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16:姫役聖女

「…さて、どうしようか?シオ、何か芸…的なのは持ってる?」


「持ってマセン…」



チノアの質問に素直に答える。


だって、本当に無い…。

聖女の能力以外で出来るのは、施設で培った『簡単な料理・掃除洗濯・食材の見極めや値段交渉・裁縫』…ってな具合です。

あれ?私、これは裏方向きじゃない?でも、今はこれじゃないわね…。"芸人としての能力"だもの。

ここで"顔芸"や"声真似"や"ダンス"とか…出来たらまた違う展開だったんだろうけど…。出来無いしなぁ~~~。



「―…なら…私と、シオと…そのローヴァルって剣士も混ぜて、"劇"でもしようか?」

「ローヴァルさんも?何で?」

「だって、シオと一緒に行くんでしょ?だから、同じ括りにしようと思ったの。ま、どうするかはまだ…。言っただけだよ」

「…なるほど…。でも、そっかぁ…確かに私と同じほうが?」



…と、いう事は、剣士職だけど、外面は芸人となる彼が出来上がるのかな?明日会ったら話してみよう。

それにアークシェさんは商人として、そこら辺の通行のやり方は大丈夫だと思うし。



「ま、とりあえず…寝ようか…」

「うん」



そして私はチノアを同じ幌馬車内に身を横たえた。リーベルに着いたけど、今日は広場の一角で野宿的な幌馬車生活なの。

滞在日数によって宿をどうするかを決めるんだって。…まぁ、それなりに人数もいる盗賊団…旅一座?ですからね、ココは…。

私の隣りからチノアの「すぅすぅ」とした穏やかな寝息が早くも聞こえてきた…寝つき良いな…!

寝顔を見ると、とても…年上には見えない…。


それでは私もおやすみなさい…。







そして翌朝、チノアがこんな決定を急に話してきた。



「―…シオはとりあずロングなカツラかな?"お姫様"役ね?」


「え!?」


「"劇"の話しだよ~!それでね、わッるい盗賊王に浚われたお姫様を、王道パターンで助けに行く忠義の騎士サマ…ってのが筋だよ!」



ああ、劇の話か…。



「だから、お姫様は"悲しんで泣く"・"助けを求める"・"安堵に微笑む"、この三つが出来れば良いって感じ?」

「ぅ…うん、分かった…」



三本指を立て、一つ一つ折りながらチノアは私に役どころの説明をしてくれた。

なるほど?それなら…何とか、私も出来そう…かな…!



「んじゃ、とりあえず決定ね!シオがお姫様、ローヴァルが盗賊王で、私が騎士をするから!」

「え…っ!?えええっ?」



剣士のローヴァルさんが盗賊王役で、本職・盗賊のチノアが騎士役!?決定なの?ローヴァルさんに相談、させてよ~~~。

そして、その事をチノアに聞けば…



「―…だってぇ、『チノ一座』は私が座長なんだよ?

とりあえず知名度的に、主人公な騎士は私が良くない?

それに、"斬り付ける"時の加減や立ち回りもあるしね。

時間も無いし、仲間との連携が確り取れている方が良いでしょ~」


「う…確かに…。で、でも、そこ…盗賊王役はビサージュさんでも良いのでは…似合いそうだよ?」


「ビサージュぅう~~~ぅ?」



あれ?難色?



「…ビサージュは"音"担当なの。シオも見たでしょ?ビサージュの楽器塊のワンマンライブ!」

「見た!よくあんなに楽器を扱えるね…。ギターにベースに脚にはドラムに…脇にはシンバル?それに前面には鍵盤みたいなのが…あって、他にも細々と…。一体、どうなっているの!?私は楽器を扱う事自体苦手だから、無理…!」

「そこがビサージュの"売り"だからね。もちろん本人が毎回生演奏しているんだけど、エフェクトやちゃんと音が出る処理は特別な魔具が行っているみたいだよ。ビサージュにそれを聞くと長い時間説明が止まらないから、ちょっと注意だよー」



おおっ!?話しが止まらなくなるくらいなんだ!大好きなんだねー。ふむふむ?



