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敗北

移動中、


「先に出た1,2,3号車はすでに交戦中らしい。準備は万全にしといてくれ。あとこれは通信機だ。耳にかけておいてくれ。」


とスノウとカノンへ1人の軍人が言う。


「了解です。」


と通信機をつけると、


「スノウ?カノン?聞こえる?」


とフランの声が聞こえる。


「ええ、聞こえますよ。」


とカノンが答える。


「大丈夫みたいね。私が全力でサポートするから無理はしないでね!」


とフランが優しく言う。


「了解です。」


と2人が答え通信をいったん切る。


そのとき本部で、


「リーダー!!大変です!!先行した1,2,3号車が壊滅状態とのことです!!」


とオペレーターの1人が答える。


「何だと!?ココット村の状況は!!」


とグレイが訪ねると、


「詳しいことはわかりませんが、死傷者多数、残存勢力で制圧は困難とのこと、後続の4,5号車で対処できるかどうか…。」


とオペレーターは答える。


「っ、くそっ!!言ったはずだ。死ぬなと。」


とグレイは机を拳でたたきながら悔しがる。


「4,5号車を退却さ…。」


とグレイが言おうとした瞬間、


「4,5号車ゴブリンを視認したとのことです!!戦闘態勢はいります!!」


とフランが答える。


「なに!?…っち、できるだけ負傷者を回収し帰還するよう連絡しろ!」


とグレイが大きい声で言う。


「了解!!」


とフランが言う。



ところ変わって5号車。


ゴブリンを遠くに見つけた4,5号車のハンターは武器を手に取り徐々に近づく。


そこにフランからスノウ、カノンへ通信が入る。


「2人とも聞いて!!先行した部隊が大ダメージを負ったみたい。あなたたちは可能な限り負傷者を連れて帰還して!!」


それを聞いた2人は、


「うそでしょ!!ちゃんと装備を持ってる部隊がそんな…。」


とカノンが驚いていると、


スノウが奥ににわかに信じがたい光景を見る。


「ぉ、おい…あれじゃねぇのか…。」


とスノウが指さした先には何体ものゴブリンが暴れており、何人もの人が倒れている。

血が飛び散り、

後方でマシンガンを撃っている残りのハンターも危険な状態である。

その光景を見たスノウは、


「うそ…だろ…。」



と唖然としている。


「こんな…ことって…。」


とカノンも動けずにいる。


4,5号車のほかのハンターは怖気づいており、震えているもの、逃げだすものが表れた。


スノウとカノンも恐怖に支配されている。


だが何かが2人を動かせた。2人は怒りに満ちている。怒りで手が震えている。


「なんてこと…しやがる…。」


とスノウが言うと、


「あたしたちの…仲間が…そんな…。」


とカノンもつぶやく。


直後2人は怒りに身を任せ飛び出す。


「ぉ、おい!待て!」


とハンターの1人が言う。だが2人にそんな言葉など届いていない。


そして、



「くそがっ!!」



とスノウが言い放つと、



「あいつら…絶対に!!」



とカノンが続き、2人合わせて、


スノウ「許さねぇ!!」

カノン「許さない!!」


と叫ぶ。


その直後スノウの手に持つ刀が青く光り、それに続くかのようにカノンのハンドガンも黄色い光を覆う。


彼らの復讐劇が始まる。




ココット町の防衛を任された1号車の隊長カイト・ラビーンは、残り少ない兵士たちと共に奮戦していた。


だが自分が撃つアサルトライフルの弾薬は、残り少ない。


残り2マガジンといったところであろう。

周りの兵士もおびえて戦っている者ばかりである。


それもそのはず。


周りの仲間はもうやられてしまったのだから。


しかしゴブリンの勢いは収まっていない。


「ちっ…どうする…どうすればいい…。」


とカイトは試行錯誤する。


「1発逆転の方法なんてあるわけねぇ。かといって、逃げ場なんてねぇ…。くそ…。」


最後のマガジンを取り付ける。泣きだす者もでてくる。もう終わりだ。そう思ったとき、



「ぉれの…仲間に…なにしやがる!!!」



とスノウの声が聞こえ直後カイトたちに一番近かったゴブリンに切りかかった。



「キーーン!」



とゴブリンの持つこん棒とつば競り合う。


「だれきゃ…コイツ?」


とゴブリンが問う。


「誰かだって…簡単さ…俺は、てめぇらを倒しに来た者さ!!」


とゴブリンを蹴り飛ばす。幸い小柄のゴブリンだったのでよろめく。が、


「オマえぇぇ!」


と殴り掛かる。が、途端にゴブリンの横から


「ドキューン!」


と銃声が聞こえ、ゴブリンの横腹をとらえる。


「ッキャ!」


と悲鳴を上げ退く。


