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ずっと夏ならいいのに
一点の汚れすらなく、酷いほどに澄んだ黄昏空は、今日も今日とて心に哀愁を生み。
透明で秀麗な夏模様の空に聳える入道雲は、留まることを知らず、ただひたすらに膨れ立っていく。
苔蒸した石畳にも厭わず腰を下ろした君へ向かって──
「──ずっと夏ならいいのに」
──斜陽が射す。
目を細めて眩しげに呟く君の横顔は、何処か哀しげで。それは僕でもない、自分でもない、何かに向けていた言葉だと悟った。
そう言って微笑んだ君が、どうしようもなく可愛くて。
君の耳を塞いで、聞こえないかもしれないけれど、せめて、これだけは言わせてほしい。
「好きだ」