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巡り求めて  作者: みおま ウス
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46 探索の旅(王国編-12)

 敏感に船の揺れを感じ取り、揺れに合わせてライオホークは聡慈に蹴りを放つ。


「はっ!」

「いいぞリオ、そういう工夫も大事だ」


 蹴りを受け流し聡慈は褒めた。

 ライオホークは体の力を抜こうと体を動かしている内に、船上での動きのコツを掴んだようだ。

 彼にはどっしり構えるよりも細かくリズムを取りながら動く方が合っているらしい。



 体を動かし終わると、聡慈は魔力の操作を練習し、ライオホークは字の勉強を始めた。


 周囲から見ても聡慈が何をやっているか分からない。

 ただ孫のような少年が勉強しているのを真剣に見ているように見えているはずだ。

 特に二人に声をかける人もおらず、船での時間は過ぎていく。






 一日を船の上で過ごした翌朝。

 聡慈が起きた時には船の周りは靄で覆われていた。

 水夫たちが運航を止める様子はない。


 聡慈はまた嫌な予感に襲われた。

 しかしどうすれば良いのかまでは分からない。

 船の上で何かに気をつければ良いのか、運航自体が悪いことを招くのか。


 靄が出ているが船を動かして大丈夫か、と水夫に尋ねてみた。


「風も殆ど吹いてないからこれぐらいの靄は影響無い。嫌なら降りればいい」


 そう言い返されただけだった。


「リオ、何か起こっても慌てずに動けるように、必要な物は身につけ周りの状況に気を配っておくんだぞ」


 聡慈は仕方なく気構えだけは確かに持とうと思った。


「はい」


 ライオホークは聡慈のことを信頼している。

 師が何か起こると言うならば起こるのだろう。

 何か起こらなければそういう修行なのだ。

 ライオホークは身につけた鞄とナイフ、木刀を確認して、周りの人の位置や物の配置を抜かりなく頭に入れた。






 やがて小雨が降ってきた。

 聡慈たちは甲板から船室へと降りた


 船室からは櫂を持って船を漕ぐ者たちの姿も見える。


(今日は風があまり無いからな。予定外に遅れているのかもしれない)


 聡慈は水夫たちが良からぬことをする可能性も考え、観察をしたが変な気配は感じない。


(とりあえず腹に何か入れておくか)


 今はこれといって何をすることもできそうにない。


 聡慈はライオホークに声をかけ持っていた干し肉を食べることにした。






 硬い干し肉をちょうど食べ終わった頃。


「な、なんだぁ!?」


 ドォンと言う衝突音と船底を突き上げるような衝撃が生じ、水夫が慌てて水を覗き込んだ。


「やべえ! やべえぞ下がれ!」


水夫が叫ぶと同時にまた激しい衝突音が生じ、船が大きく揺れた。


 聡慈は川の賊が船をぶつけて来たのかと身構えてライオホークを伴い甲板に上がった。


 船の周りには何も見えない。

 だが三度目の衝撃が船を襲う。

 船は大きく傾いた。


「くそったれ! スパラニアの八本足だ! 縄張りを変えてやがったのか!!」


 水夫の怨嗟の叫びが下手人を告げる。

 川に棲む大蛸が岩を吐いたのだ。

 縄張りに入った船は大蛸に敵だと認識されてしまった。


 本来なら見張りが発見すべき危険な障害物であるのに、何故愚かにも遭遇したのか。

 大蛸がほんの一月前に縄張りを変えたことを知っていた水夫たちは、経験則から大蛸がしばらく縄張りを変えないと決め付けていたためだ。


 当然聡慈たちが知る由も無いことであり、巻き込まれた彼らは不幸な被害者そのものであった。






 帆を畳み、水夫たちが懸命に櫂を漕いで大蛸から船を遠ざけようとしている。

 その甲斐あって、四度目の衝撃を最後に船が揺れることは無くなった。


 しかし、船底に穴が開いたのかジワジワと水が船室に浸み出している。

 さらに、水夫の何人かが岩とぶつかった船の木片で負傷しており、未だ船上は混乱の中にあった。






「おい! まだ命の水あったか!?」

「ダメだ! 器が割れて溢れちまってる!」

「誰か回復魔法使える奴……くそ! こんな中にいるわけねえ!!」


 水夫たちの怒鳴り声が飛び交う。

 倒れた水夫の中には血を吐いて痙攣している者もいた。


 聡慈が治療の手伝いを申し出ようと前に出る。


「私も――」

「僕は見習いですが医師です。僕もお手伝いします」


 彼の声に被せて申し出たのは、もう一人の乗客、金髪丸眼鏡の気弱そうな青年だった。

 青年はテキパキと水夫たちを診察し、患部を魔法で治療していく。


(手順が良く魔法陣も正しい。見習いと言うが優れた医師のようだ)


 聡慈は感心しながら、自分も負傷者を重傷の者から順に並ばせたり治療したりした。






 概ね重傷者に応急手当を施し終え、軽傷者の診察に取り掛かろうとしていたところ――


「おおい! こっち来てくれ! 怪我人はまだいたぞー!


