泡沫の幻驢芭
苔蒸した石畳 に差す斜陽
移ろい往く一陣の風 何処まで行くのだろう
行く宛もない泡沫は 何を標にして
千代に八千代にただ 貴方の元へと
古道に浮かぶ夏陽炎 茜雲が渡ってゆく
ひたすらに狂い廻る風車は 何を頼りにして
ひぐらしの鳴く木漏れ月の下 月明かりで蛍追う
袂ひらり私を置いて 夕闇に呑まれ
匂い立つ幻驢芭の花 決して色褪せない彼の日々に
貴方に出逢い恋を知った 伝う雫の意味も
永遠は何処に在るかな 永いようで刹那の刻
貴方との想い出だけを 胸に刻み込んで
永遠なんて事象が きっと在るならば
貴女に逢いたくなかった ねぇ、君もそう思うだろう
水面が揺れるくらいに 心は雨が止まず
それでも逢いたいと願う この矛盾は貴女の所為
仄かに香る梔子の花 笑い燥ぐ童女の声
恋し貴女の其の姿は もう此処になくて
その月明かりに貴女を探し 砕けた月を仰ぎ見る
袂ひらり僕を置いて 夕闇に融けた
──愛しい愛しいよと木霊した 過ぎし日々はあの悠久の果て
貴方を探して帰る古道 ただその声だけを頼りに
貴方との想い出だけを そっと反映し出して
貴方を探して帰る古道 月明かりに見える貴女の影
嗚呼ようやく辿り着いた 恋し想い人の傍
神楽鈴下駄の音カランコロン 千歳の音色を告ぐ
永遠は何処にあるかな 梔子の香るあの刻に
恋を知ったあの刻に 貴方との想い出だけを
永遠は別れに似てる 移ろい往く季節のように
「ずっと離さないで」と あの夜二人呟いた