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ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
モモタロウ編
35/333

33 モモタロウ編その3


「では、順番に自己アピールをお願いします」


 三人巫女の前にはペンを持って椅子に座る汰郎。

 背もたれでは彼が使役する羽と爪の妖怪、天翔てんしょうが睨みを効かせている。


「じゃあ私から~。応援の魔法を使います~」


「例えば?」


「ちょっとだけ早く走れたり~、重い荷物がほんの少しだけ軽くなります~」


 可愛い女の子の前なら誰でも出来そうなものである。


「はいはいっ!うちは光の魔法だよ。部屋とか明るく出来るよ」


「他には?」


「え?うーんと、洞窟とかも明るくなるよ」


 ランプや松明など、代用品は山程ある。


「次は私ね。雷雲があれば雷を落とせるわ」


 自信たっぷりに胸を張るフレカ。


「晴れていれば?」


「う、それは。あ!静電気ならイケる。痛いヤツ」



「・・・役立たず共が」


「えっ、今の天翔ちゃんだよね!勇者様が呟いたんじゃないよね!?」


「そうよコイ!あんな可愛い顔で罵倒する訳ないじゃない」


「み、耳の錯覚です~」


 姦しい巫女達がテーブルの反対側で焦ったり、顔色を変えたりと忙しい。

 扉を開けた賢者がぼんやりと突っ立っている。


「アンタ達何やってんの?人ん家で」


「お邪魔しています。ちょっとした面接というか、まずはお茶でもどうぞ」


 汰郎が言うと台所からポットとカップが飛んで来た。

 本当に、文字通り宙を飛んでテーブルまでやってきたのだ。


「使い込まれた良い急須でしたので、賢者様にお茶を入れたいと言っています」


「誰が?」


「付喪神が」


「あー、うん。ありがたく頂くわ」


 茶の賢者は頭痛を堪えた。深く考えるだけ無駄だと己に言い聞かせる。

 巫女達は特異な現象にもすっかり慣れたようで、この程度では驚かなくなっている。



「で?」


「準備も整ってきた所ですし、出立前に一度魔物退治をしようかと思いまして」


 暖かいお茶で一息ついた賢者に汰郎が簡単な説明をする。


「ゼナさんに生息地を聞いている所を見つかってしまい」


「ふむふむ」


「一緒に行きたいと言う身の程知らず達の実力を確認していました」


 笑顔で事実を突き付けられた巫女姉妹達は揃って肩を落とした。

 彼女達は暇潰しぐらいの感覚なのだろうが現実は甘くない。


 乱暴に見えるが判断は正しいと賢者は内心思っていた。


「ところで、賢者様はどこにお出かけですか」


「茶葉を採りに山へね。もうじき封印されるから無駄なんだけど、どうしても習慣でね」


 彼の言葉で一層しんみりとする巫女達。

 が、逆に汰郎の目にはキラリと光が宿る。


「山には魔物が出るようですが、お一人で?」


「まぁ出るって言っても多くはないし、コレで大抵は凌げるわ」


 賢者のパイプが煙を吹く。


「煙で視界を塞いで逃げたり、いざって時は睡眠効果も使えるし」


 賢者はカップを持っていない方の腕を唐突に掴まれた。

 相手は勿論花の様な笑顔を浴びせてくる、絶世の美少年。


「賢者様、一緒に魔物退治に行きましょう」


「嫌」


 即答する。


「汰郎ちゃん、何かヤバイのに挑みそうだし」


「そんな、当然じゃないですか」


 当然なの!?と驚く巫女を放置して汰郎は話を続ける。


「やはり世界を救うには賢者様の様な、聡明な人材が必要ですよ。あ、野営の経験は?」


「そりゃあるけど、魔物退治よね。旅立ちの同行の誘いになってない?」


「さすが賢者様は巫女と違って察しが良いですね」


 笑顔で賢者を勧誘する汰郎に、巫女達は自分達の存在意義が揺らぐのを感じた。



「勇者様、一人で世界救えそうだよね」


 コイの呟きにノネとフレカは遠い目で頷くしかなかった。



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