10 【ワークス】
感想ありがとうございます!
まだまだ慣れないところがあると思いますが、これからも見て頂けると嬉しいです!
リンが所属する生産者ギルド【ワークス】のメンバーを紹介するという事で、俺とリンはギルド【ワークス】の屋敷の会議室に移動する。
すでに全員が集まっているそうだ。
「入るよー」
「ああ」
リンが声をかけると、中から野太い声で返事が返ってきた。
それを聞いたリンは扉を開け、部屋に入っていった。それに続くように足音と気配を消し、更に【隠密】を発動して、入っていく。
部屋の中は30人は余裕で入れる大きさで、中央に巨大な円卓があった。
円卓には1人の男と3人の女が座っていた。リンが言っていた人数と同じだ。
このプレイヤーたちが、ギルド【ワークス】のメンバーだろう。
「? リン。紹介したいと奴がいると聞いたが……どこだ?」
「一緒に来ると聞いたけどにゃ?」
そう言い放ち、【ワークス】のメンバー全員が、不思議そうな顔をし、首を傾げる。
視線はリンの方に向いているが、誰もリンの後ろに立っている俺に気づいていないようだ。
もし、気づいていたら何かしら反応があるだろう。気づいていて、反応していないのであれば別だが、140cmほどの少女? の後ろに全身真っ黒な格好をした奴がいれば、反応しないはずがない。
「え? ……ああ、シャドウ。出てきてよ」
リンも首を傾げ、振り向いたが、俺の姿がないことに気づいたようだ。
「分かった」
声を出すと、リンを除いた全員が驚愕した表情をする。
ふむ。足音と気配を消し、【隠密】を使っていても、流石に声を出せばバレるか。
「な! そこにいたのか」
「全く気付きませんでしたよー」
「すごい! カッコいい!」
「全身黒だにゃ……」
いろんな反応をしているが、その反応を見たリンが両手を腰に当て、どや顔をしている。
何故、リンがどや顔をしてるんだ? まぁそれも可愛いから、別に良いが。
「すごいでしょ! 彼はシャドウ。暗殺者を目指しているプレイヤーだよ」
「シャドウだ。宜しく頼む」
「おお。俺はツベルト! 見て分かると思うが、ドワーフだ! 生産は鍛冶をしている」
「この武器を作ったプレイヤーだな。礼を言う」
「なーに! 依頼料も貰ってるし、経験値も入ってるからな! 構わねぇよ! 」
ガハハと笑いつつ、ツベルトはそう言った。ツベルトはドワーフで長い茶色の髪と髭が生えている。
黒目で、身長はリンとあまり変わらなく、ずんぐりしている。よく見るドワーフ体型だ。
「では、次は私が。私はテリルと言いますー。種族は人間で、生産は裁縫ですー。今後ともよろしくお願いしますー」
「ああ、宜しく頼む。それと、この防具を作ったプレイヤーだな。礼を言う」
「ツベルトさんと同じ理由ですが、問題ないですよー。むしろ、どんどん依頼してくださいー」
テリルは青目で、銀色の髪が肩より少し下まで伸びている。身長は160cmくらいだ。おっとり系の美人で、その表情は楽しそうに微笑んでいた。
さて、ツベルトとテリルは装備の作成者に名前が載っていたが、残り二人は分からない。
そう考えていると、急に大きな音を立て、小柄な女が椅子から立ち、円卓をグルッと回るようにダッシュで迫ってくる。
そして、俺の前で急停止し、右手を差し出してきた。
「私はミカン! 種族は人間で、生産は料理だよ! よろしくね!」
「よろしく頼む」
「うわぁ、やっぱりカッコいい!」
差し出してきた右手を握手すると、そのまま勢いよく上下に振られる。
ミカンは赤色の髪をツインテールにして、腰くらいまで伸びている。
目も髪と同様に赤く、身長は150cmくらいだろう。
少しして、満足したのかミカンは満面の笑みで離れて行った。
元気な女だな。そう考えていると、猫の耳をした女が立ち上がる。
「最後はアメリアだにゃ。アメリアはアメリアにゃ。種族は猫の獣人で、生産は調薬をやってるにゃ。よろしくにゃ」
「ああ、よろしく頼む」
これが猫の獣人か。アイが言っていた通り、確かに黒くすれば、見た目は黒豹の獣人と似ているな。
アメリアは金色の髪をボブにしていて、緑色の目に、茶色の猫の耳と尻尾が生えている。
身長はテリルと同じくらいだ。
お互いに挨拶をすると、リン以外の全員が座った。リンは俺の手を引き、奥へと移動していく。
