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異世界交流学園の臨時講師  作者: 福耳 田助
1章.1年目1月:転機の出会い
10/25

9.間・戦力・十人会

再投稿


(ハザマ)総合警備保障?」

「て言ったらあれだよね。 日本ではトップクラス、世界的に見てもかなり大手の警備会社。 確かクロスロード(ココ)にも支社があるけど」

「そう、一般企業は勿論の事、それ以上に“国家”や“政財界”などの公権力からの信頼厚い大企業。 例えば俺の国日本では軍事関係以外の国家の重要施設、国会議事堂や皇居、造幣局などは殆どが“間”の警備が置かれている」


 二コラの言葉に肯きつつも補足を加える宗昭。

 しかしそこまでは一般でも知られている事。

 元々テラの生まれである朱音や二コラ、生まれはマナでもテラで育ったロドリオは普通に聞いた事があるし、マナ育ちの三人も大企業としての“間”の名前ぐらいは知っている。

 問題はその先、一般には知られていない、普通に生きているだけ(・・・・・・・・・・)では知りえない情報。


「というか“間”、ってことは」

「間総合警備保障の現社長は彼の父親、彼は次期社長という事になる」

「…フツーに大企業の御曹司だよ。 お金持ちじゃん」

「まぁ、資産はあるだろうな。 家でも個人でも」


 当然と言えば当然であるのだが、ごく普通の一般庶民の出である朱音にはその程度の認識らしい。

 ちなみにこの場にいる面子は、公爵令嬢・竜人族族長の娘・エルフ族長老の曾孫・ロシア軍最高幹部の息子・名門剣術家系の息子、と“普通の”一般人の方が少なかったりする。


「ああいや、警備会社の事も無関係という訳では無いが、そこは今はいい。 本題は間総合警備保障の前身…母体となった組織について、だ」

「“母体”?」

「…“間流戦技”、それがその組織の名だ」


 聞き覚えが無かったのだろう、ティアを除く全員が首を傾げる。


「初めて聞く名前ですが…。 有名なのですか?」

「“ある意味”ではな。 普通は戦いに関わらない一般人が知るような名前ではない。 その名を知るのは政治や経済、軍事に関わる者、他には戦いの中で生きる人間なら自然知る機会は多い。 後は俺の様に、代々戦いを生業にしてきた家に生まれた人間くらいか」

「そもそも“戦技”って、要するに何を教えるの?」


 ロドリオのその疑問に、返されたのは端的な答えだった。


「“全て”だ」

「は?」

「剣術とか武術とか、そういう括りではない。 “戦い”に関するあらゆる“技”を教える、故に“戦技”だ」

「あらゆる技…?」

「武器なら剣術・槍術・弓術・棒術・投擲術・射撃、他にも斧や鎌、暗器といった多少マイナーな物まで。 体術ならば打・投・極の全て。 当然“気功”もだが、魔法だけはまだ無いらしい。 更に戦闘に於いて有用と思われる様々な知識・技術も教授している。 戦術や戦略は勿論、医学・薬学知識や人体構造、科学的な物も含めた武器・兵器の構造や使用に関する知識とその対策、果ては精神修養まで、まさに際限無しだ」


 余りにあんまりな内容に、全員開いた口が塞がらなくなっている。

 最初に“全て”とは言っていたが、まさかそこまでだとは思わなかったのだ。


「何だよそりゃ…。 無茶苦茶過ぎだろ…?」

「別に全員が全てを会得している訳では無い。 自己判断で必要な知識と技術を取捨選択して、その中から学んでいくというやり方だ」

「あぁ、なんだ」

「幾らなんでも知識はまだしも、技術を全て習得するのは無理があるからな。 間本家の人間を始めとした、高位の実力を持つ数人で分散して継承させているらしい。 とは言え本家の嫡男ともなれば、半分以上は身に着けているという話だが」

「…やっぱり無茶苦茶だよ。 あの人が化物染みてるのも納得だよ」


 そうこぼした二コラのみならず、その場にいた人間の口から、呆れとも何ともつかない溜息がこぼれる。

 余りにも常識外れな話に、聞いてるだけで精神的に疲れてきた。

 しかし残念ながらまだまだ終わりではない。


「化物レベルは当然。 ライ兄は“十人会”の一員」

「十人、会?」

「間の中でも一番強い十人の事。 ライ兄もその一人」

「一番強い、ですか~。 世界級(ワールドクラス)ともなれば、当然かもしれませんね~」

「そんなに簡単に行くほど、あの家は甘くない」

「…そうだな」


 そんなシルフィアーネの言葉を、ティアは首を横に振って否定し、宗昭もそれに同調する。


「甘くない、たって世界級(ワールドクラス)だよ? 単独で国家すら上回る世界最強戦力! それが一つの組織の頂点に入るのは当たり前じゃないの?」

「それは…」


 そう言い放ったのは朱音だが、他の五人も同じ意見であろう事はその顔から察せられた。

 それに対し何事か言おうとしたティアだが、何度か口を開いては閉じ、結局何も言わぬままに宗昭に目を向けた。

 基本的に饒舌ではないが必要であればそれなりに喋る宗昭と違い、普段から短文でしか会話しないティアは説明が苦手なのだ。

 ティアの視線を受け、確かに彼女には長文での説明は向いていないだろうと判断した宗昭が再び口を開く。


「最強の十人、と言うのは簡単だが、それをどう決めるのかという問題がある。 さっきも言ったが、間流戦技の門下生は約千人。 集団の中から最強を選ぶとなれば、トーナメントかリーグ戦が一般的だが、この場合はトーナメントが無難だろう」

