7:混乱聖女
※内容変更の為に、この回を一旦削除して書き直しました。ご迷惑を掛けて申し訳ありません。
熱を孕んだ黄金色の花の瞳が、アークシェさんを捉えてる。
でも、アークシェさんは…若干、引き気味?
ああ~…この状況、どうすれば良いのかな?
思わずフードを目深に被りなおしちゃうよ…。
ワタシ ハ ナニモ ミテイナイ。
「私はあの絨毯が気に入った。…交渉して欲しい」
「………分かった」
チノアの申し出をアークシェさんは痛む身体を押して受けた様だ。
私とアークシェさんはまだ鉄檻に中におり、状況は…好転しそうに無い、かも。ちぇ。
今から、ここでアークシェさんとチノアの絨毯の値段交渉が始まるのか…。
「…なら、貴方も含めて、あの絨毯は幾らかな?」
「…は!?」
「どう?私達の仲間にならない?貴方、品物の価値を見る目がありそう…」
無言でいるアークシェさんに格子越しに、一種の熱を含めた声色で彼女は伺いをたてている。
そしてアークシェさんは口をぱくぱくさせて、言葉に詰まってしまった様だ。
まさかの引き抜き行動とは…。
でも、そんな引き抜きの台詞を吐きながら、やはり…さっきからほんのりと頬に熱が浮いている気がするのだけど…。
私はそんな二人を黙ってフードの陰から見ている。
突然の事に混乱しているのか答えを口にしないアークシェさんに、彼女は「考えて欲しい」と短く言うと前のめり気味な体勢を垂直に直した。
そしてチノアが今度は私の方を向き、"困り顔"でこんな物騒極まりない台詞を零してきた。
「…さて、それじゃぁ…貴方はどうしようかな?…知り合いの奴隷商にでも引き取ってもらおうかなぁ…?」
「…!?」
ちょ、ちょっと!それは待ってよ!?
私は驚きのあまり、ここで垂直に跳び上がってしまった…。
え、えーと?"売り"?私のセールスポイント?
私がぐるぐると混乱していたら、格子の隙間からチノアは手を入れてきて、何と突然フードを外してきた。
"シュルリ"とした軽い衣擦れの音が、耳に感じたが、私は何も出来なかった。
チノアのまだ少女の範囲と分かる顔が、更に近くに…。
「…あ…」
「うん、結構可愛い顔してるし?買い手もすぐ見つかるよ。…多分ね?」
そして「買い手がどんな癖持ちかは知らないけどね」などと更に物騒な事を、その可愛らしい口で言ってきた…。
何デスカ、ソノ"癖"トワ!オー!ノォオォー!!ジーザス!ノーセンキュー!断固オコトワリシマースデース!!
しかも止めてぇ!その「あーあ、残念~」とでも言いた気な八の字眉の表情を…!
―…そこで私は…閃いたのである…。
あああ、ううう!そ、そうだよ!?彼女にとって、"有意義"な"何か"を示せれば、私にも"ワンチャン"無いかな!?
何か、何か、なにか…!
私はチノアから視線を外して、手当たり次第に当ても無く辺りを見回した。
そこで気が付いた、私…達を見る、好奇心と蔑み、哀れみ…を同居させた盗賊団の多くの男達。
そしてその集団の最前線で厳つい顔の、私が最初に足元にぶつかった人物は腕を組み、"ただ無言で無表情"な雰囲気で檻の私を見下ろしている。
周りの下っ端風情とは明らかに違う貫禄オーラと視線に、私は思わず咄嗟に取られたフードを再び被った。
ううう…フードの上からでも妙に"チリチリ"としあ視線を感じるよ…!?
そして私は彼の顔は見ない様にしながら、腕を見た。
…腕には、包帯がなされ、薄っすらと血が滲んでいた…。
ああ、多分…アークシェさんを襲撃した時に出来たもの…なのかな?
だって、聖女の"慧眼"で見た二人の力具合は多分拮抗してそうだから…。
「あの…」
「…ん?なぁに?」
私の呼び掛けに、チノアは緩慢ながら受けてくれた。良かった。無視されなくて…。
「…私が今からする事を気に入ってくれたら、私と…そこの商人さんを見逃して下さい」
「ええ?商人も一緒なの?」
「彼は…私に巻き込まれただけで…」
「ふぅん?それで?私に"何を"見せてくれるの?」
…話しが早いです。
あまり古い傷は無理だけど…真新しいのなら…。
「―…そこの腕を組んでいる男性の腕の傷を、"癒し"て見せます!」
これが、私のセールスポイント…!聖女の力、解放です!