「シャドウはそこに座って」
「分かった」
「じゃあ、私も」
「「「「……」」」」
俺が座ると、膝の上にリンが乗ってきた。
俺は特に疑問を感じず、堂々と座っているが、それを見た【ワークス】のメンバーは、驚愕するもの、微笑ましく笑みを浮かべるもの、頬を膨らませて羨ましく見てくるもの、顔を真っ赤にするものなど様々な表情をした。
「リンさんはそこでいいんですかー?」
「もちろんだよ! シャドウは座り心地が最高だからね!」
「そうなんですかー。今度、私も座っていいですかー?」
「駄目! ここは私の特等席だよ!」
「ふふ。分かりましたよー」
俺は椅子ではないのだが……まぁいい。
「呼び捨てでいいか?」
「ああ、構わない」
「分かった。じゃあ、シャドウ。そのステータスは【偽装】だろう? 種族と職業を聞いてもいいか?」
「あ、そういえば名前だけで言ってなかったね。シャドウの種族は驚くよー。私もさっき驚いたからね!」
「リンさんが驚くなんて、珍しいですねー」
「シャドウはいつも私を驚かせてくれるからね! そこも好きなんだけど」
「惚気は必要ないにゃ。それより種族が気になるにゃ」
「むー、これからなのに。シャドウ、お願い」
「分かった。俺の種族は黒豹の獣人で職業はシーフだ」
それを言った瞬間、場が静まる。
全員が驚いた表情をしているが、何でリンは両手を上げて驚いているんだ?……演技か。可愛い。
「……黒豹ってなんだ? 豹は聞いた事あるが、黒豹は初めて聞いたぞ」
リンを除く、ギルド【ワークス】のメンバーが頷く。
全員が黒豹の獣人を知らないそうだ。
「黒豹は獣人のランダムで出た種族だ。回転式福引器で出た玉の色は金だ」
「金!? すごいにゃ! 羨ましいにゃ!」
「見た目は黒い猫の獣人と見分けがつかない。特徴はSTRとAGIが高く、闇魔法、毒魔法を取得することが出来る」
その言葉と同時に、また場が静まる。
まぁ、毒魔法も知られてないからか。
「…………毒魔法ってのもなんだ? それも聞いた事がないぞ」
「うん。私もさっき初めて聞いたんだけどね。そう言う魔法があるみたいだよ」
「まだ発見されてない魔法か。興味深いがそれは公開するのか?」
「さっきシャドウと話したけど、デメリットしかないから掲示板とかで公開はしないよ。情報屋として聞かれたら答えていいそうだけど」
「……そうか。それもそうだな」
「だからみんなも秘密ね。公開したら呪うから」
「わ、分かっている。それに生産職は大体が口が堅いから大丈夫だ!」
慌てているツベルトの言葉に全員が頷く。
若干、脅迫に見えるが、リンが信頼してる相手だ。問題ないだろう。
さてと、これで他には言う事は何もないな。
そろそろ立ち去ろうとした時、リンがこそこそと近づいてきた。
「シャドウ。ついでに裏の話もしていい?」
「……リンが信頼している人なら別に構わない」
「うん。大丈夫だよ。周囲に大っぴらにする人はこのギルドにはいないからね」
「なら、問題ない」
「裏の話? 何の事だ?」
聞こえていたのかツベルトが横から入ってきた。
「うん。まぁ暗殺者を目指していると言ったからわかると思うけど、裏の話って言うのはシャドウの暗殺業の事だよ。簡単に説明すると、シャドウに依頼を渡すと、依頼に書かれた対象を暗殺してもらえるよ」
「それは……誰でもか?」
「悪いことをした人限定だね。PKとか住民の賊とか」
「依頼者が嘘をついて、何もしてない人を殺すようにと依頼されたらどうするんですー?」
「暗殺する前に調べるから大丈夫だよ。【鑑定】もあるしね。それに基本的には、私に依頼が来て、チェックしてからシャドウに渡すから、大丈夫だよ」
「……今更にゃけど、別に私達に言う必要って無くないかにゃ?」
「いやいや! そんなことないよ。私達生産職は、よくプレイヤーと話すでしょ? その時に、PKの事を倒したいけど倒せない。憎い。とかそんな事を言ってる客がいたら、私に教えてほしいんだよ」
「そのくらいならいいが、そんな客いるか? 俺は見たこと無いぞ」
「数は少ないけどいるよ。βテストのときに何人かいたから」
「いたのか……分かった。そういう客がいたら、リンに知らせよう」
「うん。他にも護衛とか素材収集とかも依頼を出せばやってくれるよ……多分」
「多分かよ!」
「いいぞ」
「いいのかよ!」
