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本日の投稿はここまでです。今後は不定期で行き当たりばったりの投稿になります。
翌日は自然と目が覚めた。今気づいたが、部屋に窓があったらしい。そこから太陽が眩しく差し込んでくる。そして目を開けた俺の顔に直接当たってる。うむ、これは目が覚めない理由がないな。起きてしまったものは仕方ないので俺は身体を起こす。どうやら季節としては寒い季節ではないようでベッドから降りて靴を履き部屋を見渡す。…昨日は気づかなかったが偉い殺風景な部屋だ。壁も床も石と思われる素材でできていて、扉は部屋に一箇所。これが昨日部屋に入ってきた扉だろう。その対面に嵌め殺しの窓があって、部屋には何脚かのベッドが置かれているだけだ。明るい場所で初めて見たからだろうか、俺の抱いた印象は「部屋」というよりは「牢獄」という感じを受ける。そんな考えをしていると、部屋の外から鐘…いや、銅鑼か?打音の後に大きく響き渡る金属音が耳に入ってくる。部屋を見ると、音に驚いてか全員がベッドの上で飛び上がって目をさましていた。ぐっすり寝てるところに大音響がしたらそうなるか。
その後は兵士らしき人が部屋に来て、昨日と同じ食堂らしき場所に案内された。昨日同様、黒くて堅いパンと、野菜のようなものの切れ端らしきものが浮いた味の薄いスープが出された。うん、昨日は腹が減ってたから美味く感じたんだろうな。今日の飯は何の感動もないどころか食わないほうがマシなんじゃないかとも思える。とりあえず我慢して食っていると、大きな水晶を片手で抱えて、反対の手には水晶を置くための台座を持ったファルスさんが入ってきた。そしてそのまま台座をセットして、その上に水晶を置いて俺たちに向き直る。
「あー、君たち。おはよう。昨日は良く眠れたかな?」
そう言いながら彼?…彼女?は俺達の顔を見るように体を動かす。昨日は気づかなかったが男声と女声とも取れる声をしているな。そして頭からかぶってるローブと合わせてますます性別がわかりにくい。
「返事がないようだから、大丈夫と判断して進めさせてもらう。今日持ってきたのは【診断の水晶】と呼ばれるものだ。これに触ってもらうだけで、君たちにどんなスキルがあって、どんなステータスをしているかがわかるものだ。」
そう言いながら、ファルスさんは水晶を自慢げに紹介し、説明を続けていく。
「これに触ったら<ステータスオープン>と唱えれば、自分のステータスを確認できるようになっているはずだ。」
説明を聞いて俺が思ったことは一つ。胡散臭い。その一言に尽きる。だが、クラスの連中は喜々として水晶に触り、少し脇に移動してから<ステータスオープン>と皆一様に唱えている。そこから聞こえてくる会話の端々に「剣術:S:Lv1」だの「火魔法適正:S:Lv1」だの「槍術:A:Lv2」だのと聞こえてくる。どうやらこの手の単語がスキルらしい。聞いてる感じだと…Sが一番良くてその次がA。ということはBから続いていくんだろうか。
そんなことをなんとなしに考えていると、いつの間にか目の前にファルスさんが来ていた。
「さ、後はキミだけだ。」
そう言いながら水晶を指差す。どうやら俺以外はみんな水晶に触ってスキルとやらをもらったらしい。食堂らしき場所には俺とファルスさん、それと兵士らしき人が1人。それ以外は誰もいなかった。はっきり言おう。俺はこういう場面で自分の運。いや、引きとでも言おうか。そういったものを全く信じていない。さて、どうしたものか。
だが、俺が躊躇していると何を思ったのかファルスさんが俺の手を引いて――水晶に触れさせてしまった。ファルスさんの手、妙に冷たかったような…って、考える場所はそこじゃない。俺は慌てて<ステータスオープン>と唱える。
名前:ナガエ カズマ
称号:異世界からの転移者
Lv:1
STR:F++
AGI:E+
DEX:E
VIT:F
INT:F-
MAG:F-
LUC:G
スキル:アイテム作成
鑑定眼:Lv1
<ステータスオープン>と唱えたら俺の視界にこんなことが書かれたプレートが浮かび上がってきた。うん、この世界の人のステータスがどのくらいが平均かは知らないが、いい印象は受けないし、スキルも明らかにアレだな。
「アイテム作成に、鑑定眼のレベル1ですか…」
後ろからファルスさんの声が聴こえる。振り向けば水晶を見つめ、そこに書かれた模様らしきものを読んでいるようだ。その声は期待外れ、呆れ、嘲笑。そんなものが含まれていたように感じた。
「ともあれ、これで全員の確認は終わりましたね。……ラックス。彼の案内をお願いします。私は【診断の水晶】を片付けてから次に向かいます」
ファルスさんはそう言い、台座と水晶を持って食堂から出ていく。代わりに兵士らしき人が俺に近づいてくる。ファルスさんの言葉から察するに彼がラックスさんだろう。
「では、こちらにどうぞ」
そう言って、彼は歩き出す。うん、低くて渋いいい声だ。そう思ってる間に枯れはどんどん歩いて行く。見失わないようについていかないとな。
俺にも、そう思っていた時期がありました。気がつくと俺は城から出て、城下町を通り過ぎて関所のような場所から外に出ていた。
「それでは、こちらがあなたの持っていた荷物になります。では、ご武運を」
そう言って俺の通学カバンを放り投げ、彼はもと来た道を全速力で引き返していく。俺はあまりの出来事に呆然と見送ることしかできず――気がついたら門が閉められていた。
ここ、もしかしなくて関所じゃなくて城壁の外か!?いや、それ以前に俺どうやって生きていけばいいんだ!?いや、関所は関所なんだろうけど、これもしかしなくても捨てられたか?スキルが<アイテム作成>と<鑑定眼:Lv1>だったせいで!?
永江一真、異世界でいきなり捨てられました。
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