僕と君で僕が、君と僕で君が
僕らはいつも背中合わせの関係だった。
いつからそう自覚したのかは分からない。それでも物心ついた時から、僕と君は、背中を合わせて行動していた。
二人で一人。僕と君で僕を、君と僕で君を成している──半分が欠陥部品の機械のような、そんな関係。酷く錆びているにも関わらず、しっかりと歯車は噛み合った。
僕は運動ができる。君は勉強ができる。
「勉強ができる方が有利だ」「運動ができる方が有利だ」なんて言葉を吐いては、「でも、僕と君で一人だから」と収束してしまうのだ。いつも、それだ。
君は、影の薄い人だ。しっかりと見えるのは、実は僕だけなのではないか──。
人と会っても目を逸らしてしまうし、あまつさえ話そうともしない君は、どうしてそんなに人を嫌うんだろうね?
僕にだけ視線を合わせてくれるし、僕にだけ嬉嬉として話してくれる君は、どうしてそんなに僕を好いてくれるんだろうね?
僕と君は、真反対だ。大人しい僕に対して、君は馬鹿みたいに活発だ。
でもそれが、どこか心地よいのだ。くだらないことで笑えて、日々を楽しめるのは、君が居るからに他ならないのだろう。
どうせなら、君と皆とで話したいなぁ。それも、不可能に程近いんだけどね。
僕と君には、誰にも言えない秘密がある。
それは君が──人には見えなくて、僕にだけ見える、幽霊さんってこと。
「君の存在は僕だけが知っているんだよ」
そう言って、あの日。秘密を分け合った。