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1 始まり

初投稿です。

VRMMOの小説が大好きで、気づいたら書いてました。


ゆっくりと不定期で投稿していきますが、読んで頂けると幸いです。


 突然だが、俺は影内 冷斗(かげうち れいと)という。年は20歳、身長も体重も平均で、職業は……無職。

 今は黒色のスーツを着て、クレジットカード一枚を持ち、カジノから帰宅途中だ。

 夜中で薄暗い中、冷たい風を受け、ゆっくりと人気のない路地を歩いている。

 家まであと数百mのところで、30m先に人の気配を感じた。しかも、殺気もだ。間違いなく、俺を襲おうとしているのだろう。

 だが、問題ない。今の時代、罪を犯そうならば、()が来るからだ。


 少し歩くと、予想通り。

 目の前に、拳銃を持ち、今にも引き金を引きそうな犯罪者が現れた。


「おい! 早く有り金を全て寄越せ! お前がさっき馬鹿みたいに勝ったことなんて知ってるんだよ!」


 ふむ。どうやら、先ほど100列スロットで勝ったところを見られていたみたいだ。その時の金が欲しくて、俺に拳銃を向け、脅しているのだろう。

 正直に言えば、俺に掛かれば100列スロットなど、ただの目押しで簡単にできる。だから、この金を渡したところでどうだって良い。

 だが、その行為をした時点で人生は詰みだ。


 ……来たな。

 俺と犯罪者の前にある空間が歪む。

 そして、歪んだ空間から突如、警察の服を着た人型の機械が出現した。

 そいつは腰にある拳銃を躊躇いも無く、男に対して撃つ。そして、雷のような物が拳銃から発生し、男に直撃した。男は全身を痙攣させ、ゆっくりと倒れていく。

 そいつーー機械警察はそれを見て、銃を腰に戻し、俺に話しかけてくる。


『傷は無いか?』


 俺はそれに頷くと、機械警察は気絶した男を掴み、一瞬で姿を消した。



 さっきまでの騒動が嘘のように沈黙した。

 相変わらず厄介な性能だな。

 普通の人間なら今のように抵抗出来ずに捕まるだろう。機械警察は通報もせずに、犯罪者の前に出現し、逮捕していく。

 そんな現代の世界では、マフィアもギャングもテロリストも……暗殺者もいない。


 暗殺者ーーそれは暗殺を生業にする人の事で、アサシンとも呼ばれる。

 暗殺とは、要人を殺すこと、急所を狙って一撃で殺すこと、不意に襲って殺すこと の3つで俺は捉えている。

 本来の意味では最初の要人を殺すことが正しいそうだが、ゲームや漫画、小説では二つ目と三つ目が多いだろう。人によって捉え方は変わると思う。


 そんな暗殺者に強い憧れを持っているのが、現在無職の俺だ。どのくらい憧れているかというと、小中高と学校で将来の夢を聞かれると思う。


 その全てを暗殺者と言うほどだ。


 もちろん、ただの暗殺者では無い。


 俺の理想は罪を犯さない暗殺者だ。


 現実では100%無理だろう。

 それはそうだ。

 どんなに汚い奴でも気にくわないやつでも、殺せば逮捕。だから、周囲からは馬鹿にされ、話を聞いた講師には諦めろと何度も言われた。


 それでも俺は諦めずに、あらゆる武道を身に着け、高速で動く案山子相手にナイフや針を何万回も投擲した。たった一人の友人に手伝って貰い、隠密の技術も高めた。野生の動物を相手に不意打ちの練習もした。


 だが、どんなに頑張っても現実は非常である。

 計画、犯罪の直前でも機械警察は襲ってくる上に、罪を犯したら目出度く牢屋行き、もしくは死刑だ。


 理想の暗殺者を目指し、修行をしても、なることが出来ない日々が二年経過したとき、珍しく人が作成したVRゲームが近日発売されると友人から聞き、俺はそれに興味を持った。


 そのゲームの名前はAnother Free World。通称AFW。

 このゲームは明確な目標は無く、地球とは違う世界を作ったから、新住民として自由に暮らしていいよ。ただ、魔物もたくさんいるし、エリアボスを倒さないと次に進めないけどな。と運営が言っている自由度の高いVRゲームである。

 冒険者になるのも、生産職になるのも、暗殺者になるのも自由だ。だが、それを聞いても俺は、暗殺者になり人を暗殺しても、AFWでも犯罪だろう。

 そう思っていた。


 初めは友人から勧められただけだったが、試しにβテストの動画を見た時、俺は衝撃を受けた。

 そう。PKというプレイヤーを殺しても、罪にならず犯罪者になることのない光景に。

 それだけではない。

 NPC……余りにも思考が人間に近いから住民と運営は言っていたな。住民が賊として襲ってくる場合もあり、その場合は暗殺しても問題ないそうだ。

 更に対象を暗殺するなどの裏の依頼もあると友人から聞いた。

 AFWでは魔物やPK、賊などを暗殺しても、罪にならないということを知った俺は瞬時にネットを開き、予約をしようとした。


 だが、AFWはβテストの頃から大人気で、予約を開始してから、わずか10分で締め切ったそうだ。

 俺は人生の中で、一番落ち込んだかもしれない。

 ゲームとは言え、夢である暗殺者になれる機会を逃したのだ。


 余りの悔しさに気づいたらカジノに到着し、憂さ晴らしのように100連スロットを当てた。

 その帰りにさっきの犯罪者に遭遇したわけだ。

 


