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巡り求めて  作者: みおま ウス
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77 探索の旅(王国編-43)

「カカカ、まさかそんな所から出て来るとは思ってなかったぞ」


 壁を打ち破って現れたデミトールたちを迎えてもマーシ=セインは余裕を崩さない。


「それに思ったほど消耗してないなぁ。お前が奮闘したのかな? 槍使いの領主よ」

「ふっ、頼りになる仲間たちだ。貴様がどんな邪な企みを進めようとしているかは知らんが、ここで葬るために戻って来たぞ」


 デミトールは戦う気を見せながら、さり気なく逃走の経路を確認する。


「おっと、そうだ。今度こそ儂の力を返してもらわんとなぁ」


 デミトールの思惑を見抜いているようにマーシ=セインは右手を高々と掲げ人差し指を立てた。

 同時に入口へと続く通路が毒々しい色の粘性のある液で満たされた。


「お前たちが来た道へ戻っても良いぞ。行き止まりだがな。ここで儂と戦うか少しの間でも生き延びたいか、どちらか好きな方を選ばせてやろう」


 カカカ、と揶揄するような笑い声を上げるマーシ=セインに対して、デミトールたちが二手に分かれて対峙し戦闘は開始された。




 デミトールが槍の間合いを保ち高速の突きを連続で放つ。

 セステウスとライオホークはデミトールの攻撃を妨げぬよう注意しつつ敵の体勢を崩そうと攻撃する。

 聡慈は三人の攻撃の合間を縫って魔法を、時には山なりに、時には鋭く直線的に放つ。


 だがマーシ=セインはダメージを負う様子も無くデミトールの攻撃に集中して余裕で捌ききっている。


「カカカ、何も変わってないな。あまりに非力……何ともつまらんぞ」


 嘲笑と共にマーシ=セインの左半身から煙が噴出した。


「!」


 一度体験し危険性を認識しているだけあってセステウスたちの反応は迅速だ。

 一瞬で飛び退り、デミトールが追撃させないように敵との間合いを詰める。

 それでも煙の広がりは早く、アスクレスを除いた四人は煙を吸ってしまった。


「む、これはどうしたことかな?」


 デミトールは先程も平気だったが、今度は聡慈も動いている。

 そしてアスクレスと聡慈で早々にセステウスとライオホークの状態異常を治療してしまった。

 マーシ=セインは意表を突かれた様子でデミトールの攻撃を腕に掠らせた。


「どれ」

 しかしそんな傷など気に留めないと言わんばかりにマーシ=セインは聡慈に掌を向ける。

 直後聡慈の体は煙で包まれた。


「ふむ、やはり通じてないな。先程は儂を油断させるために金縛りにあったフリをしたのか。それにしてもお前、いくつの耐性を持ってるのだ?」

「一体いくつの異常を引き起こすのかは分からんが……貴様の言う耐性なら先程得たのではないかな」

「ふん、答える気は無いか。だがどうでもいいな。体は綺麗な状態で殺してやろうかと思ったが、ならば無惨に嬲り殺すまでよ」


 マーシ=セインの雰囲気が変わった。

 デミトールを大きく弾くと魔力を練り始めたのだ。

 マーシ=セインが手を振り上げると旋風が起こりライオホークを襲う。


「うわあぁ!」

「アッシュ! 魔法を使い始めたぞ、防御を固めろ!」


 回復役のアスクレスが戦闘不能にならないようにデミトールの指示が飛んだ。

 アスクレスは魔法の標的にならないように細かく走り回る。




 聡慈とアスクレスの活動量が一気に増えた。

 状態異常を引き起こす煙と魔法の波状攻撃でアスクレスとセステウスが頻繁に戦線離脱する。

 しかし放置してはマーシ=セインを抑える手が足りず、速やかに治療して早期に復帰させなければならない。


「ぐうっ」

「セス、引け!」


 瓦礫を巻き上げた旋風でセステウスが脚を負傷した。

 聡慈の指示でデミトールとライオホークがセステウスを庇うように位置取り、離脱したセステウスをアスクレスが治療をする。



「……!」


「リオが麻痺だ! 頼む!」


