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4:絨毯聖女

―フカフカ…



あ…。この絨毯…質が良いに違いない。気持ちイイ…。厚手で…この上で簡単に寝れそう…。大きさも丁度良さそうだし、柄も素敵…一目惚れかも~。



「…これとこっちの絨毯にします!この二枚の絨毯を買います!」



私はここで、この以前から出入りしている馴染みの商人さんから、ついに絨毯を買った!


商人さんはいつもの予定から少し遅れてやって来たの。

彼の持ち込んだ絨毯は全部で七つ。その中で私は大きさにして十畳位の大き目の絨毯を二枚選んだ。色違いなだけで、質は同じだ。

うん。これなら、私が中に寝そべった状態で巻かれても大丈夫な大きさに違いない。


ちなみに姫巫女様は私にお部屋のお誘いの言葉を仰ってから直ぐに、「王宮に特別な用事が出来ました。シオーネ、ごめんなさいね」と言って王宮方面の方へ足早に去っていってしまわれた…。…でも、何だか言い回しが変じゃないかな?まぁ…良いですけど…。

私はその後姿を見ながら、スカート長いし、いっぱいヒラヒラしているのに綺麗な足取りだなー、とか見惚れていたら商人さんが到着して自室へ…。と言う訳なの。


そうそう、話は戻って…



「…はい、聖女様、ありがとう御座います」

「あの、代金は"アレ"から引いて下さい…。……足りますか?」


「足りますよ。十分です。分かりました。では、後で残りをお渡ししますね」

「ありがとう御座います…!」



良かったー!私は商談成立に一安心した。


そう…この脱出劇の為に、聖女の髪の毛を売れる限界の長さまで、商人さんに内緒で売る事にしたのだ。

だって、聖女を辞めて旅に出るとなれば、お金が必要でしょ?

そのお金管理はずっと黒魔導師さんの担当で、私は貨幣として一番下の銅のコイン一枚すら、自由に出来なかったのだ…。

何でも、「神聖な聖女様の手が、世俗を渡り歩いた貨幣を触れない方が良い」と変に神聖視されてましてねー。

ここに呼ばれた時に教養の範囲で簡単な教育は受けたので、計算はまあまあ出来るんですけど、実際な買い物を一人でした事が無いんですよねー。はー…、聖女も中身は異世界の平民ですがねー。ねー?


でもここまでは、計画通り順調だ。


…そう、この商人さんに手伝ってもらい、私は外の世界に出ると決めたのだ!

真っ当に言っては多分駄目だと思うから、御礼とお詫び云々の手紙を残す事にして、私は商人さんに助けを仰いだの。

最初は「当座の生活費はどうするんです?」と渋っていた彼も、私の"髪の毛"をお金に換えると言ったら、その髪の毛を全て商人さんに売ると約束したら手助けを了承してくれたの!若そうなのに、決まったら話が早くて助かる!実は、髪を安全にお金に変換する為に、どうしようか悩んでいたの!


そして聖女…高位の聖職者の髪の毛はどうやら"霊力"が通うらしく、長ければ長いほど高値になるのだそうだ。

でも、これは要らぬ争いを起こすだろうから、自分以外に売らない様にと言われてしまった…。なにそれコワイ。

…髪の毛を売るのは最初で最後にしておこう。うん。

ちなみに私は伸ばしに伸ばして、脚のひざ裏まであるの。長い髪の毛の管理は案外大変なのだ!


そして絨毯を買って直ぐに私は、同じ商人さんの手で私は髪の毛を切ってもらった。



「ベリーショートとか、初めてです!」


「…本当に、宜しかったので…?」


「え?何ですか?似合いませんか…?」

「いえ、似合ってますよ!私が言いたいのは、聖女様が…」

「似合っているなら、嬉しいです」



言いながら、今度は瞳の色を簡易的に変える為の魔具で私は瞳の色を"紫"にした。

簡易的だから、これは今後も定期的に使わないといけないの。ちなみに放って置くと元の黒目に戻ります。

まぁ、カラーコンタクト…みたいなイメージね?



