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巡り求めて  作者: みおま ウス
42/164

42 探索の旅(王国編-8)

 三体の魔物との戦闘を終えた翌朝、聡慈はライオホークの手足の火傷に治療の魔法をかけていた。


(やはり魔法陣の構成によって白い魔力と黒い魔力は自動的に配分されるのだな)


 自分の体から魔力が抜ける感覚の後、魔法陣に白い魔力が多めに流れ、回復魔法がライオホークに降り注ぐ。


「ありがとうございました。チクリとも痛まなくなりました」


 師は回復魔法まで使えるのだ。

 ライオホークは聡慈を改めて尊敬の目で見た。


「いや、これも初めてだよ。私はつい先日まで魔力が無かったのだから。ところで闘級と言うのを知っているか?」


 聡慈は闘級が上がった感覚がどういうものが確かめようと、ライオホークに尋ねる。


「いいえ……聞いたことはありますけど、教えてもらったことがないのでよく分からないんです」

「そうか。いや、私も人から聞いたことがあるだけだったのだが。この前初めて、寝て起きたら体に力が漲るような感覚があってな。それから魔力があることに気付いたんだよ」


 ライオホークは、ふと何かに気がついた顔をして腕を組んで首を傾げる。


「そう言えば、この前“木陰の人”の所で魔物を倒したあと、俺もそんな感じしました」


 その後ライオホークは少し力が強くなったように感じたらしい。

 彼が思い出す限り、それが通算二回目の感覚だったと。


「そうか。ならば私も詳しくは知らないのだが……」


 聡慈は闘級について以前ミルドラモンから聞いた知識そのままにライオホークに話し聞かせた。


「魔物を倒してばかりでも闘級は上がるが、上昇幅は低いらしい。つまり、下地はしっかり勉強して作っておけということだ。これからしっかり励もうな」

「はい!」


 聡慈について行けば間違いない。

 ライオホークは迷うことはなかった。

 人生で初めて得た師、その幸運と師の人柄と能力に感謝して彼は空白の半生を埋めようと奮起するのであった。






(うーん、白黒の魔力を任意で操るのは難しいのだな)


 聡慈は歩きながら魔力だけを出そうと試みている。

 出そうと思っても白の魔力だけ、黒の魔力だけ、というのはできなかった。

 その時々、黒と白がバラバラに混じって出るだけだ。


(火魔法を使った時の魔法陣に使われた魔力は、黒い魔力がほとんどだった。その後リオに使った回復魔法は白い魔力が多かった。どうやら魔法を使う時は、魔法陣の――魔法の種類により自動的に黒と白の魔力が使われるらしい。魔力印を刻む時に魔力の質は意識しなかったが……もしかすると魔力を無駄に、或いは魔法の威力を犠牲に、したのだろうか)


 魔法陣によって自動的に魔力が選別されるのは良い。

 しかし求められる性質の魔力をきちんとコントロールして魔力印を刻めば、より省エネで威力の高い魔法を発動できるのではないか。


 残念ながらミルドラモンの魔法の手引書に、そこまでの記述は無かった。


 だが、だからこそ聡慈は面白く思う。


(ドラさんが気付いていない事実だったら、ぜひ教えてあげねばな)


 自分がミルドラモンに魔法を教える日が来るのか。

 考えると少し可笑しさが込み上げてくる。

 その気持ちのまま、ナンブットゥやオクアルが命の水や魔力の水を改良するのに苦労していた姿を思い出し、彼らができたように白黒の魔力の割合をコントロールできるようにしようと、聡慈は次の修行の目標を決めた。






 もう町は間近である。

 そのまま歩き続ける聡慈は、歩みを鈍らせかけたライオホークの背中に手を添えた。


「リオ、お前も町に入りなさい」

「え……でも、俺はここを追い出されて」


 ライオホークが体を強張らせるのが聡慈の手に伝わってくる。

 聡慈の言うことを蔑ろにするつもりは無いが、体が動かないのだ。


「リオ、ここを素通りすればお前は過去の罪を清算する機会を失ってしまうだろう」


 聡慈は歩速を緩めライオホークに話しかける。


「お前はこの町を追い出された時点で相応の罰を受けた。私の常識ではそれはかなり重い罰だと思う。現にお前は身も心もボロボロだっただろう」


 ライオホークは無言で項垂れている。

 彼にとっても死を覚悟した辛い日々だったろう。


「だが、お前の心にはまだ罪の意識がシコリになっているのだろう? それに一度しっかり向かい合ってみてはどうだ? 私も一緒に被害者の所へついて行く。いつまでも心に嫌な気持ちが残っているのは苦しかろう」


 ライオホークは聡慈を見上げた。


(ああ、この人は俺のことを本気で心配してくれているんだ)


