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巡り求めて  作者: みおま ウス
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21 魔大陸離脱編-9

 エウリアと出会い三年と少しが過ぎた。

 覚悟していたイヤイヤ期も大したことはなかった。

 閉ざされた世界ではあるが元気で明るい子に育っている。


 聡慈のような魔力を見る力や、特殊な回復力は無い。

 ミルドラモンのような魔眼は無い。

 リンのような他者を癒す力は無い。


 他者の力を抜き出す代わりに何か良い能力が芽生えないだろうか。

 聡慈やミルドラモンに願われていたがそう都合良いことは起こらなかった。


 落胆はない。

 エウリアは賢く健康だ。

 学習意欲も高い。

 年齢的にまだ文字を書くには早いようだが、既に野人種の公用語と魔言語を流暢に話すことができる。

 ミルドラモンは彼女の賢さに将来が楽しみだと言うと同時に、また美人になるから将来心配だと口癖のように言うのであった。






 リンはあまり大きくなっていない。

 ミルドラモン曰く、幻魔とはそういうものらしい。

 魔力の詰まった核を持つが魔物とは違い、通常の生物と同じく成長し老いていく。

 ただしその速度は緩やかである。


 発生は謎に包まれており、生まれ出る所を見たものはいない。

 ある日突然何かの生物が変異するのか、空から降ってくるのか、それとも何もない空間に突如出現するのか。


 また幻魔は気に入った者と魔力的な繋がりを築くことができる。

 それは幻魔側からの一方的の行為であるが、繋がりは気に入られた者にとっては何かしらの魔法加護を与えられる幸運である。


 そのため幻魔はある種の憧れを抱かれ、幻の生き物、幻魔と呼ばれるのである。






 ミルドラモンは変わらない。

 もしかして元の世界の人類よりこちらの方が寿命は長いのだろうか。

 聡慈はこの世界の平均寿命を彼に尋ねたことがある。

 闘級に依るところが大きいと言われた。


 病気で死ぬのを除いても、高齢になると魔力の制御を失って急逝することが多くなる。

 闘級が高い者は魔力の制御能力も高く、また体力もあるので長生きすることが多いのだ。

 過去、ある例外を除いて、そのように闘級が高い者が百五十歳まで生きたという記録があるそうだ。


 ミルドラモンも闘級は高いが、若い頃は結構身体を酷使していたし、恐らくそこまでの長寿は望めないと考えている。


 とは言え彼自身、まだまだ死期を感じることも無い。


 それより気になるのがエウリアの運命が見えないことだ。

 聡慈もそうだった。

 自分の魔眼が曇ったのか、聡慈の影響か、それとも魔眼の力が及ばぬ何かが彼女にあるのか。

 ミルドラモンもまた自分の目の黒い内はエウリアを守らねば、と強く思う一人であった。






 聡慈はまた少し体力がついた気がしていた。

 加齢で衰えるよりも体力がつくような日々を送っているということなのだろうか。


 元の世界にいた頃から歳を重ねる毎に年齢がどうでもよくなってきたものだが、今はそれに拍車が掛かっている。

 確か八十一歳ぐらいだろう。

 身近にもっと高齢なのに活気に溢れるミルドラモンがいるせいか、まだ自分も長生きできるように思える。


 また、聡慈は自分の剣技や魔法の知識が幾らか向上したことを自覚している。

 幼いエウリア相手だが、人に教えるということは自分の成長も促すものだ。

 忘れかけていたことかもしれない。

 エウリアと巡り会えたことに感謝である。



(住めば都と言うが、ここは私にとっての都となっただろうか)


