてその資金を使っている。


通常は、ちゃんと見積もって使っていれば、どの部署も足りる額が手に入っているはずなのだが、どの部署でも、#それ__・__#を守らない者がいる。


その筆頭こそが『アハト』なのだ!


「よっしゃぁあ!!!師匠!やったぞ!」


「…あ、あぁ…。セプテムの姉様…申し訳ねぇ」


あちらこちらを見てみると、一回戦目勝ち上がったのは、どうやら『工業地帯チーム』『酪農住民課チーム』『王国守護者兵団チーム』そして、『魔術魔法薬研究開発局チーム』


「…今日も勝たせて貰うね!トロワお姉様!」


「はん!ちびっ子が私に勝てるわけないんだよ!」


「……大人気ない会話してるなぁ…向こうは」


「あ、あっはは…そうっすね…」


第二回戦目は『工業地帯チーム』VS『王国守護者兵団チーム』と『酪農住民課チーム』VS『魔術魔法薬研究開発局チーム』となった。


(大丈夫…この魔法薬の効き目は十分間…まだ五分しか経ってない今…俺の方が勝ち目がある!)

(……なんて、思ってるのかしらね…セイちゃんは)


チウが何故Lv1のニョーナイを自身の右腕として置いているのか…それには、この世界における絶対的ルールが関わっていた。


それは…Lvが低い者の方が高い者と比べ#スキル__・__#を獲得しやすい傾向にあるからだ。


何故そうなっているのかは、現在様々な説が出ているが、今その説は関係ない。


今、関係あるのは、そのニョーナイのスキルである。


イチの掛け声が聞こえる


「ジャンケン…ポン!!!」


(よし!ゆっくりに見える!ニョーナイ!俺だってコレールに怒られたくない!…何も変化をしない…グーか!)


セイは、まるで時が止まっているように見えているのだろう。


だがしかし、セイのその光景は、時が止まっている#ように__・__#見えるだけだった。


セイは頭の中では、その時が止まっているような時間の中で、#自分はパーを出している動きをしている__・__#と思っているのだろうが、実は違う。


#セイ自身は最初のグーの形から何もしていないのである__・__#


(セイさん…かかったっすね

…私のスキル『#思い込み__・__#』)


そう、それこそがニョーナイの唯一無二のスキル『#思い込み__・__#』


相手がニョーナイ自身と目を合わせた時のみ発動するスキル


相手が次にやろうと頭で考えた行動を#取らせている様に思い込ませる__・__#のがこのスキルである。


パーを出そうとしていたとしても、頭では思っていても、実際ではそのスキルを使われた対象者は、元の手の形…つまり握り拳であるグーを出してしまったり


えーと…〇ョルノ・〇ョバァーナの『鋭い痛みをゆっくり味わう』時のブチャ〇ティみたいな感覚というか…。


つまりそういう事である。


「……な…なんで俺はグーを…?」


「ふっふっふっ…これこそが私のスキルの真骨頂っす!!」


訳も分からない顔をしているセイ。いくら君が主人公だからって、いつも都合よく勝てたりしないんだぞ!


「やっぱり開発を早めた方がいいですかね…スキル封印の魔法薬」


「かなり難しいけど…やっとくべきか?」


「アーッハッハッハッハー!!!どうですか!私のスキルこそが最強であり無敵なんすよー!!!」


「そんなのいいから、円卓から降りろよニョーナイ」


「あっれ~?ジェムさんったら…もしかして私のスキルに嫉妬してます~??」


円卓に乗りながら、ジェムを煽り勝ち誇っているニョーナイ。


だが、ここにいる殆どは、ニョーナイのジェムへの片想いを知っているので大目に見ているが…ジェムだけは、やっぱりこいつは一発殴らないとダメなのか?と思い始めている。


「じゃあ、最後は私とだね!」


「あれ、トロワさんに勝ったんですか?」


「うんっ!トロワお姉様に勝ったよ!」


と、誇らしく言いながら、ピースするツーを部屋の端っこから体育座りで見ているのは、パーで負けたトロワだった。


「あっはっはっは!無様ねトロワ!」


「エムパト…一回戦で負けた私達の方が無様だぞ」


「そ、それは今言わない約束よンナァ!」


そのような会話が行われつつ、決勝戦が始まろうとしていた。


片や、スキルを駆使し、先程のジャンケンも見事勝利したニョーナイと


王国きっての天才として、工業地帯を任されたツー。


「では、これに勝てば資金upを物に出来るから、

頑張ってね」


「よーし!負けないぞ!」


(大丈夫、私のスキルは無敵っす!)


「…ジャンケン…ポン!」


二人の手が空を切る。


負けないという意地を見せるこの戦い。

いったいどちらが勝つのか分からない。


(大丈夫…私のスキルは思い込み…最初からパーを出そうと思っても、現実ではグーのままから動けないはず…パーだ…パーを出すっす自分!)


