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巡り求めて  作者: みおま ウス
39/164

39 探索の旅(王国編-5)

 絶望する“木陰の人”たち。


 しかし聡慈は止められていなかった。

 息を吐き切った魔物の喉を木刀で突き、低い姿勢から鳩尾を突き上げるように体当たりして魔物を押し倒した。


「今だ!!」


 ライオホークにチャンスを告げる声がかけられた。



 ライオホークは二本傷が受けた致命傷へのショックと魔物への恐怖で体を震わせていた。

 しかし聡慈が魔物を押し倒す直前、ライオホークは血を溢す二本傷から一本の石塊を差し出されていた。

 そして「今だ!」と言う聡慈の声を聞くと二本傷はそれをライオホークに握らせ、魔物の方を指差した。



「うわあぁぁぁ!!」


 二本傷の無言の指示に突き動かされるようにライオホークは石塊を手に走り出す。

 その勢いのまま、聡慈ともつれ合う魔物の目に石塊の鋭利な先端部分を突き立てた。


 深く刺さった石塊の周囲から黒い魔力の渦が霧散する。

 断末魔の一つも上げず魔物は消滅した。


 後に残ったのは二本の牙だけだった。






 聡慈たちは二本傷の遺体を抱えて“木陰の人”の村へと戻る。


 ライオホークはずっと項垂れたままだ。


「うっ、うっ」


 悲しいだけではなかった。

 二本傷の勇敢さが胸を打った。

 また子どもを失った悲しみがそれ程――勇敢だが無謀とも言える行動に駆り立てる程――大きかったのだと知って胸が締め付けられた。


「胸を張れライオホーク。君は彼と子どもの仇を討ったのだ」


 聡慈はライオホークの頭にそっと手を置く。


「彼もそれを見ていたから笑顔だったのだろう」


 はっとライオホークは顔を上げ聡慈を見る。


 聡慈は自信を持ってライオホークを見返した。


 石塊を渡した後二本傷は地面に横たわったはずだった。

 それが戦闘後は木に背を預け戦闘のあった方を向いていた。

 その表情も穏やかに微笑んでいたと聡慈は言った。


「はい」


 ライオホークは涙を拭い“木陰の人”の村へと二本傷の遺体を運び込んだ。






 聡慈とライオホークは歓声をもって迎えられた。

 二本傷と同じように家族を失った者たちは直接二人の手を取って感謝を表した。


「違うん、です!」


 ライオホークが大きな声を出した。

 その顔は泣きそうに歪んでいる。


 どうしたと“木陰の人”たちは首を傾げた。


『本当の英雄は彼なのだ』


 ライオホークの意を汲んだ聡慈が“木陰の人”たちに説明をした。

 魔物の討伐は二本傷の勇敢な行動無くして為し得なかったと。


 戦闘を見ていた方の“木陰の人”からも否定する言葉は出ない。


 “木陰の人”たちの間で二本傷を英雄として今日の晩にでも慰霊しようと言う話になった。

 聡慈はそれをライオホークに伝えた。


「うっ、ぐすっ……」


 ライオホークは笑顔を作ろうと表情を動かし、どうしても止められない涙で上手く笑えないまま嗚咽を漏らす。

 聡慈から再び頭を撫でられた彼は、今度こそ耐え切れずに声を上げて泣くのだった。






『そうか、誰もこの辺りのことは詳しくなかったか』

『わるいな。その代わり旅に役立つ物。気に入った物があったら持って行ってくれ』


 二本傷の弔いが終わり、聡慈はこの村への案内を受けた“木陰の人”と話している。

 ラグナへの道、もしくは野人種の町の場所を尋ねたが、“木陰の人”の誰も知らないようだった。


 謝る“木陰の人”に聡慈は首を横に振り答える。


『いや、礼などいいんだ。あなたたちも大変だったろう。それよりも探している人がいるんだ。その人と会うことがあったら、色々助けてやってくれないか?』


 その人とはエウリアのことだ。

 彼女の特徴を伝え、直接触ると力が抜ける不思議な力があるが、性格は優しいので恐れないでほしいと。


 “木陰の人”は胸を叩いて頷いた。


『分かった、約束する。それと』


 ライオホークの手を引いて連れて来て彼の脚を叩いて言った。


『こいつにも礼がしたい。何がいいか聞いてくれ』

『――そうか。この子も喜ぶだろう』


