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「甘酒はあれとして、大学ってそんな飲むもんなの?」
「いや、俺も先輩から聞いた話だけどさ。やっぱ酒飲むのがコミュニケーションらしいからね」
「大学行ったって、まだ二十歳前じゃん。良い子ちゃんはお酒飲んじゃダメなんだよ」
「良い子ちゃんとか言うなよ!まあ、ホントはダメだけどな」
「健太ってさ、何か公務員並みの堅さがあると思ってた」
「一応教師目指してる身だから、法に触れることは出来ないけどさ、人付き合いもあるしね」
「学校サボっちゃダメって法律は今のとこないしね」
「サボりって言うか、行っても意味ないような…。まあ、サボりか」
「こんな私でも行ってたんだから!」
「お前意外と行くよな?皆勤賞じゃない?」
皆勤賞なんて興味もないが、言われてみれば…。
「そうかもしんない。休んだことないかも」
「お前の方が優等生じゃん!」
「優等生って言葉が何故か悪口に聞こえる」
「それをお前は何回も俺に言ってたんだぞ!」
自分が言われて初めて気づいた。少し控えよう。
「大学行ったら何したい?」
最近は家庭教師が来てないせいか、こんな先生っぽい質問は久しぶりだった。
「大学行ってから決める」
「そっか。まあ、それもいいよな」
「あんたは先生になることだもんね?」
この辺の時期になると、皮肉でもなくなってきた。
「まあ、 将来的にはね。でも教育大だから、同じ目標持った人だけだし、良い仲間に会えると思うしさ」
「仲間ね~」
私には縁のないフレーズだ。
「バスケはどうすんの?もうおしまい?」
単純な疑問を投げかけた。
「やるよ!出来れば部活がいいけど、バイトと両立出来ないようならサークルでもいいかなって」
「部活とサークルってどう違うの?」
「部活は今まで通り練習漬けで、大会とか出たりさ。サークルは上手い下手関係なく、みんなで集まって楽しくバスケやるって感じ?」
「聞く限りだとサークルの方がいいじゃん!楽しいんでしょ?」
「そうだけどさ~。真剣に練習して試合やるのもいいもんだぞ?」
どういうものかがわからない。
いつか健太が言った、達成感とやらの一種だろう。
「前にも言ったけどさ、お前も何かやればいいじゃん!それこそバスケは?」
「勘弁」
「新井に聞いたけど、屋上楽しそうにやってたらしいじゃん!」
「やったって言うか、あれはやらされたの!」
「でもおもしろかったろ?」
「鼻血出してる新井くんはね」
「まあ、バスケは一つの提案だけどさ。仲間作るにはスポーツがちょうど良いぞ!せっかく北海道行くんだったら、スキーとかさ!」
「その時になったら考えるよ」
大分体が暖まったので、神社を出ることにした。
「センター終わったら、二次試験前にもう一度来ような!」
「うん」
「で、二次試験が終わって、お互い受かったら、また来よう!無事受かりましたって報告と、それぞれの前途を見守ってもらうのに」
「結構神様っ子なんだね。何か宗教入ってたっけ?」
「気休めだよ。信じるくらいいいだろ」
「別にダメって言ってないし」
私に言わせれば、健太自身が教祖の様なものだ。
今更宗教だとか言っても驚きはしない。今年一発目の皮肉だ。
寒い中歩き、それぞれの帰路への分かれ道での会話だった。
「次の次にあの神社行く時は、お互い入学の権利を持ってだぞ!」
「だったらいいね。寒いし、帰るわ」
私は健太に踵を向けた。
「あ!咲希!」
「何?」
「明けましておめでとう!」
「明けましたのでおめでとう」
今年もお互い良い年になりますように。
口には出さなかった。
そして年は明けて行った。




