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11:交流聖女

ベーリルへ向けて移動しながらの3日目の朝、私は一人で泉に顔を洗いに行った。


しかしこの泉に来る途中で野うさぎの集団に囲まれ、鹿の親子に出会い、番の狐、大きな狸、小さな蛇達、白いサルの集団…。

そして何故かそれらをゾロゾロと引き連れる形で私は泉で、洗顔をした…。



「…何なの…一定の距離感はあるけど、この…私を監視するような視線は…」



そんな中、私のすぐ隣りにある大きな岩に最後…と思われる者が飛来した。それは…



「黒い…小鳥?」



岩肌を"トットットッ"と移動し、私を見上げる暗い赤の瞳…。



「もしかして…"手紙"?かな?」



私はチノアのあの一件を思い出した。

チノアのは黒猫、この小鳥も黒。

手紙の遣り取りとあのようにしていたら、この小鳥が"返信"だという事も考えられない…?



「―…ピィー」


「…鳴き声がある…。じゃ、違うね?"本物"だ」



チノアの黒猫は声を出せなかった。単純だけど、私はそう判断したの。


…それにしても、変な小鳥…。

黒くて小さい…手乗りサイズなのに、自身より大きな動物の方が怯えを見せている…?

だって、この小鳥が現れた途端、周りの付いて来た動物達が数歩後退したの。

…怖そうな要素なんか、一つも無いのに…。



「―…あ…。…人に慣れて居るの?」



小鳥は私の指に乗って来た。……可愛い…。


私は試しに、そのままの状態で歩き出してみた。

小鳥が逃げるんじゃないかなと思ったのだけど、この小鳥…逃げない。

指に小鳥を停めながら、私はチノア達の元に戻った。


あ。ちなみに今は捕まったアジトから出て、商隊の様な馬車生活をしているの。

チノアの服装はそのまま踊り子風だけど、他の盗賊の方々はパッと見、"旅人"、"商人"…普通?な感じに変化していた。

これだけ見たら、彼等が盗賊団だとは…思わない、かな?


あと、彼等…私に見せたあの姿はどうやら"ポーズ"な様だ。

何となく…教養を感じさせる彼等に変化したのよ。

そう言えば、チノアはビサージュさんから文字の読み書きを習ったそうだ。


そして今、私は鞄の中から紙の切れ端と簡易のペンで簡単な文章を書いてみた。


―…誰かとチノアみたいに話しをしてみたい。


これは、ただ単に衝動的な要求…。

だから、返って来なくても構わない…と、ちゃんと自分に言い聞かせる。



「…小鳥さん、ごめんね?」



そして私は、こうなっても逃げない黒い小鳥の脚に、紙の破片で手紙らしきものを括り付けた。


内容は…


『初めまして。私はエス。今、旅をしています。とてもドキドキしてます。』



…なんて、内容なんか無いもの。

とっさ過ぎて、自分でも訳が分からないや。


括り付けた後、小鳥は「ピー」と一鳴きして、私の元から去って行ってしまった。



「…………」



ぼんやりと小鳥が去った空を見て、私は瞳を閉じた。


明日はベーリルに着く。

ベーリルのギルドで、良い人を雇えれば良いな。

そして、チノア達やアークシェさんとはお別れだな…。

路銀稼ぎは薬草とか売ったり…、ギルドでお仕事探したりしないと。


そして、パチリと瞳を開いて、「よし!」と自身に気合を入れた。







それからその日の夕方、私は馬車から降りて薪になりそうな枝を拾っていたら…




「ピー!」




この…鳴き声…!?




「え…?戻って…?私の元に…?」


「ピピー!」



現れたのは、あの黒い小鳥で…私の指にまた停まってくれた。

更に私の言葉か心情を察したかの様なタイミングで、黒い小鳥はくいと片足を器用に曲げて私に何かをアピールしてきたのだ。


そして、それを見れば…



「!!」



…その脚の紙…、私が括ったのと違う…。淡い水色の紙に、小さな白い花が一緒に括られている…。



「…もしかして…誰かが、私のを…読んで…?」



口元が戦慄く。心臓の音がウルサイ。全てがもどかしい。





―…そして不思議な笑みが私から生まれた。





歓喜が、溢れたのだ。





「ちょっと、ごめんね…。ありがとう」



そう小鳥に向かい口にしながら、私はわくわくしながら水色の紙を広げた。

そして、紙には確かに誰かの文章…が…。

なるべく落ち着いて読んでみると…



『初めまして。僕はディー。エス、君は旅をしているんだね?それでは、そんな君に切り傷に効く薬草をあげる。これはどこにでも育っていると思うから、利用すると良いよ。乾燥携帯、お茶、軟膏、好きなやり方で携帯、摂取出来るから、便利です。それでは。』



「………この花、薬草なんだ!」



返信内容に驚いちゃった。


薬草の花を教えてくれるなんて!嬉しいな!貰ったこれは、押し花にしよう!



「あ!…お礼を言いたいけど、…どうしよう…?」



どうしよう、って…どうしようもない…よね…。

私がそんな感じで俯いたら、何と小鳥が…



「ピーピー!」


「え…?何で脚を曲げて…?…ぇ…?」



この…、これ…って…



「…また、運んでくれるの…?」



私の動揺が隠せない質問に、小鳥は一鳴きして私に答えを与えてくれたのだった…。

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