「さすが、のみこみが早いで有名だけあるな。カノン!」


とスノウが言うと


「あたしだって力になりたいもの!でも、正直この光があたしからも出てきててパニック寸前だけどね。」


とカノンが言いながらスノウのもとへ駆け寄る。


「安心しろ。俺が生きてんだ。これ以上の安心がほかで得られるか?」


とスノウが笑いながら言う。


「そうだね。スノウほどタフじゃないけど信じてみるよ。」


とカノンも笑いながら答える。


その2人に対し軽傷のゴブリンが飛びかかってくる。


「オマぇらぁ、ふざけるニャァ!」


2人はそれを避ける。そして、


「ふざけてるのはどっちだ!!お前たちは俺たちの仲間を殺した。その痛みその身で味わえ!!」


とスノウがハンドガンを撃つ。それに続くかのようにカノンも撃つ。


「くっそ!」


と言いながらゴブリンは弾丸を受けつつも立っている。


「ならっ!」


とスノウが言い放つや否や刀を構えてゴブリンへ向け走っていく。そしてゴブリンが前を向いた時にはスノウの刀は振りあがっていた。


「お前は単騎で突っ込んだ。それが敗因だ!!」


と言いゴブリンを右斜め上から切る。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


と渾身の1撃を決める。


スノウが切った後からは白い魂のようなものが何個も空へ飛んでいき、白い粉がゴブリン自体から出てきて、

ゴブリンが消滅するとともに粉がまとまって地面に落ちる。


「はぁ、はぁ、はぁ、やれた…のか?」


とスノウがつぶやくと


「か、勝てたの…?」


とカノンも言う。


白い粉になった光景を見たほかのゴブリンは怒りをあらわにしている。ある1体が言う。


「アイツ…殺してヤル!!」


と動き出そうとした瞬間


「いや、帰ルゾ。」


とリーダー格らしき奴が言う。


「だケど!!」


とゴブリンが言うがなぜかおとなしくなりすべてのゴブリンが撤退した。


「…逃げた…のか?」


とスノウが言うと


「おいっ!2人とも!」


とカイトが話しかける。


「けがはないか?」


とカイトが聞くと


「はい。あたしたちは大丈夫です。」


とカノンが言うと同時にスノウとカノンの武器から光が消える。


「ぁ!消えた…。」


とスノウがつぶやくと遠くから声が聞こえる。


「大丈夫ですか?」


「遅れてすみません!救援に来ました!」


と2人の女の子が走ってくる。


「あれは?」


とカノンが疑問に思っているとスノウが、


「ぼーっとしてる場合じゃねぇ!!助けられる人を助けねぇと!」


と応急処置をしはじめカノンも続く。


2人の女の子も応急処置に加わり対処していくが、助けられなかった命が多すぎる。救護班が来たのはゴブリンが撤退してから15分後のことであった。


今回の死者35人。

重傷150人。

軽傷346人。

行方不明8人であった。


人間側へは大きすぎる被害であった。

こちらが倒したゴブリンはたったの1体。

とても等価ではない。


人間の敗北であった。




現場付近の救護車で軽いけがを治療してもらったスノウは、

ココット町の家が多くあったであろう場所に行く。



「っ、スノウ…」



とカノンが遠くから追うとスノウは地面に膝から崩れ落ちていた。


それもそのはず。


スノウの下には笑っているある家族の写真があったのだ。



そして、


その家族はスノウが応急処置をしているときにスノウがある家の近くで見つけたのだ。


父親と母親が子供の上から覆いかぶさっていたのだ。



せめて我が子だけでも守ろうとしたのだろう。


が、



行動むなしく3人とも亡くなっていた。



スノウは写真を手に取る。


そして、




「ごめん……俺が…もっと…早く…ここに来てれば…あなたたちを…守れたのに…。守れたはずの…命なのに…俺は…俺は…。本当に…ごめんなさい…。ごめん。」




といいながら5年前の情景も思い出される。



「なんで…俺は…肝心な時に…なんも…できないんだ。なんで…なんで…。」



そして、




「っ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」



こみあげてきた感情をすべて外に解き放った。



「スノウ…。」


とカノンがつぶやく。その目には涙がたまっていた。


その声は救護車の近くにいた2人の女の子にも届いていた。



「あの子…いや…謝らなくちゃいけないのはこっちだよ。…ごめん。」



「あたしたちなら…もっと早くこれたはずなのに…何してんだろ…。」



17歳の少年少女には重すぎる現実だった。


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