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ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
モモタロウ編
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51 モモタロウ編その21


「危うく賢者様を凍結封印してしまうところでしたね」


「もー、汰郎様ったら」


 人を凍死寸前まで追い込みながら和気藹々とする汰郎とコイ。

 紅の賢者は震えながら恨めし気な視線を送っている。


 どうコメントしていいのか分からないチコは、曖昧に笑うしかない。


「と、いう訳ですので王宮に戻って頂けますか」


「どういう訳だ!」


「先程申し上げた通り、腐った王の根性を叩き直して下さい」


「出来るなら苦労はしない。あの変態クソオヤジにはこっちだって参っているんだ」


「女狂いの猥褻王を野放しにしては砂漠の国は滅びますよ」


 王を罵倒する二人に、愛人であるチコは目を白黒させた。

 美青年と美少年の口から飛び出す言葉とはとても思えない。


「汰郎様、王様の事で引き籠ってる訳じゃなさそうだよ」


「そうですね。これだけ本音をぶちまけられるのなら、他に理由がありそうです」


 内緒話を隠しもしない二人に、賢者の拳がプルプルと震える。

 二人の煽りがエスカレートする前に何とかしなければと、チコは辺りを見回した。


 話題を逸らそうと視線を彷徨わせると、壁にある一枚の絵が目に入った。


「あれ?この人見た事がある」


 彼女が見る方向に気付いた賢者は一瞬、焦りの色を見せた。

 もちろん目ざとい汰郎は見逃さずはずも無い。


「これは見事な絵ですね。まるで現実から切り取ったかのようだ」


 賢者が言葉を発する隙も与えず、素早く絵に近付く汰郎。

 コイも反応して後を追う。


「本当だ。女の人だよねっ!」


 描かれていたのは赤いローブの背の高い、凛々しい女性。

 絵はとても精密で人の手で描いたとは思えない程だ。


「絵じゃないよ。これ、写真だ」


「シャシン?」


「うん。カメラっていう四角い箱で撮ると絵になって出て来るの」


 チコがコイにジェスチャーを交えて説明する。


「へー、五十年も経つと便利な物があるんだね」


「肖像画を描く手間が省けますね。どこで手に入るのでしょうか」


 鎖国気味だった森の国には無い不思議な道具に、コイだけでなく汰郎も興味津々だ。


「これは勇者様の能力だ。そのような道具は無い」


「それは残念です。ところでこちらの方はどなたで、賢者様とはどのようなご関係で?」


 ぼそりと漏らした賢者の言葉に間髪入れず反応し、退路を断っていく汰郎。

 もうカメラの事など知ったこっちゃないという態度。


 このまま黙っていたら色々とほじくり出されてしまいそうだ。

 己の名誉と尊厳の危機を感じた彼は、渋々答える事にした。


「赤の賢者様だ。たまたま砂漠の国を訪れた勇者様から譲ってもらった」


「ああ、この人が」


 森の国で大臣と共に見た映像。猫目のマジシャンが始末したと言っていたうちの一人。


「紅の賢者様の恋人?」


「とんでもない!美しく気高いあの方に私などが釣り合うはずもない」


「崇拝していたんですか。シャシンまで飾るとは、紛れも無い狂信者ですね」


「違う!尊敬していたんだ」


「なるほど、一方的に想いを寄せていたと」


「片思い?片思いなんでしょ!?」


「悪いかっ!!」


 汰郎とコイの連携に、思わず本音を漏らしてしまうイケメン賢者。

 しまったと思ってももう遅い。


「やはり色恋沙汰ですか」


 王が王なら賢者も賢者ですね、と爽やかな笑顔で貶める美少年。

 がっくり項垂れる紅の賢者にチコは気の毒そうな眼差しを送る。



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