「ツーちゃんは#天才__・__#だから勝てるぞー!」



「……な、なんで…#なんでチョキを出してるんすかぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!__・__#」


「はっ!引っ掛かったんだよ!ニョーナイ、お前は俺達工業地帯の発明によってな!」


そう言うと、ジェムは自信の右に置かれている白布が覆いかぶさっていた、荷台に積んである物の正体をばらした


デカく、すっごいメカメカしい見た目をしているそれは、例えるなら何処ぞの大怪獣ガ〇ラを思わせるような出で立ちだった。


「これこそは!俺ら工業地帯の血と涙とほんの少しの細胞から出来た代物!#スキル増大装置__・__#!!!!」


「な、なな、なんだってぇ!!!!」


#スキル増大装置__・__#とは、この機械の目の前で、機械の中に入っているメモリに該当したスキルが使われた場合、そのスキル効果を強化することの出来る機械なのだ。


メモリにスキルを入れる仕組みは、単純にそのスキル使用者の細胞組織を機械に覚えさせるだけでお手軽便利!


ご家庭に一台あってもこまらない!困ることは大きさだけ!スキル増大装置は19万8000円のところなんと!10万円でのご応募となります!是非お試しください!!


「そ、それでも…ツーちゃんのスキルは…はっ!」


「そう!私のスキルは#プラシーボ効果__・__#なのだ!」


プラシーボ効果とは、本来であれば#プラシーボ__偽薬__#という意味合いを持つのだが、ここでは違う。


他者から影響を受けた時、その影響で得られた自身ややる気をそのまま形として実現させるスキルである。


他の人が出来ないような事を

【君は天才だから出来るよ!】や【あれくらいなら、君でも出来るできるでしょ?】

と、煽られた時、実際は出来ない。出来るわけがないことをやってのけるのがこのスキルの凄いところである。


だからこそ、ツーは#機械への才能がある製造者__・__#から#全てに才能がある天才製造者__・__#として生まれ変われたのだ。


「まぁ?#天才だから__・__#ニョーナイのスキルを無効化してもおかしくないよね」


「くっ、だからあの時ツーちゃんにヤジを飛ばしたんすね…か、完敗っす」


膝から崩れ落ちるニョーナイを横目に、ジャンプしながら喜びを全身で表現しているツー。


その頭の中では、今日からお母さんと贅沢するぞー!という私欲だけがあるというのはここだけの内緒である。


「…それにしても、凄いねその機械は…スキル全部に対して使えるのかい?」


「いえ、細胞…まぁ、血とか皮膚とかをこの機械に入れなければ使えないんですけど…#量やメモリの問題__・__#もあるので、まだ改造しないとですけど」


イチは、その機械を指さししながら質問した。


量やメモリの問題というのは、細胞を多く入れればその分の超強化が期待できるのだが、それがまだ人体にどのような影響を及ぼすか分からないし


メモリも、今のところ一台で二~三人までしかストック出来ないので、こちらの容量の上限も改造していくことになっている。


「さて…じゃあジャンケン大会は終了として…では、ぼちぼち本会議をやっていこう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ツーの部屋』


「お母さーーん!見て見て、これ勝ったのー!」


「お帰り、ツー。あら?…ジェムさんもいらしたのですか?」


「あはは、なんだかすみません」


午後の六時まで続いた本会議も終わり、資金や書類を持って、ツー達はジルコンの待つ部屋へと帰って来た。


何故、ジェムも来たのかは、資金とスキル増大装置を工業地帯が所有する金庫に入れようと向かっていた所で、束になっている書類を持ったツーに捕まり、無理矢理部屋まで連れてこられたのだ。


「いえ、それは大丈夫ですけど…ツー、ちゃんと手を洗ってきなさいねー」


「はーい!」


「で、では私はこれで」

「待ってください」


ジェムが帰ろうとした時、ジルコンがジェムの裾を引っ張り、呼び止める。


その表情は、少し赤らんでいたように見えたがきっと気の所為だと自信に言い聞かせるジェム。


「どうしたんですか…ジルコンさん」


「あ…え、えっと…。これから晩御飯なので…良かったらご一緒に…」


「いっ!…いや、まだ仕事が」


「本会議のある日はいつも仕事休みにしてるじゃんジェムー」


唯一の逃げ道を遮られ、その遮った張本人を睨むが、部屋の奥にいる為その睨みは完全に無に終わった。


(くっそガキィ……はぁ。断るのも申し訳ないし)


「…はぁ、分かりました。じゃあお言葉に甘えて」


「まぁ…まぁ!よろしいのですか!じゃあ腕によりをかけますね!」


そう言いながら、資金や機械をツーの部屋の限界内に置き、ジェムはツーと共にジルコンの料理を手伝った。


その日は、ジェムの大好物だけが出たのだとか…。

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