59 探索の旅(王国編-25)
「取り乱してしまい申し訳ありませんでした。先程の危ないところを助けていただいたこと、感謝いたします」
「僕からもお礼を。ありがとうございました。改めてご紹介を。こちらに御坐す御方は領主デミトール様の御子息、ルスカ様です」
泣き止んだ少年は右拳を胸に当て頭を下げる。
アスクレスは傍で片膝を突いたまま少年を三人に紹介した。
「お初にお目にかかります。ソウジ=イルマです」
「ライオホークです」
聡慈とライオホークは少年に倣い胸に手を当て頭を下げた。
「アコ町のザファの二男セステウスです」
セステウスは片膝を地面に突き胸に手を当て頭を下げる。
(そんな礼儀作法知ってたのかよ!)
ライオホークはギョッとし、同時に苛ついた。
(だったらソージ先生にも礼儀を尽くせばいいのに!)
「まあまあ、こんな所ではまた何が起こるか分かりません。場所を変えましょう」
ライオホークの気持ちを知ってか知らずか、アスクレスはルスカの手を取り歩き始める。
三人もそれについて行った。
ルスカは領主デミトールの末子である。
兄と姉が部屋から出られない状況下、彼だけはまだ九歳と幼いせいかある程度の自由はあった。
しかしそれも先日までのこと。
彼を兄姉同様に幽閉する計画を知った家臣により、彼は館から脱出させられた。
――兄、姉からのある使命を帯びて――
護衛と共に館から出たが、やはりすぐさま追手は放たれた。
護衛はルスカに待ち合わせ場所を伝え、追手を引きつけた。
ルスカは逃げ、待ち合わせ場所へと向かった。
しかしその途中追手の一部に見つかってしまう。
危うく捕まりそうだったが、そこに現れたのがアスクレスたちだったのである。
荷物と食料を回収し野営の痕跡を消した後、ルスカの案内で待ち合わせの場所へと向かう。
目立つ大きな岩が三つ、百メートルぐらいずつ離れて聳えている所に来た。
「三つ目岩……この辺りのはずなんだけど」
三角形をなした岩の内、最も南側にある岩の陰で待っていれば良いと、ルスカは聞いていたらしい。
周囲に他に人がいないことを確認しつつ岩陰に腰を下ろして休み始める。
「これ、召し上がってください」
アスクレスが差し出したのは先程絞めた鹿である。
「僕が止めを刺したんですよ」
「美味しい」
自慢気に出された肉を食べ、ルスカは人心地ついて大きく息を吐いた。
「デミトール様のご容態は、やはりよろしくないのですね」
末子までも幽閉しようと言うのだ。
異常さは深刻なのだろう。
だがそれを治すために自分は戻って来たのだ。
アスクレスはルスカが落ち込んでも慰めるつもりで構えている。
「……」
ルスカは無言で、何か迷っているように目を動かすだけだ。
アスクレスは「治療に来た」と言い出すタイミングを失い、何も言えなくなってしまった。
そうしている内に、男が一人近づいて来た。
セステウスやライオホークは警戒を露わにするが、男は敵意が無いことを示さんと跪いた。
「ルスカ様ですね? お待たせいたしました」
男は四人が岩陰で待機し始めた時から様子を窺っていたそうだ。
そして四人の内にルスカがいることを確認し、周囲の三人がルスカを使って反乱分子たる自分たちを炙り出そうとしているわけでは無さそうだと見極めていたと言う。
(反乱分子?)