 さてと、憂さ晴らしも襲撃者も片付いたことだ。そろそろ家に帰るとしよう。


 家の前まで来ると、電気がついていた。出るときにはつけていないはずだ。誰かいるのだろう。

 まぁ、あいつしかいないか。


 家に入り、リビングに向かうと友人がソファに座り、壁一面のスクリーンで、なにかを検索していた。

 こいつは、いつも俺の家にピッキングして、勝手に入ってくる。だから、特に驚かない。


 友人の名前は、裏道 凛華 (うらみち りんか)。黒髪をサイドで纏め、身長は140cmくらいだ。胸などを含み、全体的に小さいが、天使のように可愛い女だ。しかし、これでも同い年の20歳である。

 小学校の頃からの縁で、理想の暗殺者を目指していると伝えても、笑わずに応援してくれている。というのも、凛華の将来の夢も、思わず講師が苦笑いするものだからだ。


 それは何かというと情報屋である。

 この世界には情報屋もいない。昔と比べて世界の出来事はすべてネットで見れるからだ。

 だが、凛華はそれでも情報屋を目指している。

 何でだと聞いたら、情報屋ってかっこいいっしょ。冷斗と同じだよ。同じ。と言われた。

 俺と同じく、凛華も情報屋という職に憧れ、そして目指している。だから、俺も凛華の夢を応援している。


 だが、こいつも無職だ。


 その凛華は俺を見て、笑みを浮かべて話し出す。


「その様子だと予約出来なかったみたいだね」

「……知ってたのか」

「うん。もうどこでも無理だよ。私が言う前に冷斗は外に走って行ったからね。携帯も置いていったみたいだし、私じゃ冷斗についていけるわけないでしょ」

「確かにそうだな」


 俺はネットで予約が出来なかった瞬間、憂さ晴らしにカジノに行っていた。それも常人では不可能な動きでだ。屋根から飛び降り、空を飛ぶ車や電車よりも速い速度で走り、普通の人間なら3時間かかる距離を10分で到着していた。一般人より、少し運動が出来る程の凛華がついてこれるわけがない。


「ふふ」

「どうした? 俺を笑いに来ただけか」

「えー、流石にそんな趣味悪いことしないよ」

「じゃあ、何だ?」

「冷斗……AFWやりたい?」

「……やりたいに決まっているだろう。俺の長年の夢が叶う可能性があるんだ。それが例えゲームの中でもだ」


 凛華は俺の言葉に笑みを浮かべながら、俺の前に二つとあるものを出し、テーブルに置いた。

 これは……まさか!?


「AFW……だと」

「ふふーん。そうだよ」

「……何故、持ってるんだ? まだ発売していないだろう」

「私がβテストをやっていたのは前に教えたでしょ。βテストをプレイした人には、既にソフトを配られてるんだよ」

「それなら一つだけのはずだ。何故二つ持っている?」

「それはねー。βテストの時、私が生産職でものすごく有名なプレイヤーでね。それで、運営から生産部門のトップに選ばれちゃったんだよ。これはトップの賞品として貰ったんだ」

「生産か。凛華の事だから情報屋をやってると思った」

「そっちもやってるよー。両方やってたわけさ。そ・れ・で、欲しい?」


 凛華はゲームを両手に持ち、ズイッとテーブル越しに迫ってくる。

 だが、凛華はただでくれるはずが無い。それは長年付き合っていて理解している。


「……凛華の事だ。何か条件があるんだろう」


 その言葉に凛華はニヤリと微笑む。


「うん! 実はね。私、ついに家を追い出されたんだー。パチパチパチー」

「……そうか。お前もか」

「そうだよ。絶縁だね……」


 そう言いながら、凛華はテーブルに頭を伏せる。

 若干だが、落ち込んでいるようだ……頭を撫でておくか。いつも通りさらさらな髪だな。


 それと凛華が言っていたが、俺は高校卒業後に親と絶縁している。理由は……言わなくても分かるだろう。


「それで?」

「私を拾わない?」

「いいぞ」

「即答だね」

「凛華は信頼している。それに1人増えようが問題ない」


 俺は去年、今日とは別のカジノに行き、100列スロットで何百億も稼いだ。スロットが止まって見える俺にとっては簡単である。イカサマをしていないか何度も調べられ、カジノの運営は顔を真っ青にしていた。そして、今日と同じように帰り道に襲ってきたが、瞬間、機械警察が飛んできて捕縛されていった。流石である。


 話を戻すが、凛華は恋人でもあるし、同棲関係になるだけだ……ロリコンじゃないぞ。背も胸も小さい凛華が好きなだけだ。他はどうでもいい。


「じゃあ、はい。AFWをどうぞ」

「ああ、ありがとう。といってもまだ出来ないだろう?」

「そうだね。でもキャラ作成までは出来るから、開幕ダッシュするのもいいけどね」

「開幕ダッシュか。理想の暗殺者にいち早くなるには、それもいいかもな。早速作ってくる」

「いてらー。このゲームの情報を知りたかったら、私に聞いてね」

「条件は?」

「ふふ、夜ご飯でいいよ。後は……一緒に寝よ?」

「……ああ、いいぞ」


 凛華は若干顔を赤らめてそう言った。

 相変わらず可愛いな……俺はロリコンじゃないぞ。決して。

 ひとまず、俺はキャラクターを作成するために、私室へと戻った。

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