 甲板から緊迫感のある声が船室にかけられた。

 船室にいる軽傷者は自ら身を引き、上へ行ってくれと青年に懇願した。


 甲板の負傷者は一人だと言う。

 青年は上に向かい、聡慈は軽傷者の治療を続けた。






 間もなく、聡慈も上に行くように頼まれた。


(助手が必要なくらいの重傷なのだろうか)


 聡慈は不安を覚えながら上に向かった。


 倒れた水夫の顔は蒼白だ。

 服は医師見習いの青年により切られ、上半身をはだけさせている。

 青年の手は負傷者の腹に当てられたまま止まっている。

 聡慈は近くに行って青年の手元を見た。


「木片が腹を突き破り体内に入ってしまっています」


 青年がそう言い傷口を広げると、ブッ、と血が溢れてきた。


「木片を取り除いて治療の魔法をかけたいのですが、溢れる血で木片が見えないんです。余計な臓器を傷つけてしまうかもしれない」


 青年は負傷者を見守る他の水夫に説明している。


「だけどよぉ、このままだと死んじまうんだろ? ほら、もうこんなに弱々しくて青い顔してるじゃねえか……こうなりゃ一か八か、刃物を入れて切ってもらうしかねえんじゃねえのかい」


 水夫は泣きそうな顔で青年に縋り付いた。


「分かりました。危険ですがやってみま――」

「ちょっと待ってください」


 青年が頷きナイフを負傷者に向けるのを聡慈が止めた。


(刺さっている物を除去するのにナイフで抉り出すつもりか? 鉗子が無いとしても危険だ)


 聡慈は周りを見回す。


「何ですか? あまり悠長にしてられないんですよ」

「すいません、金属の肉刺しや鑢があったら貸してください」

「何で――」

「早く!」


 聡慈の真剣な顔を見て、水夫の一人が何かを感じ取ったのか、船室に駆けて行く。

 反論しかけた青年は憮然として口を噤んだ。






(これなら……)

 水夫が持って来た物の中から聡慈は二つのマドラーを選んだ。


 マドラーの先端付近にナイフを打ちつけ溝を刻む。

 それを熱し酒をかけて、箸のように持って構えた。


「その棒でどうするんですか?」


 怪訝な顔で青年が尋ねる。


「鉗子ですよ。これで異物を摘み出します」


 聡慈はその辺りの物をいくつか摘んで、鉗子として自在に操れることを示した。/


「貸してください」


 青年に求められるままに貸しもした。

 しかし青年は握り箸の掴み方しかできず、使えそうにない。


「すいません、僕では無理そうです。除去はあなたに任せて大丈夫ですか」


 青年は渋々聡慈に鉗子を返した。


「手伝いを頼みます」


 水夫とリオが負傷者の手脚を押さえる。

 痛みで暴れるのを防ぐためだ。

 青年はすぐさま回復魔法を使えるように準備した。


 聡慈は魔力を出して患部に鉗子を差し入れた。

 痛みで負傷者の体が跳ね上がろうとする。

 押さえ役を信じて動ぜずに鉗子を進め入れる。


 最近聡慈が知ったことがある。

 白い魔力は物を通過できるが、黒い魔力はできない。

 しかし黒い魔力は、魔力越しに物の感触を感じることができる。


 まだコントロールできないが、興奮下にある現時点、黒い魔力の方が優位になるはずだ。

 聡慈は傷口から黒い魔力を流し、異物の感触を探った。


(これか……よし)


 鉗子で摘んだ物を引き抜いた。

 負傷者の体が一際大きく跳ねようとしたが、リオたちはよく押さえこんだ。


 黒い魔力から返ってくる異物らしい感触は無くなった。


「除去完了です。治療の魔法を」

「はい!」


 青年は聡慈の真剣な様子と、除去を成功させた技に不思議な感動を覚えていた。




聡慈の闘級が上がった。

聡慈は称号を獲得した。【軽業師】、【医術士】

入間聡慈

闘級 2 → 3

体力 107 → 157

魔力 31 → 62

力  22 → 31

防御 27 → 39

速さ 21 → 32

器用 29 → 39

精神 36 → 52

経験値 90


技能

⚪︎魔言語★5

⚪︎魔視★5

⚪︎自然回復上昇・中

⚪︎魔力自然回復上昇・小

⚪︎見抜く

⚪︎反撃

⚪︎第六感


称号

⚪︎薬師★5

⚪︎被虐者(克服)

⚪︎轡取り★5

⚪︎伯楽★5

⚪︎不屈漢★5

⚪︎狩猟者★2

⚪︎逃亡者★3

⚪︎魔具職人★3

⚪︎見習い剣士★5

⚪︎見習い魔法士★5

⚪︎翻訳士★5

⚪︎軽業師★1

⚪︎医術士★1


耐性  毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封


状態  自殺者の呪印、献身者の聖印

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