護衛も素材収集も経験値が溜まる。それに依頼の最中で魔物、PK、賊にも遭遇する可能性があり、暗殺のチャンスがあるわけだ。報酬でゴールドも入るだろうし、良い事尽くしで断る理由はない。
「ちなみに、シャドウはどのくらい戦えるの!」
「さっきまで、狼の森でゴブリンを狩っていた。運が低いせいか武器しか落ちなかったが」
「初日で狼の森!? しかもゴブリン20匹!? すごいよ!」
「そうなのか? 首を切ったり、心臓を刺せば全て一撃で倒せたぞ」
「おー! 暗殺者だ! 実力も十分みたいだし、今度依頼するね!」
「ああ。もちろんいいぞ」
「じゃあ、フレンドになろ! そっちの方が連絡しやすいから!」
「分かった」
ミカンからフレンド依頼が届く。それと同時にツベルト、テリル、アメリアからもフレンド依頼が届いた。
「俺も頼む」
「私もですー」
「アメリアもにゃ」
「分かった」
生産職とフレンド登録して、特にデメリットは無いだろう。
むしろ、生産トップクラスのフレンドが増えるとメリットの方が多い。
承諾し、全員をフレンド登録する。
「うんうん。これで全部終わったかな」
「それなら俺はもう行くぞ」
「早いね。何か用があるの?」
「家限定のアイテムボックスが早く欲しい。ドロップ品を売って家を買う予定だ。足りないと思うが、また魔物を狩ればいい」
「なるほどね。でも売る前に一度、私達に見せて貰っていい? 欲しい者がある可能性があるから。住民に売るよりも高価で買い取るよ」
「ああ、分かった」
狼の森で狩ったゴブリンのドロップを見せる。
20匹狩って出たのは、全てゴブリンの剣、槍、斧、こん棒だ。
他の物は無い。
リン達はそれを見て話し合っているが、すぐさま俺の方を見る。
「うーん。特になかったよ。素材や鉱石なら買い取るんだけどね」
「だろうな。これは住民に売ってくる」
「それなら私が案内するよ。シャドウは冒険者ギルドの場所、分からないでしょ?」
「たしかに分からないが、何故冒険者ギルドなんだ?」
「冒険者ギルドは、魔物のドロップ品を買い取ってくれたり、依頼を受けたりすることが出来るからね。それに家を購入するのも冒険者ギルドでやってるんだよ」
「それは便利だな。だが、案内は助かるが、【隠密】を使うぞ。この格好じゃ怪しまれる」
「いいよ。1人で歩くことも多いから。でも、PTだけは組んでおこうよ。PTチャット使えば、周りには聞こえないからね」
「分かった」
さっき試したが、声を出せばバレる。だが、PTチャットを使えば、周囲に聞こえずに会話が可能だ。これなら周囲の人間を気にせず、話せるだろう。
リンからPT申請が来て、承認を押す。
「それじゃあ、皆。少し出かけてくるね」
「世話になった」
「おう、また来てくれ。歓迎するぞ」
「依頼があったら、連絡しますねー」
「同じく!」
「素材や鉱石もあったら言ってにゃ。高く買い取るにゃ」
挨拶をして、【ワークス】の屋敷を出る。
リンが言うには、冒険者ギルドは始まりの街の中央にあるそうだ。
『聞こえる?』
『ああ。聞こえてるぞ』
『了解だよ。もうすっかり夜だね』
『もう少ししたら飯を食いに一度ログアウトするぞ』
『了解ー』
ギルドを訪れた時は夕方だったが、今は既に夜だ。道には街灯があり、そこまで暗くはない。
サービス開始した昼に比べて、プレイヤーは少ない。夜中は魔物が強くなり、視界が悪い。だから、この時間帯はログアウトする人や、生産活動に集中する人で、道には人が少ないそうだ。
……それでもかなり賑わっているが、まぁ初日だからな。
夜中の戦闘も慣れた方が良いだろう。
全てやることが終わったら、行くとするか。
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ステータス
名:シャドウ 種:獣人(黒豹) 職:シーフ
種族 Lv 3
職業 Lv 3
HP 150
MP 150
STR 33
VIT 5
INT 15
DEX 10
AGI 49
LUK 5
BP 0
SP 1
スキル
【短剣】Lv.4、【暗器】Lv.2、【隠密】Lv.4、【察知】Lv.2、【鑑定】Lv.4、【看破】Lv.2、【偽装】Lv.1、【暗殺術】Lv.5、【闇魔法】Lv.1、【毒魔法】Lv.1
称号
<最初の黒豹>
STRとAGIが3上昇する。