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異世界交流学園の臨時講師  作者: 福耳 田助
2章.1年目4月:授業始まる
19/25

13・再訪・再会・目標

再投稿


 三月三十一日 境界学園クロスハート―――


 明日から新年度と同時に新学期が始まるこの日、選抜科の面々はソフィアと共に正門前に集まっていた。

 凡そ三ヶ月前と同じ面子、同じ場所だが、今度の目的は真逆、“出迎え”である。

 そしてこの面子で出迎える相手など、言うまでもない。


「そろそろか…」


 ソフィアが時間を確認し、誰言うとなく呟くと同時、正門前正面の道を、真っ直ぐこちらへ向かって走ってくるタクシーが見えた。

 タクシーはそのまま正門前のT字路を右折、横付けする形でぴたりと停車する。

 ややあって、降りてきたのは二人の男女。

 言わずもがな、間兄妹だ。

 三ヶ月近くも前に、ほんの数日顔を合わせただけの相手だが、あれだけの鮮烈な経験を忘れられるはずもない。

 あの時の事を思い出したのか、学生達に僅かな緊張が走り、それを察したソフィアは苦笑している。

 その緊張の原因である本人は、まったく気にした様子もないが。


「よう、全員元気そうだな」

「…はい、ご無沙汰しております」


 それぞれに再会の挨拶を済ませると、雷堂は学生達一人一人に目を向ける。

 不可視の力が込められたようなその目線に、学生達も若干たじろいでしまう。

 しかし雷堂はそんな彼らの反応を意にも介さず、端から順に一人ずつ見やって全員を確認すると、口角を上げニヤリと笑う。


「どうやら、全員基礎訓練も真面目にやってたらしいな。 三ヶ月前とは《生命力(オーラ)》の質が違う」


 成程、どうやら《生命力(オーラ)》の状態から、ある程度の訓練の成果を確認していたらしい。

 そしてそれは満足のいく結果だったようだ。


「ええ、当然です。 私達の目標へ近付く為には、どんなに僅ずつでも前へ進んで行かなければなりませんから」

「…ほーう」


 面白い、まさにそんな感情が込められた顔で雷堂は笑う。


「参考までに確認しておこうか」

「…」

「その目標というのは?」

「それは…」


 リーンベルは一度深呼吸をして気を落ち着けた。

 上れる限りの高みへ、以前に掲げたその目標は、今は少し変化していた。

 いや、正確に言えばその“先”が出来たのだ。

 三ヶ月前の事を想えば、非常に大それた、無謀ともいえる目標。

 だが一度浮かんだそれは、自分自身でも否定する事は出来なかった。

 悩んだ挙句に仲間たちに相談してみれば、大なり小なり、全員が同じような事を考えていた。

 ならば迷う必要は無い。

 自分一人なら、心が折れ挫折していたかもしれない。

 けれどこの仲間たちとなら―――


「私の、私達の目標は、世界の頂点世界級(ワールドクラス)へと至る事…」


 ここまでは以前と同じ。

 今口にすべきは、その先の事。


「そして…」

「ん?」

「もう一度貴方と戦って、今度こそ勝つ…!」


 その言葉にソフィアと晶は目を見開き、驚きを露わにする。

 対して雷堂は、虚を突かれた様にポカンとした表情を浮かべ、一瞬の後に…。


「あっははははははは!」


 笑い出した。


「そんなに可笑しいですか」

「いやいや、悪い悪い。 別にバカにしてる訳じゃあ無いぜ?」


 学生達は不服そうな顔を浮かべるが、雷堂の笑いは中々収まらない。


「くくっ、そうか俺に勝つ、俺を越える、か。 はっはははは!」


 声を上げ一頻り笑った後—――


「面白れぇ…」


 それまでとは質の違う、かつて見たものと同じ、獰猛な笑みを浮かべていた


「やれるもんならやってみろ」


 その顔に一瞬だけ恐怖を覚えるが、即座に抑え込み言葉を返す。


「…ええ! やって見せます。 必ず…!」


 彼らの人生における最大の転換点。

 彼らにとって間違いなく激動となるであろう二年間が始まる―――







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