5 初めての暗殺
森へ入ると、急にメールの着信音が鳴った。
メニューを開くと、リンからフレンド依頼が来ていた。
すぐに承認を押し、フレンドリストにリンの名前があることを確認し、木の上を跳んで移動を再開する。
……おっと。あれが魔物か。
移動して数分、ついに魔物を発見した。
肌が緑色で耳が尖っている。身長は子供と同じくらいだが、顔が醜い。おそらくあれがゴブリンという魔物だろう。
見た目は人型。暗殺の良い練習になりそうだ。
腰に差していた短剣を片手で持つ。
そう言えば、武器を【鑑定】していなかったな。戦闘前に【鑑定】しておくか。
初心者の短剣 耐久度 ∞ 品質 F- レア度 EX
ATK+1
その名通り、初心者が誰でも持っている短剣。
切れ味は悪いが、耐久は無限。投げても、切っても、叩いても良し。
壊れることは無いが、切れ味の悪い短剣か。
まぁ、首を切るか心臓を刺すかだ。少し切れ味が悪くても、問題ない。
ちなみにATKは武器の攻撃力だ。ダメージは自身の攻撃力であるSTRと武器の攻撃力であるATK、後はスキルなどの補正が入り、決まるみたいだ。
話を戻し、ゴブリンにも【鑑定】をしておくか。
名:無し 種:ゴブリン 職:無し
種族 Lv.5
……リアルの俺たちと同じく無職だそうだ。
レベルが4つも上だが、隙だらけで、【暗殺術】で弱点も見えている。頭と首と心臓だ。人間と変わらないな。
周囲を【察知】、気配、目で探してみる……他にはいないようだ。はぐれだな。他がいない今が好機。
木の上を音を立てずに移動し、ゴブリンの真上まで移動する。
初めての暗殺だが、緊張はしない。
案山子や凛華、野生の動物相手に何万回も行ってきたことだ。慌てず、正確に、素早く仕留めるとしよう。
そのゴブリンは俺に気づいてなく、木を背にしてボーっと立っている。
リストラされたサラリーマンみたいな感じだ。その手には鞄では無く、こん棒を持っているが。
……何だか、若干殺しにくい相手だな。
だが、暗殺者たるものどんな相手にも冷酷に、無慈悲に殺さなければならない。俺の夢のために犠牲になって貰おう。
木の枝に足をかけ、逆さになり、そっとゴブリンの首に短剣を近づけ……切る。
手から肉を切る感触があり、ゴブリンの首から青色の血が噴き出す。
ゴブリンは急な攻撃に驚き、手に持っていたこん棒を振り回していた。
そして、血が噴き出しているのに気づいたのか、開いている手で血を流さないように首を押さえるが、その程度では止まるわけがない。
HPを表しているであろう、頭の上の赤いゲージがすさまじい勢いで減っていく。
HPゲージの右側に表示されている状態異常:出血の効果だろう。
首を切った時にも大幅に減ったが、状態異常:出血により継続ダメージもあるのか。
ゴブリンは人型だし、人間相手でもありそうだな。
そんなことを考えていると、HPゲージが砕けた。
そして、ゴブリンは前のめりに倒れ、動かなくった。
『短剣のスキルレベルが上昇しました』
『暗殺術のスキルレベルが上昇しました』
『隠密のスキルレベルが上昇しました』
初めて暗殺ができ、俺は喜びのあまり、がらにもなく、ガッツポーズをしてしまった。
肉を切る感触も血を吹き出し暴れている姿も忘れられない。気分が高揚していくのが分かる。
生命を奪ったことには特に何も感じない。
子供の頃からずっと覚悟してきたからだ。
今回のは魔物だが、それは人間相手でも変わらないだろう。
数分ほど経過して、高揚していた気分が収まった。
さて、気分が落ち着いたところで、戦闘結果だが、レベルも相手が高かったのか3つのスキルレベルが上がっている。
この調子でどんどん上げていくとしよう。
次はドロップ品だが、どうやったら貰えるんだ?
ゴブリンの死骸は残っている。これに何かをするのか? しばらく、死骸を見下ろすが、さっぱり分からない。
所持品の中に何かあるのか? 今更だが、所持品を見てみるか。
初級者用ポーション 品質 C レア度 N
飲んでも、かけても良し。
飲んだ場合HPが100、かけた場合はHPが50回復する。
味は不味い。
初級者用マナポーション 品質 C レア度 N
飲んでも、かけても良し。
飲んだ場合MPが100、かけた場合はMPが50回復する。
味は不味い。
ポーションは各5つずつある。
所持品は所謂、アイテムボックスというやつで、最初は30マス分の空きがあり、そこにアイテムが入る。
同じアイテムの場合は、1マスで99個までスタックすることが可能だ。
アイテムボックスの枠を増やすにはカバンやポーチを装備すればいいと聞いている。
初心者の短剣 耐久度 ∞ 品質 F- レア度 EX
ATK+1
その名通り、初心者が誰でも持っている短剣。
切れ味は悪いが、耐久は無限。投げても、切っても良し。
初心者の服 耐久度 ∞ 品質 F- レア度 EX
DEF+1
ただの服。耐久は無限
初心者の靴 耐久度 ∞ 品質 F- レア度 EX
DEF+1
ただの靴。耐久は無限
防具のDEFはATKと似ている。自身の防御力であるVITと装備の防御力であるDEF、スキルの補正で被ダメージが決まるみたいだ。
剥ぎ取りナイフ 耐久度 ∞ 品質 S+ レア度 EX
剥ぎ取り用のナイフ。
倒した敵を刺すことで、アイテムをドロップする。
おっと、これだな。
剥ぎ取りナイフ。名前はそのままだが、これを刺せばいいのだろう。
剥ぎ取りナイフを手に持ち、ゴブリンを刺す。
すると、ゴブリンが複数の光の泡になり、消えた。
そして、ゴブリンがいた場所にはアイテムが落ちている。
ゴブリンのこん棒 耐久度 100 品質 F- レア度 N
ATK+3
ゴブリンが持っていたこん棒。
ただの木を荒く削っただけで、耐久度は低い。
ゴブリンのこん棒って……使う予定はない。投擲用にするか。
辺りを見渡しても他にはないようだ。
ドロップしたのはこれだけか。しょぼいな。
……まぁ、まだ一匹目だ。
次々に狩っていけば何か出るだろう。
木に登り、枝の上を跳んで、次の獲物を探していった。
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ステータス
名:シャドウ 種:獣人(黒豹) 職:シーフ
種族Lv 1
職業Lv 1
HP 150
MP 150
STR 33
VIT 5
INT 15
DEX 10
AGI 43
LUK 5
BP 0
SP 0
スキル
【短剣】Lv.2、【暗器】Lv.1、【隠密】Lv.2、【察知】Lv.1、【鑑定】Lv.1、【看破】Lv.1、【偽装】Lv.1、【暗殺術】Lv.2、【闇魔法】Lv.1、【毒魔法】Lv.1
称号
<最初の黒豹>
STRとAGIが3上昇する。