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異世界交流学園の臨時講師  作者: 福耳 田助
序章・新しい世界の形
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0.新世界・戦争・新時代

 それぞれ全く異なる発展を遂げた二つの世界


科学と物理の世界

 “科学世界テラ”


魔法と幻想の世界

 “魔法世界マナ”


 二つの世界が繋がり、互いの存在を知ったのが凡そ百五十年前—――

 事の起こりは全世界で同時多発的に発生した、後に“境界融合”と呼ばれる現象

 地面に、壁に、或いは空中に、“穴”としか表現しようのないものが発生

 しかもその先にあったのは互いにとって完全に未知の異世界

 両世界は新たな“世界”の発見に感動と興奮と強い好奇と、そして少しの恐怖を抱いた

 あの“穴”の向こうにいるのは、果たして自分たちにとって本当に良き隣人なのだろうか、と


 二つの世界が争い、戦乱が始まったのが凡そ百四十年前—――

 突然の邂逅から幾ばくかの時が過ぎても、両世界の交流は上手くいかなかった

 余りにも違いすぎる文化が、“科学”と“魔法”という完全に発展の異なる文明が、そして何よりも言葉の壁が厚かった

 勿論互いに発展した社会を形成する者同士、何とか言葉を習得し交流を図ろうとするが、完全に0からの言語習得は中々捗らない

 そうして手間取っている内に、両世界の社会は不穏な空気を帯びていく 

 人は“未知”に恐怖する

 目に見えるのに、そこにあるのが分かるのに、何時まで経っても未知のままの異世界に、人々の恐怖は膨れ上がっていく…いつ破裂してもおかしくないほどに

 融合から十年が経ったころ、“穴”の周囲で起きた幾つかの些細な事件をきっかけに、遂に争いが起きる

 初めは極小さかったはずの争いは、“恐怖”という触媒を得て瞬く間に世界に広がっていった

 “争い”は“戦争”となり、“戦争”が世界を覆いつくしていく

 後の世で“境界戦争”と呼ばれる、両世界の人類有史以来最悪の巨大戦争の始まりである


 二つの世界が和解し、戦乱が終結したのが凡そ九十年前———

 戦争開始から五十年、両世界の総人口の合計は四割ほども減ってしまっていた

 そこまでに至ってようやく、これまで双方必死に行ってきた講和は成り、戦争は止まった

 勿論全ての戦闘が直ぐに止まったわけではなく、それでも戦争を続けようとする国や人間もいた

 だがそれらの国の殆どは、今度は内乱やクーデターが発生、それを理由に他国の介入を招き結局は終戦せざるを得なくなる

 もう民衆の誰もが、この未来(さき)も理由も見えない戦争に心底から嫌気がさしていたのだ


 二つの世界が手を取り合い、共に歩むと決めたのが凡そ八十年前———

 講和によって戦争が終わり、ならば次に始まるのは外交、とは言え簡単ではない

 何しろ五十年も続いた戦争、互いに対する憎悪と不信の念はそうすぐには拭えない

 それでも誰もが理解していた

 人の手で二つの世界を切り離すことが出来ない以上、どれほど相手が憎くとも、最早共に生きていくしかないのだということを

 ならばどうするべきか?

 その問いに対し、誰かが言った

 戦争が起きたのは互いのことを何も知らなかったのが原因、ならばまずは知り合おうと

 築き上げてきた文化を、積み上げてきた歴史を

 何を尊び何に喜びを感じるのか、何を悲しみ何に怒りを感じるのか、自分たちのことを教えあおうと


 そうして一つの街が作られた

 テラの科学技術とマナの魔法技術を結集し、最も大きな“穴”を挟むように世界を跨いで作られた巨大都市

 そこでは日夜様々な形での異世界交流が行われ、その様子はテラではテレビやインターネット・新聞で、マナでは魔法による映像通信で世界中に知らされた

 人々はその都市から発信される情報に目を凝らし耳を澄ます

 相手を知ることこそが、あの忌まわしい戦争を再び起こさないために必要だと信じて

 

 時間は掛かったが、それでも一つ一つ、互いを知るたびに蟠りは解け、その度に戦争は過去のものとなっていく

 やがて人々は真に戦禍を乗り越え未来を向き始める

 その象徴となったのがあの人工都市

 決して交わるはずのなかった二つの世界の道が繋がった場所


 “境界都市クロスロード”


 そう名付けられた場所で、八十年前、二つの世界の半永久的な友好条約と不戦条約が結ばれた——————





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