 今聡慈は魔大陸からの離脱を目前にして感慨に耽っていた。

 愛すべき者たちができて日々の食にも何とか困らない程度には暮らせている。

 現金なもので地獄とも思っていたこの地が、今ではあるがままの自然を許された稀有な土地にも思えていた。

 元々薄かった鬼たちへの憎悪も無いと言っても過言ではない。


 だがここに留まるわけにはいかない。

 世に何事か貢献せねばならない気持ちは今でも心にしっかりと根付いている。

 その気持ちは感情を越えた所から湧き上がって来るようにも感じる。


 もちろんその前にエウリアを独力で生きていけるようにしてやらねばならないが。


 この世界の教育、就業、生活、文化……全ては魔大陸を出た後にしか体験し理解できないことだ。

 世の役に立つと言ってもどういう手段になるのか。

 困っている人がいたとしても助けられるのは一人か二人か。

 魔法も使えない自分にできることは限られているだろう。



 兎にも角にも魔大陸を出た後の話である。

 聡慈は気を引き締め直して、旅立ちに向けて準備を進めるのであった。






「ジィジ、おじいちゃん、空飛ぶお船できた?」


 エウリアにはもう引っ越しをすると告げてある。

 あまり前もって告げると「早く行こう」「明日行くの?」と言われることが目に見えていたので、最近まで敢えて告げずにいた。

 それもついに解禁。

 全ての部品に魔力を込めた文字を彫り終えた。

 彼女にこの部品で空飛ぶ舟を作るんだと話すと、案の定目を輝かせてきた。


 大海原を航海する冒険家の物語。

 空を鳥に乗って飛ぶ小人の物語。

 聡慈から聞いたそれらの物語がまとめて体験できるような感じがして、エウリアは胸が躍る気持ちが抑えられない。


 仲の良い隣人などがいない環境にこの時ばかりは感謝である。

 彼女にとって愛着があるのはこの小屋ぐらいだろう。

 別れの辛さもそれはそれで良い経験にはなりそうだが、今は未来に広がる無限の可能性に目を向けていてくれれば良いのだ。


「そうだよ。エウリアも舟に乗ったらこのベルトをしっかり締めて、大人しくしてるんだよ」

「はぁい!」


 エウリアがウキウキと自分の小物入れにドングリのような木の実を入れて準備するのが微笑ましい。

 聡慈は僅かに感じる哀愁を忘れるように、エウリアの頭を撫で微笑んだ。






「いい天気だ……」


 朝日が昇るのを見ながら聡慈は呟いた。


 概ね西から東へと雲が流れて行く時期である。

 風が無く晴れた日に東へと飛んで行こうと以前から決めていた。

 今日が出立に最適な天候に違いない。


「なんだソーさん、旅立ちの日だと言うのに寂しくなったかの?」


 ミルドラモンが揶揄するように言った。

 嫌味な感じはしない。


「やはり今日なのだな。いや、ドラさんの言うとおりさ。忌々しい思い出もあるが、ドラさんたちのお陰で半分以上は充実した日々だったよ。これでもうこの地を踏むことは無いと思うと、一抹の寂しさを感じずにはおれなかったようだ」

「ソーさん……」

「いや、すまない。さあエウリアとリンを起こして出発しようじゃないか。空の旅はエウリアにとって最高の思い出になるだろうさ」






 エウリアを挟んで舟の前後に聡慈とリンが座った。

 舟に通した革のベルトで身体を固定し準備は完了だ。


「よおし、行くぞい!!」


 ミルドラモンの掛け声で身構える。


「お、おおお」

「きゃ〜」


 浮き上がると不安と興奮とで声が出てしまう。


 東の海に向かって速度を上げ出すと、聡慈の目から涙が溢れてきた。


「さらばだ!!!」


 一言に万感を込めて叫んだ。

 彼の目にはどこまでも青い空と海しか映っていない。




入間聡慈

闘級 1

体力 54

魔力 0

力  12

防御 14

速さ 9

器用 17

精神 17

経験値 -3,300


技能

⚪︎魔言語★5

⚪︎魔視★2 → ★5

⚪︎自然回復上昇・小

⚪︎見抜く

⚪︎反撃


称号

⚪︎薬師★3

⚪︎被虐者★3

⚪︎轡取り★5

⚪︎伯楽★5

⚪︎不屈漢★5

⚪︎狩猟者★1

⚪︎逃亡者★2

⚪︎魔具職人★1 → ★2

⚪︎見習い剣士★1 → ★3

⚪︎見習い魔法士★1 → ★3


耐性  毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収


状態  自殺者の呪印、献身者の聖印

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