 聡慈の悲しげな目の光を見たライオホークは、涙を堪えて頷いた。


「はい、お願い、します」


 聡慈は力強くライオホークの肩を叩き、町へとしっかりした足取りで向かって行った。






 ラグナと同じようにこの町も周囲を壁で囲まれている。

 人の住む区域と外を明確に分けることで、魔物の発生を制御できるとはかつてミルドラモンから聞いた知識だ。

 生きている者の領域を明らかにするとその中では魔物の発生率がぐっと低くなる。

 その理由は解明されていないが、経験上人の集住する場所には大概何処にでも施されている措置である。

 壁の厚みは特に関係無く、小さな村などは簡素な柵を設けているだけの場所もある。


 この町がしっかりと壁を設けているのは、獣などの急襲があり得るのか、盗賊などの侵入が考えられるのだろう。



 大楯を地面に突き立て彫像のように立つ門番は遠目に見ても威圧感に溢れていた。


 門番は、薄い金属を格子状に巻き付けた革の兜に、白い貫頭衣の上に胸当て、腰当て、脛当てを着けた男だ。

 四角い体格の筋骨逞しい大男で、周囲に睨みを利かせている。

 聡慈が昔アラブのホテルで見た用心棒のようなフロントマンが、ちょうどこの門番のような体格だった。

 外見だけで町の人は頼り甲斐を感じ、外から来る人は姿勢を正しそうに思えた。



「行こうか、リオ」


 ライオホークが僅かに震えているのが分かった。

 門番から目を逸らしているので、町から追い出されたと言う時の因縁がある相手かもしれない。


(事情を話して通してくれれば良いが)


 聡慈は相手から必要以上に警戒を買わないように、堂々と近づいて行った。




「こんにちは」

「こんにちは。通行証はお持ちか?」


 意外に柔らかい門番の言葉遣いに聡慈は少し安心した。


「いいえ。町に入るにはどのような手続きが必要ですか」

「町に入る理由は?」


 門番は聡慈の目を見て話すが、ライオホークに対しても注意を割いていることが分かる。

 以前追い出したことを覚えているのか、それともオドオドしたライオホークの様子が不審なのか。


 しかしどのみち言うことは変わらない。


「この子、ライオホークは以前この町の浮浪者だった者です。盗みを働いて町を追い出されたと聞いています。ここへ来た理由は、その弁済に来たのです。後は、ラグナの町への道を尋ねに」


 正直に目的を告げるのみだ。


「彼が追放された者だとは分かっている。他でもない、私自身が町から追い出したのだからな」


 門番は淡々と言った。


「身寄りは無かったはずだ。あなたは彼とどのような関係か」


 聡慈は彼と出会った経緯、そして師となることにしたことを説明した。

 師として弟子の罪を償わせに来たと。


「もしそれが虚偽の理由で、被害者を逆恨みしお礼参りに来たのなら、呪印を授かるぞ」


 門番は冷ややかに告げた。


「そのような意図はありません。身勝手ですが、ただこの子の将来を考えた上でのことだと誓います」






 誓いを受けた門番だが、身体検査は徹底していた。

 それも聡慈の聖印を見ると納得したように表情を和らげた。


「聖印をお持ちの方だったか。ならば念押しは不要であったな。少年、良い師に恵まれたようだな」


 門番から言われたライオホークは涙を流していた。






「すいません、ソージ先生。俺の、せいで怪し、まれて……」


 無事に町に入れた二人。

 ライオホークは涙を浮かべしゃくり上げながら聡慈に謝った。

 自分のせいで師が怪しまれたと思うと、情け無くて恥ずかしかった。


「気にするな。さあ、まずは宿を探し、身なりを整えてからだな」


 聡慈はライオホークの伸び放題のボサボサ頭をクシャクシャと撫でた。

 ライオホークの震えの理由が、聡慈に恥をかかせることへの恐れからだったと分かり嬉しくもあった。




聡慈の闘級が上がった。

入間聡慈

闘級 2 → 3

体力 107 → 157

魔力 31 → 62

力  22 → 31

防御 27 → 39

速さ 21 → 32

器用 29 → 39

精神 36 → 52

経験値 70


技能

⚪︎魔言語★5

⚪︎魔視★5

⚪︎自然回復上昇・中

⚪︎魔力自然回復上昇・小

⚪︎見抜く

⚪︎反撃

⚪︎第六感


称号

⚪︎薬師★5

⚪︎被虐者(克服)

⚪︎轡取り★5

⚪︎伯楽★5

⚪︎不屈漢★5

⚪︎狩猟者★2

⚪︎逃亡者★3

⚪︎魔具職人★3

⚪︎見習い剣士★5

⚪︎見習い魔法士★5

⚪︎ 翻訳士★5


耐性  毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封


状態  自殺者の呪印、献身者の聖印

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