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ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
咎人のコウサツ編
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84 咎人のコウサツ編その24


「で、何をさせたい?」


「話が早くて助かるわ」


 屋敷に戻り、テーブルに着いた帽子の魔女がグラスを傾けながら笑った。

 中身は勿論オレンジジュース。


「新しい事業を始めようと思ってるのよ」


 魔女チェッツの仕事は人材派遣という名の人身売買だ。

 巫女に勇者を召喚させ、容姿や能力を元に各地へ売り込む。


 戦力として提供する事もあれば、権力者の養子縁組や令嬢の婚約相手。

 果ては奴隷や実験体まで。


 勇者の召喚というシステムに目を付けた商売は、一つの財を成すには充分だった。


「最近物騒でしょ?出来るだけリスクは避けたいの」


 貪欲な女は今以上に安全かつ大量に稼げる策を練っていたのだ。


「そこで、アナタの出番ってワケ」


「死んだ勇者を蘇らせろという事か」


「そ。これなら悪魔の使いが出張ってこないし、何より使い回しが出来るじゃない」


 死人のリサイクルとは、悪魔より酷い女だ。

 こういうのがあのサムライに始末されるべきなんじゃないか。


「ちょっと試してみて欲しいんだけど」


 またか。

 結局何処へ行っても同じ事をさせられるようだ。


 これが命の魔法を持ってしまった者の宿命なのか。それとも生前の罪への罰か。


「勇者の蘇生は試した事が無い」


「いーじゃん、失敗したって。物は試しよ。えーと、誰がいいかなー」


 チェッツが腕組みをして上を向き、視線を部屋の中へ向ける。

 ぐるりと見回す魔女の眼差しが茶髪男の前で止まった。 


「ちょ!?何でこっち見てるんスか!!」


「やーね、冗談よ」


 カラカラと笑う魔女に茶髪男は本気でビビッていた。


「じゃあさ、ダメ元で救済の勇者なんてイケる?」


 森の国で幾度か耳にした事がある。余程有名な勇者なのだろう。


「分かった」


 バッグから指輪を出し集中する。



〈ポイント:残り24.8〉



 狩りの成果でポイントは大分溜まっている。


 小動物なら0.2ポイント。大型の獣ならおよそ1.5ポイント。

 魔物は種類によってバラつきがあり、大体0.3~1ポイント前後だった。


 より強く危険なものが相手なら獲得出来るポイントが上がる。


「一度見てみたかったのよねー」


「伝説の勇者様ッスかー」


 期待を膨らます二人には悪いが。


「駄目だ」


 無理だった。


「えー!?」


 魔女が不満の声を上げる。そう言われても結果は変わらない。

 ポイントやレベルが足りないというより、何も浮かばなかったのだ。


 何というか、イメージ自体が湧かない。


「アイツらは出来たんでしょ。何でよー」


 アイツら、ゴメスとグルダの事か。確かにあの二人は蘇生出来た。


 王に言われた巫女と賢者も蘇生は出来なかったものの、情報は頭に浮かんだ。

 まだ知らない、蘇生に必要なモノが存在するのだろうか。


「もしかして、死んでないとか?」


「消息不明から何十年も経ってるのよ。生きてたらアタシの情報網に絶対引っ掛かるハズよ」


 茶髪の言う事も一理ある。試しにこいつを見ながら念じてみた。



〈ポイント:残り24.8〉


 >復活 対象を選択して下さい



 一応出たには出た。が、どういう意味だ。

 今度は同じく生きている人間、ゴメスをイメージして念じてみる。



〈ポイント:残り24.8〉


 >復活 生存しています



 メッセージが浮かんだ。死んでいない者はこう表記されるようだ。

 だったら目の前の男との違いは一体。


 考えた所で、一つ思い浮かんだ。


「おい、お前」


「へ?オレッスか」


 茶髪男に声を掛ける。確認したい事があった。


「名前は何だ」


「あ、言ってなかったッスか。相澤丈史あいざわたけし、タケって呼ばれてるッス」


 男の名を聞いてもう一度念じてみると、表記はゴメスと同じものが出た。


 やはり、必要なのは名前だ。

 巫女と賢者も最初に名前を聞いていたから表示されたのだ。


「名前が必要なんスね」


「救済の勇者の名前を知っているか」


 魔女に問うと、女は微妙な表情を浮かべた。


「えーと、うん。名前ね」


 こいつは間違い無く知らない。



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