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第11話 同期

 魔力量は先天的なものである。肉体と精神の成長に合わせて増加するが、爆発的な変化はない。身長だって、二メートルも三メートルも急に伸びないのだ。魔力も同じ。

 シンクは平凡な魔力しかない。成長期も終わっている。それはリッカも知ること。


「私はラプラスと繋がっている。当時は繋がりが強かった。ラプラスを動かすこともできた。観測を直接知ることもできた。私は予測をした。どうすれば彼らを助け出せるか。いや、あの時だけは予測でなく予知。ラプラスは一基だけ。予測結果を知るのは私一人。そして私は合わせ鏡を回避するため、ラプラスの計算から外れる。あの予測だけは、私がいなかった場合の予知だった。……何度も計算した。どう介入すればどんな結果になるか。そして見つけた。私とシンクがこうしている未来を」


 未来の予測にはいずれ完成するラプラスは含まれないのか。計算を歪ませるのは現実に存在するラプラスだけなのかと、シンクはぼんやり思う。そう思ってしまうほど、リッカの話は突飛なものだ。


「あの日。私はラプラスのデータを同盟側に送った。ラプラスの完成を知った同盟は、時間が経過するほど劣勢になると悟り、少数精鋭で試験基奪還に臨む」


 あの日。七年前。シンクはのちに知った情報を交えながら、かつての記憶を呼び覚ます。


「少数での奇襲が、犠牲を出しながらも成功したのは、試験基が謎の停止をしたからだと言われてる。それは……」


「私が妨害した。彼らを上書きされて消されるわけにはいかなかったから。試験基を同盟側にあった方がいいというのもある。再変換できても、また殺されたら意味がない」


 原因不明の試験基の停止。引き起こしたのはリッカだった。


「戦いの中、私はシンクとラプラスの魔力蓄積機がある土台部分に忍び込んだ」


 そこから先にはシンクも知っている。


「リッカがラプラスを止めようと言ったんだ。自分は言われるがまま魔力蓄積機に魔力を流し込んだ。すると、一帯は大爆発を起こして……、ラプラスと土台部分以外ほぼすべて吹き飛んだ。あの時は運がいいとか思ってたけど……」


「爆発は、私がラプラスから魔力を逆流させたから。ラプラスを守ったのも私。そして、これで第一段階の準備は完了した」


「準備?」


「そう、ラプラスを騙す準備を」


 それはラプラスを手中に収めている言葉だ。リッカは、機械の神とも評されるラプラスを振り回していた。


「実際は私の魔力でなされたことでも、私はラプラスの計算から抜け落ちる。結果、過去を計算するラプラスに映るのは魔力蓄積機に魔力を流すシンクと、その後起きる大爆発。計算補完システムは辻褄を合わせる。シンクにそれだけの魔力がなければおかしいと」


 システムはどんな辻褄合わせをしたのだろう。恐らく無理な辻褄合わせで、ラプラスの中のシンクは遡行監理官に狙われるような人間に変わった。

 一連の事件の真実がこれか。ここにきて、ようやくシンクは知る。


「第二段階は計算補完システムの開発。そして同期技術の獲得。同期技術のために私たちはリンに拾われた。拾われるように仕向けた」


 リンの同期技術。シンクは自身の異変が何か知る。


「同期する気か……!自分と、辻褄合わせで生まれた、もう一人の自分を……!」


 上手くいくはずがない。仮にできても、膨大な魔力に器が耐え切れない。


「できる。世界の法則を内包したラプラスの計算が破綻しなかったのだから。過去の計算は現在を前提としている。過去より現在が先にあるんだ。現在の自分が受け入れられる形でしか辻褄合わせは起きない」


 無茶苦茶だ。ラプラスのもう一人の自分は、絶大な魔力を持ちながら、平凡な自分と同じでもあるということか。この世界はそんな都合の良い存在を認めるのか。


「そろそろ同期が完了する。制限のシステムを組み込んだから、シンクは動けないし、実感もないだろうけど」


 リッカはシンクに向かって歩き出した。

 再変換はどうやるのか。この事件の収集はどうつけるのか。疑問に思うことはまだあるが、リッカはもう話す気がない。シンクに関係のある話はここまでということだろう。


「せめて、苦しまないようにはする」


 死ぬ。殺される。

 人間どころか、生物なら最も大きい恐怖。

 シンクも感じた。しかし、実はそれより強い恐れがシンクにはあった。それを確かめるまでは死ねない。リッカを見てそう思う。

 シンクは体を動かそうとする。だが思いと裏腹に、五感から受け取る刺激は弱まり続ける。

 すでに同期しているはずなのに。力ならあるはずなのに。結局自分はどこまでいっても自分なのか――。


「無力が嫌なら立て。このままでいいとは思っていないんだろう、シンク」


 シンクの耳元で声がした。ソファーで昼寝していたとき、たまにこうやって起こされた。こんな近さで声をかけてくるのは一人だけ。

 猫がシンクの体に乗っている。

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