聡慈はその言葉に引っかかりを覚えたが、男について行くことに危険は無いと判断した。
「こちらです」
男は四人を別の岩まで連れて行く。
男が屈んで岩に手を当てると、岩の一部が内側にずれた。
「仕掛け扉!」
驚いて声を上げたアスクレスの口元に人差し指を当て、男は四人を先導し下り階段を進んだ。
階段を下りた先の広間には六人の男たちが控えていた。
「ルスカ様、お待ちしておりました。お疲れでしょう、まずはお休みください」
ルスカの姿を見るなり四人が跪き、先頭の一人が声をかけた。
「あの、あなた方は……ここで何故ルスカ様を?」
ぼんやりとした灯りしか無く、まだ目が慣れないアスクレスが問う。
「アスクレス、ワシだよ。覚えてないかね?」
一人がそう言って近づいて来る。
アスクレスは聞き覚えのある声に首を傾げて、声の主が目の前まで来てようやく
「ああっ、ディノス爺!? 庭師だった!」
顔馴染みの人物だと気がついた。
「おお、覚えていてくれたか。だが儂だけかね?」
「――? あっ、ゲティじゃないか! ドスコさん、カルダンさんも!」
ディノス爺が親指を向ける顔ぶれは、アスクレスがよく知る者たちだった。
引退した庭師のディノス爺、従僕のゲティ、出入り商人のドスコと盾術指南役のカルダン。
皆アスクレスが幼い頃から、いやそれよりももっと前、親や祖父の代から領主館に居て領主一族への忠誠心の高い者たちだ。
「アスクレスぅ、お前何で戻って来ちまったんだよぉ。せっかく苦労して逃がしたっていうのによぉ」
小間使いのゲティが同情するような目を向けてくる。
彼はアスクレスの二つ年下だが、領主館に出入りするようになったのは彼より早い。
デミトールの不調によりアスクレス以上に心を痛めていることは間違いないだろう。
(デミトール様の治療をしに戻って来たんだって、早く教えてやろう)
「あのねゲティ……」
「ゲティ殿、知り合いと再会できて動揺する気持ちは分かるが、軽はずみな言動は慎まれよ」
アスクレスが言いかけた時だった。
知らない男の内一人から声が上がったのは。
鼻白む感情を抑えてアスクレスは言う。
「こちらの方たちは?」
「あ、ああ。ゼフェル様とラフイル様。それにお前たちを連れて来てくれたジオンズ様の三人は、この領地の監察官だよ」
「正確には私が監察官、ラフイルとジオンズは私の補佐役だがね。それと様付けは不要である」
感情のこもらない口調で監察官ゼフェルは言った。
(監察官?)
監察官の存在は知っている。
王都から派遣され、領地の経営や治安が維持できているかを確認し、王都へ報告する高級官僚である。
公正中立、清廉厳格な人物で高度な事務処理能力が必要とされる。
更に領地の不正を摘発する際、歯向かう者の制圧も想定される職務上、武力も持たねば就くことのできない職業だ。
ゼフェルの知的だが冷たさを感じる目の光と、鍛えられていることが一目で分かる服の盛り上がりは、その巷説が間違っていないことを証明しているかのようだ。
彼はその冷たい目をルスカに向けた。
「デミトールの二男ルスカよ。監察官として問おう。領主デミトールの言動の子細や如何に」
彼の態度はまるで罪人を詰問しているかのようだ。
(何だ無礼な! ルスカ様にあんな態度を取って……って、何でみんな黙っているんだろう?)
アスクレスは憤るが、周囲は冷静だ。
諦めのような雰囲気を感じる。
ルスカでさえもそう言われることが分かっていたかのような、断罪を待っていたかのような気配を纏わせている。
アスクレスは静かな圧迫感に息を飲み、気づけば首筋にジワリと汗をかいていた。
聡慈は称号を獲得した。【剣士】【魔法士】
聡慈は技能を習得した。【流し斬り】【魔力感知】(【魔力感知】は上位技能【魔視】に統合された)
入間聡慈
闘級 3→4
体力 157→207
魔力 62→93
力 31→40
防御 39→51
速さ 32→43
器用 39→49
精神 52→67
経験値 129→160
技能
⚪︎魔言語★5
⚪︎魔視★5
⚪︎自然回復上昇・中
⚪︎魔力自然回復上昇・小
⚪︎見抜く
⚪︎反撃
⚪︎第六感
⚪︎流し斬り
称号
⚪︎薬師★5
⚪︎被虐者(克服)
⚪︎轡取り★5
⚪︎伯楽★5
⚪︎不屈漢★5
⚪︎狩猟者★2
⚪︎逃亡者★3
⚪︎魔具職人★3
⚪︎見習い剣士★5
⚪︎見習い魔法士★5
⚪︎翻訳士★5
⚪︎軽業師★2
⚪︎医術士★2
⚪︎剣士★1(技能習得【流し斬り】)
⚪︎魔法士★1(技能習得【魔力感知】)
耐性 毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封
状態 自殺者の呪印、献身者の聖印




