103 探索の旅(聖都編-8)
海岸沿いに到達し付近を探索したが、呪法の一族どころか人の住んでいた痕跡の欠片すら見当たらない。
そのまま海岸沿いに移動してもう一つの候補地も見たが、そこもハズレだった。
次の候補地は深い崖と山に隔てられた場所にあり、聖都経由で向かった方が早いぐらいだ。
四人は聖都に戻ることにした。
聖都に戻る間に、来た時とは違う村に立ち寄り、積荷はほとんど捌けた。
クラリスはまた魔石を買い集めたが、デイルは彼女の好きなようにさせた。
聖都では聡慈が探索者組合に行った。
クラリスは聡慈について行き、その後デイルと一緒に商店巡りをした。
デイルは往路で仕入れた酒と、復路で仕入れた海塩と織物が無事に売れたことで張り切って商店を巡り、次の仕入れの品物を目利きしている。
「……飲むのはデイやんとソーさんが暇になってからにするか」
一人残されたヴィザーレは、酒場に向かう足を止めた。
賑やかに飲む酒が良いと思い直したのだ。
「大本山とやらにでも行ってみるかな」
彼はぶらりと散策に出かけた。
三日かけ仕入れを終えて、四人は聖都を出てまた調査へと向かい始めた。
水の魔石はまだテントに置かれたままだ。
今回の道程は前回よりも長い。
前回よりも資金があったので荷物も多いが、ドルドにとっては気にならない重さらしく進むペースは変わらない。
三つの村に立ち寄り、往路だけで大半の荷物を売れるぐらいに順調だった。
それでも主目的はヴィザーレの学術的調査であるので、引き返すことなくそのまま海へと向かう。
標高千メートル程ありそうな山々の間を抜け、山から流れる川沿いに海へと進んだ。
開けた所からは海が見え始めた。
平らな所が少なく川筋が入り組んでいる。
ドルドは起伏の激しい土地を進むのは苦手らしいが、水に入ることは得意なようだ。
「ソージはん、この辺は木があれへんから潜り、教えたるさかいな」
川の流れは緩やかで水深はそれなりに深い所がある。
デイルは竹の先端を尖らせただけの物を手に川に潜った。
「デイやんって何気に色んなことできるよな」
「商人じゃなくても良さそうだな」
「もし商人として成功しなければ、海でも野山でも自然の中で生きていけば良さそうですね〜」
「何やっとんねん、早よ来なはれソージはん」
「はいはい分かったよ」
聡慈は上半身裸の股引き姿になって川に飛び込んだ。
「ソージさんって九十歳じゃないですよね。絶対」
「うん、私も信じてない。五十代の老騎士よりもずっとムキムキで張りのある体してるもんな。――確かに長老的な雰囲気はあるけれども」
ドルドが水に長い首を突っ込んで魚を獲っている間、川に潜っていたデイルは魚を三匹、聡慈も辛うじて一匹を竹の銛で突いて獲ってきた。
その日の食事はもちろん焼き魚だ。
デイルの早技に感心したと聡慈が言うので、デイルはふんぞり返って幼い頃の野生的な生活を語り聞かせた。
魔物と遭遇することが多い気がする。
水辺であるからなのか水の魔石を核に持っているものばかりだ。
大半が弱い魔物なので弓矢の練習にちょうど良い。
そうして聡慈は技能を使わずに、飛ぶ鳥を射抜くことができる技を身につけるまでになった。
魔物から魔石を取り、たまに落ちている魔石も集めた結果、まあまあの量の水の魔石が蓄えられた。
クラリスは嬉しそうである。
四人は水辺を進み、間もなく海に出る所まで来た。
「この辺りだと思うんだが」
今回もハズレかもしれない。
特に目立つ痕跡も無く、ヴィザーレの呟きからは落胆の響きが感じられる。
百年以上も前の伝承なので地形も変わっているのかもしれない、と彼は自分を慰めるように言った。
「いや、こっちに行ってみよう」
聡慈が岸壁を指して言った。
そちらを見てもただ切り立った崖しか目に入らない。
「何やのソージはん、何も無いけど……」
「こっちだ」
聡慈の目には漏れ出る黒い魔力が映っている。
岩肌に生える苔と草に手を触れると、草が分かれ一人が通れるぐらいの隙間が見つかった。
「何や何や!? 通路みたいになっとるやん! ソージはんよう見っけたな」
「この隙間じゃドルドは通れないね。お留守番しててね」
巨体のドルドを置いて、四人は一人ずつ崖と崖がぶつかり合ってできたような隙間を通った。
隙間を抜けた先には何本もの石の柱が立ち、或いは倒れていた。
何らかの建築物の跡で柱だけが残っているように思える。
壁や屋根は無いが、石の欠け具合を見ると柱を残して風化したのかもしれない。
