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巡り求めて  作者: みおま ウス
40/164

40 探索の旅(王国編-6)

「マントと言うのはなかなか便利な物だな」

「はい。俺も、気に入りました」




『また来い』『いつでも歓迎する』


 “木陰の人”の村から惜しまれつつ送り出された聡慈たち。

 別れ際にせめてものお礼に、と受け取ったのが二人それぞれに合わせて作られた外套(マント)と、火起こし用の火の魔石であった。

 “木陰の人”たちが家に飾っていた敷物や壁掛けを用いて、二人の出発に間に合うよう急いで作ったらしい。


 厚みがあるので軽くはないが、邪魔な枝葉から体を守る盾にしたり、休憩する時に地面に敷いたり。

 外套は想像以上に便利だ。

 二人は歩きながら“木陰の人”たちの心遣いに感謝していた。




 森自体はそれ程広くなく、生えている木の種類に気をつければ森から出ることは容易だそうだ。

 ただ、森を出ると食料の確保が心配であったので、聡慈はある程度の準備をして森を出るつもりである。

 薬草になる植物と、食べられる植物を採取し、もう一つ。

 食肉の確保である。



「今度こそ兎でも獲るか」


 聡慈は周囲を見て言った。


「はい。でも難しい、かったです」


 ライオホークには魔物との戦闘に用いる餌を結局準備できなかった苦い記憶がある。


 不安そうに俯く彼の肩を聡慈は叩いた。


「大丈夫だ。こちらの有利になるような場所とやり方を選べば、すぐ獲れるさ」

「分かりました、先生」


 それからライオホークは場所を指定され、一メートル弱位の長さの棒を持って待機。

 兎を追い込むから棒で叩いて捕らえよと聡慈から指示を受けたのだ。

 ライオホークは斜面になっている場所の下で聡慈の合図を待つ。






 まだ二十分もたっていないが、兎を見つけたらしい。

 聡慈の声が響く。


「リオ!行ったぞ!」


 下り坂に上手く足が着かず、兎が転げ落ちて来る。

 ライオホークは慌てて棒を振り下ろした――が、地面ばかりを叩いて兎に全く当たらない。


「あ、わ、あ、あぁ」


 空振りばかりしている内に、兎は体勢を立て直してしまった。

 そのままライオホークから遠ざかろうと勢いよく地面を蹴った。


 しかし兎が跳び上がった直後、上から降って来た外套がドンピシャで兎に覆い被さった。

 ライオホークは必死で外套に飛びついた。

 ボコボコともがく兎の動きが伝わる。

 小動物の意外な力強さに気圧されそうになったが、夢中で押さえつけた。


 やがて外套の中の動きがなくなった頃、聡慈が斜面をゆっくり下りてきた。


「ふぅ、うまいこと被さってくれて良かった。ライオホーク、良くやったぞ。もう中の兎は気絶しているだろう」


 死んだふりを警戒しながら外套を外す。


「……首の骨が折れているな……よし、早めに血抜きをするか」


 クタっとなったまま首が戻らないが、まだ心臓は動いているようだ。

 息を荒げるライオホークの興奮を落ち着かせる間も無く、聡慈は兎の後ろ脚を彼に持たせた。


「よくやり方を覚えるのだぞ」


 先端の尖った石を兎の首に突き立て、思い切り引いた。


 ブツッ、と肉が裂ける音にライオホークは身震いしたが、目を逸らしはしなかった。


「町に着いたら小刀を買うべきだな」


 続けて苦戦しながら腹を裂き内臓を出す聡慈の作業ぶりも観察する。

 ヌラヌラと光る内臓は温かく、ライオホークは泣きそうな顔で震えが続いた。


「しまった。少し焦り過ぎたかな。水場を探してからやれば良かった……」


 少し間の抜けた独白が聡慈の口から漏れた。

 引き締まったイメージの聡慈のそんな一言が意外で、ライオホークは少し恐怖と緊張が薄れるのを感じた。






「どうだ? 美味いだろう?」


 無事に川の流れにも行き着いて、血の汚れを落とした二人は今、兎の内臓を火で炙って食べていた。

 肉は煙で燻して保存し、足の早い肝臓や心臓を食べてしまおうと聡慈が用意したのだ。


 ライオホークは何度も頷きながら、食べるのに懸命になっている。

 こんな美味い物を食べたことは無かった。


「命をいただいているのだ。感謝してよく味わって食べような」


 その言葉を聞いたライオホークは手を止め聡慈を見た。

 聡慈は慈しむように微笑んでいた。