「そうですね。 千人もいるのであればリーグ方式では時間が掛かりすぎますし、余り現実的ではないでしょう」

「ああ。 実際間も昔はトーナメント方式で決めていた時期もあったようだが、それはそれで問題が起きたらしい」

「問題?」

「運の要素が絡みすぎたんだ。 中途半端に実力差のある組み合わせになった所為で、加減が効かずに重傷者が続出したり、序盤で実力者同士の潰し合いになったり、何よりもくじ運に恵まれただけの人間が、分不相応な上位に入ってしまったり、な」

「…その場合一番不幸なのは、くじ運だけで勝ち進んじゃった人だよね」

「後々の事を考えると悲惨ですね~…」


 そこまでの実力も無い人間が、いきなり身に余るほどの立場と重責を背負わせられるのは、確かに悲惨であろう。

 実力本位の組織で、自分よりも格上の相手が部下になるというのは、凄まじいストレスに違いない。


「そういった問題が起きたことからトーナメント方式は廃止され、様々に検討を重ねた結果、現在使われているのが“序列制”だ」

「序列…順位付けって事か?」

「そう、純然たる“実力”による順位付け。 一位から始まり、間家の人間を含む門下生全員に実力順の序列が与えられる。 序列を上げる方法は簡単で、自分より上位の相手に試合を挑み、勝てばその順位に上がり、下位の者が一つずつ繰り下がるシステム。 細かいルールが色々あるらしいが、流石にそこまでは知らん」

「なら、“十人会”というのは…」

「ん、一位から十位までの十人の事。 ライ兄は確か今は六位」

「なるほ…ど…?」

「…あれ?」


 一瞬さらりと流しそうになったが、今ティアはとんでもない事を言わなかっただろうか?


「あの人が、六位?」

「? ん」


 不思議そうにしながらもこくりと頷くティア。

 やや間をおいて…。


「「「はぁっ!?」」」


 全員から驚きの声が出た。


「ちょっと待て! 六位って、一位とか二位とかじゃねーのか!?」

「六位って事は、上にまだ五人もいるの!?」

「六位のあの人が世界級(ワールドクラス)なら、まさか上の五人も、全員世界級(ワールドクラス)…?」


 序列の話を聞いた時に、極自然に雷堂は一位か二位、せいぜい三位だと思っていた。

 勝手な思い込みと言えばその通りだが、それで彼らを責めるのは酷であろう。

 何しろ世界級(ワールドクラス)というのは数が少ない。

 どんなに多くとも、両世界合わせて三百人程度しかいないのに、それが一つの組織に五人も六人もいる筈がない。

 彼らの考えは至極真っ当なものだと言えよう…が、まだ甘い。

 間に属する世界級(ワールドクラス)は、実を言えば六人(・・)どころではないのだ 


「上の五人が、と言うならその通りだが、上だけじゃあない」

「ん。 下もそう」

「…は?」

「今現在の十人会は、全員(・・)世界級(ワールドクラス)だ。 こういう状態は、多くはないが、昔からままあると聞いている」

「「「…」」」


 信じ難い話に、全員がポカンと口を開けていた


「呆けている所悪いが、“とんでもない話”はまだある」

「…この上、まだ何があるっていうんですか?」

「序列上位、二桁台の人間は、ほぼ全員が軍団級(コープスクラス)以上、 俗に“人外”と言われる領域に踏み込んだ人間だという話だ」

「「「…」」」


 戦闘位階十段階の内軍団級(コープスクラス)以上は人外の領域、一人一人が戦術兵器に相当する怪物。

 それが一つの、しかも特殊とは言え民間の組織に、一纏めで在籍しているというのだから驚くのも当然であろう。

 軍団級(コープスクラス)以上の人間は世界級(ワールドクラス)まで含めればおよそ八千人、その内の1.25%、世界級(ワールドクラス)に限定すれば実に3.3%が“間”に籍を置いている事になる。

 1.25%や3.3%というと少なく感じるかもしれないが、両世界に数百数千と存在する国家・組織の中のたった一つに、これだけ集中しているのはやはり異常だ。

 何しろそれだけの戦力があれば、国どころか世界(・・・)すらも滅ぼせかねないのだから。


「そんな途轍もない組織が、民間(・・・)で存在していることを、テラの政府は許容しているんですか?」


 高位貴族家の娘として、高度な政治教育を受けてきたリーンベルがそんな疑問を抱くのも当然。

 普通ならば政治や国防に携わる人間が、こんな巨大な戦力を抱えた組織を“首輪”も付けずに放置出来よう筈がない。

 しかし彼らにはそうせざるを得ない理由があった。


「許容しているというより、せざるを得ないんだ」

「? …どういう意味ですか?」

「かつては国連、現在では全界連合と、“間”は不可侵・不干渉の協定…条約を結んでいる」

「え?」

「それって、全界連合が民間組織と対等の(・・・)条約を結んだって事?」

「そうだ。 何故ならかつて“間”は―――








 ―――“世界”に、勝ったことがある」




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