「それでね、ビサージュは戦闘はとても頼りになるくらいの腕前を持っているけど、"役"になると本当に大根だから、無理なの。…………残念だけど…」



そう言って、どこか遠い目をするチノア…。



「やらせると、何故か裏声のコブシのきいた棒読みだし、同じ側の手足が綺麗に同時にカクカク動き出すの…見えない糸で繋がれているみたいに、…ね!……ああああーもー!もー!もおぉおぅ!!」



チノアはバタバタポカポカと何も無い空間にした後、「でもね!?台詞の覚えはスゴク早いの!!」とフォローを入れてきた。お、おぅ…。

そして、チノアの話を総合したビサージュさんを想像………出来ない。逆に、出来ない。


しかし、そんな事実があるならばここは…







「…と、言う訳なんです、ローヴァルさん…!"盗賊王"役を、お願い出来ないでしょうか!?」



―…そして私は「明日来る」と言って別れたローヴァルさんが幌馬車に本当に来てくれて、挨拶を済ませて直ぐに隣国に行く為の"身分証"が無い事と、その解決方法を話した。


ローヴァルさんは私の話しを黙って最後まで聞いてくれて、話し終えた私から二呼吸ばかり置いてから口を開き出した。



「……シオは"身分証"…持ってないのか…」


「うううっ…申し訳無いです!…悪い事はしていないのですが、普通に造れない事情がッ…!実は…お世話になっていた所を勝手に出来て来たんです…。

それに私…、こういう事を良く他の方に全部お願いしていたので、自分は余り知らない…一般常識に欠ける部分があるんです…」


「あー…そんな…シオ、涙目にならないでくれ…。分かった。分かったよ。俺がその…"盗賊王"をやろう。…………俺も身分証を出したくないし…」

「…!!!ローヴァルさん、ありがとう御座いますぅううぅ!!」



…ン?何だろう?ローヴァルさんの後半の部分、自分の叫び声が重なって上手く聞き取れなかった…。



「一般常識に欠ける……神殿住まいの"上位聖職者"ってそんなに面倒事が多いの?ま…、シオの事情は詳しくは知らないけど。

あ、私はチノア。『チノ一座』の座長だよ。宜しく、……盗賊王・ローヴァルさん?」

「チノア!」



そうか!チノアは私の事を"上位聖職者" だと位置就けているのか…。

後方か現れたチノアは私を通り越して、ローヴァルさんの前で歩みを止めた。

見れば、チノアは低い位置からローヴァルさんをジロジロと見ている。ま、身長差がそうさせているんだけど。



「―…シオ、これは文句無い美形じゃない?」

「…………」

「えっ、チノア、分かるの?」


「んあ?…んーと、何となく?整ってそうだな、って」



な、何…その返答は…。

あれ?チノアの瞳の花形の虹彩がキラキラしている様な…?



「…シオ、君は"上位聖職者"なんだ?」

「あ、はい!…そう言えば言ってませんでしたね。あまり人に言った事が無かったので…。とりあえず、聖職の基本と回復と解毒が少し使えます」



私の返答に「そうか…」とだけ口にして、ローヴァルさんは視線を私から前方へずらしてしまった。



「上位聖職者は希少だから、別な職種かランクを下げて提示した方が無難だな。下手すると、荒い人買いに浚われてどこぞに売られるぞ」

「さらわれて、うられる、んですか!??」


「ああ。色んな奴が世の中には居るから…。しかも、"回復"や"解毒"…光魔法の治癒系統の使い手はどんな人物でも欲しがるだろうしな。そりゃ、王様から貴族、冒険者、市民…大体が"痛くて苦しい"のは嫌なものだろう?」


「………確かに…。健康、一番、です」


「そうそう、そう言う事だ」



なるほど確かに…。



あ、ここからは説明になるけど、王宮の神殿は内部で、"聖職"と"神職"に分かれいるの。


…つまり、私は聖女で""聖職 なのね?