カラスのような黒羽の鳥が柱に止まっているのが薄気味悪さを感じさせる。
「これは……!」
「待てヴィーさん、魔物がいるぞ!」
ヴィザーレが興奮して駆け寄ろうとしたが、聡慈は語気強く彼を止めた。
柱の上に止まってたり上空を飛んでいるカラスのような鳥は全て魔物だったのだ。
「こんなに魔物が!」
「一羽来るぞ!」
ヴィザーレが魔物の領域に踏み込んだのか、一羽だけが向かって来る。
すかさず聡慈が斬り伏せたが、スイッチが入ったかのように次々と魔物が飛び寄って来る。
「下がって壁を背にするぞ! デイやんとクラリスは上空から来るヤツを射落としてくれ! ヴィーさんは身を屈めて守っていてくれ! 正面から来るヤツは私がやる!」
魔物残り十二羽、半数は上空で旋回して様子を見ている。
他の三羽が正面から、三羽が上空から襲いかかって来た。
「外した!」
「慌てんなクラリス! 一羽ずつ確実に射るんや!」
クラリスは一矢を避けられ、手元が定まらず次の矢をつがえずに焦っている。
デイルはクラリスに迫っていた一羽を射抜いたが、残る一羽の嘴が躱せず肩に傷を負った。
「お父さん!」
「かすり傷や、かまへん。それよかどこが急所か分からへん。胴体射抜いたのにまだ飛んどるで」
矢が刺さった一羽はふらつきながらも上空を旋回している。
「頭だ。頭に魔力が溜まっているな」
「そらまた、あない小っさな鳥頭狙わなかんとは難儀なこっちゃで」
「だが胴体でも飛行能力は奪えてるみたいだぞ」
デイルたちの軽口に幾分緊張が解れたか、クラリスは深呼吸をして再び弓を構えた。
そして聡慈が三羽を斬り、デイルが一羽を射抜くと、最初にデイルの矢に射られた一羽に狙いを定め、頭からは外れたが翼ごと胴体を射抜き撃墜した。
「きゃっ!」
ところが続け様残りの魔物が一斉に飛びかかってくる。
気を抜いたクラリスの眼前に一羽が迫った。
「ふん!」
ヴィザーレが石塊を持ってクラリスの目の前で腕を振り抜く。
「これが魔物の手応えか……硬くはないが重いんだな」
ヴィザーレの一撃を正面から頭に食らった一羽は地面に落ち、そのまま彼によって踏み潰された。
「ヴィザーレさん! ありがとう、大丈夫ですか!?」
「ああ、ちょっと筋を痛めたぐらいだ。それよりあと一羽ぐらい倒せるか?」
「あ、はい! やってみます!」
ヴィザーレが腕を下げたままブラブラと振り苦笑すると、クラリスは自らの頬を叩いて残りの魔物を睨んだ。
クラリスもデイルも気力が十分なことを確認した聡慈は、一人壁際から離れて旋回する魔物の真下に立った。
六方から一斉に襲いかかる魔物を横に躱し一番に下りて来た一羽を斬る。
デイルとクラリスの矢が二羽を落とした。
聡慈に躱された三羽の内一羽がクラリスに低空飛行で向かって行く。
だがそこには聡慈が描いた魔法陣があった。
魔法陣を通過する瞬間魔物は炎に包まれ消滅した。
残るは二羽、一羽は聡慈に突進したが余裕をもって切り伏せられ、最後の一羽は上昇しようとしていたのをデイルに射抜かれた。
「大丈夫、お父さん?」
「大丈夫やで。それよりここは何やろな」
魔物が居なくなって落ち着いて見回すと、幾つかの人体の骸が転がっているのが分かった。
四人は言い知れぬ圧迫感を身に受けていた。
聡慈は技能を習得した。【鷹の目】【自然回復上昇】【魔力自然回復上昇】
既習得の【自然回復上昇】が中から大に上がった
既習得の【魔力自然回復上昇】が小から中に上がった
⚪︎狩猟者★4→5(成長時加算:体力+5、力+2、速さ+1、器用+1、技能習得【鷹の目】)
⚪︎剣士★2→3、技能習得【自然回復上昇】
⚪︎魔法士★2→3、技能習得【魔力自然回復上昇】
聡慈は闘級が上がった
入間聡慈
闘級 8→9
体力 417→477
魔力 227→263
力 76→88
防御 101→116
速さ 89→102
器用 88→99
精神 133→150
経験値 2200
技能
⚪︎魔言語★5
⚪︎魔視★5
⚪︎自然回復上昇・大
⚪︎魔力自然回復上昇・中
⚪︎見抜く
⚪︎反撃
⚪︎第六感
⚪︎流し斬り
⚪︎状態異常回復
⚪︎風精契約
⚪︎鷹の目
称号
⚪︎薬師★5
⚪︎被虐者(克服)
⚪︎轡取り★5
⚪︎伯楽★5
⚪︎不屈漢★5
⚪︎狩猟者★5
⚪︎逃亡者★3
⚪︎魔具職人★3
⚪︎見習い剣士★5
⚪︎見習い魔法士★5
⚪︎翻訳士★5
⚪︎軽業師★5
⚪︎医術士★5
⚪︎剣士★3
⚪︎魔法士★3
耐性 毒、麻痺、睡眠、混乱、吸収、魔封、金縛り
状態 自殺者の呪印、献身者の聖印