 聡慈は笑顔で答えた。






 “木陰の人”が礼をしてくれる、そう聞いたライオホークだが首を横に振る。


「俺、いっぱい迷惑、かけたから」


 そう言って出て行こうと立ち上がった。


 “木陰の人”は困った顔で聡慈を見る。


「ライオホーク! 私はラグナと言う町とそこへの行き方を探している。他の町でもいい。知っているなら案内してくれないか?」


 聡慈の呼びかけにライオホークは足を止めた。


「知ってる、ます、けど、俺はもう、行けない、ません」


 罪を犯して追放されたのだ。

 もうその地を踏むつもりはなかった。


(うむ。大丈夫だこの子は。まだ何とでもなる。――が、少々自罰的だな。このままでは進めまい。なんとかしてやりたいが)


 磨けば輝く宝石か、打てば強くなる刀剣か。

 聡慈はライオホークに光る将来性を感じるだけに、彼を埋もれさせたくないと思った。


「一緒に来い。君はまだいくらでも成長できる。ここから、今から生まれ変わるのだ」


 ライオホークは戸惑っている。


 その姿を見て“木陰の人”はどうしたんだと尋ね、聡慈は経緯を答えた。


『……なるほど。お前はこの子のセンセイになるんだな』


 “木陰の人”は納得した顔でライオホークの脚をバシッと叩いた。


 今度はライオホークが首を傾げて聡慈を見てくる。

 聡慈は微苦笑を返した。


「いや、彼らが冷やかすのだ。私のことを先生だとな」

「センセイ……ソージ、先生」


 含むようにライオホークは何度か先生と口にした。


「おいおい、やめてくれよ先生と言うガラじゃないんだ私は」


 聡慈は顔を赤くしてライオホークに注意した。

 だがライオホークにはその声は届いていない。

 彼は先程言われた言葉を反芻してもいたのだ。


(生まれ変わる、成長できる。こんな、俺でも)


 彼は静かに涙を流し、聡慈に頭を下げた。


「ソージ先生、俺を、連れて行って、ください」


 先生と呼ぶのをやめさせるのも無粋な気がしてきた。

 聡慈は大きく吸った息を決意と共に飲み込んだ。

 人生の師として、ライオホークが独り立ちするまで責任を持って育てようと決めたのだ。



 何となく良い雰囲気になったのが“木陰の人”たちにも伝わり、弔いの悲しみから日常への復旧の祝いへと移りゆく。


 その騒ぎに揉まれ一晩を明かした。






(何だろうか。体が一新されたようだ)


 翌朝、聡慈は体に漲る力を感じていた。


(これはもしや、闘級が上がった時の現象とやらか? だとしたら呪印の効果は無くなったのか? ううむ)


 実際は、マイナスから始まった聡慈の経験がようやく闘級が上がる程に累積されたからであるが、それを知ることは困難である。

 そしてこれもまた誰に分かることでもないが、彼の闘級上昇による各種ステータスの上昇幅は、常人のそれを遥かに上回っていた。

 今回上がったのは僅か一闘級だが、ようやく聡慈は世間の大人並みの力を得ることができた。


 一度プラスに転じた彼の経験値は、新たな呪印を刻まれない限り二度とマイナスになることはない。

 今後彼は子どもが成長するような目覚ましい早さで闘級を上げるだろう。

 その末に彼がどんな英雄になるのか、まだ誰にも、何の想像もできないのであった。




聡慈の闘級が上がった。

入間聡慈

闘級 1 → 2

体力 57 → 107

魔力 0 → 31

力  13 → 22

防御 15 → 27

速さ 10 → 21

器用 19 → 29

精神 19 → 36

経験値 35


技能

⚪︎魔言語★5

⚪︎魔視★5

⚪︎自然回復上昇・中

⚪︎魔力自然回復上昇・小

⚪︎見抜く

⚪︎反撃


称号

⚪︎薬師★5

⚪︎被虐者(克服)

⚪︎轡取り★5

⚪︎伯楽★5

⚪︎不屈漢★5

⚪︎狩猟者★1

⚪︎逃亡者★3

⚪︎魔具職人★3

⚪︎見習い剣士★5

⚪︎見習い魔法士★5

⚪︎ 翻訳士★5


耐性  毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封


状態  自殺者の呪印、献身者の聖印

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