 ライオホークは手の中の肉を見て、また聡慈を見て大きく頷き肉をよく噛みしめた。






「ソージ先生」


 食べなかった兎の腸を聡慈が燃やすのを見届けた後、初めてライオホークは自分から聡慈に話しかけた。


「どうした?」


 どこかモジモジしたようなライオホークの様子を妙に思ったが、彼から話しかけられたことが嬉しくて聡慈は彼を緊張させないように脱力して尋ねた。


「あの、さっき……俺のこと呼んだとき……」


 ライオホークの視点はキョロキョロと定まらない。


(『ライオホーク』とは何度も呼んでいるはずだがいつのことだろうか)


 要領を得ず聡慈は首を傾げる。


「あの、『リオ』って言ったこと……」


 そこまで言ってライオホークは俯いてしまった。


(ああ、あれか。何かまずかったかな)


 兎を追っていた時に咄嗟に出た言葉だった。

 聡慈はライオホークの顔色を窺いながら尋ねる。


「すまん、慌てていたから名前から感じるままつい言ってしまったが、悪い略し方だったか?」


 ライオホークは俯いたまま首を横に振った。


「違う、違います! あの、嬉しくて、俺」「――うん?」

「俺の、母さんも、リオって呼んでた、ました。俺のこと」


 そこまで言うとライオホークは顔を赤くして俯き、何も言えなくなってしまった。


(なるほど)


 聡慈はライオホークの心情を察した。


「ライオホーク」


 そして彼に優しく声をかける。


「ライオホークとは私には発音し辛いんだ。もし良ければお前のことはリオと呼びたいんだが、構わないか?」


 ライオホークは聡慈を顔を上げた。


「はい! リオで、お願い、します!」


 照れているのだろう。

 赤い顔だが今度は目を彷徨わせず言った。


「そうか。改めてよろしくな、リオ」

「はい! ソージ先生!」


 二人は顔を見合わせて笑った。




 その晩、聡慈の隣で眠るライオホークの寝顔は、良い夢でも見ているのか、あどけない笑みをたたえていた。






 リオと呼び始めてから、緊張気味だったライオホークはみるみる聡慈と打ち解けていった。

 言葉のたどたどしさも、聡慈と話す内に流暢なものになっていった。

 人と話す機会が無かった故に衰えていただけで、話す内に元に戻ったのだろう。


 聡慈はライオホークの言葉の端々から、やはり元は賢い子なのだと感じていた。

 彼がどのように成長するのか楽しみになってきている。


 一方で彼の笑顔はいつもエウリアに重なり、聡慈の胸を締め付けた。


 ――どうか無事に――


エウリアが帰り着いていることを祈りながら、よく笑顔を見せるようになったライオホークに笑い返すのであった。






 “木陰の人”たちの言っていたことによると、もうすぐ森の出口のはずだ。


「リオ、森を出たら読み書きの練習も始めよう」


 急に思いついたように聡慈が言った。


「はい!」


 ライオホークは嬉しそうに返事をした。



 ライオホークは色々と学びたがっている。

 今十二歳ぐらいだとしても、彼が六歳で親と死に別れてからまともな教育を受けていないのなら、幼児向けの教育から施していかなければならないだろう。


 失われた六年は彼にとって純然たる負債なのか、それとも何かしら有益なものがある時間だったのか。

 願わくば辛い経験が大きく飛躍するための起爆剤でありますように。


 森を出てすぐに目に入った、大空を羽ばたく一羽の鷹にライオホークを重ね見て、聡慈は思うのであった。




入間聡慈

闘級 2

体力 107

魔力 31

力  22

防御 27

速さ 21

器用 29

精神 36

経験値 40


技能

⚪︎魔言語★5

⚪︎魔視★5

⚪︎自然回復上昇・中

⚪︎魔力自然回復上昇・小

⚪︎見抜く

⚪︎反撃


称号

⚪︎薬師★5

⚪︎被虐者(克服)

⚪︎轡取り★5

⚪︎伯楽★5

⚪︎不屈漢★5

⚪︎狩猟者★1 →★2

⚪︎逃亡者★3

⚪︎魔具職人★3

⚪︎見習い剣士★5

⚪︎見習い魔法士★5

⚪︎ 翻訳士★5


耐性  毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封


状態  自殺者の呪印、献身者の聖印

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