 煙を食らったライオホークが痺れて動けなくなったのを見て、デミトールとセステウスにフォローを頼み、聡慈がライオホークの麻痺を解く。



 綱渡りのような連携でマーシ=セインの攻撃を凌いでいたが、その分魔力の消耗は早い。


「アッシュ、今の内に魔力の水を!」

「は、はい」


 解毒や傷の治療で多忙なアスクレスの魔力はあっと言う間に枯渇に近づく。

 三人が無事な内に聡慈が盾となりアスクレスに魔力を回復させなければならなかった。



「煩わしい。雑魚の分際で粘りおる……」


 一方でマーシ=セインは苛立ちと困惑を感じていた。


(あの男は何だ? 回復して武術も使う……僧武か? いや、攻撃魔法と回復魔法を使っているな……法術士か? それにしては魔力が尽きぬな)


 彼が違和感を抱いたのは聡慈のことだ。

 剣術、体術、回復魔法、攻撃魔法と繰り出す技の幅が広い。

 彼の経験からすると、何でもできるタイプの戦士は同じ闘級の戦士と比べて、何をとっても劣るものだ。

 聡慈ほど使えるようになるにはかなり高い闘級にならねばならないはずだ。

 だがこれも彼の経験だが、聡慈は恐らく闘級が低い。

 恐らく十に至るかどうかというところだろう。

 つまり、今の聡慈の戦いぶりは有り得ないのである。

 それが彼の困惑の理由だった。


(まあいい。どのみちこの男か、槍使いの領主のどちらかを倒せばこの戦いは終わる)


彼は雑念を払い標的を絞り一気に畳み込むことを決めた。






 マーシ=セインが全体状態異常の煙を噴出すると同時にライオホークに斬りかかった。


「させるか!」

「カカカ、かかったな!」


 飛び込んでライオホークへの追撃を防ごうとするデミトールの動きは読まれていた。

 力を溜めた渾身の一撃でデミトールの槍を跳ね上げたマーシ=セインは、旋風で聡慈に牽制をすると共に、デミトールの腹を土の魔法弾と回し蹴りで打ち抜いた。


「ぐうっ!」

「カカカ! これでちょこまかした連携も瓦解だなぁ!」


 デミトールが地面に叩きつけられ転がっている隙に、マーシ=セインは凶悪な笑みを浮かべ聡慈に向かう。


「終わりだ!」




「貴様がな」


 ――決着を急ぐなら自分を狙ってくるはず――

 マーシ=セインの行動を読んでいた聡慈はライオホークたちが行動不能になっても、デミトールが一撃食らっても援護に行かず、向こうが自分を攻撃して来るのを待ち構えていた。


「むっ!?」


 既に構築を終えていた魔法陣はマーシ=セインを、本人が使っていたのと同じ旋風の魔法を発生させその渦に巻き込んだ。


「【流し斬り】!」


 そしてバランスを崩しつつも強引に斬りかかってきた相手の大鎌を剣で受け流し、聡慈は上段から相手の右腕に両手で剣を振り下ろした。


「ぐおぉぉっ!」


 聡慈の渾身の一刀がマーシ=セインの防御力を上回り、その腕を深く斬り裂く。

 更に聡慈の技能【反撃】がその右半身に追加の攻撃を加えた。


 まだ聡慈の攻撃は終わらない。

 反撃の大鎌を脚に食らいながらも、マーシ=セインの左半身に魔法を打った。


「何をした!!」


 今の魔法に直接の攻撃力は無い。

 それが尚更不気味さを感じさせたようだ。

 マーシ=セインは腐った左面を隠し大声を上げる。


「今だ!」


 だが相手の怒声に怯まず聡慈は叫んだ。


「なっ!? 何故お前らが!」


「【二影刃】!」

「【波震掌】!」


 毒や麻痺で動けなかったはずの二人が動いている。

 さらに先の戦闘では見せなかった技を出してきた。


「バカな! 何故儂が傷を負う!?」


 そして二人の技はマーシ=セインの左半身を傷つけた。

 驚愕する彼は気付いていないが、聡慈の魔法により防御力が低下していたのだ。


「デミさん!」


 聡慈はデミトールと視線を交わし左目を瞑った。


 デミトールはその意図を正しく受け、槍を繰り出した。


「はあっ【捻通牙】!!」


 彼の槍は周囲の空気を巻き込み巨人の槍のように何倍もの大きさになり、マーシ=セインの左目を穿った。

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