そして姫巫女のレジェスターニャ様は"神職"になるの。


分け方は本人の希望も多少あるみたいだけど、


『聖職 → 魔力が多い』

『神職 → 霊力が多い』


という適性の分け方が一般的みたい。


そして巫女・神子…神職は神殿住まいでも、ちょっと特殊でね?

この職で特化しているのは"召喚・呼応・神代・星見"なの。

神代かみしろは、まぁ…"お告げ"を受けると言いますか。神の化身となるといいますか…。

星見は、星の輝きや運行から色々占いを行う能力よ。ちなみに天文学が大事ね。

後は、霊的・魔的な何かと会話したり、出現…私みたいな異世界人を召喚する事が出来るの。


そして…これは噂なんだけど、裏的存在…『逆還師ぎゃくかんし』という、幻…眉唾ものの一族がこの世界のどこかに居るらしい。

この逆還師は召喚の逆。つまり、"還す"…召喚したものを強制的に還せる能力に特化しているのだそうだ。むしろ、使える能力はこれのみらしい。

それって、どういう事?私だったら、元の世界に"強制的"に戻るって事?なのかな…。詳しくは分からないや。


…私が某貴族から薦められたのは、神殿の姫巫女様を経由して帰る方法。

姫巫女様が私を呼んだから、呼んだ姫巫女様が私を帰した方が安全だし確実なのだ。

…仕組みは良く分からないけど…。そういうモノなのかな?


次は"聖職"ね?この職種は、"回復・解毒・封印・浄化"が特化しているの。

この中でも、"回復・解毒"は"知識"の蓄積が大事なのね?

手をかざして治せるのは高が知れてるのよ…。

人体の構造を深く知っている方が、回復量が多いし、大怪我が治せるの!

それはね、人体の"細胞"等に呼びかけて、活性化させて治療を施すからなのね?これは聖職の"解毒"も同じ考えだよ。

ああ、それと大怪我が治せる…と言っても、 時間が掛かるし、万能じゃないけど…。

ちなみに"医師職"もちゃんと存在してるからね!


封印は半永久的に、何か依り代になる物を用意して、そこに閉じ込める行為ね。浄化や"消滅"が難しい相手に有効ね。

浄化は、そのまま。清める事よ。簡単に言ったけど、結構、様々な事に使われる頻度が高いものよ。


あとは…"魔"を祓う"祈祷"や、様々なものから身を簡易的に守れる"結界"はどちらも可能よ。共通なのね。


…私はちゃんと教育を受けて、この様な能力を磨いてきた訳ではないから、使える能力の幅が大きいんだよね。チート能力濃厚ですよ…。

しかも今は"覚醒"してないから、能力MAX状態ではないの。…それでも"回復・解毒"が通常で使えるから、上位聖職者です…が。



―…ま…どちらも閉鎖的な専門職でして。



「…それなら、私はどうしましょう…」


「ん?"表向き"は"芸人"になるんだろ?」

「…はい」


「なら"芸人"…"旅役者"とかで、とりあず良いんじゃないか?」

「…!そうですね、そうします!」



ナイス、ローヴァルさん!

…ぃよおッし!俄然やる気が出てきましたよー!

頑張って目指すぞー!流浪の旅役者…をッ!!

そして裏の顔は上位聖職者にして…実は聖女!…なのだ…!ふはははー!(棒)



「…じゃ、全員で細かい所を話そうか」

「チノア、分かった!話そう!」



―…そして…チノアから超短期間特訓を受け、上演出来るくらいまで何とか仕上げないと…いけなくなったのだ…!ひぃ!?

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