13・再訪・再会・目標
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三月三十一日 境界学園クロスハート―――
明日から新年度と同時に新学期が始まるこの日、選抜科の面々はソフィアと共に正門前に集まっていた。
凡そ三ヶ月前と同じ面子、同じ場所だが、今度の目的は真逆、“出迎え”である。
そしてこの面子で出迎える相手など、言うまでもない。
「そろそろか…」
ソフィアが時間を確認し、誰言うとなく呟くと同時、正門前正面の道を、真っ直ぐこちらへ向かって走ってくるタクシーが見えた。
タクシーはそのまま正門前のT字路を右折、横付けする形でぴたりと停車する。
ややあって、降りてきたのは二人の男女。
言わずもがな、間兄妹だ。
三ヶ月近くも前に、ほんの数日顔を合わせただけの相手だが、あれだけの鮮烈な経験を忘れられるはずもない。
あの時の事を思い出したのか、学生達に僅かな緊張が走り、それを察したソフィアは苦笑している。
その緊張の原因である本人は、まったく気にした様子もないが。
「よう、全員元気そうだな」
「…はい、ご無沙汰しております」
それぞれに再会の挨拶を済ませると、雷堂は学生達一人一人に目を向ける。
不可視の力が込められたようなその目線に、学生達も若干たじろいでしまう。
しかし雷堂はそんな彼らの反応を意にも介さず、端から順に一人ずつ見やって全員を確認すると、口角を上げニヤリと笑う。
「どうやら、全員基礎訓練も真面目にやってたらしいな。 三ヶ月前とは《生命力》の質が違う」
成程、どうやら《生命力》の状態から、ある程度の訓練の成果を確認していたらしい。
そしてそれは満足のいく結果だったようだ。
「ええ、当然です。 私達の目標へ近付く為には、どんなに僅ずつでも前へ進んで行かなければなりませんから」
「…ほーう」
面白い、まさにそんな感情が込められた顔で雷堂は笑う。
「参考までに確認しておこうか」
「…」
「その目標というのは?」
「それは…」
リーンベルは一度深呼吸をして気を落ち着けた。
上れる限りの高みへ、以前に掲げたその目標は、今は少し変化していた。
いや、正確に言えばその“先”が出来たのだ。
三ヶ月前の事を想えば、非常に大それた、無謀ともいえる目標。
だが一度浮かんだそれは、自分自身でも否定する事は出来なかった。
悩んだ挙句に仲間たちに相談してみれば、大なり小なり、全員が同じような事を考えていた。
ならば迷う必要は無い。
自分一人なら、心が折れ挫折していたかもしれない。
けれどこの仲間たちとなら―――
「私の、私達の目標は、世界の頂点世界級へと至る事…」
ここまでは以前と同じ。
今口にすべきは、その先の事。
「そして…」
「ん?」
「もう一度貴方と戦って、今度こそ勝つ…!」
その言葉にソフィアと晶は目を見開き、驚きを露わにする。
対して雷堂は、虚を突かれた様にポカンとした表情を浮かべ、一瞬の後に…。
「あっははははははは!」
笑い出した。
「そんなに可笑しいですか」
「いやいや、悪い悪い。 別にバカにしてる訳じゃあ無いぜ?」
学生達は不服そうな顔を浮かべるが、雷堂の笑いは中々収まらない。
「くくっ、そうか俺に勝つ、俺を越える、か。 はっはははは!」
声を上げ一頻り笑った後—――
「面白れぇ…」
それまでとは質の違う、かつて見たものと同じ、獰猛な笑みを浮かべていた
「やれるもんならやってみろ」
その顔に一瞬だけ恐怖を覚えるが、即座に抑え込み言葉を返す。
「…ええ! やって見せます。 必ず…!」
彼らの人生における最大の転換点。
彼らにとって間違いなく激動となるであろう二年間が始まる―――