「…平和な今、聖女の力が殆ど消えちゃいましたから、ちゃんとした聖女では…無いです、多分…」



そう…。実は今使えるのは、簡単な治癒魔法…と、解毒魔法。

後は一応、護身術程度なら、有り難くも騎士様直伝の剣技…と言っても、短剣でなんですが…。

それと大事なのが"封印力"。一応…出来るけど、こちらも大分無くなっていると分かる…。


そして聖女としての"慧眼けいがん"も弱まってしまった。

"慧眼"とは、その物の本質の"力"を見抜く力と申しましょうか…。うーん。


この力で各地の"強い"方々を雇い、討伐、鎮圧を繰り返して突き進んだの。

だから、基本は私と騎士様と魔導師様に、第一王子の少数精鋭チームだったんだ~。

まぁ、討伐や鎮圧も大事だけど、細々とした内容も織り込まれた旅だったのよね…。

騎士様は私の一番の護衛も兼ねて各地の騎士達の様子見、魔導師様は新しい動植物の採取や錬金研究とかもしてたわね。

そして王子様はね、剣の修行も兼ねて見聞を広げるのと、王家の紋章が必要な所にも行くから同行してたの。

そんな精鋭チームで、正直結構強かったのよ?


それに、三人とも私に平等に接して来てくれて…。ちゃんと仲間だって、言われているみたいで嬉しかったなぁ。

私に対する接し方は、三人で話し合って決めたみたい。

私が『異世界からの聖女』と言う特殊な職種だから、気を使ってくれたんだろうな…。


当時はそんな力有る聖女だったけど、今の私は…



「……ただの、対処に困る面倒な無学の小娘です」



そして鏡に映った自分を確認した。髪の毛を切る前に着替えておいたのだ。

商人さんに用意してもらった男物の撥水加工されたフード付きの上着に七部ズボンを穿いて荷物は大きめ厚手の布ショルダーが一つ分!

顔は普段…一部の人以外の前では厚いベールで隠してきたし、それが街中等一般人が多い中になれば、元々平凡顔の私など、直ぐに紛れ込めるだろう。


あ…でも…。仲間達との初顔合わせの時に、私を見るなり皆、眉間に皺を寄せた真剣顔で固まっちゃって…。

揃って旅先で被るベール…と言うか布は全部厚手の物を用意されて…。ええ、防寒と遮光性は抜群でしたけどね。ただし熱い地方では何度も倒れて、迷惑をかけましたけど!

…私の推測では、多分…平凡顔過ぎて神聖視されている"聖女"様の雰囲気が無かったのだと思う。ミステリアスさが足りなかったのね…。

隠れている部分を勝手に想像して保管して貰おう、って寸法だったに違いない。…確認してないけど。



「…聖女様、お顔は少しお隠しになった方が…」


「え?私にそう思うの?」


「聖女様の素顔は危険です」

「ええ?聖女としては今まで数えるほどしか、この素顔を見られてないんですよ?聖女と分かる人の方が少ない…あ!分かった!」


「?」


「流石に男っぽい格好をしても、そう見えないと?

一人で旅をするに当たって、舐められない様に…と考えて男装しようと思ったんだけど…。

背丈は女にしては高い方だから、ベリーショートにしたら少しは女に見られない様に変装の足しに…と、期待したんですけど…」

「いえ、そうではなく…」


「…じゃぁ、フードをこういつも目深に被れば良い?どう?」

「……はい…」



商人さんを上目で見れば、彼ったら顔を真っ赤にして片手で口元を押さえて横を向いているの…。

…そんなに私の男装はおかしい?…笑いを堪えるくらい滑稽な姿なのかしら…?ちょっと、ショックね。ええ、少しね…。



「商人さん、ここまでありがとう御座います」

「聖女様、自分の事はこれからは"アークシェ"と…」


「?…はい、アークシェ…さん?では、私の事は単に"シオーネ"と…」


「はい!分かりました、シオーネ!さぁ、このアークシェに何なりと、お申し付け下さい…!!

今後は、いかがしますか?何なら、俺と様々な商品を扱いながら諸国を巡る旅に出ますか…?」



えええ?名前を呼んだら、超良い笑顔?



「…えっと、では…買った絨毯で私を早速、巻いて下さい。

諸国巡りは魅力的ですがこれ以上、アークシェさんに迷惑を掛けられませんので、お断りします」


「……分かりました…」



あれ?トーン落ちしてる?

でも…まぁ、気を取り直して…。


出て行く準備として、お世話になった方々への手紙と、私の我が儘を聞いてくれたアークシェさんを責めないで欲しいとお願いした手紙を机の上に置いた。

…アークシェさんが私の事で辛い目に遭っていると分かったら、軽く封印した所を…、とか書いてみた。…こんな脅しは無駄かもしれないけど。一応。

それと、こんな私を『捜さないで欲しい』と月並みだが書いておいた。

まぁ、もはや聖女としての力が半分以下の私なんか、何の利用価値もないと思うけど。人って、分からないからね。


…あああああ…。ここまで来ると…何だか…尻込みしちゃそう…。いや、駄目!それでは、だめダメ駄目だー!


……いざ、さっさとクルクル巻かれちゃおー!



「さ、アークシェさん!一気に、海苔巻きの様にキュキュっと巻いて下さい!!」


「…"ノリマキ"?」


「…あ。それは…お気に為さらずに…。私の故郷の食べ物の一つです…」

「そうでしたか。異世界の…。ノリマキ…」



言いながら、絨毯の端に寝転がり、両腕を胸の前でクロスしてファラオポーズな私。

…べ、べべべ、別にここでエジプトを意識した訳では無いんだからね!

そして意気込みを込めれば、「ふんす!」と当然に鼻息も荒くなりますよ!


あ。ちなみに購入した絨毯の内の一枚を敷いて、古い絨毯と交換する…という話しを、ちゃんとつけているから私の部屋から絨毯が出て行っても大丈夫なの。

まぁ、出て行くのは新品の絨毯一枚と古い絨毯、そして私…なのですがね?

私が使用した絨毯はアークシェさんが新中古品として買っ取ってくれて、古い絨毯は処分をお願いしている。



「あ!"縦置き厳禁"と貼っておいて下さいねー!」

「了解してます、シオーネ」



よし、これで"縦置き死亡"防止になったと思う。頭が逆さまになったらお陀仏ですよ。

そして巻かれた絨毯の中には私と、僅かな荷物。

荷物の中には髪の毛や絨毯を売ったお金も入っているから、少ないながらも大事なのだ。


そして、巻かれて…ゴトゴトと運ばれ始めたのが分かった。



「…ふぁ…」



あー。私の見立て通り…極上…。癒される…。アークシェさん、良い仕事してます…。

でも、今後の事を少し考えておこう…。


外に無事脱出成功したら、どうやって暮らそうかな…?

暫らく一人で旅をして…まずは自分が心底気に入った土地を探すんだ。

出来れば山裾の小さな集落近くに小屋…とか、借りて、まさに『晴耕雨読』な生活とか良いかも…。

少しなら読み書きや計算を教えられると思うから、小さな子供達に…と、上手く大人達に説明…して、そしてお金を…。


あ…。駄目。ヤバイ。眠い…。


…んーと…。簡単な治療や薬草ブレンドのお茶の販売…とか、どうかなぁ…。

…それなら、施設で培った料理の腕で、大衆食堂のお店に住み込みとか…何とかならないかな?



「…ふぁ…あ…っ………」



ここで眠って起きたら…私の新しい生活が始まるんだ…。

さらば!聖女生活!

そして私の…イシュウェル様への恋心は"好き"のままで永久封印!!



「ふふっ…。起きたら…、たのし…み…かな…?」





―…それではアークシェさん、運搬…お願いしますね…。zzz…

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